東大日次物価指数に見る消費税率引上げの物価への影響やいかに?
今日の日経新聞の経済教室では東大の渡辺教授が東大日次物価指数を用いて、4月1日の消費税率引上げに伴って「増税分以上に値上げ」が進み、物価が大きく上がりデフレ脱却に進んでいる、とコラムで結論しています。実は、今週月曜日4月14日の日経センターによる「JCERアングル - 月曜10時便」でもこの東大日次物価指数が取り上げられていて、「4月の消費者物価指数は前年比3%」と大きな物価上昇率を記録する可能性が示唆されていたりしたんですが、私は少し違和感を感じていましたので、今夜のエントリーでは日経新聞の経済教室とも合わせて、東大日次物価指数につい簡単に取り上げたいと思います。
まず、政府統計として統計局が算出している月次の物価ではなく、日次の物価指数はそれ自体としては決してめずらしいものではなく、例えば、米国マサチューセッツ工科大の The Billion Prices Project @MIT などの例があります。東大日次物価指数プロジェクトでは1989年4月1日からの物価上昇率を、私が見た範囲では、2日遅れで研究プロジェクトのサイトで提供しています。どうやって作っているかというと、日本経済新聞デジタルメディアからスーパーマーケットのPOSシステムを通じて、日本全国の約300店舗で販売される商品のそれぞれについて、各店における日々の価格、日々の販売数量を原データとして提供を受け、指数化しています。その際のウェイトは、総務省統計局で作成・公表している消費者物価指数 (CPI) が基準時のバスケットを基にしたラスパイレス指数であったり、GDPデフレータが比較時を基にしたパーシェ指数であるのに対して、東大日次物価指数は基準時と比較時の単純平均であるトルンクヴィスト指数となっています。このあたりの東大日次物価指数の詳細については以下のリファレンスを参照下さい。また、生産性や物価などの指数一般については、Index Measures というサイトにある文献なども参考となります。ブリティッシュ・コロンビア大学のディーワート教授など、専門外の私ですら指数理論の大家としてお名前を聞いたことがある専門家が何人かいたりします。
ということで、東大日次物価指数の上昇率を日々の物価上昇率と7日間移動平均をプロットすると以下の通りです。4月15日のデータまで含んでいます。なお、左軸の単位は decimal ですから、0.01が1%に相当します。

東大日次物価指数の7日移動平均で確認される範囲で、一昨年2012年12月の政権交代からジワジワと物価は上げ足を速め、今年に入ってプラス領域まで上がっています。消費税率が引き上げられた4月1日にポンと上がったのは事実ながら、とても不思議な動きを示し、ほぼゼロに舞い戻っています。日経センターでも日経新聞の経済教室でも、いずれも、「消費税率引上げにより物価は大きく上がった」という結論のようですが、ホントなんでしょうか。私の実感としては、4月1日から物価はかなり上がったと感じているのは事実ながら、統計でどのように確認できるのでしょうか。来月のCPI発表もさることながら、これを待たずに統計を確認できる東大指数の動きが気にかかるところです。
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コメント
昨年初からのトレンドがずっと続いているだけで、そこに2月から3月末にかけて消費税増税を控えた駆け込みを口実に特売セールをしたのが撹乱要因になった、というのが素直な見方でしょうね。円安から一年以上がたち、前年比効果が剥落する時期に入ってもトレンドが崩れたわけではなかったという形が見えたのは良いことですが、価格改定機会を使ってデフレ脱却に一気に進んだという見方はちょっと盛りすぎだと思います。
ただ、渡辺教授はより細かなデータを見てらっしゃいますから、良い手応えを感じられる状況はあるのだと思います。
投稿: MT | 2014年4月19日 (土) 11時17分
そうですね。
投稿: 官庁エコノミスト | 2014年4月19日 (土) 16時51分