アジア開発銀行の「アジア開発経済見通し改訂」Asian Development Outlook 2013 Supplement
昨日、アジア開発銀行 (ADB) から「アジア開発経済見通し改訂」 Asian Development Outlook 2013 Supplement が公表されています。副題は Softening Growth Prospects for Developing Asia となっています。かなり直接的な表現と受け止めています。5ページほどの分量ですが、pdf の全文リポートもアップされています。日米欧の先進国における成長率見通しがやや情報修正される一方で、アジア新興国・途上国の成長見通しは今年来年といくぶん下方修正されています。まず、アジア開発銀行のサイトから Key messages を4点引用すると以下の通りです。
Key messages
- In the People's Republic of China, a weaker-than-expected first half of the year and tighter credit have dampened growth expectations, such that the economy is now forecast to expand by 7.7% in 2013 and 7.5% in 2014.
- In India, slowing fixed capital formation, weak industrial activity, and plodding progress on reform are weighing on the economy, now forecast to expand by 5.8% in 2013. South Asia is paced to grow by 5.6% in 2013 and 6.2% in 2014.
- Southeast Asia's strong start to the year is being tempered by slower growth in the People's Republic of China and continued weak demand from advanced economies for its exports. The five largest economies in the Association of Southeast Asian Nations are poised to grow by 5.2% in 2013 and 5.6% in 2014.
- With softer oil prices and relatively stable food prices, inflation in developing Asia is now forecast to dip to 3.5% in 2013.
続いて、成長率見通しについて、リポート p.3 Table 2 GDP growth, developing Asia の表を引用すると以下の通りです。単位はもちろんパーセントです。
成長率見通しを取りまとめた上の表から、アジア新興国・途上国の成長の鈍化は中国に起因していることが読み取れます。アジア新興国・途上国全体で2013-14年ともに春の見通しからの成長率の下方改訂幅は▲0.3パーセント・ポイントなんですが、中国だけはいずれも▲0.5パーセント・ポイントとなっており、インドや他のアジア新興国・途上国はせいぜい▲0.1-0.2パーセント・ポイントの下方改訂にとどまっています。しかしながら、鈍化するとはいえ中国の成長率はまだまだ高く、アジア新興国・途上国の経済をけん引していることに変わりありません。ただし、中国の投資に関するリスクについては、"Turbulence in the domestic interbank market in late June elevated funding costs (particularly for nonbank finance) and made financial institutions more averse to risk." と、いわゆる「影の銀行 (シャドーバンキング)」などの金融セクターに起因するリスクも指摘しています。
次に、物価上昇見通しについて、リポート p.5 Table 3 Inflation, developing Asia を引用すると上の通りです。ここでも、中国が2013-14年と▲0.5パーセント・ポイントを超える下方修正となっている一方で、アジア新興国・途上国平均で今年来年とも▲0.5パーセント・ポイントの下方修正にとどまっています。リポートでは、アジア新興国・途上国の成長の減速と農作物の豊作がエネルギーや食料などの商品価格を抑制していると分析しています。すなわち、"The growth slowdown in developing Asia and other emerging markets, along with continued softness in the major industrial economies, is suppressing demand for energy, while strong harvests are keeping food prices in check." ということのようです。
なお、見通しというよりも作業前提なのかもしれませんが、先進国経済については日本の2013年成長見通しをかなり上方修正しています。理由は、"In Japan, the package of monetary and fiscal reforms dubbed Abenomics seems to be bearing fruit." ということのようです。
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