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2014年2月10日 (月)

下降が始まった景気ウォッチャーと消費者態度指数、黒字が縮小して赤字になりそうな経常収支

本日、内閣府から景気ウォッチャー調査と消費者態度指数が、また、財務省から経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーと消費者態度指数は今年1月の統計であり、経常収支は昨年12月です。景気ウォッチャーは供給サイドのマインドを、消費者態度指数は需要サイドのマインドをそれぞれ代表する統計であり、いずれも4月からの消費税率引上げを前に急降下を示しています。2013年の経常収支は比較可能な範囲で史上最低の黒字まで縮小しました。最近の12月までの月次統計ではマイナスを記録することもめずらしくありません。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトからそれぞれの統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

1月の街角景気、3カ月ぶり悪化 消費増税控え、反動減に懸念
内閣府が10日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比1.0ポイント低下の54.7となり、3カ月ぶりに悪化した。4月の消費税率の引き上げを前に自動車や家電製品で駆け込み需要がみられる一方で反動減を懸念する声が出た。飲食業など一部の業種では節約の動きがみられた。
家計分野では「常連客の客単価が低下していたり、月曜から水曜にかけて来客数が減っていたりなど、細かく見ると買い控えの動きが始まっているようだ」(北海道の高級レストラン)といった指摘があった。企業分野で「原材料などが7-8%くらい値上がりしており、いまだに価格転嫁できずにいる」(北関東の食品製造業)といった声もあがった。
好不況の分かれ目となる50は12カ月連続で上回っている。内閣府は前月までの「緩やかに回復している」との基調判断を維持した。その上で「ただし、先行きについては、消費税率引き上げ後の需要の反動減などの影響が見込まれる」との文言を付け加えた。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は5.7ポイント低下の49.0と2カ月連続で悪化した。マイナス幅は東日本大震災の起こった2011年3月(20.6ポイント低下)以来の大きさで、指数は12年11月以来14カ月ぶりに50を下回った。
消費増税後に関しては「予想以上に駆け込み需要が大きく、4月以降は反動減で厳しい状況になる」(九州の自動車販売店)、「消費増税による国内消費の落ち込みと、中国経済の成長鈍化を受けて円高が進行し、輸出にも影響が出るおそれがある」(中国の鉄鋼業)といったコメントがあった。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は91.5%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
消費者態度指数、1年1カ月ぶり低水準 1月40.5
増税後の買い控えにらむ

内閣府が10日発表した1月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.8ポイント低下の40.5となり、2012年12月(39.9)以来1年1カ月ぶりの低水準だった。悪化は2カ月連続。同調査は今後半年間の暮らし向きなどを聞くため、4月の消費増税後に耐久消費財を買い控えようとする心理が働いたことが影響したもよう。内閣府は基調判断を前月の「足踏みがみられる」に据え置いた。
指数を構成する4項目のうち「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」がマイナスだった。「耐久消費財の買い時判断」は4カ月連続で低下し、東日本大震災直後の11年5月以来2年8カ月ぶりの低水準で推移した。「収入の増え方」では所定内給与の減少が響いた。
一方「雇用環境」は3カ月連続で上向いた。13年12月の有効求人倍率が1.03倍と6年3カ月ぶりの高水準だったことなどを映した。
1年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)は1.0ポイント上昇の89.4%と3カ月ぶりに増えた。9割程度の世帯が上昇すると見込んでおり、04年4月以降で最も高かった13年10月(89.5%)に次ぐ高い水準となった。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は1月15日で、有効回答数は5676世帯(回答率67.6%)だった。
13年の経常黒字、最小の3兆3061億円 貿易赤字は最大
財務省が10日発表した2013年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は3兆3061億円の黒字だった。黒字幅は前年に比べ31.5%縮小し、現行基準で比較可能な1985年以降では12年(4兆8237億円の黒字)を下回り最小だった。円安を背景に海外投資の見返りである所得収支の黒字幅は過去最大となったが、原粗油など燃料輸入が高水準で貿易赤字が過去最大となったことが影響した。
貿易・サービス収支は12兆2349億円の赤字で、過去最大を更新した。貿易収支は輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで10兆6399億円の赤字。3年連続の赤字で、赤字幅は12年(5兆8141億円)を上回り過去最大だった。円安を背景に輸出額は前年比9.0%増の66兆9694億円で3年ぶりに増えた。米国向けの自動車や中国向けペットボトル原料などの有機化合物が増えた。一方で輸入額は15.4%増の77兆6093億円。4年連続で増え、過去最大となった。燃料に加え光電池など半導体等電子部品やスマートフォンなど通信機輸入が増えた。旅行や輸送動向を示すサービス収支は1兆5950億円の赤字だった。
所得収支は16兆5318億円の黒字で、前年より黒字幅は15.8%拡大した。3年連続の拡大で、黒字幅は07年(16兆4670億円)を上回り過去最大だった。企業の海外事業投資の見返りである直接投資収益と、配当金や利子など証券投資収益がともに増えた。
円相場は1ドル=97.71円で、前年比22.5%の円安(インターバンク直物相場・東京市場中心値の月中平均レート)だった。
併せて発表した13年12月の経常収支は過去最大となる6386億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。赤字が3カ月連続となるのは12年11月-13年1月以来となる。貿易・サービス収支は1兆4450億円の赤字で、12月としては過去最大だった。赤字は21カ月連続で、赤字幅は前年同月に比べ6244億円拡大した。うち貿易収支は1兆2126億円の赤字で、12月としては過去最大。輸入額は7兆726億円で過去最大だった。サービス収支は2324億円の赤字だった。
所得収支の黒字は前年同月比24.1%増の8843億円で、4カ月連続で増えた。直接投資収益、証券投資収益ともに増加した。季節調整済みの経常収支は1967億円の赤字で、4カ月連続の赤字だった。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、さすがに、3本の統計の記事を並べると、もうおなかいっぱい、という気もします。次に、景気ウォッチャーの現状判断DI及び先行き判断DIと消費者態度指数のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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グラフのうち、上のパネルの景気ウォッチャーの先行き判断DIが大きく低下しているのが見て取れます。消費者態度指数は昨年9月をピークに一貫して低下を示しています。台風だ何だとマインド低下の理由を探していましたが、やっぱり、10月の消費税率引上げ判断が需要サイドの消費者マインドに影を落としていると考えられます。供給サイドのマインドである景気ウォッッチャーはその消費税率引上げ前の駆込み需要で潤って来たんですが、さすがに、先行き判断DIの「2-3か月先」というレンジに4月の消費税率引上げが入るようになって急落しました。結果として、景気ウォッチャーの現状判断DIはまだ50を超えているものの、先行き判断DIは1月で50を割り込みました。このところ一貫して低下を続けている消費者態度指数について統計作成官庁の内閣府は引き続き「足踏みがみられる」との基調判断を示し、景気ウォッチャーについても長ったらしく、「景気は、緩やかに回復している。ただし、先行きについては、消費税率引上げ後の需要の反動減等の影響が見込まれる」とまとめています。しかし、グラフなどは示しませんが、消費者態度指数でも景気ウォッチャーでも、1月統計で雇用に関するマインドは改善を示しており、他のコンポーネントと相対的に見ても、雇用については非常に高い水準をキープしています。ですから、短期的に足元で消費税率の引上げによる落ち込みがあっても、雇用が堅調であればマインドは再び改善に向かう可能性が十分あると私は楽観しています。

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続いて、上のグラフは経常収支の年別の推移です。1985年から一貫して経常黒字を記録しているんですが、昨年2013年はその黒字幅は比較可能な過去の統計の中でもっとも小さくなりました。上に引用した記事にもある通り、+3.3兆円の黒字です。上のグラフを見て明らかな通り、リーマン・ショック前の2007年にピークをつけた後、2008-09年と黒字幅が縮小し、2010年にはいったん黒字を拡大したものの、2011年の震災からは傾向的に経常黒字は縮小しています。所得収支は昨年よりも黒字幅を拡大していますので、経常収支の黒字縮小の要因としては、貿易赤字が上げられます。原発停止に伴う燃料輸入の増加、新興国経済の発展や円高に起因する海外生産の進展にともなう産業空洞化、などが貿易赤字に、ひいては経常黒字の縮小に寄与していると考えられます。ただし、私は経常赤字はメディアで騒ぎ立てているほどには懸念していません。それよりも、レーガン政権下の米国のような「双子の赤字」が将来に渡って構造的に解消されないとすれば、すなわち、円安が進んでもかつての弾力性ペシミズムのように貿易赤字の縮小が見られなければ、高齢化に伴う我が国経済の貯蓄不足や過剰消費などが構造問題として浮かび上がる可能性があります。私自身は消費税率の引上げは気乗りしないんですが、政府赤字の縮小もアジェンダに取り込む必要が強まるかもしれません。
最後に下のグラフはいつも通りの月次の経常収支を青い折れ線グラフで示し、その内訳を積上げ棒グラフでプロットしてあります。データは季節調整済の系列なんですが、ここ数か月は経常赤字を連続して記録しているのが見て取れます。

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