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2014年4月30日 (水)

4失策の締まらない試合ながら序盤の猛打で広島に連勝!

  HE
広  島004000000 490
阪  神07100000x 8134

広島を甲子園に迎えたセリーグの首位攻防戦に連勝です。昨夜の投手戦と打って変わって、序盤は点の取合いでしたが、4回からはパタッと点が入らなくなり、結局3回までの点差で押し切りました。昨日の試合のいい雰囲気の続きで、2回ウラに大量7点を取りながら、藤浪投手のピッチングがピリッとせず、失策も絡んで締まりのない大味な試合の印象でした。でも、これで、タイガースは甲子園10連勝となり、明日は単独首位と甲子園11連勝がかかります。

明日も、
がんばれタイガース!

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今日発表の鉱工業生産指数と毎月勤労統計と日銀「展望リポート」から

本日、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP) が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも3月の統計で、鉱工業生産は季節調整済みの前月比で+0.3%増、毎月勤労統計のうち、現金給与指数は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.7%増、製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月比+2.7%と、月曜日に取り上げた商業販売統計と同じで、消費増税直前の駆込み需要で上振れし、景気判断には特段の情報はもたらしていません。と言いつつ、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、3月0.3%上昇 5月予測は0.1%上昇
経済産業省が30日発表した3月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は101.8だった。前月比で0.3%上昇した。プラスは2カ月ぶり。2月に大雪の影響で落ち込んだ反動もあって小幅ながらプラスに転じた。
QUICKが28日時点で集計した民間の予測中央値(0.5%上昇)は下回った。経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動きで推移している」で据え置いた。
業種別でみると、15業種のうち7業種が上昇した。2月に大雪の影響で工場が操業停止に追い込まれた輸送機械工業が回復。電子部品・デバイス工業で太陽電池セル、電気機械工業で太陽電池モジュール(複合部品)の生産がそれぞれ伸びた。ともに「太陽電池関連の製品で動きがみられた」(経産省)。
出荷指数は1.2%低下の102.2、在庫指数は1.8%上昇の106.1、在庫率指数は2.6%上昇の105.9だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、先行きは4月が消費増税前の駆け込み需要の反動もあって1.4%低下、5月は0.1%上昇する見込みだ。
1-3月期の四半期ベースは前期比2.8%上昇の102.4だった。四半期ベースのプラスは5期連続。自動車をはじめとした耐久消費財の輸出が堅調だったほか、非耐久消費財で日用品を中心に駆け込み需要が出たことが寄与した。13年度は前年度比3.2%上昇の98.9。13年後半から景気回復の流れが強まったため、3年ぶりに前年度を上回った。
現金給与総額、3月0.7%増 2年ぶり高い伸び 27万6740円
厚生労働省が30日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は27万6740円と前年同月比0.7%増え、2012年3月(0.9%増)以来2年ぶりの高い伸び率だった。増加は3カ月ぶり。景気の持ち直しを受けて企業業績が回復し、残業代が伸びたほか、期末手当を支給する企業が増えた。
期末手当やボーナスなど特別に支払われた給与は14.8%増えた。残業代などの所定外給与は4.8%増えた。所定外労働時間は7.4%増と10年9月(8.7%増)以来3年6カ月ぶりの高い伸びとなった。増加は10カ月連続。このうち製造業は12.7%増と9カ月連続で増えた。消費増税前の駆け込み需要などで生産活動が活発化したことを映した。
基本給や家族手当などの所定内給与は24万656円と0.4%減った。一方、常用雇用者数は4595万5000人と1.0%増えた。このうち一般労働者は1.2%増加、パートタイム労働者の増加率(0.8%)を上回った。厚労省は「企業業績の回復を背景に勤続年数の短い正規雇用者が増え、所定内給与の平均額を押し下げた。雇用情勢は改善しつつある」とみている。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事だという気がします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。これは、毎月勤労統計の所定外労働時間指数のグラフも同じです。

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まず、鉱工業生産について、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前月比で+0.5%増でしたから、これをやや下回ったとはいえ、2月の天候要因による減産からは微増し、ほぼ市場の予想通りの結果と受け止めています。製造工業生産予測調査に従えば、先行き生産は4月が▲1.4%減と消費増税直前の駆込み需要の反動減を経て、5月には+0.1%増の増産に転じるとの見通しですので、これも多くのエコノミスト見込み通りという気がします。1997年の当時と比較して、今回の消費増税前の駆込み需要とその後の反動について、少し話題になっているのが在庫の動きです。グラフはお示ししませんが、1997年当時では当然のように3月が在庫のボトムとなっていましたが、今回は2月の天候要因もあり、2月が在庫も在庫率もボトムをつけて3月は在庫も在庫率も2月からリバウンドしています。例えば、自動車が売れに売れた輸送機械、典型的な在庫変動が観察される電子部品・デバイス、さらに情報通信機械などは在庫率指数で見て3月は前月比で2桁増を示しています。これらの業界に限るわけではありませんが、1997年当時に比べて、企業が駆込み需要に対して慎重な生産計画を組み、いわゆる意図せざる在庫積上がりを避けようとしているように私には見えます。もちろん、在庫管理技術の進歩も大きいんでしょうが、結果的に、駆込み後の反動減に対して生産減の程度や期間を圧縮できる可能性が十分あると私は見込んでいます。一昨日の商業販売統計から、3月の駆込み需要な1997年に比べてさほぼ小さいわけではない可能性が示唆されましたが、駆込み需要に対する企業の生産・在庫の行動はかなり賢明であり、駆込み需要後の反動減ショックをいくぶんなりとも緩和する可能性があると期待してよさそうです。ただし、消費増税による物価上昇が1997年当時よりも価格転嫁が進んで大きい可能性があり、実質所得の減少については生産・在庫行動とは関係がありませんので、その面からの経済へのマイナス・ショックはそれなりの大きさになる可能性があります。いずれにせよ、製造工業生産予測調査で5月から生産が持ち直すとの見込みですので、かなり明るい見通しだという気はします。

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次に、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上のパネルは現金給与総額とその内の所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルは季節調整した製造業の所定外労働時間を、それぞれプロットしています。所定外労働時間は消費増税前の駆込み需要に従って増加を示しています。給与も期末手当やボーナスなど特別に支払われた給与と残業代などの所定外給与は増えた一方で、所定内給与は減少を続けています。もちろん、春闘におけるベースアップなどはまだまだ織り込まれていないんでしょうが、先行きの消費者の購買力を確保するためにはそれなりの賃上げが必要です。他方、売上げ単価でデフレートした実質賃金が低下するのであれば、労働市場の需要曲線が右下がりである限り雇用が増加します。もっとも、消費税率引上げ分を除いた売上げ単価の増加は便乗値上げがない限りは生じにくいことも確かです。いずれにせよ、4月以降の賃金動向、特に夏季ボーナスも含めて、単月よりは少し長い目で見た賃金動向が上向くことを願っています。

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最後に、日銀金融政策決定会合にて議論された「展望リポート」の p.10 で2013-2016年度の政策委員の大勢見通しは、上の通り明らかにされました。追加緩和は見送られたようですが、2015年度に消費者物価上昇率が2%に達するとの基本シナリオは維持されたと受け止めています。

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2014年4月29日 (火)

まさかの福留外野手の決勝ホームランをメッセンジャー投手が完封して投手戦を制して広島に先勝!

  HE
広  島000000000 020
阪  神00000001x 120

2ゲーム差あるとはいえ、広島を甲子園に迎えたセリーグの首位攻防戦は投手戦でした。両チームとも2安打ずつでサッカーのような1-0のスコアでしたが、終盤は見応えがありました。8回ウラもツーアウトになってから福留外野手のまさかの決勝ホームランをメッセンジャー投手が完封で守り切って首位広島に先勝しました。9回表の先頭打者をフォアボールで出しながら、バントを許さず、さらに、盗塁を刺したバッテリーのディフェンスも見事でした。とてもいい雰囲気の勝ち方で、明日につながりそうな気がします。

明日も藤浪投手を守り立てて、
がんばれタイガース!

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『肩をすくめるアトラス』前のゴールデンウィーク前半の読書

昨日、帰り道でお隣の区の中央図書館に立ち寄って、アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』(ビジネス社) を借りて、早速に読み始めたんですが、それまでに読み終えた3冊は以下の通りです。結構、話題の書が含まれていると自画自賛しています。

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まず、山田昌弘『「家族」難民』(朝日新聞出版) です。著者は、パラサイト・シングルとか、婚活といった流行語を世に送り出した著名な社会学者です。まず、本書では、自分を必要とし、大切にしてくれる存在がいることが人間の幸福に必要だと論じることから始めますが、これは数学における公理だとして論を進めます。そして、こういった存在のいない人を本書のタイトルである「家族難民」と定義しています。そして、少し歴史をさかのぼった高度成長期から説き起こし、学校を卒業すれば当然のように正社員として就職して結婚し子供を持つ人生を送っていた国民が、徐々に変化して現在あるいは近い将来に、正社員に就職できず、従って、結婚したり子育てをするに十分な所得を得られず、その結果、シングルのままで生涯を終わる人の割合が激増することに警告を鳴らしています。しかし、少なくとも本書ではこの家族難民化の進行を緩やかにさせる方策が論じられているだけで、根本的な解決は存在しないような気が私もします。そうだとすれば、ホントに政策的に解決せねばならない課題なのか、クレーメーキングに終わっているのか、なんとも私には判断がつきません。エコノミストの目から見れば、例えば、ベーシック・インカムを保証して、家族形態は個々人の自由な選択に任せる、ということが大原則だと思うんですが、クレームメーカーの側では違う論理が成り立ちそうな気もします。

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次に、池澤夏樹『アトミック・ボックス』(毎日新聞) です。父親が原爆開発に関わっていた資料を残して死に、それをかかえて社会学者の娘が公安警察から逃げて、キーマンに会いに行くストーリーです。ちょっと、国家機密法の世界に近いものがあると感じる読者がいるかもしれません。警察から逃げるというのは伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』にやや似通っているところがありますが、社会学者としての調査対象だった高齢者から「先生が警察に追われているのなら、私どもは先生を匿いますよ」(p.160) と言われるほどのサポートを受け、公安警察から逃げ切って東京についてキーマンだった人物とその背後にいる国会議員経験者である黒幕からすべての情報を得た上で、同じく手厚いサポートを受けたメディアの記者を通じて事実関係を公表するというサスペンスです。原爆開発やその計画の挫折の理由などは、ハッキリ言って、かなりありきたりで新鮮味に欠けますが、社会学者としての調査対象だった高齢者からの支援を受けつつ、メディアの記者の妻のプロットに乗って奇想天外な方法で公安警察から逃れて東京に到達する主人公の冒険談として読めば面白いです。社会派の小説なんでしょうが、主人公の父親の代の原爆開発計画ではなく、その娘の代の逃避行に読ませどころがあるような気がします。

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最後に、海堂尊『カレイドスコープの箱庭』(宝島社) です。著者のバチスタ・シリーズの最新刊で、何と、著者のデビュー作である『チーム・バチスタの栄光』の桐生准教授が再登場しますし、p.239以降は「海堂ワールド」として、過去・現代・未来の登場人物相関図、全登場人物表、桜宮市年表、大学・病院施設MAP、用語解説、医療用語辞典と本作が最終作であるかと誤解させかねない豪華オマケつきです。ストーリーはいつもの田口&白鳥コンビで東城大学病院の医療事故、と言うか、死亡患者の家族からのクレームについて調査して真相を解明するというミステリです。何度か、この著者の著作を取り上げた際に言及した通り、ミステリとしては『チーム・バチスタの栄光』から徐々にレベルが落ちてきていたんですが、本作では少し盛り返しているような印象があります。次作に期待です。

今夜からチョッピリ『肩をすくめるアトラス』を読み始めました。2段組で1200ページを超える大作ですから持運びもままならず、私自身も読み切れるかどうか自信がないながら、取りあえず、挑戦してみます。ダメだったら、私と大きく意見を異にするリバタリアンの書ですから、イソップ的な「すっぱい葡萄」で済ませようと企んでいます。

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2014年4月28日 (月)

商業販売統計は消費税率引上げ前の駆込み需要で大幅なプラスを示す!

本日、経済産業省より3月の商業販売統計が発表されました。名目個人消費の代理変数と私が考えている小売売上は季節調整していない原系列の統計の前年同月比で+11.0%増、季節調整指数の前月比でも+6.3%増と、消費増税前の駆込み需要で大幅に増加しました。エコノミストの景気判断には何の参考にもなりません。と言いつつ、まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

13年度の小売販売額、2.9%増 駆け込みで22年ぶりの伸び率
経済産業省が28日発表した商業販売統計(速報)によると、2013年度の小売業の販売額は141兆円1330億円と、前年比で2.9%増えた。増加は4年連続で、前年度比の伸び率は、1991年度以来(4.7%)以来22年ぶりの大きさだった。景況感の改善に加え、14年4月の消費税引き上げを前に、年度後半にかけて駆け込み購入が自動車や家電など高額品を中心に広がった。
3月の小売業の販売額は13兆7310億円と、前年同月比で11.0%増えた。3月としての伸び率は前回の消費税引き上げ直前の97年(12.4%)以来16年ぶりの大きさだった。小売業の内訳をみると、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなど大型家電の販売が伸び、機械器具が37.5%増だった。調味料や酒類など比較的日持ちのする商品の買いだめで、飲食料品も5.1%増だった。
大型小売店は17.0%増の1兆9562億円だった。このうち百貨店は25.3%増、スーパーも11.1%増だった。コンビニエンスストアは7.6%増の8723億円。消費増税を控え、たばこなどの購入が増えた。

いつもながらよく取りまとめられた記事だという気がします。次に、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売販売の前年同月比伸び率を、下のパネルは小売業の2010年=100となる季節調整指数を、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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最初に書いたように、消費増税直前の駆込み需要により小売販売は大幅に増加を示しています。景気判断の情報を得ようとするエコノミストには何の参考にもなりません。なお、前回の消費税率引上げがあった1997年4月の直前の3月には、引用した記事にもある通り、前年同月比で+12.4%の増加を記録しています。引用した記事にはないんですが、その後、12か月連続で前年同月比はマイナスに落ち込みました。今回、3月の前年同月比は+11.0%でしたので、以前から直感的に「1997年の消費増税に比較して、今回は駆込み需要は大きくない」と感じていましたが、やっぱり、同程度の大きさはあったことを統計は示しています。足元の4月から12か月連続の前年同月比マイナスに陥るのかもしれません。

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2014年4月27日 (日)

ローテーションの谷間でDeNAに打ち負ける!

  HE
阪  神000210001 471
D e N A30104000x 891

ローテーションの谷間で少し打ち足りず、DeNAに完敗でした。どうしても、週に2日もローテーションの谷間があるものですから、昨日はまさかの岩田投手の完投でしのぎましたが、今日は初回から先発の歳内投手が打ち込まれて3タテならずといったところです。唯一の見せ場は、9回最終回のルーキー梅野捕手のプロ初ホーマーだったかもしれません。

甲子園に戻って広島戦は、
がんばれタイガース!

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2014年4月26日 (土)

阪神先発岩田投手のまさかの完投でDeNAにボロ勝ち!

  HE
阪  神010111102 7110
D e N A000000100 142

とってもビミョーだと予想していたんですが、何と岩田投手がまさかの1失点無四球完投でした。まだ、信頼感はにわかに高まったわけではないんでしょうが、しばらくの間、駒不足のローテーションで使えば、という気にさせるピッチングでした。打つ方は新井良太選手の2ホーマーのほか、小刻みに加点した上に、昨夜のセンターの落球や今日も9回の内野陣のバント処理など、草野球並みのDeNAの守備もあって、結局、ボロ勝ちの連勝、ナゴヤドームから3連勝でした。ゴールデンウィークの幕開けにふさわしく、お客さんを呼べる勝利だったといえます。

明日は歳内投手を守り立てて、
がんばれタイガース!

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今週の読書は『帰ってきたヒトラー』ほか

今週も経済書が多いんですが、やたらとハズレとスカが多かった気がします。小説はドイツではミリオン・セラーとなった話題のティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』がとっても面白かったです。

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まず、ニール・アーウィン『マネーの支配者』(早川書房) です。タイトルから想像される通り、マネーの支配者というか、金融の錬金術師である中央銀行総裁・議長を、ニューヨーク・タイムズで活動中のジャーナリストの目からたんねんに追いかけています。特に、表紙の画像でも理解できる通り、上の似顔絵から、すべて前職で、イングランド銀行(BOE)キング総裁、米国連邦準備制度理事会(FED)バーナンキ議長、欧州中央銀行(ECB)トリシェ総裁を中心に据えています。また、先進国以外では中国人民銀行の周小川総裁を終わりの方の第20章のタイトルにして着目しています。我が国の日銀総裁だった速水優氏は典型的に失敗した反面教師のセントラル・バンカーとして描かれています。誰か忘れてしまいましたが、「21世紀の速水優」と称されていた中央銀行総裁がいたりしました。なお、この本は1960年代くらいからのスコープなんですが、その前段については、昨年2013年10月26日付けのエントリーで取り上げたライアカット・アハメド『世界恐慌』をオススメします。もう、危機後についてもスコープに入れたこのような本が出たんだと感激しました。

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次に、脇田成『賃上げはなぜ必要か』(筑摩選書) です。企業が貯蓄超過になっているので、その購買力を賃上げという形で労働者というか、消費者というか、国民に還元することが必要である、という論点は私と共通していて、さらに、どうしてそうなっているのかの原因が解明されておらず、従って、その原因に対する処方箋が提示できない、という点まで私と同じだったりします。370ページを超える本なんですが、第2章と第3章の労使関係論や日本的雇用慣行に関する分析が読ませどころかと思います。でも、財政の持続可能性や消費高齢化まで話が飛んで、まとまりのない印象になっており、さらに、枠で囲んだのコラム的な部分が多くて読みづらく、さらにダメ押しで、「xxではないでしょうか。」で終わるセンテンスがやたらと多くて、著者が何をいわんとしているのかを意図的に曖昧にしている印象があります。しょっぱなの p.18 に「筆者は実際に経済成長がある程度(実質2-3%以上)生じれば、究極的にほとんどの日本の経済問題を解決すると考えています。」と始めながら、また、タイトルに釣られて借りたもののハズレの経済書でした。

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次に、北野一『日銀はいつからスーパーマンになったのか』(講談社) です。このアナリストの著書については、昨年2013年1月17日付けのエントリーで、フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を紹介した際に、「決してトンデモ本という並びではないんですが」、といいつつ、『デフレの真犯人』(講談社) もついでに取り上げています。前の『デフレの真犯人』では利益率重視の経営の浸透により、利益の取り分が増えたために賃金や下請けへの支払いが減られている、という実は、カギカッコ付きの「トンデモ経済学」だったと、今にして振り返れば、やや遠慮があって思ったことをはっきりと書かなかったことを反省しています。この『日銀はいつからスーパーマンになったのか』も同様の「トンデモ経済学」を展開しており、前回と同じ利益重視の経営を敷衍して、短期利益重視とやや微修正しつつ、英国の Kay Review を引き合いに出して正当化していたりします。しかし、私からタイトルに回答すれば、日銀の金融政策はその昔から物価や景気に対して一定の影響力を持っていた、ということになり、前の白川総裁まではこれを否定して、徹底して金融政策をサボり続けた、ということなんだろうと思います。ついでながら、この著者の判断基準は株価しかないようです。世界標準のアカデミックな見方と真っ向から対立するにもかかわらず、もしもこの本の作者の属する証券会社の顧客から高い評価を得ているのであれば、何らかの人を納得させるようなストーリーを作るのがお上手なんだろうと思います。

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次に、水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書) です。最近のこの著者の一連の著作の流れを汲んで、ブローデル流の「長い16世紀」になぞらえて、1970年以降の大きな経済的な動きを「長い21世紀」に例えたり、また、「陸の帝国」と「海の帝国」のディコトミーも懐かしく、著者独特の哲学を展開しています。停滞の中世と成長の近代を画するのは産業革命であり、このポイントで経済史は不連続となって微分可能性が失われている、と私自身は考えているんですが、この著者は私と意見が異なります。マルクス主義的な一直線に生産力が伸び続ける歴史観とも違って、この著者の歴史観や世界経済の将来像はご自身でも認める通りにまったく不透明です。まあ、俗説的というか、都市伝説的なゼロ成長神話、定常経済が実現する、という見方なのでしょうし、私自身もひとつの歴史観として否定はしませんので、この作者の歴史観に浸りたい人にはいいのかもしれません。でも、私はこの作者とは異なる歴史観・世界観を持っていますし、そのような人は少なくないと思います。

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最後は話題の小説で、ドイツではミリオン・セラーとなったティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』上下 (河出書房新社) です。アチコチで取り上げられているのであらすじは人口に膾炙しているようにも思いますが、要するに、ヒトラーが2011年8月末に生き返って、当然ながら周囲の人は彼の発言を冗談だと思いますので、コメディアンとしてテレビ出演したり、これもテレビで緑の党の幹部と対談したりする、というストーリーです。生き返ったヒトラーは携帯電話やインターネットにも馴染んで、それなりに使いこなしたりしています。インターネット上の論争に関する「ゴドウィンの法則」というのがあり、大雑把に、「インターネットでの議論が長引けば長引くほど、ヒトラーやナチスを引合いに出すことが多くなる」というものですが、ヒトラー本人がインターネットではなくテレビながら、議論というか、何らかの意見表明をするわけです。そして、周囲の人はその意見表明をジョークとして受け止めたり、あるいは、真面目な政治的見解と受け止めたりするわけです。私は詳しくないので、この本で生き返ったヒトラーが展開する意見が歴史上のナチスの世界観をどこまで忠実に再現しているのかは不明なんですが、確かに、生き返ったヒトラーの意見に賛同するドイツ国民は、というか、日本人でも一定の割合はいそうな気もします。私のような左派でリベラルな人間は、この点にそこはかとない恐怖を感じます。

まだ借りていませんが、ようやくアイン・ランド『肩をすくめるアトラス』の予約の順番が回って来ました。また、一応、村上春樹の短篇集『女のいない男たち』(文藝春秋) も買い求めたりしました。明日から始まるゴールデンウィークで読み進もうと予定しています。

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2014年4月25日 (金)

ダイナマイト打線の猛打爆発でDeNAを圧倒し再び2位浮上!

  HE
阪  神105130301 14200
D e N A000012010 471

先発能見投手の調子はさほどよくもなかったんでしょうが、序盤からダイナマイト打線が爆発し、勝負は早々に決まりました。キャプテン鳥谷遊撃手の1回のソロホームランに始まって、9回の田上外野手のタイムリーまで、20安打の猛攻で14得点ですから、エースが投げた試合を落とすわけもありません。最後の方は投手を含めて余裕の選手起用で軽く流したカンジでした。でも、明日の岩田投手の先発はビミョーなところです。

明日はカード勝越しを目指して、
がんばれタイガース!

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公表された消費者物価指数(CPI)から消費増税の影響を探る!

本日、総務省統計局から3月の消費者物価指数(CPI)が公表されています。ヘッドライン上昇率が前年同月比で+1.6%、生鮮食品を除くコアCPI上昇率が+1.3%を記録しています。特に、今回の統計発表では消費税率引上げ後の4月中旬の東京都区部の上昇率が注目されたんですが、ヘッドラインで+2.9%、コアCPIで+2.7%、食料・エネルギーを除くコアコアCPIで+2.0%となりました。そこそこの上昇率だという気がします。まず、4月都区部に着目した記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

消費者物価2.7%上昇 4月都区部、増税後初の統計
22年ぶりの大きさ

総務省が25日朝発表した、消費増税後初となる4月の東京都区部の消費者物価指数(CPI、中旬の速報値、2010年=100)は生鮮食品を除く総合が前年同月比2.7%上昇の101.7だった。上昇率は、1日に消費税率を5%から8%に引き上げた影響で、日本経済がデフレ期に入る前の1992年4月(2.9%上昇)以来22年ぶりの大きさとなった。
上昇率はQUICKが発表前にまとめた市場予想の中央値(2.8%上昇)は下回った。日銀は8%への消費増税が4月の消費者物価を前年同月に比べ1.7%押し上げる影響があるとしていた。それをもとにすれば、増税の影響を除いた「実質ベース」の上昇率は1.0%で、3月(1.0%上昇)と同水準。総務省は「品目ごとにばらつきはあるが、総合すると消費税率の引き上げ分を反映した」とみている。上昇品目数は414と前月(220)から大幅に増えたが、原材料コストの上昇を消費増税に合わせて価格転嫁するといった便乗値上げは限られているようだ。
ただ、洗剤が前年同月比で9.5%上昇するなど一部は消費増税分を大きく超えて値上がりしている商品も出ており、消費者の購買意欲によって値上げが進む可能性もある。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者物価の前年同月比上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフによりそれぞれの上昇率がプロットされており、積上げ棒グラフは青い折れ線の全国コアCPI上昇率に対する寄与度を示しています。ただし、いつものお断りですが、上昇率や寄与度は統計局では小数点第1位より小さい端数のある指数で算出されている一方で、公表されているのは端数のない丸めた指数ですので、ビミョーに異なっている可能性があります。悪しからず。

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上のグラフを基に、大雑把に全国のCPI上昇率に着目すれば、まず、2013年度で通して見て、生鮮食品を除くコアCPIが前年度比+0.8%上昇の100.4と5年振りにプラスに転じています。電力料金などのエネルギー価格の上昇に伴う結果ですが、コストプッシュだけではなく、アベノミクスによる景気の回復・拡大に支えられたディマンド・プルの上昇も徐々に現れ始めていると私は考えています。3月単月のコアCPI上昇率は前年同月比で+1.3%と、2月と同じ上昇幅でした。消費増税前の駆込み需要による需給ギャップの引締りはCPIには大きな影響を及ぼさなかったと受け止めています。先月と同じで、全国CPIの上昇率がさらに加速するようなモメンタムは観察されませんでした。4月に入れば消費増税により需給ギャップは緩むわけですから、引き続き、しばらくの間は消費税の影響を除くCPI上昇率がさらに加速して日銀のインフレ目標である2%に達するのは、まだ時間がかかると考えるべきです。

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さて、今回の統計発表で大きく注目された4月1日の消費増税後の物価動向を探る東京都区部の統計ですが、上のグラフの通りです。当然ながら、生鮮食品を除くコアCPI上昇率も、食糧・エネルギーを除くコアコアCPI上昇率も、4月にポンと跳ね上がりました。しかし、この結果は事前の市場コンセンサスにかなり近いライン、少なくともレンジ内の結果が出たと私は受け止めています。すなわち、日経・QUICKによる東京都区部コアCPI上昇率の事前コンセンサスは前年同月比上昇率で+2.8%、レンジは+2.7-3.3%ですから、レンジの下限とはいえ、ほぼジャストミートと受け止めています。引用した記事にもある通り、消費税率引上げの影響を日銀は+1.7%ポイント程度と見なしていますから、消費増税の影響を除いたベースでは3-4月にかけて東京都区部の実勢の物価上昇率は変わらないと考えられます。しかし、小売業の競争の激しい東京都区部と違って、全国ではもう少しCPI上昇率が高まる可能性があり、4月の前年同月比上昇率で見て、東京都区部の+2.7%は全国の+3.0%くらいに相当すると考えるべきです。

私の生活実感とも一致して、一部にいわゆる便乗値上げは見られるような気がしないでもないんですが、B to B の企業物価はまだ明らかでないものの、B to C の消費者物価に関する部分に限れば、ほぼ順調に消費税率引上げ分が価格転嫁されているように見受けられます。

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2014年4月24日 (木)

企業向けサービス価格指数は引き続きデフレ脱却に向かう動きを示す!

本日、日銀から3月の企業向けサービス価格指数(CSPI)が公表されています。ヘッドライン上昇率が前年同月比で+0.7%と前月と同じだった一方で、変動の大きい国際運輸を除くコアCSPI上昇率が+0.6%を記録し、前月から+0.1%ポイントながら上昇率を高めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

13年度企業向けサービス価格、6年ぶりプラス 0.5%上昇
日銀が24日発表した3月の企業向けサービス価格指数(2005年=100)は97.1と前年同月比0.7%上昇した。プラスは11カ月連続。建設や宿泊需要の盛り上がりで関連サービスの価格が上昇した。13年度は前年度比0.5%上昇と、07年度以来6年ぶりにプラス転換した。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。
3月の業種別にみると、上昇に寄与したのは土木建築など諸サービスで1.8%の上昇。首都圏を中心に建設需要が旺盛なことから、土木建築サービスが6.3%上昇した。上げ幅は2月(5.6%)と比べ拡大した。ビジネス観光の需要が好調で、宿泊サービスは5.0%上昇した。
為替変動の影響を受けやすい国際運輸を除いたベースでは、3月は前年同月比0.6%上昇。伸び率は消費増税による押し上げ分を除けば、1993年3月以来21年ぶりの高さとなった。13年度でも0.1%上昇。97年度以来16年ぶりにプラス転換した。

やや年度統計に偏った印象はあるものの、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(CSPI)とコアCSPIの上昇率とともに、企業物価(CGPI)上昇率もプロットしています。CSPI上昇率がCGPIに追い付いたように見えなくもありませんが、左右の軸で目盛りが異なりますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は昨年2013年11月だったと仮置きしています。

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2013年度でヘッドラインCSPI上昇率が+0.5%、国際運輸を除くコアCSPI上昇率で+0.1%というのは、道程半ばの消費者物価+2%上昇という日銀のインフレ目標に対して整合的な動きと私は理解していますが、1-3月の指数については、消費増税前の駆込み需要に伴う一時的な需給ギャップの引締りを反映している可能性も否定できません。もちろん、毎月のように言及している基準年から10年近く経過したラスパイレス指数の上方バイアスも無視すべきではありませんが、直感的には広告などにおける駆込み需要の方が影響が大きそうな気もします。もっとも、あくまで直感的な評価ですから根拠はありません。いずれにせよ、この2つの上方バイアスは気にかかるところです。また、引用した記事にもある通り、前月からの上昇率の寄与度差で見て、土木建築サービス+0.03%、宿泊サービス+0.02%、警備+0.01%などの諸サービスが合わせて+0.05%の、また、四媒体広告などの広告が+0.04%の、それぞれプラス寄与を示している一方で、外交貨物運輸▲0.06%をはじめとする運輸が▲0.06%のマイナス寄与を記録しています。

繰返しになりますが、2つの上方バイアス、すなわち、消費増税前の駆込み需要と基準年からの経過に伴うラスパイレス指数の上方バイアスは気にかかるところですが、企業向けサービス物価は日銀のインフレ目標に整合的な動きを示していることが確認できたと私は受け止めています。

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2014年4月23日 (水)

羽生三冠が第2局も勝って名人戦に連勝!

森内名人に羽生三冠が挑戦する第72期将棋名人戦七番勝負の第2局は福島県喜多方市の熱塩温泉山形屋で2日目が指し継がれ、本日夜に先手番の羽生挑戦者が89手で勝って終局しました。羽生三冠は2連勝です。誠におめでとうございます。
第3局は5月8、9日、佐賀県武雄市で対局の予定です。
下の終了図は朝日新聞のサイトから引用しています。

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6回の攻防が勝負を分け中日に惜敗!

  HE
阪  神000000001 160
中  日00000301x 490

阪神はメッセンジャー投手とルーキー梅野捕手のバッテリー、中日は川上投手と監督谷繁捕手のバッテリーと、それぞれに持ち味ある投球内容でゼロを積み重ねて来ましたが、6回の攻防が勝負を分けました。ナゴヤドームで連勝ならず川上投手に今季初白星を献上です。6回の表とウラは、ともにワンアウト満塁まで攻め立てたんですが、阪神は福留外野手がポップフライを打ち上げて万事休す、中日は森野選手が2点タイムリーと明暗を分けました。せめてあの場面で犠牲フライなりとも打って、得点していれば展開が変わったかもしれません。キャッチャーはルーキーを先発に抜擢したんですが、和田監督はライトを若手に代える気はないんでしょうか?

明日はカード勝越しを目指して、
がんばれタイガース!

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今年の新入社員はやっぱり安定重視で海外赴任は回避なのか?

やや旧聞に属する話題ですが、先週4月17日に日本能率協会から2014年度新入社員「会社や社会に対する意識調査」の結果が公表されています。今年の新入社員へのアンケート調査では、「定年まで勤めたい」が初めて過半数の50.7%に達し、他方、「海外赴任はしたくない」が2年連続増加など、それなりの特徴を捉えているように思います。まず、能率協会のサイトから調査結果のトピックスを6点引用すると以下の通りです。

トピックス
  1. 「定年まで勤めたい」が初めて過半数(50.7%)に。入社の決め手は「雰囲気の良い会社」
  2. 理想の上司像にギャップ。「丁寧に指導してほしい新入社員」と「結果を褒めたい上司・先輩」
  3. グローバル化を「ビジネスの好機」と捉えるも、「海外赴任はしたくない」が2年連続増加
  4. 過去最高! 女性の9割が「子供が生まれても仕事を続けたい」と回答
  5. 約6割 が「10年後の日本は良くなる」。東京五輪に期待!
  6. 「東日本大震災」が人生に与えた影響は、人との"絆"と"命"の大切さ

ということで、もう少し絞り込んで欲しかった気もしますが、2014年度新入社員「会社や社会に対する意識調査」結果のpdfの全文リポートから図表を引用しつつ、新入社員の就活時の体験や意識などについて、簡単に調査結果を紹介したいと思います。

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まず、転職や独立志向とその逆の定着志向について、リポート p.7 図1 を引用すると上の通りです。一時は20%を切っていた「定年まで勤めたい」が50%超となりました。比率を高める非正規雇用に対して、スキルアップの機会が多いと仮定すれば、長期雇用のメリットも感じられ、転職や独立よりも定着志向が高まるのも自然なことなのかもしれません。ただし、このあたりは大企業志向と表裏一体のような気がしないでもありません。また、転職はともかく、もしもこの背景に独立のチャンスの低下があるとすれば、日本経済の逼塞感にもつながりかねませんので、何とも評価の難しいところです。

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就活時の会社選定基準と実際の基準について、リポート p.9 図4 を引用すると上の通りです。微妙にズレていたりするのは当然でしょう。就活時には業種や職種に重点を置いていたにもかかわらず、最終的に入社を決めたのは会社の雰囲気という結果です。これは大いに分かる気がします。特に、定年まで働く長期戦となれば社内の雰囲気が自分に合うかどうかは重要です。スキルは入社後に伸ばすことも可能ですが、社風を自分に合うように変更するのは極めて難しい、というか、不可能だという気がします。また、グラフは引用しませんが、就活に臨む気持ちや覚悟に関する質問では、数年前に比べて割合は低下しつつあるものの、「気に入った会社や仕事に就けるかどうかよりも、就職することを最優先に考えた」という回答が相変わらず過半を占めています。このあたりも背景になっているような気がします。

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最後に、いつも私が気にかけている海外赴任について、リポート p.15 図11と12を引用すると上の通りです。かなり拮抗していますが、「海外赴任はしたくない」との回答がやや優勢で、ここ2-3年は差が広がっています。ただし、グラフは引用しませんが、グローバル化については、不安感よりも期待感が、日本企業のビジネスの危機よりは好機が、自分には関係ないよりは自分も当事者が、それぞれ大きく上回っていますので、グローバル化についての意識はそれなりに高い一方で、海外赴任でその最前線に立つ気は余りない、ということで、国内の職場からグローバル化を支える、ということなんでしょう。もっとも、海外経験の有無により大きな差が生じていますから、我が家のように、親について行って海外経験をする子供が増えれば海外赴任希望も増えるのかもしれません。なお、これもグラフは引用しませんが、海外赴任したくない理由については、「言葉が通じるか不安だから」がここ3年ほどで比率を減少させた一方で、「治安や食生活、衛生面で不安を感じるから」が逆に比率を上昇させて、第1の理由になっていたりします。確かに、この理由であれば、海外経験によって誤解している部分と誤解していない部分の見極めが出来そうな気もします。

最後に、これもグラフは引用しませんが、2年前と比べて2014年の新入社員の就活時の「最も役に立ったツール・媒体」は、2012年のパソコンからスマートフォンになっていたりします。就活の必携アイテムといえそうです。

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2014年4月22日 (火)

藤浪投手の一人相撲を打線がカバーして中日に先勝!

  HE
阪  神022000033 10141
中  日010000300 440

阪神先発の藤浪投手が7回ににわかに変調を来して、連続フォアボールにバント処理のエラーまでして追いつかれましたが、終盤にダイナマイト打線が爆発して、今季初のナゴヤドームで中日に先勝でした。打線はかなり活発で、リリーフ陣も内野ゴロや犠牲フライで失点はしましたが、まずまず安定していると見てよさそうです。投手陣の問題は藤浪投手で、一人相撲で勝ち星がつかなかったんですから自業自得ですが、普段から「勝ちにこだわる」と発言しているだけに、次回はキッチリと勝って欲しいものです。それから打線では、そろそろ、福留外野手は見切りをつけるべきではないでしょうか。藤川俊介選手や田上選手をスタメン起用して、少し我慢して使う気はないんでしょうか。

明日も、
がんばれタイガース!

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派遣スタッフとパート・アルバイトの時給やいかに?

リクルートジョブズの調査による3月度の三大都市圏における派遣スタッフ募集時平均時給と同じくアルバイト・パート募集時平均時給の結果が、それぞれ、先週4月15日と18日に公表されています。まず、最近の動向をプロットしたグラフは以下の通りです。凡例などを見ての通りです。

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なお、本日のエントリーの情報源は日経新聞の以下の記事です。

アルバイト・パートについては、3月の募集時平均時給は前年同月に比べ+0.6%高く、平均時給は948円を記録しています。また、3月は大学生の卒業シーズンでもあり、人手不足に悩む外食各社が募集をかけた結果、特に、飲食業の求人件数は+49.9%増えています。また、新規出店の増えているコンビニも採用が厳しく、都心部のビジネス街ではスタッフの時給を昼間でも1000円台とするところも出て来ているようです。さらに、塾などの教育産業でも人で不足が広がっているという報道があります。新規採用を増やすため採用直後の時給を一時的に高めに設定する事例が報じられていますが、時給引上げとともに、就職支援などの時給以外でアルバイトを引き付けようという動きも広がっているようです。
派遣スタッフについても、3月の募集時平均時給は前年同月比+3.7%高い1529円と10か月連続で前年同月を上回っています。時給上昇の要因としては、景気の改善に伴って派遣社員が正社員採用を目指して転職活動をするなど派遣離れの動きが背景にあり、大手派遣会社などは必要な人数を集めるため、時給を高めに設定しているほか、消費増税で派遣社員の生活コストが膨らむとして、派遣会社が時給を引き上げる動きもあると報じられています。特に時給の上昇が大きいのはIT・技術系で、リクルートジョブズの調査結果では3月の募集時平均時給は1903円と前年同月比+4.2%増を記録しています。

アベノミクスによる景気の回復・拡大から1年余りが経過し、雇用も非正規の量的な拡大の段階から賃上げや非正規職員の正規化などの質的な待遇改善の局面に移行しつつあるように私は受け止めています。私は雇用を重視するエコノミストとして、この景気回復・拡大に伴って、多くの希望する国民が decent job に就くことを期待しています。

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2014年4月21日 (月)

貿易赤字はいかにして解消されるか?

本日、財務省から3月の貿易統計が発表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.8%増の6兆3826億円、輸入額は+18.1%増の7兆8289億円、差引き貿易赤字は▲1兆4463億円となりました。季節調整していない原系列の統計での貿易赤字は21か月連続です。3月の統計が利用可能となりましたので、速報値で2013年度の貿易赤字が▲13兆7488億円に上ったことが明らかにされています。過去最大の赤字だそうです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

13年度貿易赤字、3年連続最大 13.7兆円、12年度は8.1兆円
財務省が21日発表した2013年度の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は13兆7488億円の赤字(前年度は8兆1577億円の赤字)だった。年度ベースの赤字は3年連続。比較可能な1979年度以降で最大の赤字を3年連続で更新した。
輸入額は前年度比17.3%増の84兆6053億円で過去最大だった。原子力発電所の稼働停止で火力発電への依存が続くなか、中東からの液化天然ガス(LNG)や原粗油などで高水準の輸入が続いた。中国から半導体など電子部品の輸入が増えた影響もあった。消費増税前の駆け込み需要で年度後半に原材料や製品の輸入が膨らんだことも輸入額を押し上げた。
中国を含むアジア、欧州連合(EU)からの輸入額は過去最大。対EUの貿易収支は2年連続で赤字となった。対中国の貿易収支は2年連続で最大の赤字を更新した。
一方で輸出額は前年度比10.8%増の70兆8564億円で、3年ぶりに増加した。米国向けに自動車、中国向けにペットボトル原料の有機化合物の輸出が伸びた。対米輸出額は2年連続で増加、対EU、対アジア向けの輸出はいずれも3年ぶりに増えた。ただ輸出数量は小幅な増加にとどまるなど持ち直しの勢いは限られた。13年度の為替相場の平均値は対米ドルで前年度比21.1%の円安だった。
同時に発表した14年3月の貿易収支は1兆4463億円の赤字で過去最大の赤字を更新した。赤字は21カ月連続。3月でこれまで最大の赤字は前年同月で3568億円だった。
輸入額は前年同月比18.1%増の7兆8289億円で、17カ月連続で増えた。為替相場の平均値が対米ドルで前年同月比8.7%の円安で、LNGや原粗油など燃料や、半導体など電子部品の輸入額が増えた。
輸出額は1.8%増の6兆3826億円で、13カ月連続の増加。船舶や非鉄金属などが減少したものの、米国向けの自動車、シンガポール向けの鉱物性燃料、中国向けの鉄鋼などの増加が目立った。

やや年度統計に偏った印象はあるものの、いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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繰返しになりますが、3月の貿易赤字は▲1兆4463億円を記録し、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスである▲1兆703億円を上回る赤字を計上し、さらに、予測レンジの▲1兆3800億-▲5642億円を外れて赤字が大きくなっています。ややマーケットにはサプライズだったかもしれません。基本的には、消費増税前の駆込み需要に起因すると私は受け止めています。ですから、4月以降は貿易赤字が縮小する可能性が高いと考えるべきです。なお、従来から繰り返しているように、そもそも、私は貿易赤字や経常収支の赤字が、我が国製造業の国際競争力の低下に起因するものではないと考えていますし、政策課題として取り組むことにより早期の黒字転換が必要とも考えていません。ただし、政府の財政赤字と経常赤字が並立する「双子の赤字」に、もしも日本が陥るとすれば、貯蓄投資バランス上で貯蓄不足が原因である可能性が高く、何らかの政策の必要性は認めます。例えば、政府支出を削減するとともに民間部門に対して増税を行って財政赤字の減少を目指すとか、であり、この実例は現に実行されつつある政策です。しかしながら、1980年代のレーガン政権下の米国のように、過剰消費が我が国の家計部門で生じているとはとても思えません。高齢化に伴うマクロの貯蓄不足はあり得ますが、現時点でそこまで深刻化しているとは受け止めていません。ですから、国際競争力回復のためと銘打って、カギカッコ付きの「成長産業」に政府の財政リソースを振り向けるターゲティング・ポリシーを、これまたカギカッコ付きの「成長戦略」と称して実行するのは貿易赤字解消のために有効かどうかは大いに疑問だと考えています。少なくとも、「わが業界は成長産業なので、我が社に財政資金を入れて欲しい」といわんばかりのポジション・トークによる財政リソースのキャプチャは避けたい気がします。加えて、燃料輸入の抑制を原発再稼働に結びつける議論にも疑問を感じています。

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私が気になっているのは、アベノミクスの円高修正局面からほぼ1年を経て、為替の効果により貿易赤字が続いているのか、それとも数量かという点だったんですが、どうも最近時点では輸入数量の伸びが輸出数量を上回っているという結果が出ています。上のグラフの通りです。輸出入いずれも季節調整していない数量指数の前年同月比をプロットしています。サブプライム・バブルの弾ける前の2006-07年くらいまでは輸出が輸入を上回って伸びていましたが、2011年以降は大雑把に輸入の伸びの方が高くなっています。この1-2月は中国の春節効果で撹乱されましたし、3月も消費増税前の駆込み需要で撹乱がいっそう大きくなっていますが、2013年以降は輸出の伸び率が輸入に追いつきつつあるように見えます。逆にいえば、我が国の景気に欧州や新興国などが追いつけば、我が国の輸出数量も伸びを高めると期待していいと私は楽観しています。為替によるJカーブ効果もそろそろ終了し、大幅な貿易赤字が縮小する可能性もあると私は考えています。

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2014年4月20日 (日)

終盤追い上げられるもローズベルト・ゲームを制してヤクルトを3タテ!

  HE
ヤクルト210010210 790
阪  神11003300x 8122

終盤になってソロ・ホームラン3発で追い上げられながら、何とかリリーフ陣の奮闘でローズベルト・ゲームを制してヤクルトを3タテでした。どうしても終盤に盛上がりを見たんですが、特に、左投手から2ホーマーしたバレンティン選手を9回に迎えた呉投手の攻め方は昨日の福原投手とは対照的ながら、外角の変化球で三振に抑え込んだ勝負は実に見応えありました。ゴメス選手も連日の打棒を披露して打点を稼いでいますし、その後を打つマートン外野手の不信がやや懸念されますが、岩田投手に勝ち星がついたのはビミョーなところです。

明後日からのナゴヤドームも、
がんばれタイガース!

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春になると欲しくなるスポーツ用品

昨日今日とこの週末はやや気温が低いんですが、先週先々週あたりから春の陽気が感じられるお天気になり、花粉を気にしながらも外出も多くなった気がします。
実は、私はそれなりに運動習慣があって、週末には土日のうち少なくとも1日は室内プールで泳ぐことにしています。もっとも、海外生活の際にはテニスやゴルフやといろいろと楽しんでいましたし、地方大学に単身赴任していた時ですら教員仲間で週1回はテニスで汗を流していたんですが、東京生活ではテニスやゴルフは機会がありません。もっぱら、室外では自転車に乗ったり、室内で泳いだりしています。
だからというわけでもないんでしょうが、その昔はこの季節になると2-3年おきにテニス・ラケットが欲しくなっていたんですが、最近はスイムウェアが欲しくなります。テニスを初めて以来、1990年代半ばにヤマハがラケットの製造を止めるまでは、もっぱらヤマハを愛用していたんですが、ヨネックスも使ってみたりしたものの、結局、ヘッドに落ち着きました。スイムウェアはやっぱりスピードとミズノをスイムキャップとブランドを合わせて愛用し、一番古いスピードがいかにもゴムが切れた、というような状態になってしまいましたので、折を見て物色していたりします。
どうでもいいことですが、昨日プールで泳いでいると、まったく競泳向きではないリゾート向けのビキニで平泳ぎだけ泳いでいるオバサンがいましたので、少しびっくりしました。競泳用の水着で少しくらいはクロールも出来ないと、最近ではカッコ悪いかもしれません。

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2014年4月19日 (土)

5点差を中盤に逆転し盤石のリリーフ陣で逃げ切りヤクルトに連勝!

  HE
ヤクルト302000000 5101
阪  神00302200x 781

外出から帰宅すると6回ウラの攻撃中、5-5の同点でしたが、何と梅野捕手が敬遠気味のフォアボールの後、上本内野手のタイムリーで逆転しました。目の前でルーキーが勝負を避けて歩かせられたんですから、上本選手もそれなりに集中力が高まったことと思います。さらに、鳥谷遊撃手の犠牲フライで2点差と、順調に加点して、最後は盤石のリリーフ陣で逃げ切った勝利でした。といっても、7回安藤投手、8回福原投手、9回呉投手とも、ピシャリと3人で抑えたのではなく、適当に塁上を賑わせつつも、失点はありませんでした。特に、福原投手がバレンティン選手を力で抑え込んだ三球三振は実に見応えありました。序盤の5点差を逆転したんですし、ゴメス選手も甲子園第1号の同点弾をレフトスタンドに放り込んだようですから、いい試合だったんでしょう。でも、明日の岩田投手の予告先発はビミョーなところです。

明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書は和田竜『村上海賊の娘』ほか

今週の読書は、経済書や専門書が多いんですが、話題の本屋大賞受賞作『村上海賊の娘』上下巻も読みました。さすがに面白かったです。以下の通りです。

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まず、翁百合『不安定化する国際金融システム』(NTT出版) です。いかにも日銀OGらしく、全面的に日銀ビューを示した国際金融本なんですが、リーマン・ショックに対する見方は標準的といえます。すなわち、国際金融におけるプレイヤーの多様化、リスクの原子化、ファイナンスの市場化で説明しています。また、マクロ・プルーデンス政策の重要性を指摘し、特に、シャドウ・バンキングへの監督が不十分だった点は多くのエコノミストが同意するところだと受け止めています。ただし、やや偏っていると私が感じたのは国際金融本には余りお目にかからない生産性への言及がとっても多い点です。金融が実体経済の生産性にどのようなルートで影響を及ぼすかの議論ではなく、金融を離れて生産性を向上させる必要性を延々と説いています。一般経済書であればともかく、国際金融というよりも日本経済の「失われた10年」について、日銀がコントロールする金融ではなく生産性に起因するといいたいんでしょうが、やや過剰な生産性への言及だという気がしないでもありません。旧来の日銀理論のように、金融セクターを含まないリアル・ビジネス・サイクル(RBC)理論的な生産性概念が念頭にあるような印象も受けますが、そうだとすれば金融を論じる意味はないわけでとっても不思議です。

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次に、大野健一『産業政策のつくり方』(有斐閣) です。かなり私の専門分野に近いです。というのは、私は学会には3つ入っていて、専門分野はマクロ経済学ですから、景気循環学会がもっとも早くに入会して専門分野なのかもしれませんが、後に、国際開発学会地域学会にも入っています。最後の地域学会は地方大学出向中に勧められて出向先の大学の先生に推薦人になっていただいた記憶があります。また、一家4人でジャカルタに3年間赴任して国際協力に勤しみましたので、開発経済学にもそれなりに親しみはあり、地域学よりも専門に近いと感じています。ということで、前置きが長くなりましたが、本書は途上国において経済発展のために産業政策を策定する際の重要なポイントについて取りまとめています。第1部トータル4章で総論とし、第2部が各国編、すなわち、シンガポール、台湾、マレーシア、インド、ベトナム、エチオピアと、副題の「アジアのベストプラクティスに学ぶ」らしく、広くアジアの諸国が取り上げられています。また、日本の過去の参考例ということで、かつての通産省による産業政策策定についても対象にされています。産業政策という政策の策定ですから、国家のリーダーと担当する官庁が重視された印象を私は受けました。人的資本に重点を置いた開発経済学だという気がします。また、比較優位は考慮すべきではないという主張があるんですが、私は大いに同意します。静学的な比較優位は動学的に発展・成長する途上国経済では分析ツールとして適当でないというのが私の見方です。本書は産業政策を策定するマニュアルでは決してありませんが、産業政策を策定する国際協力の際のマニュアルになりそうな気がしないでもありません。政策立案を担当する政府関係者だけでなく、途上国経済に関係する多くのビジネスマンにも参考になりそうな部分を含んでいるような気がします。

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次に、橘川武郎、パトリック・フリデンソン[編]『グローバル資本主義の中の渋沢栄一』(東洋経済) です。明治期から昭和初期までに活動した財界人、経済人の渋沢栄一の経営や財界活動などについての日本経営史に関する学術書ですが、一般的な経営本としても十分な内容を持っているように見受けました。私自身は2年間出向していた地方大学の経済学部長が日本経営史の専門家でしたので、生協でのランチタイムにお話を伺った程度で、経営学や日本経営史は詳しくないんですが、経済活動の道徳的な側面を重視していた渋沢栄一の信条というか、経済活動へ取り組む姿勢というものが理解できたような気がします。第2次世界大戦前の日本経済は現在とかなり違っていて、アングロサクソン的だったと私は考えていますが、実は、商道徳のレベルがかなり低くて、契約を順守しないとか、事前のサンプルと大きく異なる模造品や粗悪品を販売するとか、ひょっとしたら、一昔前の偏見に基づく中国についての見方のように感じられたりもしました。キリスト教倫理に基づく欧米の商道徳と渋沢的な儒教に基づく商道徳は、私はかなり近いような印象を持っていたりします。もっとも、それがサン・シモン主義的かどうかは私には分かりません。p.110 にある大隈重信の渋沢評がとても印象的です。繰返しになりますが、現代的な感覚で読んでも興味深い本です。ただし、現代の道徳的経済学の一翼を担うグラミン銀行などのマイクロファイナンスを発展させたムハマド・ユヌス教授との比較があってもよかったような気もします。

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次に、マッシモ・リヴィ-バッチ『人口の世界史』(東洋経済) です。著者はイタリア人でフィレンツェ大学名誉教授、80歳近い人口学の大家です。私の直感で、本書はかなりアナール派に近い歴史の学術書であるといえようかと思います。人類の人口の歴史について、いわゆるr戦略とK戦略から説き起こし、第5章の貧困国の人口と第6章の将来展望で締めくくっています。経済学の立場から人口を考えた学説として有名なのは、マルサス『人口論』であり、悲観的な人口と経済の見通しを取り上げています。ローマ・クラブ的な見方が現在にも伝わっているのは広く知られた通りです。しかし、本書では少なくとも「近い将来において食糧供給が人口の制約要因となることはない」との見方を明確にしており、私も同意するところですが、人口に対する悲観的な見方は収穫逓減に基礎を置いている一方で、人口に対する楽観的な意見は規模の経済を重視している、と本書では喝破しています。ただし、残念なのはアナール派的な歴史観からか、社会的な要因についての分析がないような気がします。人口に影響しそうな社会的要因として私は3点考えており、すなわち、土地所有制度、相続制度、結婚制度です。最後の結婚制度というのは、単婚か複婚かということです。また、経済史的に考えて、産業革命の前後は連続で微分可能ではない、と私は考えているんですが、人口の世界史ではどうなんでしょうか、やや気にかかります。

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最後に、今年の本屋大賞受賞作、和田竜『村上海賊の娘』上下 (新潮社) です。織田信長が大坂本願寺を攻めた際、毛利から本願寺に兵糧を入れるのを助ける村上海賊、その三島村上の中でも最大勢力かつ毛利から独立している唯一の能島村上家の当主である村上武吉の娘、村上景を主人公にした時代小説です。真っ黒に日焼けした大女で、瀬戸内では醜女で通っているんですが、泉州に行くと別嬪と評価されたりします。村上景に対する織田側の海賊の頭目は泉州海賊の眞鍋七五三兵衛です。これも胆力が備わり、泉州海賊らしい剽悍な大男として登場します。もちろん、歴史的な事実として大坂本願寺への毛利の兵糧入れは成功する一方で、大坂本願寺は織田信長に屈して寺域を明け渡します。本作ではこの前段だけを取り上げているわけです。我が家は先祖代々の一向門徒ですから、門徒の奮闘に胸が熱くなり、また、門徒衆を騙すがごとく、景を怒らせた僧官には反発を覚えます。特に、下巻に入ってからはスピード感豊かに一気に読ませます。ただし、戦国末期の時代背景からどうしようもないんですが、戦闘シーンが多くて、人が死んだり血が流れたりと、私の苦手な場面が多くて少し閉口しました。私はこの作者の作品は『のぼうの城』しか読んだことがないんですが、この『村上海賊の娘』も映画化されることと思います。誰が主演するんでしょうか。とても興味があります。最後に、出版社の特設サイトにある人物相関図と合戦図などへのリンクを示しておきます。何らご参考まで。

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2014年4月18日 (金)

序盤のリードを守ってヤクルトに逃切り勝ち!

  HE
ヤクルト000010100 252
阪  神31000000x 4100

相手チームのエラーにもつけ込んで、序盤のリードを守って得意の逃切りでの勝利でした。能見投手は中盤5回くらいから疲れたんでしょうか。中5日で投げさせられているムリがあるんではないかと想像してしまいます。神宮球場での3連戦は乱戦に次ぐ乱戦で1勝2敗と負け越しましたから、甲子園では巻き返さねばなりません。初戦を取りました。明日は打線の奮起を期待します。

明日も、
がんばれタイガース!

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東大日次物価指数に見る消費税率引上げの物価への影響やいかに?

今日の日経新聞の経済教室では東大の渡辺教授が東大日次物価指数を用いて、4月1日の消費税率引上げに伴って「増税分以上に値上げ」が進み、物価が大きく上がりデフレ脱却に進んでいる、とコラムで結論しています。実は、今週月曜日4月14日の日経センターによる「JCERアングル - 月曜10時便」でもこの東大日次物価指数が取り上げられていて、「4月の消費者物価指数は前年比3%」と大きな物価上昇率を記録する可能性が示唆されていたりしたんですが、私は少し違和感を感じていましたので、今夜のエントリーでは日経新聞の経済教室とも合わせて、東大日次物価指数につい簡単に取り上げたいと思います。
まず、政府統計として統計局が算出している月次の物価ではなく、日次の物価指数はそれ自体としては決してめずらしいものではなく、例えば、米国マサチューセッツ工科大の The Billion Prices Project @MIT などの例があります。東大日次物価指数プロジェクトでは1989年4月1日からの物価上昇率を、私が見た範囲では、2日遅れで研究プロジェクトのサイトで提供しています。どうやって作っているかというと、日本経済新聞デジタルメディアからスーパーマーケットのPOSシステムを通じて、日本全国の約300店舗で販売される商品のそれぞれについて、各店における日々の価格、日々の販売数量を原データとして提供を受け、指数化しています。その際のウェイトは、総務省統計局で作成・公表している消費者物価指数 (CPI) が基準時のバスケットを基にしたラスパイレス指数であったり、GDPデフレータが比較時を基にしたパーシェ指数であるのに対して、東大日次物価指数は基準時と比較時の単純平均であるトルンクヴィスト指数となっています。このあたりの東大日次物価指数の詳細については以下のリファレンスを参照下さい。また、生産性や物価などの指数一般については、Index Measures というサイトにある文献なども参考となります。ブリティッシュ・コロンビア大学のディーワート教授など、専門外の私ですら指数理論の大家としてお名前を聞いたことがある専門家が何人かいたりします。

ということで、東大日次物価指数の上昇率を日々の物価上昇率と7日間移動平均をプロットすると以下の通りです。4月15日のデータまで含んでいます。なお、左軸の単位は decimal ですから、0.01が1%に相当します。

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東大日次物価指数の7日移動平均で確認される範囲で、一昨年2012年12月の政権交代からジワジワと物価は上げ足を速め、今年に入ってプラス領域まで上がっています。消費税率が引き上げられた4月1日にポンと上がったのは事実ながら、とても不思議な動きを示し、ほぼゼロに舞い戻っています。日経センターでも日経新聞の経済教室でも、いずれも、「消費税率引上げにより物価は大きく上がった」という結論のようですが、ホントなんでしょうか。私の実感としては、4月1日から物価はかなり上がったと感じているのは事実ながら、統計でどのように確認できるのでしょうか。来月のCPI発表もさることながら、これを待たずに統計を確認できる東大指数の動きが気にかかるところです。

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2014年4月17日 (木)

消費者態度指数と耐久消費財の普及について考える!

本日、内閣府から3月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲1.0ポイント低下して37.5を記録しています。ここ数か月でとても下がった気がします。この統計は消費動向調査のサブセットなんですが、毎年3月の消費動向調査では耐久消費財の普及や保有に関しても年1度の調査が実施され結果が公表されています。まず。日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月消費者態度指数、2年7カ月ぶり低水準 「弱い動き」に
内閣府が17日発表した3月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.0ポイント低下の37.5と4カ月連続で悪化した。2011年8月(36.9)以来2年7カ月ぶりの低水準。内閣府は基調判断を前月の「弱含んでいる」から「弱い動きがみられる」へと2カ月連続で下方修正した。今後半年間の暮らし向きなどを調査世帯に聞くため、消費増税や物価上昇に対する懸念が指数を押し下げたとみられる。
指数を構成している「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」「雇用環境」の4項目すべてがマイナスだった。全項目でマイナスになるのは2カ月連続。「耐久消費財の買い時判断」は、08年12月以来5年3カ月ぶりの低い水準だった。消費増税後に耐久消費財を買い控えようとする心理が働いたもよう。「暮らし向き」は東日本大震災直後の11年4月以来、2年11カ月ぶりの低水準となった。
1年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)は0.4ポイント上昇の89.7%と、比較可能な2004年4月以降で最も高かった。日用品が値上がり傾向にあるほか、2月の大雪の影響で生鮮食料品の価格が高騰したことが影響した。
内閣府は毎年3月分の発表にあわせ、過去にさかのぼって季節調整値を改定している。2月の消費者態度指数は38.3から38.5に修正した。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は3月15日で、有効回答数は5674世帯(回答率67.5%)だった。

いつもの通り、いろんなことをとてもよく取りまとめた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。昨年2013年4月から新系列に移行しています。また、影をつけた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、直近の景気の谷は2012年11月であると仮置きしています。

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需要サイドの消費者マインドがかなり弱い動きになっています。私はエコノミストとして指数の水準が「xx以来の低さ」なんていうのは気にもしないんですが、引用した記事にもある通り、「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の消費者態度指数を構成する4項目すべてが2か月連続でマイナスになったわけですから、それなりに深刻に受け止めるべきだと考えています。他方、春闘などの賃上げやボーナス増額などがが徐々に浸透しつつある段階で、相対的に「収入の増え方」の下がり方が小さく、消費への影響はその意味で限定的となる可能性が指摘できます。でも、誰がどう見ても消費税率が引き上げられた4月の消費者マインドは3月よりもさらに低下するんでしょうから、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「弱含んでいる」から「弱い動きがみられる」に下方修正したのは当然でしょう。少なくとも、ボーナスが支給される年央くらいまでは消費者マインドは停滞を続ける可能性が高いと私は考えています。逆に、年後半は一時的な停滞を脱して、再び消費者マインドが上向くことが十分考えられます。

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ということで、年に1度の主要耐久消費財の普及・保有状況に関する調査から、上のグラフは私が注目している普及率の高い耐久消費財、特に1世帯当たり1台を超えて保有されている耐久消費財について最近3年間の保有状況をプロットしています。さすがに、これらはほぼ飽和状態に近くなっている気もしますが、デジカメとパソコンがまだジワリと保有台数を伸ばしているのに対して、カラーテレビと携帯電話と乗用車は逆に非有台数を減らしています。ここに、やっぱり、普及の飽和が近づいていることとともに、世帯人員の減少の影響がでているような気がします。なお、この統計の調査対象は一般世帯、すなわち、単身世帯を除いた2人以上世帯ですから、単身世帯増加の影響は出ていないハズです。デジカメやパソコンはまだ普及率そのものが80%に達していない一方で、普及率90%を超えたテレビや携帯電話は飽和状態に近いといえ、80%を超えた自動車とともにテレビなどは複数の世帯員で利用が可能であり、世帯人員減少の影響はそれなりに受けるんではないかと考えています。また、今年の調査から携帯電話のうちのスマートフォンの調査が始まり、普及率ではスマートフォン以外の携帯電話が73.7%、スマートフォンが54.7%、ネットで携帯電話の普及率が93.2%となった一方で、100世帯当たりの保有台数はスマートフォン以外が128.3台、スマートフォンが101.5台となっています。スマホも平均すれば1家に1台をすでに達成し、来年にはガラケーと逆転が生じそうな気もします。加えて、これも今年の調査から始まったタブレット型端末の普及率は20.9%、100世帯当たり保有数量は26.2台でした。

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2014年4月16日 (水)

広島の大瀬良投手にプロ初勝利を献上して6連勝でストップ!

  HE
阪  神000001000 150
広  島010020000 351

阪神先発の新人岩崎投手もよく投げて合格点でしたが、打って投げて守っての大瀬良投手に抑え込まれて打線が沈黙し、6連勝でストップでした。まあ、こんなもんでしょう。明日からまた打ちまくりましょう。

明日は、
がんばれタイガース!

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今年のゴールデンウィークはそもそもどのように過ごすのか?

昨夜のエントリーではJTBの推計になるゴールデン・ウィークの旅行動向を紹介しましたが、順序が逆っぽいものの、そもそも今年のゴールデンウィークをどのように過ごすのかに関する調査結果が青山ハッピー研究所から明らかにされています。まず、青山ハッピー研究所のサイトから調査結果のポイントを6点引用すると以下の通りです。

今年の連休はどう過ごす?
  • 全体の半数近くが「3-5日」 - 今年のGWは日並びが悪く、「短い連休」の見込み
  • 前年比5.4%増、休養返上で「レジャー重視」へ - 短い連休を思いっきり楽しみたい
  • 昨年よりも「出費を抑える」傾向 - 今年のレジャーは「安・近・短」が主流
  • 「家の片付け」「衣替え」「家庭菜園」など、連休は夏支度に向けた準備へ
  • お出かけ派は「ショッピング」「外食」 - 遠出せず、普段の週末と変わらない連休
  • 女性はアクティブな「お出かけ派」、男性はごろごろ「休養派」 - 夫婦でニーズ異なる!?

相変わらず、この青山ハッピー研究所はズラズラと項目を並べて、要約のポイントを簡潔に作成しないんですが、それはさて置き、今夜のエントリーでは図表をいくつか引用しつつ簡単にゴールデンウィークの過ごし方などについて紹介したいと思います。

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まず、休める日数について、昨夜のエントリーでゴールデン・ウィークのカレンダーを示しておきましたが、4月26日の土曜日から5月6日の振替休日まで平日に有給休暇を取ってつなげば、連続で11日の休みが取れます。他方、カレンダー通りで土曜日も休みではないと仮定しても、5月3日の憲法記念日から5月6日の振替休日まで、連続で4日間のお休みとなります。上のグラフは「今年の大型連休は何日休める?」に対する回答結果なんですが、連続であれば、私の場合は4日間ということになります。連続か、通算か、やや質問の設定が不明確だったりします。なお、過去2年では、2013年、2012年ともに「7日間」(2013年=17.3%、2012年=17.2%)が最も多かったことから、今年はカレンダーの日並びの悪い短い連休といえそうです。昨夜に取り上げたJTBによる旅行動向の推計結果も一部はこの影響が出ているわけです。

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ただし、過去2年間に過半を占めた休養重視型の過ごし方が、今年は47.4%まで減少し、その分、レジャー重視が12.9%まで増加しています。上のグラフは、過去3年間のレジャーと休養のバランスに関する回答結果です。なお、自由回答では、短い休みだからこそレジャーで有意義に過ごしたという声が多いようですが、今年の冬が例年にない寒波だったこともあって、季節がよくなって思い切り出かけたいという、おでかけ気分の高まりもありそうだと分析されており、私もそんな気がしないでもありません。

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またまた「ただし」なんですが、おでかけ気分が高まっているにしては、やや予算は渋くて、例年よりも出費を抑える予定の比率が昨年より増加しています。上のグラフは、連休にかける予算に関する質問への回答結果です。自由回答では、日ごろの節約生活とは一転、連休は出費を惜しまずに遊ぶという声もある一方で、やっぱりというか、消費増税を理由に上げて、あるいは、増税前の大きな買い物のため、例年よりも予算を抑えるとの回答も多かったようです。

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で、実際に何をする予定かという質問に対する回答結果が上の通りとなっています。日帰りと泊りがけを単純に合計すると34%に達しますので、旅行の回答もそれなりに少なくないと受け止めています。私も基本は家でゴロゴロなんですが、もうひとつの読書が回答のトップテンに上がっていないのが少し不思議だったりします。私は近くの図書館でアイン・ランド『肩をすくめるアトラス』2段組1200ページを予約しています。読み切れるかどうか自信はありません。また、テレビやDVD鑑賞が7位なのに、近場の手軽な娯楽である映画が入っていません。回答者が少なかったりするんでしょうか。それとも、選択肢に入れておくのを忘れたんでしょうか。少し疑問です。

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2014年4月15日 (火)

12安打2ホーマーの乱れ打ちで広島を圧倒し、藤浪投手が今季初勝利!

  HE
阪  神001041200 8120
広  島010001000 241

広島に序盤の2回先制点を許したものの、阪神ダイナマイト打線がすぐに同点、逆転し、12安打2ホーマーの乱れ打ちで8点を取って広島投手陣を圧倒しました。3回は4番ゴメス内野手が同点打をかっ飛ばし、5回は3番鳥谷遊撃手が逆転打を放ち、さらに、5番マートン外野手がフォアボールで塁を埋めた後の新井良太内野手のスリーランが効果的でした。まだ勝ち星なく2敗だった藤浪投手も今季初勝利を上げました。まあ、打つ方の6回のホームランはオマケでしょう。点差が開いていたとはいえ、救援陣の安藤投手と筒井投手も無失点に抑えました。不思議なことに、あれだけ打棒好調なマートン外野手がノーヒットで打点なしに終わりました。それでも8点取れるんですからダイナマイト打線は健在です。私は8回ウラに安藤投手が登場して、安心して長風呂を楽しみました。

明日も、
がんばれタイガース!

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今年のゴールデンウィークの旅行動向は低調か?

とても旧聞に属する話題ですが、去る4月3日にJTBから「2014年ゴールデンウィーク(4/25-5/5)の旅行動向」が公表されています。日並びの影響で、旅行が集中するのは後半4連休にかなり集中しているとか、また、節約志向の高まりはあるものの旅行の意欲は堅調とか、JTBでは分析しています。でもやっぱり、消費増税の影響などもあって旅行は国内・海外ともに低調なようです。まず、JTBのリポートから2014年GW期間の旅行の特徴を4点引用すると以下の通りです。

2014年GW期間の旅行の特徴
  1. 旅行者数: 国内旅行人数、海外旅行人数とも昨年より減少するも、総旅行人数は過去3番目に多い水準
  2. 出発日: ピークは国内旅行が5月3日と4日、海外旅行が5月2日と3日
  3. 平均費用: 国内旅行平均費用は4.2%ダウン、海外旅行平均費用は8.1%アップ
  4. 「今」欲しい、したいと思うものは「国内旅行」「海外旅行」、旅行への意欲は引き続き堅調

ということで、このJTBのリポートからデータを引用して2000年以降のゴールデンウィークの旅行動向について、国内旅行と海外旅行の合計である総旅行者数とその総消費総額をプロットすると以下のグラフの通りです。

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また、上に引用した「2014年GW期間の旅行の特徴」に加えて、JTBのリポートでは、海外旅行の特徴として、(1) 日並びの影響で、人気の欧州、ハワイも減少、(2) 短い日程で旅行が可能な台湾が人気 グアム・サイパン、シンガポールも堅調、との2点を上げており、さらに、国内旅行の特徴としては、(1) 今年3月開業の「あべのハルカス」やユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの関心が高く、大阪方面が増加、(2) 瀬戸内や四国が人気、(3) 「ななつ星 in 九州」をはじめ、各地で運行される「観光列車」に注目、の3点に着目しています。確かに、引用した「2014年GW期間の旅行の特徴」にある通り、上の赤い折れ線グラフで示した総旅行人数は2012-13年に次いで過去3番目に多く、旅行需要は堅調のように見えなくもありません。でも、水色の棒グラフの総消費額は節約志向もあって冴えないように感じられます。NAVERまとめのサイトから引用すると、旅行動向に影響を及ぼすカレンダーは下の通りで、日並びがよくないのは事実なんですが、昨日のエントリーで取り上げたように夏季ボーナスがそこそこ上向いているにもかかわらず、やっぱり、ゴールデン・ウィークの旅行動向は低調と私には見えます。海外旅行の減少については円安も一因かもしれませんが、消費税率引上げのマイナスの影響と考えるべきです。

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例年、ゴールデン・ウィークには私は下の倅の学校の文化祭に行くんですが、今年はなぜか6月に開催されるらしいです。1年生の参加を求めるにはいいという説もあります。下の倅は文化系のクラブですので、ゴールデン・ウィークは文化祭準備で忙しいかもしれません。でも、何といっても、上の倅が来年に大学受験を控えており、一家で遠出することもなく地味に過ごすことになると思います。

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2014年4月14日 (月)

今夏のボーナスは期待できるのか?

春闘のいっせい回答日の3月12日の翌日3月13日のエントリーでは、ごく簡単に主要企業の回答経過を取りまとめておきましたが、ほぼボーナスに当たる年間一時金も業績連動が多いものの、かなり期待の持てる結果となっていました。ということで、先週にみずほ総研が最後にリポートを発表して、いつものシンクタンク4社から夏季ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因ですので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研以外は国家公務員となっています。また、いつものお断りですが、みずほ総研の公務員ボーナスだけはなぜか全職員ベースなのに対して、ほかは組合員ベースの予想ですので、数字が大きく違っています。注意が必要です。それから、これまた、みずほ総研を除いて、妙に公務員ボーナスの伸び率が大きいんですが、これは復興財源捻出の一環として大きく削減されていた国家公務員賞与に対する特例措置が終了し水準が戻るためです。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研36.4万円
(+1.3%)
58.2万円
(+11.3%)
(1) 今夏の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+1.3%と夏季賞与としては2年連続のプラス、2000年代半ば以来の伸びとなる見込み。
(2) 背景には、内需を中心とした景気回復の動きを受けた2013年度下期の企業収益の持ち直し。加えて、デフレ脱却に向けた政府による賃上げのムード作りが押し上げに作用。このため、消費税率引き上げ後の消費下支えに一定の効果をもたらすと期待可能。もっとも、中小企業を中心に、消費税率引き上げ後の需要減への懸念、原材料コスト上昇の価格転嫁の遅れなどから、人件費増加に慎重姿勢を維持している例がみられ、産業・企業による引き上げスタンスにはばらつきが残存。こうしたなか、賞与水準は、リーマン・ショック後の大幅な落ち込みを取り戻すには至らない見込み。
みずほ総研36.5万円
(+1.6%)
65.5万円
(+1.3%)
2014年夏の1人当たりボーナス支給額(民間企業)は前年比+1.6%と2年連続で増加する見通し。円安や内需回復による企業収益の改善と安倍政権の賃上げ要請がボーナス増額を後押し。
第一生命経済研36.5万円
(+1.6%)
n.a.
(+12.1%)
民間企業の2014年夏のボーナス支給額を前年比+1.6%(支給額: 36万5千円)と予測する。2013年夏、冬のボーナスとも前年比+0.3%と微増にとどまったが、今夏は伸び率が高まり、ボーナスの改善が明確化するだろう。
円安と景気回復による企業収益の大幅増がボーナス改善の主因。春闘でも、組合要求に対する経営側の回答は前向きなものが多く、賃上げムードの高まりが示されていた。円安効果が大きかった製造業だけでなく、内需の好調を受けて非製造業にもボーナス増が広がるとみられる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング36.3万円
(+1.1%)
57.8万円
(+10.6%)
2014 年夏のボーナスの一人当たり平均支給額は363,300円(前年比+1.1%)と2年連続で増加し、伸び率も前年と比べて拡大すると予測する。産業別では、業績が好調な大企業のウエイトが高い製造業で増加幅が大きくなる一方、非製造業ではほぼ横ばいにとどまるとみられる。

上のテーブルを見れば明らかな通り、今夏のボーナスはかなり期待できそうです。景気の回復・拡大に伴う企業業績の改善とともに、安倍内閣の賃上げ重視姿勢を受けて、昨年よりも伸びが高まりそうです。ただし、それでも各機関とも+1%台の予想ですから、消費税率引上げに伴う物価上昇には届かず、夏季ボーナスの実質購買力は昨夏よりも低下するという結論になります。従来からこのブログで指摘しているように、景気回復・拡大をさらに力強くするためには、企業部門に滞留している購買力を家計部門において活用できるようにすることが重要であり、私は賃上げを重視していますが、デフレ脱却の観点からもボーナスを含む賃上げは最重要の課題のひとつであると考えるべきです。また、そのためにも、安倍内閣の3本目の矢である成長戦略が重要となりますが、企業の期待成長率が伸び悩んでおり、企業家のアニマル・スピリットがサッパリ上向かない現状で、成長戦略はいわゆるターゲティング・ポリシーとなって財政リソースのバラマキに終わるのではなく、期待成長率を引上げアニマル・スピリットを鼓舞するような内容になることが必要だと考えています。
最後に、一例として、三菱リサーチ&コンサルティングのリポートのp.6/8から夏のボーナス予想のグラフを引用すると以下の通りです。

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2014年4月13日 (日)

今季初の延長戦を代打関本選手のサヨナラ打で制し巨人を3タテ5連勝で2位浮上!

  HE
読  売0000010000 150
阪  神0000100001x 290

復調なった榎田投手と大竹投手の両先発投手による中身の濃い投手戦でしたが、9回の満塁機を逃した後、延長10回にも満塁のチャンスで、代打関本選手のサヨナラ打で巨人を3タテ5連勝で2位浮上でした。ここ2試合先発でよくなかった榎田投手の好投も光りました。勝ち星がつかなかったのが残念ですが、次こそ今季初勝利を狙えると見ました。救援陣も盤石でした。ようやく打ち出した鳥谷遊撃手もサヨナラ勝ちに絡んで来て、この先の活躍を期待させるものがありました。

次の広島戦も、
がんばれタイガース!

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新しく買ったお墓に亡父の遺骨を納骨

今日は朝から一家そろってお出かけです。といっても、昨年、我が家の墓地を新たに買いましたので、そちらに10年前に亡くなった父の遺骨を納骨に行きました。我が家だけでなく、私の母と母が世話になっている妹一家もいっしょです。我が家は京都在住の折は東山今熊野にあるお寺の檀家だったんですが、何かの折につけて、京都からお坊さんに来てもらうのも考えものでしたので、こちらのお寺を紹介してもらいました。京都のお寺とこちらのお寺のご住職は従兄弟だそうです。もちろん、我が家は先祖代々の一向門徒、すなわち、浄土真宗の信者ですから、お寺も浄土真宗です。納骨の後、精進落としの昼食をいただいて帰宅しました。
下の写真はお墓の前で並んだ母と私です。背景は霊園の墓地ですが、お線香の煙がもうもうとしていたりします。

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2014年4月12日 (土)

今週の読書から

今週の新刊書の読書結果です。

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まず、岩井克人ほか『経済学は何をすべきか』(日本経済新聞出版社) です。最初の章の岩井教授による「経済学に罪あり」はかなり読みごたえがあります。新古典派的な経済学に疑問を呈し、ケインジアンな不均衡動学に基づく経済学理論を展開しています。何分、2008-09年の金融危機により従来型の経済学への信認が大きく揺らいでいますし、岩井教授のような視点でマルクス主義的な経済学も視野に収めつつ、バランスのいい議論は必要かと私も思います。特に、岩井教授は新古典派的な効率の追求は安定を損ないかねないと主張し、効率と安定は必ずしもトレードオフとは私は考えないものの、この観点は重要と受け止めています。ただし、岩井教授は「貨幣を使う経済であることによって、効率性を高めれば不安定になり安定性を求めると効率性が損なわれる二律背反」と主張していますので、私と違って何らかの効率と安定のトレードオフを前提にしているのかもしれません。その場合、本書に明記されていないものの、政府の介入が何らない純粋な市場をひとつの効率性の一方の極に置き、他方、政府がすべてを決める社会主義的な市場、というか、それはもはや市場とは呼べないような気もしますが、取りあえず、これを安定の極に置いた議論が想定されているのかもしれません。もちろん、実際には、各国の市場はこの間のどこかに位置するわけで、より効率を重視するか、より安定を重視するか、といった選択の問題になる可能性はうかがえます。また、岩井教授は貨幣に関する投機性を主張し、貨幣を受け取ること自体が、その後の貨幣の利用を前提とした投機的な行為だと指摘するんですが、「じゃあ、どうすればいいのか」という疑問も残ります。不安定性を内包するケインズ的な投機と安定性の向上に寄与するフリードマン的な投機の見方については、ケース・バイ・ケースなんだろうと私は考えています。第2章と第3章はどうしてこの本に収録されたか、私にはよく分からないんですが、第4章の「経済学にイノベーションを」で大橋教授が展開する経済学の政策貢献の役割についての議論はそれなりに面白いと感じました。経済学は有限で希少な資源を効率的に配分するために役立つと考えられているんですが、経済全体として供給能力が潜在需要を上回っていて飽和状態であったり、デジタル・コンテンツのようにほぼ限界費用ゼロでコピー可能で資源の希少性が欠如しているなど、古典的な経済学の有用性に当てはまらないケースの指摘も、私にはもっともと考えられます。やや本としては各章のカップリングが悪いと感じられるかもしれませんが、個別のチャプターは独立した論文としても参考になるように感じます。

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次に、クリスティア・フリーランド『グローバル・スーパーリッチ』(早川書房) です。著者は長らく Financial Times の記者を務めたジャーナリストですが、昨年年央にカナダ自由党から政界に進出することを表明したそうです。ともあれ、ジャーナリストの書いたノンフィクション本ですが、ある程度はスーパー・リッチに関する学術的な興味も満たせるように配慮されています。例えば、グローバル・スーパーリッチであるプルトクラート出現の背景として、テクノロジー革命とグローバル化を上げ、スーパースターとして富を蓄積する際には、クライアントが豊かなマーシャル効果、クライアントが増加するローゼン効果、クライアントとの取引条件が改善するマーティン効果、さらに富が富を蓄積するマタイ効果などと分析をしていたり、また、公立高校からハーヴァード大学やスタンフォード大学などの一流校に進んだことから、現体制の欠陥を外側から見出しやすく、かつ、現体制への帰属意識に乏しい人々がプルトクラートの無視できない部分を形成している、などの指摘も興味深いところです。しかし、現在のスーパー・リッチは18-19世紀英国的な土地所有とその相続に基づく階級ではなく、労働による報酬を基礎とする階級である、という部分はいいんですが、経営者≒CEOと創業者の違いを無視しているような気もします。私は違いがありそうな気がしなくもないんですが、ア・プリオリに無視されている気がします。また、労働に基づく報酬でなく、ソ連の社会主義崩壊に伴う国営企業の民営化で不正に近い行為を行ったロシアのオリガルヒとか、メキシコのスリムもこれに近い気がしますが、米国的な労働に基づくスーパー・リッチと思考や行動のパターンを同列に論じています。やや整合性の欠如を感じないわけでもありません。最後に、そもそも論ですが、経済学的に生産性に応じて報酬を受け取っているとすれば、あくまでそう仮定すればということですが、私なんぞの平均的な労働者と軽く105くらい違う報酬を受け取っているスーパー・リッチは、生産性でホントにそれだけの差があるのか、という疑問が残ります。生産性にそれくらいの差がありそうな気もしますが、そこまでの差はないんじゃないかという自負も残っていたりします。

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次に、坂井豊貴『社会的選択理論への招待』(日本評論社) です。タイトルの通り、社会的選択論の入門書です。著者の業績を見る限り、ハーヴィッツ教授らが2007年にノーベル経済学賞を授賞された折のメカニズムデザインの理論を専門にしているようにも見えます。もっとも、私はこの分野に詳しくありませんので詳細は不明です。それはともかく、18世紀フランスのボルダとコンドルセから説き起こして、第5章と第6章のアローの不可能性定理まで、社会的な選択論を歴史的かつ理論的にコンパクトに解説しています。特に、次の原田さんの『若者を見殺しにする日本経済』のバックグラウンドにもなっていますが、年齢層の高い引退世代の投票パワーに基づくシルバー・デモクラシーを勘案すれば、何らかのウェイト付きの選択が可能になるようなシステムを考える必要があるにもかかわらず、我が国に限らず民主主義国ではまだまだ単純多数決が用いられていることが多い現状がもっと改善される必要があり、そのためには、単純多数決に代わるシステム構築のために、こういった社会的な選択理論の議論が重要になります。また、第4章 政治と選択 の 4.6 64パーセント多数決と改憲 では、3案ある場合の推移律をシャットアウトするためには64パーセントの多数が必要との既存研究を紹介し、我が国の改憲プロセスにおける 2/3 の多数による改憲発議の正当性を論じています。とても興味深い議論です。

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ここから2冊はめずらしく新書の読書感想文です。まず、原田泰『若者を見殺しにする日本経済』(ちくま新書) です。私が長らくこのブログなどで主張し続けて来た世代間格差、すなわち、我が国では高齢者が破格の優遇を受けている一方で、若年層が劣悪な状態に置かれている、というのはかなり有識者の間でもコンセンサスが出来つつあるような気がします。2月2日付けのエントリーで取り上げた山田昌弘『なぜ日本は若者に冷酷なのか』(東洋経済) も少なくともタイトルはそうですし、本書も同じ視点を共有しています。特に、本書ではp.52で、「現在の社会保障とは、特定の世代の人が得をして、そうでない人が大損をする制度である。」と喝破し、まったく私も同感だったりします。しかし、その背景にあるシルバー・デモクラシーにまで目が届いていないのは少し残念です。詳しくは記しませんが、作者の専門分野である第5章から第6章の金融政策や成長戦略に関する論考もズバリと本質を突いており、幅広く私と意見が共通していると感じられました。ただし、第7章の教育に関しては異なる意見をもつ人も少なくないと感じてしまいました。終章がとてもよい取りまとめになっています。

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次に、古賀良彦『睡眠と脳の科学』(祥伝社新書) です。私はその昔から8時間睡眠の信奉者だったんですが、最近の報道でそんなに寝なくてもいいような指針を厚生労働省で作成中という記事を見て、この新書を借りました。本書では古賀教授は7時間睡眠を推奨し、p.27 で死亡率のグラフなどを持ち出して説得的だったりします。また、哲学的あるいは医学的な睡眠の考え方も随所に散りばめられている一方で、実践的な睡眠の取り方にも配慮されています。第4章 ケース別の睡眠術 がそうです。時差ボケの解消方法などは常識的ですし、寝酒が睡眠の質を低下させるのは直感的に理解できるとしても、昼寝が推奨されないのは私には少し不思議でした。「眠い時に寝る」というのは決して悪くないように思うんですが、本書では「まとまって7時間寝る」というのを重視しているのだと感じました。ただし、p.139 の「かくれ不眠」チェックシートはやや厳しいと受け止めています。私はとても寝付きよく、ほぼ7時間、トイレにも行かずに一気に熟睡しますが、そんな私でもこのチェックシートで2つにマルが付きます。もちろん、睡眠原理主義的な本ですから、このあたりは割り引いて考える必要があるのかもしれません。

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最後は小説が2冊で、いずれも私の好きな作家の作品です。まず、吉田修一『愛に乱暴』(新潮社) です。この作者の最新作『怒り』(中央公論新社) 上下巻はすでに3月9日付けのエントリーで取り上げていて、その直前作ということになります。とある中年夫婦の夫の不倫をめぐる物語です。不倫をしている夫が真守、その妻が桃子という名ですが、実は桃子は真守の後妻で、前妻の律子がいた時から桃子は真守と不倫し、桃子が妊娠して子を成さない律子を追い出す形で真守と結婚したんですが、結局、流産して子を成さなかった、という前提です。とてもユニークな構成を取っていて、全20章がすべて (1) 不倫をしている時の桃子の日記、(2) 本文=不倫をしている真守とその妻である桃子の初瀬家の日常、(3) 現在の桃子の日記、という構成になっています。最初のうちは(1)の部分が現在進行形の真守の不倫相手である奈央の日記ではないかと読み手に誤認させるような書き方を、おそらく故意にしています。ある意味で、綾辻行人や我孫子武丸の一部のミステリ作品のような書き方だと感じてしまいました。そして、真守の不倫の進行に対して、なぜか、桃子はチェーンソーを買い込んだりします。不倫に関して倫理的な読み方をすれば意見は分かれると思います。圧倒的に、不倫をしている真守が一方的に悪いという意見が常識的であって、喧嘩両成敗的に真守と桃子の両者の非を認めるのは、むしろ、真守に有利な見方だと私は考えますが、この真守と桃子の夫婦の倫理面についてはいろんな見方が出来ると思います。さすがに我が国有数の売れっ子作家の小説ですから、軽快に面白く読めます。

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最後に、森博嗣『キウイγは時計仕掛け』(講談社ノベルズ) です。この作者のGシリーズの最新刊です。しかし、Gシリーズの主要人物である探偵の赤柳初朗は登場しません。Gシリーズの9作目ですから、S&MシリーズやVシリーズに準じれば、次の10冊目で打止めということになるのかもしれません。登場人物については同窓会みたいです。すなわち、建築学会の総会における事件発生ということで、どちらかというと、GシリーズとともにS&Mシリーズの登場人物もいっぱいです。犀川創平、西之園萌絵などです。なお、この作家のGシリーズの人物相関図が出版社のサイトにあります。何らご参考まで。建築学会の総会開催中の伊豆の大学で殺人事件が発生し、相変わらず、殺人の動機はやや希薄なまま論理的に実行可能な犯人が特定されます。謎解きはシャープに論理的ですが、どうしてキウイなのか、さらに、キウイにγが書いてあったり、プルトップが付けてあったりするのか、私には理解できませんでした。キウイに関するこれらの点がどこまで解明されたのか不明です。

大多数の善良なる日本人にはどうでもいいことのような気がしますが、昨年のゴールデンウィークには、私はジャレド・ダイヤモンド教授の本、すなわち、『銃・病原菌・鉄』と『文明崩壊』と『昨日までの世界』を熱心に読んだんですが、今年のゴールデンウィークはアイン・ランド『肩をすくめるアトラス』(ビジネス社) を読んでみようかと考えています。リバタリアンの教科書ともなっている本で、私のようなリベラルなエコノミストと正反対を向いている気がしますが、それはそれで、リバタリアンの考え方を理解するのも参考になりそうな気がします。大判の本で2段組み1200ページあります。持運びだけで苦労しそうです。

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2014年4月11日 (金)

神様、仏様、マートン様のスリーランと、ついでにゴメス様のタイムリーで巨人に先勝!

  HE
読  売000000010 140
阪  神00000302x 540

メッセンジャー投手と杉内投手の両先発投手の息詰まる投手戦でしたが、中盤からゲームが動き始め、マートン選手のスリーランで先制した阪神が巨人に完勝でした。メッセンジャー投手の好投も光りましたし、8回ダメ押しのタイムリーを放ったゴメス選手も、今年の外国人選手はアタリだと実感させる試合でした。

明日も、
がんばれタイガース!

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安定したプラスを続ける企業物価とついでに、消費税率引上げの反動減が出たデジタル家電販売

本日、日銀から3月の企業物価指数 (CGPI)が発表されています。国内物価上昇率は前年同月比で+1.7%と、やや上昇率の幅が小さくなりましたが、安定したプラスを続けています。まず、統計について報じている記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

13年度の国内企業物価、5年ぶり伸び率 円安でコスト上昇
日銀が11日発表した2013年度の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は102.4と、前の年度比で1.9%上昇した。円安を背景に輸入物価が上昇し、企業の調達コストの押し上げにつながった。上昇率は08年度(3.1%上昇)以来5年ぶりの大きさだった。
企業物価指数は出荷や卸売り段階など企業間で取引する製品の価格水準を示す。項目別にみると「電力・都市ガス・水道」「石油・石炭製品」や「非鉄金属」などが上昇した。円安による原材料の輸入品価格の上昇が影響した。一方、販売競争の高まりによる値下げ圧力が強い「情報通信機器」などは下落した。
円ベースでの輸出物価は前の年度比で10.3%上昇。比較可能な81年度以降では最も大きい伸び率だった。輸入物価も13.5%上昇し、05年度(17.3%上昇)以来8年ぶりの大きさだった。
同時に発表した3月の指数は102.8と、前年比で1.7%上昇した。プラスは12カ月連続。電力料金の引き上げで「電力・都市ガス・水道」が上昇した。全820品目のうち前年比で上昇した品目は396品目、下落した品目は306品目と7カ月連続で上昇品目が下落品目を上回った。
4月から消費税率が上がったが、日銀は「駆け込み需要や反動の価格動向への影響はまだ明かではなく注視していきたい」と話している。

やや2013年度の年度統計に偏りがあるものの、いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの企業物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルは国内と輸出入別の前年同月比上昇率を、下のパネルは需要段階別を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。いつものお断りですが、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気循環の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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企業物価上昇率は3月になって、円高修正の効果が一巡し、輸出入物価の上昇率が大きく低下したことに加え、国内物価上昇率も少し上昇幅を縮小させましたが、1%を超えて2%に達しないレンジながら安定的にプラスを続けていると評価できます。前年同月比プラスは12か月連続です。ただし、GDPデフレータを別にして、物価指数はすべからくラスパイレス指数ですから、基準年から3年余りが経過して、評価するに当たって上方バイアスには注意が必要です。前月比で上昇に寄与した主な品目は電力・都市ガス・水道が+0.06%、石油・石炭製品が+0.04%となった一方で、逆に、マイナス寄与した品目はスクラップ類▲0.06%、非鉄金属▲0.05%となっています。2013年度を通じた動きでは、国内物価が前年度比で+1.9%の上昇となり、リーマン・ショック直前の時期を含む2008年度の+3.1%に次ぐ上昇幅を記録しました。しかし、4月からは消費税率の引上げに伴う需給ギャップの悪化が物価の下押し圧力となると考えられており、為替相場の円安傾向の一巡とともにデフレ脱却には逆風となる可能性があります。

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ついでながら、デジタル家電などの調査会社大手のBCNから、4月第1週の4月1-7日における「デジタル家電販売数量実績」がプレス・リリースされています。上のグラフはBCNのサイトから引用しています。業務ソフトを除き、パソコン、テレビ、デジカメなどは4月第1週には消費税率引上げ前の駆込み需要の反動で前年同期比でマイナスとなりました。ただし、パソコンはWindows XPのサポート終了に伴う買換え需要が見込まれることから極端な反動減は避けられると見込まれ、また、テレビも地デジ移行に伴う 2011年7-8月にかけての反動減よりは影響が小さいと予想されています。ただし、デジカメについてはスマートフォンの普及に伴う市場縮小傾向は依然続いており、低価格のコンパクト・カメラを中心に販売台数減少の傾向は当面続くと考えられています。

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2014年4月10日 (木)

風呂から上がると上本選手のタイムリーで阪神がサヨナラ勝ちしていた!

  HE
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阪  神002003001x 6100

帰宅がやや遅くなり、前の経済ブログを書き上げてアップした後、同点を確認したまま入浴して、風呂から上がると阪神がサヨナラ勝ちしていました。そのシーンはまったく見ていないんですが、上本選手のタイムリーのようです。まあ、勝ちゃあいいです。

明日からのジャイアンツ戦も、
がんばれタイガース!

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2月の機械受注は1月の大幅増からの反動減を記録!

本日、内閣府から2月の機械受注統計の結果が発表されています。GDPベースの設備投資の先行指標となる船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は前月比▲8.8%減の7696億円でした。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

2月の機械受注8.8%減 基調判断を下方修正
内閣府が10日発表した2月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)が7696億円と前月比で8.8%減った。減少は2カ月ぶりで、内閣府は基調判断を1月の「増加傾向にある」から「増加傾向に足踏みがある」に下方修正した。下方修正は2012年10月以来、1年4カ月ぶりとなる。
機械受注は国内総生産(GDP)の設備投資に3-6カ月先行するとされる。2月の動向は消費増税後の4-9月期の設備投資に影響する。
判断の修正について、内閣府は製造業、非製造業ともに前月から減少したことなどを理由に挙げた。「機械受注の単月の数字はばらつきが大きく、1-3月期の実績値などを見極める必要がある」とも説明した。
2月は比較可能な2005年以降で2番目に高い伸びだった1月の反動が出た形となった。
製造業からの受注額は2923億円で前月比11.9%減った。マイナスは2カ月ぶりで、全15業種のうち9業種で減少した。1月に大型案件の発注があった化学機械が減ったほか、工作機械の注文も少なかった。造船や自動車、鉄鋼メーカーからの発注は増えたが、製造業全体の落ち込みを補うには力不足だった。
船舶・電力を除く非製造業からの受注額は前月比8.4%減の4680億円だった。前月に多かった通信業や金融業、保険業からのコンピューターなどの発注が減った。運輸業・郵便業からの鉄道車両などの注文も前月から減少した。電力や船舶を含む全12業種のうち10業種で減少した。
2月に発表した1-3月の受注は前期比2.9%の減少を見込む。3月がマイナス2.6%以上であれば達成できる。

いつもの通り、いろんなことをとても適確に取りまとめた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、直近の景気の谷は2012年11月であると仮置きしています。

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2月のコア機械受の前月比▲8.8%減について考えると、日経QUICKによる予測中央値に従えば、市場の事前コンセンサスは前月比で▲2.6%減、予測レンジでも▲6.7%減から+0.6%増でしたから、市場の予測レンジの下限を下回ったことになります。上のグラフを見ても、後方6か月移動平均の濃い色の太線が、決して下向きになったわけではありませんが、やや停滞感を示しているようにも見えます。短期的には増加基調がピークアウトしている可能性は否定できません。ですから、統計作成官庁の内閣府では基調判断を「増加傾向にある」から「増加傾向に足踏みがみられる」に下方修正しています。引用した記事にもある通り、機械受注が1-2四半期ほど設備投資に先行すると仮定すれば、2014年度前半の設備投資が停滞する可能性を示唆している可能性はありますが、もともと振れの激しい統計ですから単月での判断には限界があります。実際のところ、前月1月が+13.4%増と大幅な増加を示しましたから、今日発表された2月統計はその反動減という見方は否定できません。2月のコア機械受注7,696億円は昨年12月の7,441億円を軽く上回っていたりします。

12月統計が発表された時点から、今年2014年1-3月期は前期比で▲2.9%の減との見通しでしたから、ある意味では、従来の想定されたパターンに乗っているのかもしれません。なお、この1-3月期見通しは、引用した記事にもある通り、3月に前月比▲2.5%減以上でも達成可能となる一方で、1-3月期に前期比で増加するためには3月分は前月比+6.7%の増加が必要となります。なんとなく3月のレンジの中だという気もしますが、3月統計の発表時には季節調整が修正されますので、何かが起こる可能性があります。

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2014年4月 9日 (水)

将棋の第72期名人戦七番勝負第1局は挑戦者の羽生三冠が先勝!

昨日から東京都文京区のホテル椿山荘で始まった将棋の第72期名人戦七番勝負第1局は本日終局し、後手番の羽生挑戦者が森内名人に178手で勝ち、4期振りの名人位返咲きに向けて好スタートを切りました。下の終了図は朝日新聞のサイトから引用しています。

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国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook は順調な世界経済の成長を見込む!

この週末の国際通貨基金(IMF)と世銀の年次総会に向けて、「世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) が公表されています。副題は Recovery Strengthens, Remains Uneven です。直訳ですが、「経済回復は力強さを増すも、ばらつきが残る」といったところでしょうか。まず、USA Today のサイトから記事の最初の5パラまでを引用すると以下の通りです。なお、記事の6パラ目以降は "Forecasts for other regions" が続きますが、長くなりますので割愛します。

IMF: World economy stronger; recovery uneven
The International Monetary Fund said Tuesday the global recovery will gain strength this year, but it trimmed its growth forecast amid a sharp rise in Japan's sales tax and a slowdown in emerging markets.
An accelerating U.S. recovery will help the world economy grow 3.6% this year, the IMF said, up from 3% in 2013 but down slightly from its 3.7% projection in January. Growth will pick up to a 3.9% pace in 2015, the fund said in advance of the spring meetings of the IMF and World Bank in Washington this week.
"A recovery which was starting to take hold in October is becoming stronger but also broader," IMF chief economist Olivier Blanchard said at a press briefing Tuesday. But, he added, "the recovery remains uneven."
The IMF's 2014 growth forecast for the U.S. was unchanged at 2.8%. That is the highest among advanced economies, which the IMF said are driving the global expansion.
"A major impulse to global growth has come from the United States," the IMF said in its World Economic Outlook, adding that U.S. growth will pick up to 3% next year. The IMF cited more modest federal government spending cuts this year, higher household wealth, the recovering housing market and banks that are more willing to lend.

このブログは国際機関のリポートに着目するという、ひとつの特徴を持たせていますので、第1章の経済見通しを中心に、第3章と第4章の分析編も含めて、簡単に取り上げておきたいと思います。図表は主としてIMFのサイトにアップしてあるpdfの全文リポートから引用しています。

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まず、上の表はIMFのサイトから成長率見通しの総括表を引用しています。クリックすると、リポート p.2 Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections だけを抜き出した1ページのpdfファイルが別タブで開きます。世界経済の成長率は2013年の3%から2014年には3.6%、翌2015年には3.9%と、昨年2013年10月の見通しから大きな変更はなく、今年から来年にかけて世界経済の成長は力強さを増すと見込まれています。ただし、今年2014年1月の最新の見通しから2014-15年とも下方修正されているのは、基本的に、日本の消費増税に伴う成長の減速と新興国・途上国で景気の停滞が続くからです。

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地域別に成長率見通しを見たグラフは上の通りです。リポート p.3 Figure 1.2. GDP Growth Forecasts を引用しています。米国経済が好調な一方で、我が国は消費増税に起因して2014-15年はやや成長が鈍化します。当然ながら、消費税率引上げを実施する四半期の成長は大きく落ちます。また、ユーロ圏諸国は2013年後半からようやくプラス成長に回帰し、2014-15年は着実な成長経路をたどると見込まれています。

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世界経済が順調な成長を続ける一方で、物価は安定的に推移すると見込まれています。上のグラフは、リポート p.6 Figure 1.5. Global Inflation を引用しています。特に私が注目したのは、真ん中の段のヘッドラインの消費者物価上昇率です。我が国では、今年2014年4月1日の消費税率引上げの影響が一巡した後、消費者物価上昇率は+1%前後に戻り、日銀のインフレ目標である2%には達しないと見込んでいるようです。

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今回の見通しではリスクは決して大きくないんですが、リポート p.14 Figure 1.14. Recession and Deflation Risks を引用すると上の通りです。見れば分かると思いますが、景気後退とデフレのリスクを定量的に示しています。景気後退のリスクについては、昨年2013年10月時点と比べて、ユーロ圏諸国が低下した一方で、日本は消費税増税に伴ってリスクが高くなっていますが、それでもまだユーロ圏諸国よりも景気後退の蓋然性は低いと評価れています。また、我が国がデフレに陥る蓋然性はゼロだったりします。

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地域編の第2章を飛ばして、分析編の第3章では、このところ低下が続いている金利を取り上げています。上のグラフは、リポート p.81 Figure 3.1. Ten-Year Interest Rate on Government Bonds and Inflation を引用しています。日本を除くG5諸国の国債の実質金利が下がり続けているのが見て取れます。当時の米国連邦準備制度理事会(FED)のバーナンキ議長がサブプライム・バブル華やかなりしころに、"Global Saving Glut" なんて表現を持ち出して、スピーチで使ったりしていました。私もそれほど深く読んではいませんが、それに近い分析なんではないかと受け止めています。低金利は、財政赤字のサステイナビリティの問題を緩和する方向に作用しますが、金融政策にはゼロ金利制約を課す可能性が高まります。その意味で、新たな政策課題が提起されている可能性が示唆されています。

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分析編第4章では、このところ景気の停滞が目立つ新興国・途上国経済に焦点を当てています。上のグラフは、リポート p.124 Figure 4.8. Historical Decompositions of Real GDP Growth into Internal and External Factors を引用していますが、外需と外国からの資金流入と交易条件からなる外部要因が、新興国・途上国の成長に対してプラスの効果を及ぼす割合が小さくなったり、あるいは、この先2-3年くらいマイナスに作用したりする可能性が示唆されています。政策的にマクロ経済の不均衡を引き起こすことなく、成長の勢いを回復するための手段を分析する必要について言及しています。

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最後に、IMFの見通しを離れて、すっかり見逃していたんですが、アジア開発銀行(ADB)の「アジア開発見通し」 Asian Development Outlook 2014: Fiscal Policy for Inclusive Growth が先週の4月1日に公表されています。ADBのサイトから引用した上の Infographic で包括的に紹介しておきます。なお、上の画像をクリックすると、pdfの全文リポート pp.xxi-xxii の成長率と物価上昇率のそれぞれの総括表のページだけを抜き出した2ページのpdfファイルが別タブで開きます。この経済見通しでは、2013年に6.1%だったアジア新興国・途上国の成長率は、2014年に6.2%、2015年は6.4%に高まり、回復する先進国経済からの強い外需は中国経済の減速により一部相殺されるものの、全体として堅調に推移するとの見通しが示されています。

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2014年4月 8日 (火)

絵に描いたような逆転劇で今季甲子園第1戦を落とす!

  HE
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阪  神000022010 5131

今シーズン甲子園での第1戦を楽しみに今日は7時前に帰宅しテレビ観戦です。タイガースが藤浪投手、ベイスターズが久保投手と馴染みの投手の先発で試合は進み、7回表ツーアウトまではとってもいい感じの展開だったんですが、その後、絵に描いたような逆転劇を食らってしまいました。あそこで投手交代はないでしょうし、藤浪投手の一人相撲といったところでしょうか。でも、打線がかなり活発に打ち始めましたし、最終回の粘りは明日につながるものを期待させます。最後のブランコ選手のヒーロー・インタビューでご無沙汰していたスペイン語を聞いて懐かしかったです。

明日は、
がんばれタイガース!

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3月の景気ウオッチャー調査と2月の経常収支が発表される!

本日、内閣府から3月の景気ウォッチャー調査の結果が、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から+4.9ポイント上昇の57.9となり、3か月振りに上昇となりました。ただし、先行き判断DIは前月からさらに▲5.3ポイント低下の34.7となり、4か月連続で低下しています。現状判断DIと先行き判断DIが大きな乖離を示しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で見て+6127億円の黒字と昨年2013年9月以来5か月振りの黒字を記録しました。まず、かなり長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月街角景気、先行き判断指数34.7 東日本大震災時に次ぐ低さ
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は5.3ポイント低下し34.7となり、過去3年では東日本大震災が起きた2011年3月(26.6)に次ぐ低い水準となった。悪化は4カ月連続。4月の消費増税前の駆け込み需要の反動減や、増税に伴う消費者心理の悪化が懸念されている。
家計分野では「消費増税前の駆け込み購入でお金を使いすぎ、外食の回数や使用金額はしばらくは確実に落ちそうだ」(沖縄の居酒屋)といった声が上がった。企業分野では「4月から消費増税と石油石炭税の上乗せで燃料油価格はさらに高騰する」(四国の輸送業)と懸念する声も聞かれた。
ただ、賃上げが広がりつつあることもあり「1997年の消費増税と違い、影響は限定的で2カ月ほどだと思っている」(北関東のスーパー)との見方もあった。内閣府は「総じてみると、駆け込み需要の反動減による落ち込みは2-3カ月とみている人が多かった」と説明した。
一方、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比4.9ポイント上昇の57.9と、比較可能な01年8月以降で最高だった。改善は3カ月ぶり。消費増税直前の駆け込み需要が活発で、家電や家具などの耐久消費財に加え、食料品や日用品など幅広い品目で売り上げが伸びた。
好不況の分かれ目となる50は14カ月連続で上回った。14カ月連続で50を上回るのは初めて。内閣府は街角景気の基調判断を前月の「緩やかに回復している」で据え置いた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は90.9%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
2月の経常収支、6127億円の黒字 貿易赤字は縮小
財務省が8日発表した2月の国際収支状況(速報)によると、モノやサービスなど海外との総合的な取引状況を示す経常収支は前年同月比5.7%減の6127億円の黒字だった。経常収支の黒字は5カ月ぶり。高止まりが続いた貿易赤字が縮小したことに加え、企業が海外から受け取る配当や利子など第1次所得収支の黒字は拡大が続き、経常黒字に転じた。
貿易・サービス収支は7268億円の赤字で、赤字は23カ月連続となった。このうち貿易収支は5334億円の赤字。輸出は5兆9411億円で前年同月比15.7%増えた。鉱物性燃料や自動車、プラスチックなどの輸出額の増加が目立った。輸入は14.1%増の6兆4745億円。液化天然ガス(LNG)や半導体等電子部品などが増えた。旅行や輸送動向を示すサービス収支は1934億円の赤字だった。
第1次所得収支は3.6%増の1兆4593億円の黒字で、3カ月連続で黒字幅が拡大した。企業の海外事業投資の見返りである直接投資収益は減少したが、配当金や利子など証券投資収益が増えた。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーの現状判断DI及び先行き判断DIのグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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最初のパラに書いた現状判断DIと先行き判断DIの乖離は、当然ながら、消費税率引上げをまたぐからです。企業関連や雇用関連よりも、特に、家計関連で3月の現状判断DIは駆込み需要のために大きく上昇しています。納車日の関係で自動車こそ一巡したものの、日用品やその他の幅広い品目で駆込み需要が強まりました。ただし、統計的な数字はまだ世間には出回っていないんですが、その後の4月1日以降の反動減は、メディアの報道をトピック的に見る限り、それほど大きくないという印象を私は持っています。もっとも、その報道のひとつが上の引用した記事の「駆け込み需要の反動減による落ち込みは2-3カ月」というのですし、もうひとつは今日のお昼のNHKニュースの経済産業省の茂木大臣の閣議後の発言「消費増税の反動減は想定内」のキャリーだったりしますから、政府発表のバイアスは感じなくもないところです。やはり、注目すべきは駆込み需要による現状判断DIの上昇よりも、先行き判断DIの大きな低下です。現状判断DIの57.9と先行き判断DIの34.7の大きな開きも気にかかります。極めて大げさな表現をすると、バブル経済ではないんですが、膨らんだ風船が割れてしまわないまでも急速にしぼむ印象です。さらに、現状判断DIは家計部門がけん引している一方で、先行き判断DIは幅広く低下を示していたりします。だから、というわけでもないんでしょうが、統計作成官庁である内閣府による基調判断は引用した記事にあるよりも実は複雑怪奇であり、「景気は、緩やかに回復している。また、消費税率引上げに伴う駆込み需要が強まっている。なお、先行きについては、駆込み需要の反動減等の影響が見込まれる」となっています。役所でも混乱しているのかもしれません。私も4月調査をじっくりと見て、もう少し考えを進めたいと思います。

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経常収支は季節調整していない原系列では5か月振りの黒字でしたが、季節調整済みの系列で傾向を見た上のグラフから読み取れるように、ほぼ最近2-3年のトレンドのライン上に乗っているんではないかと私は受け止めています。経常収支や貿易収支の赤字については、ここ数か月でいろいろとこのブログでも主張して来ましたが、先月3月19日に貿易統計を取り上げたエントリーで包括的に論じておきましたので詳しい再論はしません。結論だけを記せば、要するに、輸出が伸び悩んでいるのは、米国はともかく、欧州や中国をはじめとする新興国と我が国との景気局面の違いに起因する部分が大きく、欧州や新興国の景気が回復すれば我が国の輸出も伸びを高めると私は楽観しています。ですから、かなり曖昧な「国際競争力回復」を錦の御旗に、怪しい概念の「成長戦略」と称して、疑わしい限りの「有望産業」に政府の財政リソースを振り向けるような政策について、私は賛成できません。燃料輸入の増加についても、我が国の順調な景気拡大に起因する部分が大きく、原発を再稼働すれば燃料輸入が減少するかどうかは疑問が残る、と受け止めています。少なくとも、原発を再稼働するか停止するかに関する政策を貿易や経常収支をターゲットに割り当てるべきではありません。政策割当て問題として間違っています。そして何よりも、貿易収支や経常収支のバランスや黒字化を政策目標にすべきかどうか、エコノミストの間でコンセンサスはないと私は考えています。その意味で、日経センターの岩田理事長の下のコラムがとても参考になります。

経常収支赤字化に対する政策対応として、岩田理事長のコラムでは、貯蓄投資バランスの観点からデフレ脱却を犠牲にすることも含めて内需を縮小させて経常収支赤字の解消を図るか、あるいは、ネットで海外から恒常的に資金が流入するような環境を整備しつつ経常収支赤字を受け入れるか、と主張しています。私は直感的に後者が幅広い賛同を得られるんではなかろうかと思うんですが、いかがなもんでしょうか。

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2014年4月 7日 (月)

景気動向指数のCI先行指数は先行きの景気停滞を示唆!

本日、内閣府から2月の景気動向指数が発表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月より▲1.8ポイント下降して113.4、CI先行指数は▲4.6ポイント下降して108.5となりました。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

景気一致指数、8カ月ぶり低下 先行指数も大幅マイナス
内閣府が7日発表した2月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.8ポイント低下の113.4と8カ月ぶりのマイナスだった。記録的な大雪で工場が操業を停止したことに伴って自動車生産が減少し、販売も低調だった。1月に大きく伸びた発電所向けの蒸気タービンやボイラーの出荷が反動で減ったことも響いた。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を、最上位の「改善を示している」で据え置いた。
数カ月後の先行きを示す先行指数は4.6ポイント低下の108.5と6カ月ぶりのマイナス。低下幅は09年1月(4.9ポイント低下)以来5年1カ月ぶりの水準で、リーマン・ショック後の08年11月の4.8ポイント低下に次ぐ過去4番目の大きさだった。消費者心理や中小企業の売り上げ見通しが悪化したほか、鉄鋼や化学分野で在庫が増えたことが影響した。景気に数カ月遅れる遅行指数は、0.7ポイント上昇の116.7だった。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が85.0、先行指数が44.4だった。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月だったと仮置きしています。

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2月のCI一致指数が低下したのは、基本的には、積雪の影響が大きいんですが、当然ながら、CI先行指数は消費税率の引上げによる買控えの反動減に対応したマインド調査、すなわち、消費者態度指数や中小企業売上げ見通しD.I.などの統計結果を反映しています。それにしても、リーマン・ショック直後の低下幅に匹敵する悪化とは、私は思いもしませんでした。CI先行指数へのマイナス寄与が大きいのは、先に上げた消費者態度指数と中小企業売上げ見通しD.I.のほか、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積などが上げられます。2月統計の段階では、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いています。なぜなら、機械的に下す基調判断の基礎となるCI一致指数の3か月後方移動平均は+0.67ポイント上昇、7か月後方移動平均は+0.71ポイント上昇を、それぞれ記録し、まだまだ連続してプラスを維持しているからです。内閣府の「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、3か月後方移動平均の符号の変化で「足踏み」、さらに、7か月後方移動平均の符号の変化で「局面変化」、さらに、原則として3か月以上連続して3か月後方移動平均が下降すれば「悪化」という段階を踏むことになります。多くのエコノミストの間で、4月からの消費税率引上げは、現在拡大を続けている景気の腰折れにはつながらない、との緩やかなコンセンサスがあることは何度かこのブログでも触れました。

週末のIMF世銀総会に向けて、米国東海岸時間の明日にIMFから「世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) の見通し編が公表される予定となっています。実は、私の方で見逃していたんですが、アジア開発銀行 (ADB) の「アジア開発見通し」 Asian Development Outlook 2014: Fiscal Policy for Inclusive Growth も4月1日に公表されています。なるべく早くこれらの国際機関の経済見通しを取り上げたいと考えています。

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2014年4月 6日 (日)

終盤の大逆転で乱打戦を制してヤクルトに勝つ!

  HE
阪  神020000364 15201
ヤクルト033000200 8110

帰宅したのが6時前で、1時半試合開始と記憶していたんですが、ちょうど試合が終わるところでした。雨で中断があったのかと思いましたが、今日も打撃戦というか、乱打戦というか、両チームとも投壊の中で阪神が打ち勝った試合でした。4-5番に控える両外国人をはじめ、打線は上向きかもしれませんが、いいピッチャーに当たれば沈黙しそうな気もします。しかし、投手陣があてに出来ないので打ち勝つしかないのかもしれません。

甲子園に戻ったDeNA戦も、
がんばれタイガース!

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先週の読書から

先週の読書は、かなり久し振りに読んだ経済書をはじめ、以下の通りです。

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まず、ダニ・ロドリック『グローバリゼーション・パラドクス』(白水社) です。モノの貿易やカネの資本や金融などはグローバルに展開する中で、財政金融政策をはじめとする統治の世界は国内にとどまる、というパラドックスを扱っています。グローバル化する市場と統治を担う政府を対立的に捉えるのではなく、市場を補完する政府という見方を示しています。その上で、国内では政府は取引費用の低減を図っていますが、資本や金融のグローバル化の中では政府は一定の取引費用を維持する責任があるとしています。例えば、トービン税が思い浮かびます。また、国際金融に関するトリフィンのトリレンマになぞらえて、民主主義と国民国家とハイパー・グローバリゼーションの3つを同時に追求することは出来ないと論じます。p.234の図が面白いです。ハイパーグローバリゼーションを諦めればブレトン・ウッズの妥協の世界、国民国家を諦めればグローバル・ガバナンスの世界、そして、民主主義を諦めれば黄金の拘束服の世界となります。この「世界経済の原理的な政治的トリレンマ」(p.17)については、どこまで議論が正確かは私には分かりませんが、とても興味深いところです。原書は2011年の出版ながら、とても新しい視点を提供してくれます。

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次に、橘木俊詔・広井良典『脱「成長」戦略』(岩波書店) です。逆に、この本はとても昔からある脱成長論、ゼロ成長論を展開しています。資源制約や環境問題などのために、日本のような豊かな先進国ではゼロ成長でいいじゃないかという議論で、私にはやや無責任に見えます。新興国や途上国の成長は排除していない一方で、国民生活の豊かさでも生活水準でも、何でもいいんですが、どこの水準に達したらゼロ成長でよくて、どこまでなら成長を目指すのかが極めて曖昧で恣意的な議論だと私は受け止めています。ただし、ひとつだけ私も合意できる点があります。それは、GDPのような経済変数ではなく、幸福度をひとつの政策目標というか、尺度で考えるという点です。なお、この本は、月刊『世界』で展開された橘木教授と広井教授の対談をそのまま本にしています。ですから、私が常々主張しているような世代間格差の議論をpp.62-63で広井教授が強調しているんですが、橘木教授は無視していたりして、なかなか興味深い展開が垣間見えます。

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次に、エリック・ シーゲル『ヤバい予測学』(阪急コミュニケーションズ) です。ビッグデータと似たようなものですが、少し違う予測学に関する入門書です。予測学については、3月21日の読書感想文のブログで取り上げたネイト・シルバーの米国大統領選挙の予測が極めて有名なんですが、この本はそれも含めて、ビジネスの世界の予測にも大いに着目して議論を展開しています。もちろん、データに基づく予測とプライバシーの保護の両立の難しさも焦点が当てられています。私が最も面白く読んだのは人工知能に関する章です。我が国でしたら電脳将棋、外国でしたらチェスの世界王者カスパロフを破ったディープ・ブルーなどを思い浮かべてしまいましたが、ディープ・ブルーの開発者と同じIBMはIBMなんですが、ワトソンがオープン・クエスチョン方式のクイズ番組「ジョパディ!」に挑戦するストーリーでした。これはこれで面白かったです。

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残り2冊は小説で、しかも我が国の作者による作品です。まず、芦崎笙『スコールの夜』(日本経済新聞出版) です。日経新聞主催の第5回経済小説大賞受賞作品です。作者は財務省の公務員で、日経新聞のサイトには明記されていませんが、経歴からするとキャリア公務員のような気もします。もっとも、私と同じ世代のようですが、上級職試験を通ってノンキャリなんて財務省にはいっぱいいます。それはさておき、この作品は男女雇用機会均等法施行の直後に東大法学部を卒業して、都市銀行トップの帝都銀行に女性総合職1期生として入行し、さらに、女性総合職として初めての本店管理職となった女性の視点から、組織と個人の葛藤を銀行内の派閥抗争とともに描き出しています。わりと淡々とストーリーが進み、主人公のキャラが少し曖昧なこともあり、作者が何を訴えたいのかが私にはよく分かりませんでしたが、ひょっとしたら、純文学作品として読めばかなりの出来栄えなのかもしれません。『スコールの夜』というタイトルもカンボジアから来ているんでしょうが、不明のままに終わった気がします。やや感情移入が難しく、読み方が浅くて読解力に乏しい私向きではない小説だった気がします。

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最後も小説で、これまた私向きではないんですが、樋口毅宏『甘い復讐』(角川書店) です。『スコールの夜』はまだ私の生活している世界に近い気がしないでもなかったんですが、この作品はやや描写がどぎついだけでなく、私の住む世界とかなり多くの点で違っていて、作中の登場人物の心理も取り上げられたイベントも、いずれも実感の湧かない小説でした。実際にこんな世界があるのかどうか、私にはサッパリ分かりません。

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2014年4月 5日 (土)

ヤクルトに打ち負けて神宮で連敗!

  HE
阪  神303040001 11111
ヤクルト42012102x 12192

昨夜はライアン小川投手に抑え込まれて負け、今日も打ち負けて連敗でした。薄々、この季節はデーゲームだと理解していたんですが、帰宅が遅れて試合は見ていません。負けはしたものの、ガッツリと点が入って競り合って、それなりに観戦しがいのある試合だったような気がしないでもありません。

3テタは避けるべく明日は、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計のグラフィックス

日本時間の昨夜、米国労働省から3月の米国雇用統計が発表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+192千人増加し、失業率は前月と同じ6.7%だったものの、米国の雇用の着実な改善が印象づけられています。まず、New York Times のサイトから記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。

Jobs Report Suggests a Modest but Durable Recovery
The economy created 192,000 jobs in March, better than during the depths of winter but still short of the labor market rebound that many experts had been hoping to see last month.
Still, in one hopeful sign, the Labor Department said the proportion of Americans in the work force rose slightly, as the number of people looking for work increased, suggesting workers were being lured back into the job hunt as openings began to appear.
Another encouraging signal was a revision upward by government statisticians of the number of jobs added in January and February, with employers adding a total of 37,000 more positions than first thought.
The unemployment rate remained flat from last month, at 6.7 percent, but that was almost entirely because of an increase of a half-million people in the labor force. That follows healthy gains in the labor force since the beginning of the year.
If it were not for the increase in the size of the labor force, the unemployment rate would have fallen to 6.5 percent.
The latest numbers suggest that while the economy is still failing to achieve the kind of escape velocity that experts and policy makers have long sought, it is not falling into the rut some pessimists feared was developing earlier this year.

記事ではこの後に、エコノミストへの取材結果などが続くんですが、まずまずよく取りまとめられている印象があります。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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市場の事前コンセンサスでは非農業部門雇用者数は前月から+200千人ほどの増加ではないかと見込まれていましたから、実際の統計はこれをやや下回ったもののほぼこれに近く、2月の猛烈な寒波の影響もフェイドアウトしつつあるようです。産業別の雇用者数がこれを裏付けており、サービス部門が+167千人増と全体をけん引し、特に、小売りや交通などで伸びが目立っています。2月の寒波の影響を大きく受けた産業で伸びていますので、天候要因は消滅しつつあると考えられます。特殊要因がなくなれば、従来からの見方の通り、米国の雇用は堅調と考えるべきです。

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また、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。逆にいえば、サブプライム危機前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつけて、デフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

米国連邦準備理事会(FED)は景気の改善が続けば今秋にも量的金融緩和(QE)を終了し、その後のゼロ金利政策の解除が視野に入ることになります。商品市況や為替に対する影響に注目です。

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2014年4月 4日 (金)

電子書籍の利用状況やいかに?

昨日のこのブログのエントリーでは、オンラインショッピングや動画などのインターネットサイトへの接続は、もはやパソコンではなくスマートフォンからの方が上回りつつあるという実体を伝えましたが、同じようなテーマながら、今夜は電子書籍について考えたいと思います。すなわち、3月27日にMMD研究所から「電子書籍に関する利用実態調査」というリポートが発表されています。私の認識では、電子書籍の普及はまだまだ低いものの、今後、伸びて行く方向にあるのは明らかです。昨夜のスマートフォンについては私は持っていませんので何ともなりませんが、電子書籍についてはわずかなりとも利用したことがあります。ですので、図表を引用しつつ、今年3月時点での電子書籍の利用状況について、自分自身の経験とともに簡単に紹介したいと思います。

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まず、電子書籍の利用状況は上のグラフの通りです。まだまだ過半は利用経験がありません。私も無料の電子書籍を過去に利用したことがありますが、現在は電子書籍から離れています。ただし、上のグラフの母集団はわずかに551人ですから誤差は大きいのかもしれません。

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私が電子書籍の利用を止めたのはパソコンで読んでいたから、という理由が大きいような気がします。ということで、上のグラフは電子書籍を読む際に利用している端末に対する回答結果です。スマートフォンやタブレット端末が多いんですが、私はいずれも持っていません。少なくとも、タブレット端末については電子書籍を読むために買うつもりはありません。ただ、これも母集団が110人と小さいですから誤差は大きそうです。

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続いて、電子書籍サイトの利用状況に対する回答結果が上のグラフの通りです。トップのKindleストアはAmazonです。次いで、楽天ブックスとApple iBooksが人気のようです。とうとう、母集団が67人になってしまいましたので、この3位までの3社は私は順当と考えていますが、順番については必ずしもこの通りかどうかは疑わしいと受け止めています。なお、グラフは引用しませんが、電子書籍を利用しない理由に対する回答結果も示されています。私が電子書籍の利用をやめた最大の理由は、図書館で借りられないからです。また、2月末にローソンが電子書籍事業から撤退する際のポイント還元について、朝日新聞が1月30日付けで報じた「買ったはずの蔵書が消える 電子書籍、企業撤退相次ぎ」と題した記事により、事業者の撤退により電子書籍が利用できなくなる点に警鐘を鳴らしたのも、電子書籍の普及に対しては短期的にはネガティブですが、それなりに社会的なインパクトがあったように受け止めています。

ちょうど1週間後の4月11日から開催されるIMF世銀総会に備えて、日本時間の昨夜、IMFから「世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) の分析編である第3章と第4章が公表されています。第3章では1980年代以降の世界的な実質金利の低下について、また、第4章では新興国の景気変動の背景について、それぞれ分析を試みています。それほどじっくりと読むつもりもありませんが、週が明けてから取り上げたいと思います。

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2014年4月 3日 (木)

インターネット接続はパソコンではなくスマホの時代に突入か?

先週3月26日に、テレビの視聴率などのメディア視聴行動分析サービスを提供するニールセンから、インターネット利用のスマートフォンへのシフト状況に関する極めて興味深い調査結果が公表されています。すなわち、オンラインショッピングや動画サイトの利用では、パソコンからスマートフォンにインターネット利用がシフトしつつあり、いくつかの特徴的なサイトではすでに逆転していたりします。図表を引用しつつ、簡単に紹介したいと思います。

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まず、上の画像は今年2014年2月時点で各スクリーンからのインターネット利用者数を明らかにしています。全体の利用者数は、パソコンからが5,237万人、スマートフォンからが3,874万人となり、スマートフォンのインターネットサービス利用者数はパソコンのインターネットサービス利用者数に対して74%の規模に達しています。特に、年代別で見て、40歳でクッキリと分かれて、若い世代はスマートフォンから、中高年はパソコンから、それぞれインターネットにアクセスしているのが見て取れます。カテゴリごとにみると、半数を超える8カテゴリで、スマートフォンからの利用者数がパソコンの利用者数を上回っており、また、各スクリーンからの利用者数が平均で100万人を超える人気サイトでは、全403サイトのうち60%以上のサイトでスマートフォンからの利用者数がパソコンからの利用者数を超えていました。

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上のグラフは「オンラインモール」および「ビデオと映画」カテゴリ利用者数トレンドのグラフなんですが、見れば明らかな通り、カテゴリの中でも「オンラインモール」のショッピングサイトと「ビデオと映画」の動画サイトは、2月になってパソコンからの利用者数とスマートフォンからの利用者数がほぼ同数になっています。楽天市場は昨年2013年の12月時点ですでにスマートフォンからの利用者がパソコンを上回っていましたが、その他のAmazonやYouTube、また、ニコニコ動画を運営するニワンゴでは、今年2014年2月がスマートフォンからの利用者数がパソコンを上回る転換点となっていました。上のグラフの通りです。

当然ながら、スマートフォンと同様に、パソコンがWindows 95のあたりから普及したのはインターネット接続がひとつのきっかけとなっています。しかし、部分的ながら、インターネット接続の主役はスマートフォンに交代し始めています。逆から見て、パソコンは画像や動画の編集、文書や表計算などのオフィス用途、などなどのスマートフォンと比べて優位な場面に特化するのかもしれません。

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2014年4月 2日 (水)

あっぱれドラ6ルーキー岩崎投手が5回を3安打零封で中日にボロ勝ち!

  HE
中  日000000000 060
阪  神00040461x 15160

昨年のドラフト6位、国士舘大学出身の先発岩崎投手が5回3安打と無得点に抑えた一方で、打線が大爆発して中日にボロ勝ちでした。昨夜は先発の藤浪投手が崩れた後、中継ぎも大崩れしてしまいましたが、今夜は岩崎投手をつないだ直後の6回の安藤投手こそやや不安定でしたが、続く3投手は得点差が開いたこともあって完璧な内容でした。打線も活発にルーキー先発投手を援護して16安打15得点と、半分くらい明日に取っておきたいと思ったのは私だけでしょうか?

明日も、
がんばれタイガース!

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日銀によるインフレ目標設定後の家計のインフレ期待の変化やいかに?

思い起こせば、一昨年11月の衆議院解散、12月の総選挙と政権交代に伴う安倍政権の成立によりアベノミクスが開始され、昨年1月22日に「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について (共同声明)」と題する文書が作成され、2パーセントの物価上昇率目標が設定されました。その後、日銀総裁の交代に伴い、4月4日からいわゆる「異次元緩和」が始まり、ほぼ1年が経過しました。たぶん、だからというわけなんでしょうが、先週3月27日付けで日銀レビュー「家計のインフレ予想の多様性とその変化」というリポートが発表されています。企業や金融市場参加者に比べてばらつきの大きい家計のインフレ予想が、この1年でどのように変化したのかを日銀の「生活意識に関するアンケート調査」を用いて検証を行っています。常識的ながら、非常に興味深い結果が報告されています。今夜のエントリーでは、リポートからいくつかグラフを引用して、簡単に紹介します。

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まず、リポートから、p.2【図表2】主体別にみた予想分布 を引用すると上の通りです。金融市場参加者、企業、家計の順でインフレ予想のばらつきが大きいのが見て取れます。家計のインフレ予想は上にも下にもテールがファットになっています。また、同じ順でインフレ予想の最頻値が低いのも読み取れます。平均は明らかではないものの、家計がもっともインフレ予想が高いわけです。このあたりは経済や経済学に関する一般的な知識の賦存と合致している面があり、かなりの程度にコンセンサスがあるんではないかと思います。

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そして、衆議院解散や政権交代などを経て、2012年末から2013年末にかけての家計のインフレ予想の変化を見たのが上のグラフです。リポートから、p.5【図表7】2013年入り後の予想分布 を引用しています。細線の「予測値」というのは、、①購入頻度の高い品目の価格情報、②購入頻度の低い品目の価格情報、③インフレ実感、④5年予想からなる4変数VAR(ベクトル自己回帰)モデルを用いた5年予想です。時系列的に並べても、予測値と比較しても、いかなる意味でも明らかに家計のインフレ予想に関する実績値の分布の尖度(kurtosis)が大きくなっているのが見て取れます。

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実績値と予測値が乖離しているわけですから、家計がインフレ予想に際して、時系列モデルで組み込んだ4変数以外の何らかの情報を参照している可能性があるわけで、リポートではそれは「金融政策の認知度」(p.6)ではないかと考え、2%の「物価安定の目標」の認知度別に見たインフレ予想の分布を見たのが上のグラフです。リポートから、p.6【図表 8】金融政策の認知度別にみた予想分布 を引用しています。中央銀行のインフレ目標が家計のインフレ予想に強く働きかけ、アンカーとして作用していることが理解できようかと思います。

従来からばらつきの大きかった家計のインフレ予想が、日銀の「物価安定の目標」設定に従って分布にかなり特徴的な変化を生じています。期待に働きかける金融政策の重要性を強く示唆したリポートだと受け止めています。

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2014年4月 1日 (火)

関西に戻ったホームゲームでもまたまたボロ負け!

  HE
中  日000002071 10130
阪  神000000000 030

高校野球の続く甲子園はまだ使えないながら、関西に戻ったホームゲームでも、やっぱり、ボロ負けでした。期待の藤浪投手が崩れた後、中継ぎも大崩れして、またまた2ケタ失点を喫した一方で、打線はわずかに3安打と沈黙しました。

明日は、
がんばれタイガース!

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日銀短観の景況判断は5期連続で改善した後、4月からは大きく低下の見込み!

本日、3月調査の日銀短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは、前回の12月調査から+1ポイント改善し、+17となりました。5四半期連続の改善となります。また、本年度2014年度の設備投資計画は大企業で前年比ほぼ横ばいの+0.1%増と見込まれています。まず、日銀短観について報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

3月日銀短観、景況感5期連続改善 大企業製造業
日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス17だった。前回の2013年12月調査(プラス16)から1ポイント改善した。DIの改善は5四半期連続。2007年12月(プラス19)以来6年3カ月ぶりの高い水準を維持した。消費税率引き上げ前の駆け込み需要や企業の生産活動の盛り上がりを受け、企業マインドが改善している。ただQUICKがまとめた民間の予測中央値(プラス18)は下回った。
3カ月先の6月については、大企業製造業がプラス8になる見通し。市場予想の中央値(プラス13)を大きく下回った。今後、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が見込まれることが落ち込みにつながった。
2014年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で、1ドル=99円48銭と、13年度見込みの98円37銭よりも円安方向の水準に設定された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。調査期間は2月24日-3月31日で、回答基準日は3月10日だった。
一方、大企業非製造業のDIはプラス24と、前回から4ポイント改善した。改善は5四半期連続。1991年11月調査(プラス33)以来およそ22年ぶりの高い水準だった。駆け込み需要の恩恵を受けやすい小売りや不動産などで改善が目立った。3カ月先の6月のDIは11ポイント悪化し、プラス13を見込む。
全規模全産業のDIはプラス12と、前回から4ポイント改善。1991年11月調査(プラス12)以来22年ぶりの高い水準。ただ、先行きは悪化が見込まれる。
中小企業は製造業が3ポイント改善のプラス4、非製造業は4ポイント改善のプラス8だった。先行きはいずれも大幅な悪化を見通す。
大企業・全産業の設備投資、0.1%増 2014年度計画 日銀短観
日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、14年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度実績見込み比0.1%増だった。QUICKがまとめた市場予想の中央値(横ばい)とほぼ同水準だった。景況感は上向くものの、海外経済の先行きへの不透明感が根強く、設備投資への慎重姿勢を残している。13年度実績見込みは3.9%増と、昨年12月の前回調査(4.6%増)から下方修正された。
14年度の収益計画は、大企業全産業の経常利益が前年実績見込み比2.3%減少。売上高は1.1%増える見通し。大企業製造業の輸出売上高は1.4%の増加を見込んでいる。

ということで、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。このブログのローカル・ルールで、昨年10-12月期を直近の景気の谷と仮置きしており、ほかの短観のグラフについても以下同文です。

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ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIについては、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスが最近あるいは現状で+18、先行きで+13でしたから、足元についてはほぼジャストミートだったと受け止めています。先行きについては実績が+8ですので、市場予想よりもかなり悪化するとの見込みであり、当然ながら消費税率引上げと経済対策の効果のうち前者を重視した見方といえます。消費税率引上げはかなりのネガティブなインパクトを及ぼすんでしょうが、問題は景気の伸び悩みやマインドの悪化が景気の腰折れにつながるかどうかです。現時点で、多くのエコノミストの間の緩やかなコンセンサスでは、消費増税の負のインパクトは景気の腰折れにはつながらないと見込まれています。しかし、このコンセンサスはあくまで他の条件が現状のまま推移するという前提であり、何らかの消費増税以外のネガティブなイベントが突発すれば、相乗効果により景気のさらなる悪化を招く可能性があることは忘れるべきではありません。その場合、極めて蓋然性は低いながら、景気の反転も可能性としては排除できません。

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生産要素である設備と雇用の過不足判断DIのグラフは上の通りです。設備・雇用とも先行きの3か月先の判断は足踏みを示しています。消費増税の帰結からして当然です。ただし、雇用については方向として過剰の方向に振れはするんですが、DIそのものは不足を意味するマイナス領域のままです。この雇用不足感が雇用の量的な増加とともに、質的な賃金上昇や正規職員求人の増加などに結実すれば、家計消費の増加につながる可能性が高く、景気をサポートするものと私は考えています。雇用者の増加はもちろん重要ですが、賃金の上昇は景気を下支えするためにも必要だと私は考えています。

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大企業の製造業と非製造業を合わせた全産業の2014年度設備投資計画は前年度比で+0.1%増となりました。私自身はわずかながらもマイナスでのスタートの可能性を考えていただけに、やや強気の判断という気もしなくもありませんが、取りあえず、年度初めの設備投資計画は前年度並みで仮置きした、という色彩が強そうな気もします。4月からの消費増税のインパクトを見極めて、企業マインドがどちらに振れるのかは、誠に残念ながら、現時点では私には情報がありません。

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ついでながら、日銀短観から離れて、本日、厚生労働省から2月の毎月勤労統計が発表されています。統計のヘッドラインとなる現金給与と所定外労働時間は上のグラフの通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下は製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。賃金は凡例の通り現金給与総額と所定内給与です。影をつけた期間は景気後退期であり、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月と仮置きしています。また、下のグラフは産業別の昨年2013年年末ボーナスです。上のパネルが実額を、下は前年比の伸び率を、それぞれプロットしています。調査対象の平均で年末ボーナスは前年度比+0.3%の増加となりました。

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