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2014年3月19日 (水)

貿易赤字は解決されねばならない政策課題なのか?

本日、財務省から2月の貿易統計が発表されています。いずれも季節調整していない原系列の統計で、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+9.8%増の5兆8000億円、輸入額は+9.0%増の6兆6003億円、差引き貿易収支は▲8003億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易赤字8003億円、2月最大に 輸入が9%増
財務省が19日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8003億円の赤字だった。貿易赤字額は2月としては、比較可能な1979年以降で最大。前年同月は7733億円の赤字だった。貿易赤字は20カ月連続で、2013年9月以降、最長期間を更新し続けている。
全体の輸入額は前年同月比9.0%増の6兆6003億円。79年以降で、2月では最大だった。円安を背景に原油や液化天然ガス(LNG)など高水準の燃料輸入のほか、中国からの電子部品などの輸入増加が目立った。輸入額の増加は16カ月連続。半面、輸入数量指数は0.5%減と、5カ月ぶりの減少だった。
一方、輸出額は9.8%増の5兆8000億円で、12カ月連続で増えた。中華圏の大型連休である春節(旧正月)が今年は1月末だった影響もあり、2月の中国向けの輸出額が前年比で3割近く増えたことが大きい。中国向けに自動車や、液晶デバイスなど科学光学機器、プラスチックなどの輸出が伸びた。輸出数量指数は5.4%増で、増加は2カ月ぶり。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=102円83銭で、前年同月比12.4%の円安だった。
貿易収支を地域別にみると、対中国は1108億円の赤字、対アジアは3525億円の黒字。対欧州連合(EU)は373億円の赤字。一方、対米国の貿易黒字は前年同月比8.3%減の4837億円だった。

やや長い気はするものの、いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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貿易赤字は続いていますが、先月1月ほどの大きさではないですし、そもそも、私は貿易赤字や経常収支の赤字が、我が国製造業の国際競争力の低下に起因するものではないと考えていますし、政策課題として取り組むことにより早期の黒字転換が必要とも考えていません。ただし、政府の財政赤字と経常赤字が並立する「双子の赤字」に、もしも日本が陥るとすれば、貯蓄投資バランス上で貯蓄不足が原因である可能性が高く、何らかの政策の必要性は認めます。例えば、政府支出を削減するとともに民間部門に対して増税を行って財政赤字の減少を目指すとか、であり、この実例は現に実行されつつある政策です。しかしながら、1980年代のレーガン政権下の米国のように、過剰消費が我が国の家計部門で生じているとはとても思えません。高齢化に伴うマクロの貯蓄不足はあり得ますが、現時点でそこまで深刻化しているとは受け止めていません。ですから、国際競争力回復のためと銘打って、カギカッコ付きの「成長産業」に政府の財政リソースを振り向けるターゲティング・ポリシーを、これまたカギカッコ付きの「成長戦略」と称して実行するのは貿易赤字解消のために有効かどうかは大いに疑問だと考えています。出来れば避けたい気がします。

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上のグラフは輸出の推移です。上のパネルは、季節調整していない原系列の輸出額指数の前年同月比伸び率を輸出数量指数と輸出価格指数で寄与度分解したものであり、下のパネルは輸出数量指数の前年同月比伸び率と1か月のリードを取ったOECD先行指数の伸び率を重ねるようにプロットしています。下のパネルの影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、このブログのローカル・ルールにより直近の景気の谷は2012年11月と仮置きしています。この輸出の動向を詳しく見ると、いわゆるアベノミクス後の輸出額は、主として為替の円高修正ないし円安に伴う価格効果で増加して来ていたのが見て取れる一方で、ここ数か月で輸出数量も伸び始めているのも事実です。これは下のパネルから、先進諸国の景気回復に伴う動きであることが読み取れます。まだ中国などの新興国・途上国の景気低迷による輸出の伸び悩みが解消されたわけではありませんが、世界経済の回復ないし拡大とともに我が国の輸出は増加基調を取り戻すと期待してよさそうです。もちろん、そろそろJカーブ効果も終了するでしょう。統計上の貿易赤字のすべてではありませんが、赤字のうちの日本と世界の景気局面の違いにより生じた部分は、この先、緩やかながら解消に向かうと私は考えています。

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貿易赤字のもうひとつの側面である燃料輸入のグラフは上の通りです。鉱物性燃料輸入額とそのうちのLNG輸入額を面グラフで、LNG輸入数量を折れ線グラフでプロットしています。引用した記事では、原油やLNGなどの燃料輸入が貿易赤字の原因のひとつとして取り上げられており、決して、私はこの見方を否定するものではありませんが、少なくとも、この燃料輸入増のかなりの部分は我が国の景気回復ないし拡大に起因するものであると考えるべきです。当たり前ですが、原発を再稼働すれば燃料輸入が落ち着きを取り戻して貿易収支が黒字に戻る、かどうかは定かではないと覚悟すべきです。

繰返しになりますが、貿易収支の赤字化、また、貿易赤字に起因する経常黒字の大幅な縮小や赤字化について、輸出と輸入の面から見て疑わしい論調が2点あります。輸出面では、貿易赤字を国際競争力の低下に起因すると考え、有望産業に政府の財政リソースを振り向けるような「成長戦略」に私は大きな疑問を感じますし、同様に、輸入面から、貿易赤字の原因を原発停止に伴う燃料輸入の増加と見なす意見にも同意できません。そして、何よりも貿易赤字の解消を経済政策の重要な政策課題のひとつと考える論調には賛成しかねます。

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