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2013年12月13日 (金)

日銀短観12月調査で示される企業マインドはさらに上昇するのか?

来週月曜日12月16日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと大企業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は2013年度、すなわち、今年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。いつもの通り、先行きに関する見通しを可能な範囲で取りました。ただし、今回は私が注目する設備投資計画にも目を配りました。もともと先行き判断や設備投資計画を含む調査ですから、先行きにせよ設備投資にせよ、何らかの言及があるリポートが多かったような気がします。ただし、長くなりそうな場合はこの統計のヘッドラインとなる大企業製造業だけにした場合もあります。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
9月調査 (先行き)+11
+12
<+5.1>
n.a.
日本総研+15
+19
<+5.9>
先行き(2014年3月調査)は、全規模・全産業で12月調査対比+2%ポイントの9%ポイントと予想。消費増税前の駆け込みや輸出の回復が後押しする見通し。
大和総研+14
+15
<+5.7>
先行きに関しては、海外の景気動向と、2014年4月に予定されている消費税増税の影響が焦点になるだろう。海外経済の回復を背景に、輸出企業を中心に業況感の改善が見込まれることに加えて、駆け込み需要の発現により対家計サービス業などでは業況感が改善する見込みである。ただし、4月以降反動減が生じた際には、業況感も悪化することは避けられないため、一時的な改善であることに注意が必要である。
みずほ総研+14
+15
<+5.3>
(大企業製造業) 先行きは、輸出の回復に加えて、消費増税前の駆け込み需要がピークとなることから自動車や民生用電気機械を中心に改善が続く見込みである。
(大企業非製造業) 先行きは、駆け込み需要による大幅な押し上げが予想される小売業を中心に、改善が続く見通しである。
ニッセイ基礎研+14
+15
<+5.7>
先行きについても、米経済の堅調な回復が期待されるうえ、消費増税前の駆け込み需要がピークを迎えるため、全体的に明るさが示されそうだ。大・中堅企業では、新興国との関係が薄く、駆け込み需要の影響を受けやすい非製造業の改善幅が製造業を上回ると予想。
今回の最大の注目点は13年度設備投資計画だ。前回調査では前年度比3.3%増と、事前予想を下回る結果であった。また、GDP統計上の設備投資はほぼ横ばいに留まり、本格回復とは言い難い。一方、先行指標とされる機械受注に一部明るさが見える点は設備投資の上振れ期待を抱かせている。アベノミクス開始から約一年が経過し、内需回復や円安定着を受けて企業が慎重姿勢を修正し、上方修正が鮮明化するかが焦点となる。また、賃上げ交渉の山場を来春に控え、その原資となる13年度収益計画の動向も注目材料だ。
伊藤忠商事経済研+14
+16
<+4.7>
先行き判断についても、調査対象時期が、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要が多くの業種で最も膨らむ2014年1-3月期に該当することもあり、更なる改善見通しが示される見込みである。(中略) 12月調査において、大企業の設備投資計画は前年比4.7%(9月調査5.1%)への下方修正を予想する。良好な企業業績を受けて、企業の投資意欲も高まりつつある。しかし、消費税率引き上げ後の需要動向を見極めにくく、また人口減少による労働力不足や長期的な需要の頭打ち、為替変動リスクなどが懸念される国内よりも、海外投資を重視する企業姿勢が製造業と非製造業を問わず強まっており、国内設備投資計画を積み増す可能性は低いと判断される。
第一生命経済研+16
+17
<+4.1>
12月調査ということで特に注目したいのは、企業が2014年4月の消費税増税をそろそろ意識しながら、企業マインドを変化させているかもしれないという点である。例えば、業況判断の先行きDIは2014年3月までを意識して企業が回答することになっている。筆者の予想では、この時点では駆け込み需要による後押しを加味しながら、業況の先行きを現状よりもプラス方向でみていると考える。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+13
+16
<+7.8>
13年度の設備投資計画は、大企業・中小企業ともに上方修正が見込まれる。
三菱総研+14
+16
<n.a.>
先行きの業況判断DI(大企業)は、先進国を中心とする海外経済の持ち直しや増税前の駆け込み需要の本格化などが支援材料となり、製造業は+17%ポイント、非製造業は+20%ポイントと引き続き改善を見込む。また、国内需要の堅調は中堅、中小企業にも波及するとみられ、中小企業・非製造業では、1991年12月調査以来のプラスDIを見込む。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+15
+15
<+4.7>
2013年度の設備投資計画(含む土地・除くソフトウェア)は、大企業製造業では下方修正される可能性があるが、非製造業ではやや上方修正され、ともに2年連続で増加する見込みである。また、中小企業では、計画が固まるにつれて例年通り上方修正され、非製造業も増加に転じるだろう。
富士通総研+16
+16
<+4.8>
先行きについては、輸出の持ち直しや消費の駆け込み需要の本格化などにより、引き続き改善すると予想される。(中略) 企業収益の改善を背景に、製造業、非製造業とも投資意欲が高まりやすい環境にはある。しかし、為替が円安方向に修正されても、製造業の設備投資の国内回帰の動きはごく一部にとどまっている。また、世界経済持ち直しのテンポが緩やかなことも企業の投資意欲に影を落としており、設備投資の回復力はまだ強いとはいえない状況にある。当面は生産能力の拡大は手控えられ、ビンテージが高くなった設備の更新が中心になっていくと考えられる。

まず、足元12月の景況判断DIについては、ほぼ、9月調査から企業マインドがわずかなりとも改善しているとのコンセンサスが広くエコノミストの間で存在します。また、目先の先行き、すなわち、次回の3月調査に関しても同様です。ですから、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは大企業製造業の業況判断DIで見て、9月調査の+12から12月調査では+15、さらに、先行きは+17と改善が続く見込みが示されています。ただし、大和総研のヘッドラインでハイライトしておいたように、短観3月調査の直後の4月には消費税率の引上げが実施されますから、3月調査の短観で企業マインドが改善したとしても一時的な効果にとどまる可能性が大きいと覚悟すべきです。下のグラフは、多くのエコノミストのコンセンサスに近い一例として、日本総研のリポートから業況判断DIの推移を引用しています。グラフの通りに3月まではいいんですが、景況感が4月以降にどのようになるかが懸念材料です。

photo

次に、設備投資計画は見方が分かれました。日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは前年比で+5.3%増と、9月調査の+5.1%増から上方修正されると見込んでいますが、予測レンジが+4.1%から+6.4%ですので、下方修正の可能性を全面に打ち出すエコノミストもいます。実は、私もその1人です。上のテーブルに取り上げた10機関のうち、設備投資計画の予想を示していない三菱総研を除く9機関の中で、上方修正を予測する機関が5機関、下方修正が4機関となっています。典型的にはハイライトした伊藤忠経済研のように、今後は国内需要の減退や為替リスクを理由に国内投資よりも海外投資を重視する企業が増える可能性を指摘する意見も無視できません。企業マインドのうち先行きの業績に対する期待は雇用と設備の要素需要に強く現れると覚悟すべきです。下のグラフはテーブルに示した大企業ではなく全規模全産業なんですが、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

photo

今週のエントリーでは、月曜日にGDP統計の2次QEを取り上げた後、火曜日に法人企業景気予測調査に着目し、さらに、水曜日には機械受注に焦点を当てました。そこでも書きましたから繰返しになりますが、この先、設備投資が爆発するとは考えにくく、9月の日銀短観の設備投資計画は12月調査ではなくても、この先の3月調査も含めて、下方修正される可能性の方が大きいと私は考えています。

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