3月の景気ウオッチャー調査と2月の経常収支が発表される!
本日、内閣府から3月の景気ウォッチャー調査の結果が、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から+4.9ポイント上昇の57.9となり、3か月振りに上昇となりました。ただし、先行き判断DIは前月からさらに▲5.3ポイント低下の34.7となり、4か月連続で低下しています。現状判断DIと先行き判断DIが大きな乖離を示しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で見て+6127億円の黒字と昨年2013年9月以来5か月振りの黒字を記録しました。まず、かなり長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
3月街角景気、先行き判断指数34.7 東日本大震災時に次ぐ低さ
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は5.3ポイント低下し34.7となり、過去3年では東日本大震災が起きた2011年3月(26.6)に次ぐ低い水準となった。悪化は4カ月連続。4月の消費増税前の駆け込み需要の反動減や、増税に伴う消費者心理の悪化が懸念されている。
家計分野では「消費増税前の駆け込み購入でお金を使いすぎ、外食の回数や使用金額はしばらくは確実に落ちそうだ」(沖縄の居酒屋)といった声が上がった。企業分野では「4月から消費増税と石油石炭税の上乗せで燃料油価格はさらに高騰する」(四国の輸送業)と懸念する声も聞かれた。
ただ、賃上げが広がりつつあることもあり「1997年の消費増税と違い、影響は限定的で2カ月ほどだと思っている」(北関東のスーパー)との見方もあった。内閣府は「総じてみると、駆け込み需要の反動減による落ち込みは2-3カ月とみている人が多かった」と説明した。
一方、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比4.9ポイント上昇の57.9と、比較可能な01年8月以降で最高だった。改善は3カ月ぶり。消費増税直前の駆け込み需要が活発で、家電や家具などの耐久消費財に加え、食料品や日用品など幅広い品目で売り上げが伸びた。
好不況の分かれ目となる50は14カ月連続で上回った。14カ月連続で50を上回るのは初めて。内閣府は街角景気の基調判断を前月の「緩やかに回復している」で据え置いた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は90.9%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
2月の経常収支、6127億円の黒字 貿易赤字は縮小
財務省が8日発表した2月の国際収支状況(速報)によると、モノやサービスなど海外との総合的な取引状況を示す経常収支は前年同月比5.7%減の6127億円の黒字だった。経常収支の黒字は5カ月ぶり。高止まりが続いた貿易赤字が縮小したことに加え、企業が海外から受け取る配当や利子など第1次所得収支の黒字は拡大が続き、経常黒字に転じた。
貿易・サービス収支は7268億円の赤字で、赤字は23カ月連続となった。このうち貿易収支は5334億円の赤字。輸出は5兆9411億円で前年同月比15.7%増えた。鉱物性燃料や自動車、プラスチックなどの輸出額の増加が目立った。輸入は14.1%増の6兆4745億円。液化天然ガス(LNG)や半導体等電子部品などが増えた。旅行や輸送動向を示すサービス収支は1934億円の赤字だった。
第1次所得収支は3.6%増の1兆4593億円の黒字で、3カ月連続で黒字幅が拡大した。企業の海外事業投資の見返りである直接投資収益は減少したが、配当金や利子など証券投資収益が増えた。
いずれもとてもよく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーの現状判断DI及び先行き判断DIのグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。
最初のパラに書いた現状判断DIと先行き判断DIの乖離は、当然ながら、消費税率引上げをまたぐからです。企業関連や雇用関連よりも、特に、家計関連で3月の現状判断DIは駆込み需要のために大きく上昇しています。納車日の関係で自動車こそ一巡したものの、日用品やその他の幅広い品目で駆込み需要が強まりました。ただし、統計的な数字はまだ世間には出回っていないんですが、その後の4月1日以降の反動減は、メディアの報道をトピック的に見る限り、それほど大きくないという印象を私は持っています。もっとも、その報道のひとつが上の引用した記事の「駆け込み需要の反動減による落ち込みは2-3カ月」というのですし、もうひとつは今日のお昼のNHKニュースの経済産業省の茂木大臣の閣議後の発言「消費増税の反動減は想定内」のキャリーだったりしますから、政府発表のバイアスは感じなくもないところです。やはり、注目すべきは駆込み需要による現状判断DIの上昇よりも、先行き判断DIの大きな低下です。現状判断DIの57.9と先行き判断DIの34.7の大きな開きも気にかかります。極めて大げさな表現をすると、バブル経済ではないんですが、膨らんだ風船が割れてしまわないまでも急速にしぼむ印象です。さらに、現状判断DIは家計部門がけん引している一方で、先行き判断DIは幅広く低下を示していたりします。だから、というわけでもないんでしょうが、統計作成官庁である内閣府による基調判断は引用した記事にあるよりも実は複雑怪奇であり、「景気は、緩やかに回復している。また、消費税率引上げに伴う駆込み需要が強まっている。なお、先行きについては、駆込み需要の反動減等の影響が見込まれる」となっています。役所でも混乱しているのかもしれません。私も4月調査をじっくりと見て、もう少し考えを進めたいと思います。
経常収支は季節調整していない原系列では5か月振りの黒字でしたが、季節調整済みの系列で傾向を見た上のグラフから読み取れるように、ほぼ最近2-3年のトレンドのライン上に乗っているんではないかと私は受け止めています。経常収支や貿易収支の赤字については、ここ数か月でいろいろとこのブログでも主張して来ましたが、先月3月19日に貿易統計を取り上げたエントリーで包括的に論じておきましたので詳しい再論はしません。結論だけを記せば、要するに、輸出が伸び悩んでいるのは、米国はともかく、欧州や中国をはじめとする新興国と我が国との景気局面の違いに起因する部分が大きく、欧州や新興国の景気が回復すれば我が国の輸出も伸びを高めると私は楽観しています。ですから、かなり曖昧な「国際競争力回復」を錦の御旗に、怪しい概念の「成長戦略」と称して、疑わしい限りの「有望産業」に政府の財政リソースを振り向けるような政策について、私は賛成できません。燃料輸入の増加についても、我が国の順調な景気拡大に起因する部分が大きく、原発を再稼働すれば燃料輸入が減少するかどうかは疑問が残る、と受け止めています。少なくとも、原発を再稼働するか停止するかに関する政策を貿易や経常収支をターゲットに割り当てるべきではありません。政策割当て問題として間違っています。そして何よりも、貿易収支や経常収支のバランスや黒字化を政策目標にすべきかどうか、エコノミストの間でコンセンサスはないと私は考えています。その意味で、日経センターの岩田理事長の下のコラムがとても参考になります。
経常収支赤字化に対する政策対応として、岩田理事長のコラムでは、貯蓄投資バランスの観点からデフレ脱却を犠牲にすることも含めて内需を縮小させて経常収支赤字の解消を図るか、あるいは、ネットで海外から恒常的に資金が流入するような環境を整備しつつ経常収支赤字を受け入れるか、と主張しています。私は直感的に後者が幅広い賛同を得られるんではなかろうかと思うんですが、いかがなもんでしょうか。
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