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2013年11月18日 (月)

厚生労働省「平成23年度 国民医療費の概況」に見る社会保障費抑制は成功しているか?

やや旧聞に属する話題ですが、厚生労働省から「平成23年度 国民医療費の概況」が先週木曜日の11月14日に公表されています。2011年度の医療費は38.6兆円で過去最高を更新し、2013年度には40兆円を突破するとの見方も出ています。まず、日経新聞のサイトから記事の最初の4パラだけを引用すすと以下の通りです。

国民医療費38.6兆円、最高を更新 1人30万円突破
医療・介護など社会保障費の膨張が止まらない。厚生労働省が14日発表した2011年度の国民医療費は38.6兆円で過去最高を更新し、13年度には40兆円を突破する。「税と社会保障の一体改革」に基づき来年4月に消費増税を予定通り実施することになったが、介護などの給付費抑制策は修正が目立つ。世界がうらやむ長寿国家になった日本。経済の実力に見合った社会保障制度をつくる改革は早くも後退の懸念が出ている。
国民医療費は3年連続で1兆円以上増え、国民1人あたりで初めて30万円を超えた。厚労省推計によると、年金を含む社会保障給付費総額(自己負担除く)は25年度に149兆円。12年度比36%増え、同時期の国内総生産(GDP)の増加率(27%増)を大きく上回る見通しだ。
政府はこれまで、給付増で足りない財源を国債発行で実質的に穴埋めしてきた。だが国の借金は今夏1000兆円を超し、将来世代への先送りは限界だ。税と社会保障の一体改革に取り組んだのは給付と負担が釣り合わない状況を是正する狙いだった。
同改革で方向性を出した「増税」は、来年4月に消費税率を8%に引き上げることが決まった。だが、同時期に始めるはずだった給付抑制策は、早くも腰砕けの様相を呈している。

まず最初に一応お断りしておくと、統計で取りまとめられているのは2011年度の医療費ですから、民主党政権下の社会保障政策に基づく医療費の統計であり、この2011年度の統計をもって現在の安倍内閣の社会保障政策を議論するのはムリがあります。しかし、日経新聞の社会保障費の抑制に対する熱意は汲み取れます。ということで、1985年度からの国民医療費とその国民所得に対する比率をプロットすると以下の通りです。

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私はこのグラフから2点読み取るべきだと考えています。第1に、2001年からの小泉政権下でかなり国民医療費の抑制が図られていることです。現在も医療費をはじめとする社会保障給付の抑制を主導しているのは経済財政諮問会議のように私には見えるんですが、小泉内閣の当時でも、経済財政諮問会議が経済政策を主導をしていたと言えるような気がします。第2に、医療費を国民所得比で見る限り、分母の国民所得の成長率にも大きく左右されるということです。1980年代後半からのバブル期には医療費は増加していたものの、国民所得比では抑制が図られていますし、逆に、2008年のリーマン・ショック後の不況期には医療費の国民所得比はグンと上昇しています。すなわち、医療費をはじめとする社会保障を適正な水準に維持するためには、社会保障費そのものの抑制とともに経済成長が必要だということです。

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上のグラフは、国民医療費を65歳未満と65歳以上に分けてプロットしたものです。いずれも年齢別に、上の棒グラフは1人当りの医療費、下はそれぞれのシェアです。65歳以上にかかる医療費のシェアは2003年度に50パーセントを超え、2011年度には55パーセントを上回りました。すなわち、医療は年金や介護に比べて65歳以下の年齢層も当然受診するわけですが、年金・介護も含めれば社会保障給付は圧倒的に65歳以上の高齢層に向かっているわけです。もちろん、高齢化が進む日本の経済社会においては一定程度はやむを得ないことは理解するものの、同時に、それだからこそ、社会保障費を抑制するにはこの高齢者への優遇策の見直しが不可欠であると認識すべきです。高齢者の優遇がシルバー・デモクラシーに基づく投票行動である限り、政治家にはかなり困難な課題だという気もしますが、シルバー・デモクラシーで歪められた高齢者優遇は何としても是正する必要があります。可能性はかなり低いながら、場合によっては、社会保障費の抑制に成功すれば消費税率の引上げは不要になる可能性があると考えるべきです。

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若年層に目を転じると、同じ11月14日には同じ厚生労働省から平成25年「賃金構造基本統計調査 (初任給)」が発表されているんですが、若年者の初任給はバブル崩壊後にサッパリ上がらなくなりました。上のグラフの通りです。今年2013年の大卒初任給は男女計で前年比▲0.8%減の198,000円となり、昨年に続いて2年連続で減少を記録しました。もちろん、国が市場と関係なく決める社会保障給付と建て前としては市場で決まる初任給とでは、決定のメカニズムが大きく異なりますから、乱暴な議論は慎むべきですが、それにしても、我が国の経済社会全体の選好関数が若年者に不利で高齢者に有利な方向へ大きく偏っているおそれを私は強く感じています。2年限りの出向とはいえ、地方大学でリーマン・ショック直後の学生に直接接して日本経済論を講義した経験から、我が国の若年者冷遇や勤労世代軽視を是正したい、と常に私は考え続けています。

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