経済開発協力機構 (OECD) の「経済見通し中間評価」 Interim Economic Assessment
昨日、経済開発協力機構 (OECD) から先進7か国G7と中国などの新興国の「経済見通し中間評価」 Interim Economic Assessment が公表されています。2013年を通して、日本は+1.6%成長と今年5月時点の予測を据え置いた一方で、米国は+1.7%成長と▲0.2%ポイントの下方修正、他方、独仏伊のユーロ圏主要3か国は+0.4%成長と前回のユーロ圏諸国全体の▲0.6%のマイナス成長から大幅に上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
日米英「経済活動が拡大」 OECDが下期見通し
経済協力開発機構(OECD)は3日、主要7カ国(G7)の短期経済見通しを公表した。2013年4-6月期に景気回復のペースが加速し、13年後半もこのペースが維持されると予測。日本と米国、英国は「経済活動が拡大している」と評価した。独仏伊のユーロ圏も「全体として、もはや景気後退期ではない」との見解を示した。
G7の実質国内総生産(GDP)成長率では、日本が13年通年で1.6%と5月末時点の予測を据え置いた。米国は1.7%で0.2ポイント下方修正。独仏伊のユーロ圏主要3カ国は0.4%で前回のマイナス0.6%から大幅に上方修正した。先進国経済は「13年下期は従来予想より強い成長が見込まれる」との認識を示した。
OECDは13年上期の日本経済を積極的な経済政策で再浮揚したと評価。今後は「2%のインフレ目標が持続的に達成されるまで、金融緩和を継続すべきだ」と主張した。財政の健全化に向け「計画通り14年に消費増税を実現すべきだ」とも注文を付けた。ただ増税時には「一時的な財政政策の検討の余地はある」とし、補正予算編成などによる景気下支えを容認した。
米欧経済は全体的に上向いているとしながらも「リスクは残っている」と引き続き警戒感を示した。とりわけ失業率がユーロ圏平均で12%程度、米国で7.5%程度と依然として高水準にある現状を指摘。「政府が最も焦点を当てなければならない課題」として、職業訓練の拡充などを求めた。
一方、新興国経済にも言及し、「一部の国で成長が鈍化している」と分析した。米金融政策の出口戦略の議論が引き金となって、金融市場が混乱したことに関連し「多額の経常赤字など新興国経済が持つ困難に焦点を当てた」と解説。新興国はこうした問題の解消に取り組むべきだと強調した。
中国については、成長ペースが鈍化していた13年上期に比べて下期はやや持ち直すとしたものの「緩やかな伸びにとどまる」と指摘。同国の13年の経済成長率予測は7.4%と、5月末時点の7.8%から下方修正した。新興国の世界経済に占める比率が高まっているため、新興国経済の伸び悩みは「世界の短期的な成長を低迷させる」と予想した。
やや長いんですが、よくまとまった記事ではないかと思います。今夜のエントリーでは、OECD が記者発表に用いたジャーナリスト向けのハンズアウトからいくつか図表を引用して、簡単に我が国と先進国の経済見通しを紹介したいと思います。

まず、上のテーブルはハンズアウト p.1 Indicator-based forecasts for GDP growth in the major economies を引用しています。成長率見通しの総括表です。我が国は年内いっぱいは年率2%台半ばの順調な景気回復・拡大が続くと予想されています。2013年を通しては+1.6%成長と、引用した記事にもある通り、5月時点の見通しと変わりありません。もっとも大きな変更があったのは欧州です。ユーロ圏で見て、5月時点では2013年▲0.6%のマイナス成長と見込まれていたのが、今回の中間評価では3大ユーロ圏諸国、すなわち、独仏伊とまったくベースが異なるものの、+0.4%に大きく上方改定されています。しかし、"The euro area remains vulnerable to renewed financial, banking and sovereign debt tensions." と、まだリスクが残されていると言及されています。

Interim Assessment にしては、かなり広範なテーマを取り上げており、金融や不良債権はいうに及ばず、政府バランス、物価、雇用、貿易など、さまざまなグラフが示されていますが、その中で目立ったのが上の投資がGDPに占める比率のグラフです。ハンズアウト p.10 Investment-to-GDP ratio and GDP growth, 2010-2012 を引用しています。縦軸に投資がGDPに占める比率を、横軸に成長率をそれぞれ取っていますので、当然ながら、正の相関が観察されます。新興国や途上国は成熟した先進国よりも右上にプロットされています。これまた、当然です。しかし、投資の促進は生産性の向上をはじめ、潜在成長率の引上げなどに必要であり、"Persistently weak investment in advanced economies since the crisis has slowed the growth of capital and risks holding back productivity growth during the recovery, while low investment continues to drag on demand." と分析されています。

最後に、やや趣味的なグラフながら、上のグラフはハンズアウト p.12 の Appendix から Uncertainty around GDP forecasts を引用しています。最近何年かの OECD の経済見通しごとの成長率予想に対して、予測に用いる indicator-based models 間の標準偏差を示しています。日独、特に我が国の標準偏差が大きくなっています。我が国の経済構造や経済主体のマインドが OECD の各種のモデルでは捉え切れていない可能性が示唆されていると受け止めています。
何度かこのブログでも書きましたが、現在の日本の景気回復・拡大局面の特徴は、家計部門の消費が先行して景気をけん引し、次に企業部門の設備投資が追いかけながら回復を示しつつあることで、逆から見れば、従来の輸出主導型の景気回復とは異なり、海外部門が後景に退いています。この先、欧州が経済活動を活発化させ、それに伴って中国が経済低迷から脱する方向に向かうと、世界経済のみならず我が国の景気もより力強さが増すのではないかと期待しています。
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