先週の読書は三浦しをん『政と源』(集英社) ほか
先々週はジャーナリストが書いたドキュメント、ルポルタージュが中心でしたが、先週読んだのはフィクションというか、小説が中心です。特に、三浦しをん『政と源』(集英社) を中心に取り上げます。もちろん、単なる私の趣味です。
三浦しをん『政と源』(集英社) を読みました。今日のエントリーはこの本の特集ですので特別扱いで、以下は出版社の特設サイトからあらすじと登場人物の画像を引用しています。
この作者の作品は、直木賞を授賞された『まほろ駅前多田便利軒』にせよ、本屋大賞に輝いた『舟を編む』にせよ、私の割と好きな青春小説の『強く風が吹いていた』も、最近流行った『神去なあなあ日常』にしても、何となくプライベートの部分が弱くて、パブリックの部分で勝負している、というか、関西人的にいえば、ホンネを見せずに建て前だけでストーリーを進めているように見えるところがあり、それだけに、キレイだが浅い小説になっている気がしていました。私が読んだ中では、唯一の例外が同じ出版社の『光』です。そして、この『光』は三浦しをんの小説の中でも、もっとも評価の低い作品のひとつだろうと私は考えています。ですから、この作品はその意味で新機軸なんだろうと私は受け止めています。決して、舞台が郊外の「まほろ」≒町田から下町に移ったことや、主人公が70歳を超える男性高齢者になったことなどが新機軸なのではありません。『Cobalt』でまだ連載が続いているのかどうか、私は知りませんが、続編を待望しています。
次に、海堂尊『輝天炎上』(角川書店) です。この作者のシリーズの最初の『チーム・バチスタの栄光』は私は高く評価していて、田口公平を主人公とする表シリーズも、天馬大吉を主人公とする裏シリーズもどちらもすべて読んでいると思うんですが、デビュー作から時を経て作品の質が低下しているように思います。これは、森博嗣の作品にも同じことが当てはまると私は考えていて、S&MシリーズとVシリーズをすべて読んで、Gシリーズはそもそも完結していないながら、デビュー作の『すべてがFになる』を私はもっとも高く評価しています。
次に、秋吉理香子『暗黒女子』(双葉社) です。ミッション系の名門女子高校を舞台にしているんですが、私は仏教系の男子高校の出身者ですので、よく分からない部分もあります。作者は覆面作家で正体が知れないんですが、ひょっとしたら男性なのではないかと疑うような女心の無理解を示す部分もなくはありません。流行っていると聞いて借りましたが、オススメしません。
次に、コーマック・マッカーシー『チャイルド・オブ・ゴッド』(早川書房) です。米国の作家としてはオーツとともにノーベル文学賞に最も近い作家の1人と認識しています。その初期の作品で、初出は1973年です。私はこの作家なら、常識的ではありますが、1990年代のいわゆる国境3部作、『すべての美しい馬』、『越境』、『平原の町』、そうです、ジョン・グレイディが主人公の作品なんですが、コチラをオススメします。なお、今年こそノーベル文学賞は村上春樹がイチオシです。
最後に、高田郁『残月』(ハルキ文庫) です。時代小説です。澪つくし料理帳シリーズの竿新刊第8巻です。澪をめぐる環境が大きく変わる予兆の巻です。小松原との縁談が壊れ、種市は澪を2年後に吉原に送り出す決意を固め、芳は再婚します。これからの展開が楽しみです。
この連休はエンタメ系の小説の旧作しか読みませんでした。『ライス回顧録』、倉重篤郎『小泉政権1980日』、ポール・ケネディ『第2次世界対戦 影の主役』などを借りましたので、今週はせっせと読書したいと考えています。
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