企業物価指数の上昇は日銀の異次元緩和によるものか?
本日、日銀から9月の企業物価指数 (CGPI)が発表されました。前年同月比上昇率で見て+2.3%と金融政策目標のインフレ率+2%に向けて着実な上昇率を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
9月の国内企業物価、2.3%上昇 6カ月連続のプラス
日銀が11日発表した9月の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は102.7となり、前年同月比で2.3%上昇した。プラスは6カ月連続。昨年秋以降の円安進行で輸入品の価格が押し上げられたほか、原油価格や電力料金が上昇した。
企業物価指数は出荷や卸売り段階など企業間で取引する製品の価格水準を示す。
820品目のうち、前年比で上昇したのは366品目(44.6%)、下落は340品目(41.5%)だった。8月分が改訂され確報値では下落品目が上昇品目を上回った。そのため、今月は上昇品目が12年2月以来1年7カ月ぶりに下落品目より多くなった。
上昇品目から下落品目を引いた品目数は26と、11年12月以来の高水準だった。価格引き上げが幅広い品目に広がっている。
9月は前月比では0.3%上昇した。円安を受け都市ガスや電力などの燃料費が上昇。猛暑の影響で鶏卵価格が上がるなど、農林水産物や非鉄金属が上昇に寄与した。
円ベースでの輸出物価は前年同月比で13.8%上がり、輸入物価も17.9%上昇した。前月比でも輸出物価は1.0%上昇し、輸入物価も2.2%上がった。原油市況高でガソリンや液化石油ガスなど石油・石炭製品が上昇した。
いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。いずれも企業物価の前年同月比上昇率をプロットしているんですが、上のパネルは国内・輸出入の別、下のパネルは需要段階別です。影をつけた期間はいずれも景気後退期なんですが、いつものお断りで、このブログのローカル・ルールとして直近の景気の谷は昨年2012年11月だったと仮置きしています。

上下のパネルを見て明らかなんですが、上のパネルからは国内物価が安定的に推移している中で、輸出入物価がともに大きく上昇しているのが見て取れます。引用した記事にもある通り、アベノミクスに伴う円高修正の結果であると受け止めています。下のパネルからは、いわゆる川上の素原材料や中間財が上昇している割には、川下の最終財の値上がりが低く抑えられているのが見て取れます。もちろん、製造段階でコストアップを吸収するとともに、流通段階でも競争によって価格が抑えられている可能性が指摘できます。

ということで、企業物価のうちの輸入物価から円建てによる原油価格指数をプロットしたのが上のグラフです。リーマン・ショック後に大きく低下し、その後、最近時点まで上昇傾向にあります。前年同月比上昇率で見ると、ここ3ヶ月では、7月+31.8%、8月+28.0%、直近の9月+26.3%のそれぞれ上昇と、かなり大きな上昇幅になっています。街中のガソリン・スタンドでもかなり値上がりしているような印象を持っています。ですから、フォーマルな定量分析をしたわけではありませんが、現時点における物価は、為替も含めたコスト・プッシュに起因する上昇から、徐々に需要の拡大がけん引するインフレに移行する過程と考えるべきであって、現在の物価上昇は日銀の政策によるものではないと私は考えています。
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