7-9月期GDP速報1次QEに示された成長率は外需の落ち込みで成長率が減速!
本日、内閣府から7-9月期GDP統計の1次速報、いわゆる1次QEが発表されています。多くのエコノミストの予想通りに成長率は減速し、季節調整済みの前期比で1-3月期+1.1%、4-6月期+0.9%に続いて、7-9月期は+0.5%となりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
実質GDP1.9%増 7-9月年率、4四半期連続プラス
内閣府が14日発表した2013年7-9月期の国内総生産(GDP)速報値は物価の変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.5%増、年率換算で1.9%増となった。4四半期連続のプラスだが、年率3.8%増だった前期に比べ伸び率は縮んだ。公共投資や住宅投資がけん引する一方、成長率を押し上げてきた消費や輸出に一服感が出た。
実質成長率の速報値は民間エコノミストの予想の平均(1.6%増)を上回った。生活実感に近い名目成長率は0.4%増、年率で1.6%増となった。
実質GDPの前期比の増減にどれだけ貢献したかを示す寄与度でみると、国内需要が0.9%分押し上げる一方、輸出から輸入を差し引いた外需はマイナス0.5%と、3四半期ぶりに押し下げ要因となった。
政府の経済対策による効果が続き、公共投資が6.5%増と前期(4.8%増)に比べ伸びを高めたほか、消費増税前の駆け込みをにらんだ住宅投資も2.7%伸びた。
個人消費は0.1%増と、4半期連続のプラス。自動車や宝飾品などの高額消費が堅調を保った半面、株価の上昇が一服して証券売買手数料が減り、前期の伸び率(0.6%増)を下回った。
設備投資も0.2%増と、火力発電や自動車など輸送用機械の設備投資が増えて、3四半期連続のプラスとなった。伸び率は1.1%増だった前期に比べ鈍った。
輸出は0.6%減と、3四半期ぶりにマイナスに転じた。アジア向けが新興国の景気減速などで減ったほか、米国向けも自動車などの一部企業が現地工場で生産を始めたことにより、日本からの輸出が落ち込んだ。
甘利明経済財政・再生相は記者会見で、冬の賞与は増える見込みである点などを踏まえ「(景気の)良い循環は始まっていると思う」と語った。
総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比マイナス0.3%と、前期(マイナス0.5%)から下落幅が縮小した。国内の物価動向を示す国内需要デフレーターはプラス0.5%と、2008年7-9月期以来5年ぶりのプラスに転じた。原油高など輸入価格の上昇はデフレーターの押し下げに寄与するため、GDPデフレーター全体ではマイナスとなった。名目値が実質値を下回り、デフレの象徴とされる「名実逆転」は解消していない。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2012/7-9 | 2012/10-12 | 2013/1-3 | 2012/4-6 | 2013/7-9 |
国内総生産GDP | ▲0.9 | +0.1 | +1.1 | +0.9 | +0.5 |
民間消費 | ▲0.3 | +0.4 | +0.8 | +0.6 | +0.1 |
民間住宅 | +1.1 | +3.2 | +2.3 | +0.4 | +2.7 |
民間設備 | ▲3.3 | ▲1.2 | +0.1 | +1.1 | +0.2 |
民間在庫 * | (+0.0) | (▲0.2) | (▲0.0) | (▲0.1) | (+0.4) |
公的需要 | +0.6 | +1.1 | +0.5 | +1.6 | +1.6 |
内需寄与度 * | (▲0.4) | (+0.3) | (+0.7) | (+0.8) | (+0.9) |
外需寄与度 * | (▲0.5) | (▲0.1) | (+0.4) | (+0.1) | (▲0.5) |
輸出 | ▲3.8 | ▲3.0 | +3.9 | +2.9 | ▲0.6 |
輸入 | ▲0.3 | ▲1.7 | +1.0 | +1.7 | +2.2 |
国内総所得GDI | ▲0.6 | +0.2 | +0.7 | +1.0 | +0.3 |
国民総所得GNI | ▲0.5 | +0.2 | +0.7 | +1.7 | +0.0 |
名目GDP | ▲1.2 | +0.2 | +0.7 | +1.1 | +0.4 |
雇用者報酬 | +1.0 | ▲0.6 | +0.7 | +0.3 | ▲0.6 |
GDPデフレータ | ▲0.8 | ▲0.7 | ▲1.1 | ▲0.5 | ▲0.3 |
内需デフレータ | ▲1.0 | ▲0.8 | ▲0.8 | ▲0.3 | +0.5 |
テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対する寄与度であり、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは、前期比成長率がプラスであり、黒の外需がマイナス寄与を示した他は、赤の民間消費、黄色の公的需要、グレーの在庫投資など内需の寄与は1-3月期や4-6月期と大差ないのが見て取れます。成長率が減速したのは外需が足を引っ張った結果と言えます。
繰返しになりますが、7-9月期の成長率が減速したのは外需寄与度がマイナスに落ち込んだ要因がもっとも大きく、内需寄与度は+0.9%と引き続き堅調に推移している点を見逃すべきではありません。ただし、在庫のプラス寄与については議論が分かれるところであり、将来の景気拡大を見込んだ積極的な積増しなのか、売残りが生じた事に起因する結果としての積上りなのか、業種によっても違うでしょうし、すべてが前向きの在庫積増しとは私も考えていません。また、日本経済を下支えしているのは公共投資であり、民需では消費税率引上げ前の駆込み需要に支えられた住宅投資です。プラスに転じたとはいえ、設備投資はまだ伸びが低く、消費は雇用者所得がマイナスに転じてほぼ前期比でゼロと、底堅いながらも伸び悩みました。輸出入については、為替が1ドル100円前後で安定しているものの、我が国の内需の伸びが強くて輸入が増加した一方で、新興国をはじめとする海外経済の低迷で輸出が伸び悩んだ結果、外需寄与度がマイナスを記録しました。なお、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比で+0.4%、前期比年率で+1.6%でしたので、ほぼコンセンサス通りの結果と受け止めています。
引用した記事の最後のパラでも注目していますが、デフレ脱却がかなり近づいた結果が示されています。すなわち、季節調整していない原系列の前年同期比で見て、GDPデフレータはまだ▲0.3%の下落とマイナスを示していますが、上のグラフを見ても分かる通り、マイナス幅はかなり縮小していますし、7-9月期には内需デフレータは+0.5%、消費デフレータも+0.3%とプラスに転じました。これは季節調整済みの系列の前期比で見ても同じで、GDPデフレータはマイナスながら、内需デフレータと消費デフレータはともに7-9月期からプラスに転じています。需要項目別デフレータの前年同期比に話を戻すと、7-9月期では住宅デフレータが+3.1%と大きな上昇を示しており、設備デフレータも+0.9%の上昇です。他方、GDPの控除項目である輸入デフレータが+14.2%と大きく上昇しているため、GDPデフレータはマイナスにとどまっていますが、昨夜のエントリーにも書いた通り、衆議院の解散・総選挙から始まった円高是正はそろそろ一巡しますので、輸出入のデフレータが落ち着き始めると内需デフレータに従って、GDPデフレータがプラスに転じるのもそう先の話ではないかもしれません。
先行きについては私自身はかなり楽観しています。海外経済は中国を始めとして現在の停滞を脱する動きがありますし、国内要因としては今冬のボーナスは増加すると予想されていますし、さらに、来年2014年1-3月期までは消費税率引上げ前の駆込み需要が見込めます。問題はその消費税率引上げ後の落ち込みをいかにカバーするかです。
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