法人企業統計では企業部門の業績改善、設備投資増加、資金余剰を確認!
本日、財務省から4-6月期の法人企業統計が発表されました。昨年中にミニ・リセッションを終了して景気が回復・拡大する中で、売上と利益は順調に伸びており、設備投資も増加基調にあります。相対的に投資より利益の拡大が大きく、企業部門の資金余剰は拡大しているようです。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
設備投資4-6月、3期ぶりプラス 法人企業統計
0.016%増
財務省が2日発表した4-6月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比0.016%増の8兆3106億円だった。ごくわずかながら3四半期ぶりのプラスとなった。前年の投資の反動で情報通信機械や食料品などで設備投資を手控える動きが根強く製造業は減ったが、建設や小売業など非製造業の新規投資が伸び、全体を押し上げた。
設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は9.1%減と3四半期連続で減少した。減少幅は1-3月期の8.3%より拡大。自動車で新車対応の工場や製造ラインへの投資があった輸送用機械などは増えたが、広がりに欠けた。非製造業は、大型複合ビル開発や住宅資材製造ラインへの投資で建設業が伸びたほか、不動産業、卸売業、小売業などで増えた。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、季節調整して前期と比べると2.9%増えた。6月の発表時点では0.9%減だった1-3月期が今回0.3%増に上方修正されたため、3四半期連続のプラスとなった。
全産業の売上高は0.5%減の311兆6656億円と5四半期連続で減った。製造業は3.9%減。北米向け自動車など好調な輸送用機械などは増収だったが、低価格競争の続く食料品などは減収だった。非製造業は1.0%増。自動車も扱う商社など卸売業などが伸びた。
経常利益は前年同期比24.0%増の15兆6790億円と6四半期連続で増えた。なかでも製造業は51.5%増と高い伸び。3四半期連続の増加だった。自動車など輸送用機械業で円安により輸出採算が改善したほか、情報通信機械や鉄鋼などが増益となった。非製造業は11.3%増で2四半期ぶりに増加。商社など卸売業、小売業などで増えた。
同統計は資本金1000万円以上の企業の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が9日に発表する4-6月期のGDP改定値に反映される。
併せて発表した2012年度の設備投資は、輸送用機械などが伸び前年度比4.0%増の34兆6431億円だった。売上高は0.5%減の1374兆5105億円、経常利益は7.0%増の48兆4611億円だった。
いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。法人企業統計とGDP統計の関係についても適切に記述されています。次に、法人企業統計の売りのヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月あるいは10-12月期と仮置きしています。
上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますので、主として季節調整していない原系列の統計を基にした記事と少し印象が異なるかもしれません。見れば分かりますが、季節調整済みの前期比で見て、売上高がわずかに+0.6%増にとどまったのに対して、経常利益は+10.6%増と跳ね上がっています。企業の経営効率が強化されたという評価ができる一方で、リーマン・ショック前のように、家計部門に均霑することなく企業部門だけが余剰を溜め込む方向に進みつつある懸念も脳裏をよぎります。もっとも、今回の景気回復・拡大局面では企業部門よりも家計部門が先行しましたので、その反動という側面もあります。いずれにせよ、企業収益は「史上最高益」に沸いたリーマン・ショック以前の水準に近づいているのが読み取れます。他方、引用した記事にもある通り、設備投資は+2.9%増となり、さかのぼって1-3月期も上方改定されています。8月12日に発表されたGDP統計の1次QEで4-6月期の設備投資は実質前期比▲0.1%減、名目+0.2%増でしたから、単純に当てはめると来週発表の2次QEでは上方改定されることが予想されます。
続いて、上のグラフは擬似的に計算した労働分配率と設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却の和です。なお、特別損益は無視しています。キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却の和でキャッシュフローを算出しています。まず、上のパネルの労働分配率について見ると、昨年のミニ・リセッションではほとんど上昇も見られず、大雑把にならして70%を十分に下回る水準で推移しているのが読み取れます。他方、下のパネルの設備投資はキャッシュフローの半分近くまで水準が低下しています。労働分配率については雇用の増加、あるいは、賃金の上昇に耐える企業体質が出来上がったと評価できますし、設備投資向けの資金も債券発行や借入れに頼る必要なく、十分に内部資金で調達できると見られます。
法人企業統計では、最初のタイトルに上げたように、企業業績が改善し、設備投資も増加し、さらに、資金余剰も拡大した企業部門の姿を確認することが出来ました。現在の景気回復・拡大局面はマインドの改善に基づく家計部門の消費拡大が先行していますが、公共投資も増加していますし、ここに企業部門が加わり、もしも、為替の円高是正と海外経済の持ち直しに伴う輸出増が加われば、さらに力強い全員参加型の景気拡大が望めるかもしれません。
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