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2013年12月 9日 (月)

成長率が失速した2次QEの結果は景気の現状や先行き判断に影響を及ぼすか?

本日、内閣府から7-9月期GDP統計速報改定値、いわゆる2次QEが発表されています。実質成長率は1次QEの季節調整済み前期比+0.5%、年率+1.9%から+0.3%、年率+1.1%に下方修正されました。日経QUICKによる市場の事前コンセンサスが+0.4%でしたので、やや下回ったことになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月の実質GDP改定値、年率1.1%増に下方修正
設備投資が振るわず

内閣府が9日発表した2013年7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.1%増となった。11月公表の速報値(0.5%増、年率1.9%増)から小幅に下方修正した。民間在庫や設備投資が速報値を下回ったため。速報値でプラスだった設備投資は改定値で横ばいに転じた。一方、個人消費は速報値を上回った。
改定値は、速報値の公表後に明らかになった法人企業統計などのデータを使って推計し直した。民間調査機関の平均値(年率1.6%増)を下回った。
生活の実感に近い名目GDPは前期比0.3%増、年率1.0%増となった。速報値の0.4%増、年率1.6%増を下回った。
実質GDPを項目別にみると、民間投資在庫が速報値より減ったことが最大の押し下げ要因となった。消費増税を控えた駆け込み需要を背景に、メーカーが製造中の仕掛かり品在庫や製品の在庫を増やす一方、販売の増加で流通在庫や原材料の在庫が減少したためだ。
設備投資は0.0%と、速報値の0.2%増を下回った。法人企業統計の発表によれば、好調だった非製造業などの投資が前期に比べて鈍っている。一方、個人消費は0.2%増と、速報値(0.1%増)に比べて0.1ポイント上方修正した。
JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「今回の下方修正の背景にあるのは、消費の伸びを背景とした在庫の増加幅の縮小であり、悪い現象ではない。10-12月期以降は消費増税前の駆け込み需要などにより、再び4%近い高成長に復帰する」と見ている。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前期比マイナス0.0%と、速報値(マイナス0.1%)から上方修正した。名目値が実質値を下回り、デフレの象徴とされる「名実逆転」は解消していないものの、改善の兆しも見られる。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2012/7-92012/10-122013/1-32013/4-62012/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.8+0.1+1.1+0.9+0.5+0.3
民間消費▲0.5+0.6+1.0+0.7+0.1+0.2
民間住宅+1.1+3.1+2.2+0.3+2.7+2.6
民間設備▲2.1▲0.6▲1.0+0.9+0.2+0.0
民間在庫 *+0.3▲0.3+0.0▲0.2+0.4+0.2
公的需要+0.0+1.0+0.7+1.7+1.6+1.4
内需寄与度 *▲0.3+0.3+0.7+0.7+0.9+0.7
外需寄与度 *▲0.5▲0.1+0.4+0.1▲0.5▲0.5
輸出▲3.8▲3.0+3.9+2.9▲0.6▲0.6
輸入▲0.4▲1.7+1.0+1.7+2.2+2.2
国内総所得 (GDI)▲0.5+0.2+0.7+0.9+0.3+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.4+0.2+0.7+1.7+0.0▲0.2
名目GDP▲1.0+0.2+0.7+0.9+0.4+0.3
雇用者報酬+1.1▲0.4+0.5+0.3▲0.6▲0.6
GDPデフレータ▲0.8▲0.7▲1.1▲0.5▲0.3▲0.3
内需デフレータ▲0.9▲0.8▲0.8▲0.3+0.5+0.4

テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対する寄与度であり、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは、前期比成長率が小幅ながらプラスであり、黒の外需がマイナス寄与を示した一方で、黄色の公的需要がプラスに牽引したのが見て取れます。1次QEの際と同じ見方なんですが、成長率が減速したのは外需が足を引っ張った結果と言えます。

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ほぼ、12月5日付けのエントリーで取り上げた2次QE予想に沿った結果だと受け止めています。12月5日のエントリーでは設備投資と在庫投資が下方修正される一方で、公共投資が上方修正されるものの、全体として下方修正と見込んだんですが、公的需要も下方修正されたため全体として下方修正の度合いが大きくなったわけです。基本的に、現時点における足元の景気判断に修正をもたらす内容ではないと考えるべきです。目先の先行きについても、引用した日経新聞の記事にもある通り、年度後半、すなわち、足元の10-12月期と来年早々の1-3月期については、来年2014年4月1日からの消費税率引上げ直前の駆込み需要が出ることもあり、年率で3-4%くらいの高成長が見込めます。もちろん、4-6月期にはこれらの駆込み需要の反動が出ます。当然です。

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先月発表された1次QEの際にはデフレータの前年同月比が、消費デフレータと国内需要デフレータについてプラスに転じたグラフをお示ししましたが、基本は変わりありません。2次QEでは上の通り財別消費に注目しました。消費を耐久財、半耐久財、非耐久財、サービスに分割して、それぞれの前期比伸び率をプロットしています。今年に入ってからの3四半期は耐久財消費が伸びていることが読み取れます。もちろん、現時点では、従来の伸びに比較して特に高いとはいえません。しかし、来年4月からの消費税率引上げが決まったのはつい最近なんですが、国民の消費行動はこの消費税率引上げを先取りしていて、すでに耐久財の駆込み需要が生じていることを示唆していると私は受け止めています。いうまでもなく、来年1-3月期は耐久財にとどまらず、半耐久財・非耐久財やサービスも含めて消費が大きく伸び、4-6月期にはガタンと落ちる、というシナリオは容易に想像できます。

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2次QEのほかにも、今日は財務省から10月の経常収支が、また、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーだけは上の通りグラフを書きました。統計作成官庁の内閣府では基調判断を前月の「着実に持ち直している」から「緩やかに回復しつつある」に上方修正しています。

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