2013年の家計消費は資産効果で高齢者が支える!
昨日、総務省統計局から家計調査の2013年結果が公表されています。このブログでは消費については経済産業省の商業販売統計を熱心に取り上げているんですが、販売サイドの統計ですので購入者から見た消費については家計調査の方がより詳しい分析が可能です。でも、家計調査は毎月の振れの激しい統計ですので少し信頼性に乏しく、逆に、年統計であれば詳細な集計も強みを発揮します。ということで、今夜の記事では家計調査の2013年結果について簡単に取り上げておきたいと思います。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
実質消費支出1.1%増 13年家計調査、6年ぶり伸び率
総務省が18日発表した2013年平均の家計調査によると、総世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年に比べて1.1%増えた。2年続けて増え、07年(1.2%増)以来、6年ぶりの大きな伸びだった。株価の上昇で資産価格が上がったことが消費者心理を明るくし、高齢層による住宅リフォームなどの消費が膨らんだ。
13年の消費は高齢者がけん引した。2人以上の世帯で世帯主の年齢別に見ると、60-69歳の世帯は実質の消費支出が前年比2.7%増。持ち家の比率が高く、住宅の修繕や家具への支出が13.0%も増えた。30歳未満の支出は0.8%減だったことと比べ、資産を多く持つことが多い高齢層が消費に前向きだった。
総世帯の支出は食料が実質1.6%増と大きく伸びた。13年中は景気が回復し、消費者が少しぜいたくな消費に傾いている。代表例の外食は前年比2.7%増。肉類への支出は5.0%増えた。5.8%増えた交通には鉄道や航空の運賃が含まれ、旅行への支出の拡大がうかがえる。
所得環境はあまり良くなかった。総世帯のうち勤労者世帯で見た13年の実収入は実質で前年比0.3%減。名目は0.2%増えたが、消費者物価が上がったため手取りの収入は減った。13年は所得がなかなか伸びない中で、株価の上昇で恩恵を受けた個人などが消費を引っ張る形だった。
物価が上がる中で、総世帯の電気代は実質で前年比2.1%減った。猛暑だった夏場を除くと使用量が前年を下回った月が多く、家計は節約志向を強めた。
統計のヘッドラインについては引用した記事にお任せして、私なりに2013年の消費の特徴を簡単に指摘すると、まず第1に、引用した記事とは異なり、所得環境はまずまずよかった、第2に、記事の指摘通りに、高齢者が消費を牽引した、第3に、消費税率引上げ前に消費性向が上昇する形で、決してサステイナブルでない消費が増加している可能性がある、の3点が重要と考えています。
まず、上のグラフはリポートの p.11 図Ⅰ-2-2 を引用しています。2人以上世帯のうちの勤労者世帯の勤め先収入だけなんですが、2012年10-12月期にミニ・リセッションを終えて、2013年の勤め先からの収入に基づく所得環境は決して悪くなかったと考えるべきです。グラフを見れば理解できると思います。確かに、消費者物価の上昇を考慮した実質所得は減少したかもしれませんが、生活実感に近い名目所得は増加しています。リフレ政策の効果と受け止めています。
次に、上のグラフはリポートの p.23 図Ⅱ-1-2 を引用しています。30代と40代で逆転していますが、それを別にすれば、所得の伸びは若い世代の方が大きい一方で、消費の伸びは年齢が高くなるに従って大きくなっています。引用した記事にもある通り、資産効果が現れている可能性が示唆されていると私は受け止めています。これも、リフレ政策に基づくアベノミクスの政策効果のひとつであろうと思います。また、この結果、年齢が高くなるほど消費性向が高まっていることが容易に想像できます。ですから、図表は引用しませんが、リポートの p.18 図Ⅰ-2-8 では2013年の平均消費性向が2012年よりも高まっていることが見て取れますし、リポートの p.32 図Ⅱ-4-2 では高齢無職世帯の平均消費性向が特に上昇しているのが観察されます。おそらく、この消費性向の上昇に起因する消費拡大の一因は4月からの消費税率引上げを前にした駆込み需要にあり、決してサステイナブルではありません。必ず反動減があります。
家計調査という統計は、毎月は振れが大きくて決して注目しない統計なんですが、実に細かい結果を公表しており、ある程度アグリゲートした結果には興味をそそられます。消費については毎月は販売側の所業販売統計で把握するべきですが、時折、購買側の家計調査も取り上げたいと思います。
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