企業向けサービス価格の上昇はホントに人件費の転嫁なのか?
本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されています。総平均指数は96.2で前年同月比上昇率が+0.8%、変動の大きい国際運輸を除く総平均で定義されるコアCSPIも95.7の+0.3%となりました。それぞれ、前月よりも上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10月の企業向けサービス価格0.8%上昇
日銀が26日発表した10月の企業向けサービス価格指数の総平均(2005年平均=100)は96.2となり、前年同月比で0.8%上昇した。プラスは6カ月連続で、伸び幅は08年9月以来の大きさとなった。一部の業種で人件費などを価格に転嫁する動きがみられた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引される価格水準を示す。調査対象の137品目のうち、上昇は51品目、下落は44品目だった。3カ月連続で上昇品目数が下落を上回った。
業種別にみると、機械修理で受注先の収益改善に伴い、備品や工具、人件費の値上がりを価格に転嫁する動きがあった。プラントエンジニアリングでも受注が増え、人件費の価格転嫁がみられた。日銀は「企業のサービス関連支出に明るさが出ている」(物価統計課)とみている。
一方、外航貨物輸送や国際航空貨物輸送など運輸は前年比の伸びが縮小し、総平均を下押しした。燃料安や10月にやや円高・ドル安が進んだことが響いた。
続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価 (CSPI) 上昇率とともに、企業物価 (CGPI) 上昇率もプロットしています。なお、影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は昨年2013年11月だったと仮置きしています。

引用した日経新聞の記事の3パラ目に、人件費の価格転嫁の動きがいくつかの業種で始まっているかのような表現がありますが、ホントならばとても望ましい動きと私は考えています。しかし、ウワサ話としてはともかく統計的に賃金の上昇がまだ確認できませんので、人件費の値上がりを価格に転嫁という製品・サービズ価格引上げの理由は怪しいとも考えられます。今日発表の企業向けサービス価格の動向は、基本的には、物価が上昇してデフレ脱却が進んでいるわけですから、歓迎すべき動きと私は受け止めていますが、まったく賃上げをせずに労働条件ばかり厳しくする「ブラック企業」が需給ギャップの改善を受けて人件費を口実に製品やサービスの価格を値上げする動きには注意が必要そうな気がします。製品やサービスを値上げする際には、そのバックグラウンドに賃上げがあるかどうかについて、企業サイドに情報提供を求めるなどのチェック体制の強化が消費者や雇用者のサイドに求められているのかもしれません。
最後に、何度も繰り返していますが、昨年のミニ・リセッションを終えて、アベノミクスによる株価や企業業績の改善に対して賃金や労働条件が追いつかないのは、とても憂慮すべきであると私は考えています。特に、企業業績に見合ってボーナスが増えるのは、製品・サービス価格の引上げの理由にはならないと考えるべきです。
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