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2013年7月18日 (木)

主要銀行貸出動向アンケート調査で企業向け資金需要が伸びないのはなぜなのか?

本日、日銀から7月調査の主要銀行貸出動向アンケート調査の結果が発表されています。いつもはそれほど注目していない指標なんですが、アベノミクスの経済政策効果との関係で取り上げたいと思います。アンケート調査結果は、個人向けの資金需要判断DIが堅調な一方で、企業向け資金需要判断DIはマイナスに悪化しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月資金需要、企業は1年ぶりマイナス 設備投資減も一因に
日銀が18日発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によると、4-6月期の企業向けの資金需要判断DIはマイナス2と前回調査から7ポイント悪化し、12年4-6月期以来1年ぶりのマイナスに落ち込んだ。規模別では大企業向けの需要判断がプラス1で前回から3ポイント低下したほか、中小企業向けは前回のプラス3がマイナス1に悪化した。
資金需要は横ばい、と答えた金融機関が大半だったが、一部では設備投資の減退が一因となって減少したようだ。製造業の大企業向けはプラス2で、前回から3ポイント低下した。
非製造業では大企業向けがプラス3で、前回のマイナス1から好転した。金融や保険での資金需要が伸びたとみられる。中小企業向けはマイナス3で、前回から6ポイント悪化した。
個人向けDIはプラス15だった。前回調査から1ポイント改善し、2006年1-3月期以来7年3カ月ぶりの高水準。根強い住宅への投資意欲や貸出金利の低下が高い水準での需要を維持させている。
資金需要判断DIは、需要が増えたと答えた金融機関の割合から減ったとの回答を差し引いた値。個人向けのうち住宅ローンの需要はプラス14と前回から2ポイント低下したほか、消費者ローンも伸びを縮めた。ただ金融機関の回答は特に住宅ローンで「やや増加」が目立っている。
地方公共団体向けはプラス2と前回から4ポイント悪化した。
今後3カ月の資金需要見通しは個人向けがプラス18と伸び幅を広げるもよう。4-6月期にマイナスへと転じた企業向けもプラス3に浮上すると見込んでいる。
アンケートは日銀と取引のある国内銀行・信用金庫のうち、貸出残高でゆうちょ銀行を除く上位50機関を対象に過去3カ月間の資金需要を中心に質問した。対象金融機関の貸出残高は国内金融機関全体の75%を占める。今回の回答期間は6月11日-7月8日だった。

次に、資金需要判断DIの推移のグラフは下の通りです。上のパネルは企業向けと個人向け、下は個人向けのうち住宅ローンと消費者ローンです。なお、調査の項目には企業と個人のほかに地公体等向けもあるんですが、割愛しました。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気日付は、昨年2012年1-3月期を山、10-12月期を谷と仮置きしています。

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引用した記事にもある通り、個人向けの資金需要が旺盛な一方で、企業向けは落ち込みを示していたりします。日銀の異次元緩和によって流動性が供給され、期待インフレが高まれば実質金利が低下して、設備投資の資金需要が増加する、というのがアベノミクスのシナリオだったんですが、今のところ、資金需要に関する主要銀行の判断DIに従えば、一向にそのような動きは見られないというべきです。日銀が笛吹けども企業は踊らず、引用した記事にもある通り、設備投資は盛上りに欠けるんでしょうか?

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確かに、期待インフレ率が思ったほど上昇していないという面はあります。例えば、日経センターのESPフォーキャストでは、消費者物価が2年で2%という日銀の目標は依然として実現困難との判断が多数を占めています。このため、いまだに設備投資需要が盛り上がらないというのも一面の真実であろうと受け止めています。ただし、それだけでなく、もうひとつの要因として、企業が極めて資金リッチになっていて、借入れに頼らなくてもキャッシュフローが設備投資の水準に比較して潤沢であるという事情も忘れるべきではありません。上のグラフは財務省の法人企業統計から、法人税率と配当性向を合わせてほぼ50パーセントと仮置きして、経常利益の半分に減価償却費を加えたキャッシュフローを試算して、設備投資といっしょにプロットしています。季節調整していない統計を使っているためにジグザグしており、とても大雑把な計算なんですが、一応の傾向は把握できると思います。すなわち、昨年末から今年年初にかけて、擬似的に試算したキャッシュフローは設備投資額を約5兆円も上回っていて、設備投資額が約10兆円程度ですから、かなり大きく設備投資が増加しない限り、キャッシュフローでまかなえる計算です。逆から見れば、資金需要が増加しなくても設備投資が拡大する余地は小さくない、と理解すべきです。

最後に、個人向けの資金需要が旺盛との結果についても、必ずしも、アベノミクスの政策効果かどうかは疑問が残ると私は受け止めています。すなわち、金利の先高感から住宅ローン需要が伸びているのは政策効果と考えるべきですが、消費税率引上げに伴う駆込み需要の面も否定できません。後者であるならば、それなりの反動減は覚悟すべきであろうと思います。

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