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2013年12月12日 (木)

社会保障費用統計に見る高齢の引退世代への破格の優遇を民主主義でいかに是正するべきか?

やや旧聞に属する話題ですが、先週金曜日12月6日に社会保障・人口問題研究所から平成23年度社会保障費用統計が公表されています。経済指標発表のタイミングが微妙で、少し取り上げるのが遅れました。年金や医療、介護などにかかった社会保障給付費が2011年度は前年度比+2.7%増の107兆4950億円に上ったと算出されています。もちろん、我が国経済社会の高齢化の伴う増加は決して無視できませんが、2011年3月の震災の影響も含まれています。すなわち、全部ではないんですが、震災に伴う災害救助などの支出も含まれた数字となっています。
全体の合計で見て、自己負担分を除いた社会保障給付費が国民所得に占める割合は31%に上り、国民1人当たりでは84万1100円を記録し、前の年度に比べて2.9%、金額で2万3700円増加し、いずれも過去最高となっています。107兆円余の社会保障給付のほぼ半分の53兆623億円を年金が占め、前年度比でも+0.2%の伸びを示しています。特に、我が国の場合は高齢の引退世代への社会保障給付が国際的に見て突出しており、この統計の対象となった2011年度は民主党政権下で子ども手当が給付され、それなりに勤労世代や家族向けの社会保障給付も充実しましたが、高齢の引退世代向けの給付が圧倒的です。もう、毎年のように書き続けてきたグラフですが、今年もOECD基準に従った国際比較をグラフで示しておきます。バックデータは「平成23年度社会保障費用統計」のリポートの pp.36-37 第6表と第7表 政策分野別社会支出の国際比較 であり、私の方で棒グラフを書いています。

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上のパネルは社会支出全体を100%としたシェア、すなわち、高齢向けと家族向けのそれぞれのシェアを示しており、下のパネルは同じく高齢向けと家族向けの社会保障支出のGDP比をプロットしています。国名の後のカッコ内は統計を取った財政年度で、なぜか、スウェーデンだけ出ていませんが2009年度です。見れば分かりますが、下のパネルは国民経済の大きさという身の丈に見合った政策別の社会支出かどうかを見ることが出来ます。いずれのグラフからも、我が国の財政が大赤字を出しながら高齢の引退世代向けには大盤振舞いをしている姿が浮彫りになっています。特に下のパネルの高齢向けと家族向けのGDP比を見れば、我が国の家族向けの社会保障支出は民主党政権下で子ども手当を支給していたころでさえ米国に次ぐお粗末な水準であった一方で、フランスほどではないものの、日本は大赤字の財政にもかかわらず、北欧の高福祉国スウェーデンを上回るような高齢向け社会保障支出を実現している点が突出しています。投票行動に基づくシルバー・デモクラシーにより歪められた社会保障の姿を垣間見ることが出来ます。

去る10月26日付けのエントリーで小峰隆夫『日本経済論の罪と罰』を取り上げた際、第7章 「民意に従う財政再建」はあり得ない は秀逸と指摘し、財政再建に反する方向にバイアスのかかる投票結果にもかかわらず、政治レベルでなすべきことをなす、という、間接民主主義の本質を言い当てているのに目から鱗が落ちる思いをしましたが、シルバー・デモクラシーについても代議制の間接民主主義による投票結果のバイアスの除去や修正に期待したいと思います。

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