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2013年12月18日 (水)

貿易赤字は来年1-3月期まで拡大し続け、年央から縮小に向かう可能性

本日、霞が関に雨が降り出す前の午前中だったと思うんですが、財務省から11月の貿易統計が発表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+18.4%増の5兆9005億円、輸入額は+21.1%増の7兆1933億円、差引き貿易収支は▲1兆2929億円の赤字を記録しました。輸出は伸びていますが、輸入がそれ以上に爆発して貿易収支が赤字になっている、というのが現状です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下のとおりです。

11月の貿易赤字、過去3番目の大きさ 13年は過去最大更新へ
財務省が18日発表した11月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆2929億円の赤字だった。赤字額は11月としては2012年(9570億円の赤字)を上回り、比較できる1979年以降で最大。単月としても過去3番目の大きさで、赤字額は初めて2カ月連続で1兆円を上回った。赤字は17カ月連続で9月以降、最長を更新し続けている。為替相場の円安進行を背景に原粗油などの燃料の輸入額が膨らんだ。航空機の輸入額も増えた。
13年1-11月の貿易赤字額は累計で10兆1672億円となる。今年は9月までの赤字額累計が7兆7816億円とすでに12年年間の6兆9410億円を上回っていたが、その後さらに赤字が膨らんだ。13年は年間で過去最大の貿易赤字になることがほぼ確実な情勢になった。
11月の輸入額は前年同月比21.1%増の7兆1933億円で、13カ月連続で増えた。アラブ首長国連邦(UAE)からの原粗油やマレーシアからの液化天然ガス(LNG)、米国からの大型航空機の輸入が増えた。
輸出額は18.4%増の5兆9005億円で9カ月連続で増えた。輸出数量指数は6.1%増と2カ月連続で増加。輸出額は米国向け自動車や、オーストラリア向けの軽油、中国向けにペットボトル原料になる有機化合物が増えた。中国向け輸出額は、前年に尖閣諸島を巡る対立で落ち込んだ自動車や同部品も伸びて33.1%増となり、10年4月(41.3%増)以来の高い伸び率になった。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=98円43銭で、前年同月比23.3%の円安だった。
貿易収支を地域別にみると、対中国は5371億円の赤字で、21カ月連続で赤字だった。中国からの輸入額は過去2番目に大きかった。対欧州連合(EU)も660億円の赤字で、11カ月連続の赤字。一方、対米国の貿易黒字は前年同月比6.7%増の4841億円で、11カ月連続で増えた。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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私が注目している下のパネルの季節調整済みの系列を見ると、震災直後の2011年央から最近時点まで、傾向的に貿易赤字が拡大しているのが見て取れます。特に、11月の統計に代表されるように、為替相場の円安も含めて鉱物性燃料の輸入額が増加を続けています。特に、原粗油と液化天然ガス(LNG)です。他方、円安は輸出額の増加にも寄与しており、自動車などの我が国が比較優位を有している製品の輸出額は増加を続けています。我が国の貿易構造を極めて極端に表現すれば、その昔は、生糸を輸出してコメを輸入する、というパターンだったんですが、現在では、クルマを輸出して原油を輸入する、というパターンとなっているだけともいえます。クルマが商品市況に左右されない製品であるほかは、生糸もコメも原油も商品市況に一定の影響を受けますから、現時点のように為替の減価と商品市況の高止まりが続けば、価格要因から貿易収支が赤字になる確率は高いと私は受け止めています。さらに、来年4月からの消費税率引上げを前に駆込み需要が高まれば、価格要因だけでなく所得要因からも貿易赤字が拡大する可能性が高いと考えるべきです。ただし、地域別に見て、対米国では貿易黒字、対欧州と対アジア、特に対中国では貿易赤字ですから、アベノミクスや消費税率引上げ前の駆込み需要でそこそこ景気のいい我が国に対比して、景気の相対的な回復・拡大度合いの差が所得要因として出ているわけです。従って、来年の年央から夏にかけて、我が国では消費税前の駆込み需要の反動減が出る一方で、欧州や中国の景気回復・拡大が進展を見せれば、そろそろJカーブ効果の終了も視野に入りますから、貿易赤字は来年年央ころから縮小に向かう可能性があります。ただし、その前の来年1-3月期まではほぼ確実に貿易赤字は拡大すると私は考えています。

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貿易赤字は来年1-3月期まで拡大する可能性が大きい一方で、輸出も着実に伸びています。上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額の前年同月比伸び率を数量と価格で寄与度分解しています。下のパネルは我が国の輸出数量とOECDの先行指数のそれぞれの前年同月比伸び率をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。上のパネルを見れば、10月からようやく輸出数量の伸びがプラスに転じたことが読み取れます。それまでは、為替の円安に起因する価格要因から輸出額が伸びていましたが、ようやく輸出数量の伸びも見られるようになったわけです。さらに、下のパネルではOECD先行指標と輸出数量のそれぞれの伸び率の差が小さくなっているのが見て取れます。この差は主として2つの要因から生じており、価格要因は為替から、所得要因はOECDに加盟していない中国から生じていると私は考えていますが、円高修正の始まりから1年を経て為替によるJカーブ効果が解消されつつあり、さらに、中国の景気がOECDに追いつきつつある、のであれば、この先、我が国の輸出は伸びを高めると期待できます。

いつもの私の主張ですが、貿易収支の一方の側にある輸入は、生産や国民生活に必要な財・サービスを外国からの供給に頼るわけですから、ムダを廃しつつも必要なだけ輸入することが望ましく、その分をせっせと輸出すればいいわけですが、その輸入するための輸出の伸びも高まりつつあります。貿易赤字の拡大を過度に悲観する必要はありません。

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