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2014年2月 5日 (水)

毎月勤労統計と雇用者のお給料と企業家のアニマル・スピリット

本日、厚生労働省から12月の毎月勤労統計が発表されています。ヘッドラインとなる製造業の所定外労働時間が増産により季節調整済みの系列で前月比+0.5%増加し、残業が増加した影響で賃金給与総額は前年同月比で+0.8%増の544,836円と2か月連続でプラスを記録たものの、所定内給与は▲0.2%減で長らく前年同月比マイナスを続けています。まず、統計について報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

現金給与総額、最低水準で横ばい 13年31万4150円
12月は0.8%増

厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、残業代やボーナスを含めた2013年の従業員1人当たり現金給与総額(月平均)は31万4150円で、現行の調査方法になった1990年以降で最低だった12年と同水準だった。景気回復を背景に残業代やボーナスが増えたが、賃金水準の低いパートタイム労働者の比率が高まり、全体を押し下げた。現金給与総額が横ばいで、物価が上昇したため、物価変動の影響を考慮した「実質賃金」は0.5%減った。
調査は従業員5人以上の約3万3000事業所が対象で、現金給与総額はピークだった97年の37万1670円を5万7520円下回った。
現金給与総額を就業形態別でみると、正社員などフルタイムで働く一般労働者は40万4743円で前年比0.7%増えた。一方、パートは9万6630円と0.6%減った。労働者全体に占めるパートの割合は0.6%増の29.4%で過去最高を更新した。
ボーナスなど特別に支払われた給与は企業収益の改善から2.1%増の5万3715円と2年ぶりに増えた。一方、基本給や家族手当などの所定内給与は0.6%減の24万1338円と8年連続で減った。
併せて発表した13年12月の現金給与総額は前年同月比0.8%増の54万4836円と2カ月連続で増加した。所定内給与は0.2%減ったが、冬のボーナスなど特別に支払われた給与が1.4%増え、所定外給与も4.6%増えた。製造業の所定外労働時間は12.8%増えた。

2013年を通じた年次統計にやや偏った印象はあるものの、いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下は製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。賃金は凡例の通り現金給与総額と所定内給与です。影をつけた期間は景気後退期であり、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月と仮置きしています。

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12月統計の大雑把な印象は、上のグラフの通り、景気に敏感な所定外労働時間が着実に増加し、ボーナスなども含めた現金給与総額は11月からプラスに転じた一方で、所定内賃金は長らく前年同月比でマイナスを続けています。もっとも、そのマイナス幅は縮小に向かっているように見えます。しかし、上昇している現金給与総額についても、消費者物価が前年同月比で+1.0%超のインフレの達しているわけですから、物価でデフレートした実質賃金はマイナスです。
アベノミクスによる脱デフレ戦略に添って雇用と賃金の動向を考えると、以下の2段階になることが容易に想像できます。すなわち、第1段階で、タイムラグの関係で賃金よりも物価の上昇の方が先行して、まず、実質賃金が低下して量的な雇用の増加が生じます。続いて第2段階で、景気の回復・拡大の効果も合わせて、実質賃金低下に伴う雇用需要の増加から労働需給が引き締まって、質的に賃金が上昇したり、良質な正規雇用が増加する、ということになります。今日発表されたのは12月統計ですから、ほぼ1年を経過したアベノミクスに従って、量的な労働需要増の第1段階から質的な賃金上昇などが実現される第2段階に差しかかるところ、といえそうです。

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しかし、賃上げに障害となりかねないのが企業経営者です。上の画像は、英国の職業紹介大手のヘイズ日本法人から最発表された「2014年度 ヘイズ給与ガイド - アジア」の p.7 次回の給与改定では何%の昇給が見込まれますか? の結果を引用していますが、給与引上げについては日本の企業がとても渋い態度を示している結果が示されています。もちろん、アジア諸国と比較して成熟した経済で活動する日本企業をアジア新興国の中で比較するのはとても酷なのかもしれませんが、企業家のアニマル・スピリットはどうなっているのでしょうか?
バブル崩壊後の「失われた20年」の間、もちろん、日本経済が大きく停滞した最大の原因は日銀の誤った金融政策にありますが、企業は「成長戦略」という名のターゲティング・ポリシーで政府をキャプチャーしたり、さらに最近では法人税率引下げを求めたり、また、雇用が増加しない原因のひとつを大学生などの求職者の「質の低下」と主張しようとするネガティブ・キャンペーンを張ったりと、政府や雇用者の責任を強調して来たように私は受け止めています。しかし、企業家のアニマル・スピリットの衰えが日本経済の停滞を招いた一因かもしれない、という視点は忘れるべきではありません。特に、雇用ではそうだという気がします。

今日の日経新聞朝刊の1面には「トヨタ、6年ぶり最高益更新へ 14年3月期」とか、「日立、23年ぶり営業最高益 14年3月期」とかの、企業業績が華々しく報じられる一方で、夕刊1面の中ほどに毎月勤労統計について、2013年の「現金給与総額、最低水準で横ばい 13年31万4150円」と報じられています。企業業績が大きく改善された一方で、賃上げについては底ばっている状態であり、企業が潤いながらも雇用者に大きなしわ寄せが続いている事実を認識するべきです。ですから、政府からも「官房長官『ベアが望ましい』 好循環実現へ春季労使交渉に期待」といった発言が飛び出す素地があるわけです。なお、引用元はすべて日経新聞のサイトです。

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