OECD 経済見通し Economic Outlook No.94 は世界経済の順調な回復を見込む!
昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し」 OECD Economic Outlook No.94 が公表されています。我が国の成長率は今年2013年こそ5月時点の+1.6%から+1.8%に引き上げられましたが、2014年+1.5%(5月時点では+1.4%)、2015年+1.0%と成長が鈍化する見通しとなっています。まず、プレス向けのプレゼン資料から Key Messages を6点引用すると以下の通りです。読めば明らかですが、最後の6点目が日本に対するメッセージとなっています。
Key Messages
- Global growth should pick up if major risks do not materialise.
- Downside risks prevail. Negative spillovers from emerging economies could be stronger than before.
- Emerging economies need to address vulnerabilities to improve resilience and tackle the slowdown in potential growth.
- The United States should avoid fiscal brinkmanship.
- The euro area must repair the banking system and rebalance demand to reduce unemployment.
- In Japan, all three "arrows" of the government's strategy should be implemented fully.
今夜のエントリーでは、上の Key Messages を引用したプレス向けのプレゼン資料と同じくプレス発表時の配布資料、さらに、一応、全文リポートはpdfで入手したんですが、一般に公開されているリポートの第1章 General Assessment of the Current Economic Situation などから図表を引用して、簡単にこの国際機関の経済見通しを紹介しておきたいと思います。
まず、上の表は、リポートの第1章 General Assessment of the Current Economic Situation p.12 Table 1.1. The global recovery will gain momentum only slowly を引用しています。成長率の総括表を画像に落としたんですが、クリックするともう少し詳しい総括表のpdfファイル、すなわち、プレス発表時の配布資料の p.3 Summary of projections が別タブで開きます。国や地域別に見た大きな特徴は、新興国や途上国を含む世界経済全体も、先進国で構成されるOECD加盟国も、非OECD諸国も、そして、米国も、成長率に関しては2013年を底に2014-15年にかけて成長が加速するシナリオとなっている一方で、日本だけが2013-14年はともに、今年5月時点の経済見通しから上方修正されているとはいえ、2013年をピークに2014-15年にかけて成長率が鈍化すると見込まれていることです。欧州も成長率の底が2013年ではなく2012年となっている違いはあるものの、2014-15年にかけて成長が加速する見通しですし、成長率だけでなく、インフレ率も2013年を底に2014-15年にかけて高まると見込まれているにもかかわらず、日本だけが2014年4月と2015年10月に2段階にわたって消費税率が引き上げられるため、この先、成長を鈍化させると予想されています。失業率の低下も来年年央にはストップします。このため、最初に引用した通り、日本に対してはアベノミクスの3本の矢を着実に実行することを求めています。特に、先行きリスクについては、リポートの第1章 General Assessment of the Current Economic Situation の p.44 において、ユーロ圏諸国の銀行部門の脆弱性と日本の財政のサステイナビリティ "the fragility of the euro area banking sector and the unsustainability of the Japanese fiscal situation" と名指しで指摘されています。まあ、日本のエコノミストから見ればやや暗い雰囲気がないでもないんですが、全体的には世界経済の着実な回復・拡大を見込んでいると受け止めています。

そして、今回の経済見通しのひとつの特徴は、従来にもまして新興国の経済見通しを幅広く取り入れて、しかも、前回の5月時点の経済見通しから新興国の成長パスが下振れした点を重視しています。上のグラフはプレス向けのプレゼン資料の p.5 Comparison of growth projections from May and November Economic Outlooks を引用しています。実はこのグラフの横にはOECD加盟国の同様のグラフがあって、2014年までほとんど5月時点の見通しと同じパスが描かれているんですが、新興国の代表であるBRICSについては、見ての通り、今年2013年に成長率が鈍化しています。来年2014年には成長率が高まるものの、5月時点の見通しほどには回復せず、+6%を下回ると見込まれています。ただし、この新興国の成長率の下振れの主因は中国ではありません。もっとも、中国もニュートラルなマクロ経済政策を採用しており、成長率のピークは2014年になると示唆されています。
国別のより詳細な見通しは上のフラッシュで紹介されています。これも OECD のサイトから直リンしていたりします。また、Statistical Annex としてpdfファイルにより、国別のGDP成長率、消費伸び率、投資伸び率、需給ギャップ、GDPデフレータ変化率、消費者物価上昇率、失業率、長短金利、一般政府バランス、政府債務GDP比、経常収支などが、一部に四半期データも含めて提供されています。

最後に、国際機関の経済見通しから我が国の貿易に目を転じて、本日、財務省から10月の貿易統計が発表されています。いつものグラフは上の通りです。統計のヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+18.6%増の6兆1045億円、輸入も+26.1%増の7兆1952億円、差し引き貿易収支は▲1兆907億円の赤字となりました。輸出は自動車などが好調で増加していますが、輸入は原粗油、液化天然ガスなどの増加で輸出以上に増加し、貿易赤字は拡大しています。
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