OECD「経済見通し中間評価」ほか、消費者態度指数と法人景気予測調査と企業物価
昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し中間評価」 OECD Interim Economic Assessment が公表されています。副題は "Ongoing recovery for advanced economies, variation among emerging economies" とされており、先進国が世界経済の成長を牽引する一方で、新興国経済の停滞が見通されています。日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
「先進国、成長ペース速まる」 OECD短期見通し
経済協力開発機構(OECD)は11日、主要7カ国(G7)の短期経済見通しを公表した。緩和的な金融政策や財政支出によって、先進国の成長ペースは速まっていると分析。日本は4月の消費増税で一時的にマイナス成長に陥るものの、その後は回復軌道に戻ると予測した。
G7の2013年10-12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、米国の政府機関閉鎖や大雪が影響し、年率換算で2%増と前期より減速する。ただ、投資が戻り、世界の貿易量は増加しているなど「成長は着実に戻っている」と指摘。社債などの資金調達も容易になっていると指摘した。
4月からの消費増税を控える日本の成長率は、14年1-3月期は駆け込み需要で4.8%増になる一方、4-6月期は2.9%のマイナス成長になると予想。ただ「その後は成長は戻る」と付け加えた。米国と独仏伊のユーロ圏主要3カ国の成長率はそれぞれ1-3月期で1.7%増、1.9%増、4-6月期は3.1%増、1.4%増と予測した。
米国の金融緩和政策の縮小は、新興国市場が不安定になった状況を踏まえ「注意深く市場と対話して進める必要がある」と主張。一方、日欧については、物価上昇率が依然として目標を下回っているとして「金融緩和は維持されるか、強化されるべきだ」と訴えた。
世界経済のリスクは減っているとしながらも、日本の財政健全化は「始まったばかり」としたほか、ユーロ圏も回復はなお脆弱と説明。さらに中国など新興国経済の先行きが不透明なことを挙げた。
やや長いんですが、よくまとまった記事ではないかと思います。今夜のエントリーでは、OECD が記者発表に用いたジャーナリスト向けの記者発表資料からいくつか図表を引用して、簡単に我が国と先進国の足元から目先の短期の経済見通しを紹介したいと思います。

まず、記者発表資料 p.2 OECD Composite Leading Indicators を引用すると上の通りです。そのものズバリのOECD先行指標なんですが、左側がOECDの加盟の先進国、右側がBRIICsから中国を除くんですから、ブラジル、ロシア、インド、インドネシアの4国だと思います。左右で対比して明らかなように、現在の世界景気の回復ないし拡大は先進国が牽引しています。このため、グラフは割愛しましたが、世界貿易が大きく増加しています。先進国経済の成長によりボリューム効果が出ているといえます。

そこで、先進各国の足元から目先の短期経済見通しについて、記者発表資料 p.4 Indicator-based forecasts for GDP growth in the major economies を引用すると上の通りです。当然ながら我が国経済の見通しに着目すると、最初に引用した日経新聞の記事にもある通り、今年1-3月期は消費税増税前の駆込み需要で年率+4%超の成長を記録した後、4-6月期には▲3%近いマイナス成長を経て、その後、成長軌道に戻る、"the hike of the consumption tax rate on April 1st is pulling up activity in the current quarter as consumers bring forward purchases, but is likely to be followed by a contraction in the second quarter, and a recovery thereafter" と見込まれています。

ただし、OECDではGDP成長率の見通しについて不確実性はかなり高いとして、上のグラフを示していたりします。記者発表資料の p.9 Appendix から Uncertainty around GDP forecasts を引用しています。資金数階のOECD経済見通しについて、予測誤差の標準偏差がプロットされており、このグラフを見ると、特に日本の標準偏差が大きくなっているようです。もっとも、標準偏差ですから、上の外したのか下に外したのかは不明だったりします。

ここで、目を国内に転ずると、本日、内閣府から2月の消費者態度指数が、また、財務省から今年2014年1-3月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ発表されています。前者は需要サイドの消費者マインドを代表する指標であり、後者は日銀短観ほどではありませんが企業マインドを把握できる指標です。上のグラフの通りです。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月、あるいは、2013年10-12月期であったと仮置きしています。見れば分かると思いますが、上のパネルが消費者態度指数、下のパネルが法人企業景気予測調査(BSI)です。消費者態度指数は前月から▲2.2ポイント低下して38.3となりました。統計作成官庁である内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」から「弱含んでいる」に下方修正しています。また、法人企業景気予測調査(BSI)も今年2014年1-3月期は+12.7と、5四半期連続のプラスで昨年2013年10-12月期のプラス8.3から改善したものの、先行き2014年4-6月期の見通しは▲9.8と大きく落ち込んだ後、7-9月期には+8.3にリバウンドすると見込まれています。消費税増税の影響により、消費者マインド、企業マインドともに足元から目先の4-6月期にかけて悪化の方向にあるように見受けられます。

さらに、日銀から2月の企業物価指数 (CGPI)が、それぞれ発表されています。国内物価が前年同月比で+1.8%の上昇と、円安効果が剥落しつつありますが、着実にデフレ脱却の方向に進んでいます。為替効果による物価押上げのフェーズから需給ギャップによる物価上昇のフェーズに移行しつつある段階ですが、4月からの消費増税による一時的な需給ギャップの悪化がやや懸念されます。なお、いつもの企業物価のグラフは上の通りです。上のパネルは国内と輸出入別の前年同月比上昇率を、下のパネルは需要段階別を、それぞれプロットしています。景気後退期のシャドウ部のローカル・ルールは上の消費者態度指数などのグラフと同じです。
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