今冬のボーナスは増えるのか?
一昨日にみずほ総研が最後にリポートを発表して、いつものシンクタンク4社から年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因ですので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、日本総研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングについては国家公務員となっています。
機関名 | 民間企業 (伸び率) | 公務員 (伸び率) | ヘッドライン |
日本総研 | 36.8万円 (+0.7%) | 57.0万円 (+0.9%) | 今冬の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+0.7%と年末賞与としては5年ぶりのプラスに転じる見込み。 背景には、円安の動きなどを受けた2013年度上期の企業収益の持ち直し。加えて、デフレ脱却に向け、労使ともに徐々に高まりつつある賃上げ機運の盛り上がりも賞与押し上げに作用。もっとも、円安効果、株高や消費者マインドの改善を背景とした消費持ち直しのプラス効果は一部の製造業大企業等に限られるため、全体としてのプラス幅は限定的。賞与額のベースとなる所定内給与の減少傾向が続いていることもマイナスに作用。 |
みずほ総研 | 36.9万円 (+0.9%) | 69.8万円 (▲0.8%) | 2013年冬の1人当りボーナス支給額(民間企業)は前年比+0.9%と5年ぶりに増加する見通し、円安や輸出・国内需要の回復を背景とした2013年度上期の企業収益改善が主因。 |
第一生命経済研 | 37.1万円 (+1.5%) | n.a. (+1.1%) | 民間企業の2013年冬のボーナス支給額を前年比+1.5%(支給額: 37万1千円)と予測する。2013年夏のボーナスは前年比+0.3%と微増にとどまったが、冬は伸び率が高まり、ボーナスの改善が明確化するだろう。昨年末以降の景気回復と円安による企業収益の大幅増や、企業の景況感改善などが背景にある。賃金は未だ増加トレンドに入っていないが、冬のボーナスが上向くことで、徐々に明るさが増してくると予想される。ボーナスの増加による、家計のマインド面でのプラス効果も期待できる。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 36.8万円 (+0.5%) | 57.4万円 (+1.5%) | 2013年冬のボーナスは5年ぶりに増加に転じると予測する。民間企業(パートタイム労働者を含む)の一人当たり平均支給額は367,500円(前年比+0.5%)と、増加幅は夏のボーナスと比べるとやや拡大するものの小幅にとどまり、リーマン・ショック後に大きく切り下がった水準から十分に回復することはないだろう。産業別では製造業、非製造業とも小幅ながらも増加に転じるとみられる。 ボーナスの支給は中小企業にも広がり、支給労働者割合は上昇すると見込まれる。さらに、雇用環境の改善もあって、支給労働者数は3,889万人(前年比+0.7%)へと増加するだろう。一人当たり平均支給額と支給労働者数がともに増加するため、支給総額は14.3兆円(前年比+1.2%)と増加するとみられる。 |
夏季ボーナスについては、厚生労働省の毎月勤労統計において去る10月31日に発表されており、前年比で+0.3%増という低い伸びにとどまりました。同日付けのこのブログのエントリーで「ここまで夏季ボーナスが吝かったとは私の予想外」と嘆いたところです。冬のボーナスについても、引き続き吝くて、例えば、下のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから引用していますが、上のヘッドラインにも採用した通り、「増加幅は夏のボーナスと比べるとやや拡大するものの小幅にとどまり、リーマン・ショック後に大きく切り下がった水準から十分に回復することはない」ということになります。ただし、支給対象者が増加することから、支給総額は1人当たり支給額以上に増加し、マクロの消費への押上げ効果は支給額に見える伸び率以上に大きいと考えています。

10月31日付けのエントリーでも主張しましたが、株価や企業業績と比較して賃金上昇や正規雇用の広がりなどの雇用条件の改善がひどく立ち遅れているように私には見えます。しかも、この上、来年4月からの消費税率引上げが決まっているにもかかわらず、企業への法人税率の引下げや解雇条件の緩和などの企業優遇政策が目白押しで検討されようとしています。アベノミクスの第1の矢の金融緩和はとてもいいマクロ経済政策なんですが、雇用や企業を対象にしたマイクロな経済政策の方向性に少し疑問が残ります。
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