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2014年5月21日 (水)

貿易統計に見る消費増税の影響と貿易赤字の行方やいかに?

本日、財務省から4月の貿易統計が発表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列で前年同月比+5.1%増の6兆692億円、輸入は+3.4%増の6兆8,781億円、差引き貿易収支は▲8,089億円の赤字と、22か月連続の貿易赤字を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の貿易赤字、8089億円 1年8カ月ぶりに赤字縮小
財務省が21日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8089億円の赤字(前年同月は8774億円の赤字)だった。貿易赤字は22カ月連続だが赤字額は前年同月の8774億円を下回った。赤字縮小は2012年8月以来1年8カ月ぶり。消費増税前の駆け込み需要の反動で輸入の増加幅が小幅にとどまる一方、自動車などの輸出が伸びた。
輸出額は前年同月比5.1%増の6兆692億円。増加は14カ月連続。品目別では自動車や科学光学機器などの増加が目立った。地域別では米国向けが1.9%増の1兆1229億円。欧州向けが12.7%増の6338億円。アジア向けは3.6%増の3兆2631億円で、うち中国向けは9.8%増の1兆954億円だった。
輸入額は3.4%増の6兆8781億円で4月としては比較可能な1979年以降で最大となった。増加は18カ月連続。液化天然ガス(LNG)や半導体等電子部品の増加が目立った。地域別では欧州、アジアからの輸入額が4月としては過去最大となった。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=102円43銭で、前年同月比6.7%の円安だった。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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消費増税直前の3月の駆込み需要と4月の反動減の影響がどのように貿易に出るかといえば、輸出には3月マイナス4月プラス、輸入は符号が反対で3月プラス4月マイナス、というのが常識的なところですが、上のグラフのうち季節調整済みの系列をプロットした下のパネルについては、明らかに、その傾向が読み取れます。実は、今年の1-2月は昨年と中国の春節の月が違って、コチラも統計がややガタガタしたんですが、消費税増税についても同じような効果が貿易に見られました。ですから、4月の貿易赤字の縮小をもって、すでに貿易赤字のピークは超えて、赤字幅の縮小が始まった、と見るのはやや早計な気がしますが、すでに景気が回復を示している米国は別として、欧州や中国の景気が本格的な回復に向かえば我が国からの輸出は増勢を強めると私は考えています。従って、例えば、日経センターが先週5月14日に発表したESPフォーキャストの予想では、貿易収支の黒字転換について、2016年年央くらいに黒字転換すると考えるエコノミスト13人に対して、数年内には黒字転換しないと考えるのが27人と、3人に2人くらいの割合で黒字転換否定派が多いとの結果が発表されているところ、私はESPフォーキャスターには選ばれていませんがおそらく前者に属し、2年先に黒字転換していない可能性は否定しないながらも、エネルギーの商品価格が大きく高騰しないと仮定すれば、輸出の増加に伴って貿易赤字は先行き徐々に縮小していくと楽観しています。

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ということで、上のグラフは我が国の輸出をプロットしています。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同月比伸び率を数量と価格で寄与度分解し、下は輸出数量指数とOECD先行指数(OECD/CLI)のそれぞれの前年同月比伸び率を重ねて示してあります。ただし、OECD先行指数の伸び率は1か月だけリードを取っています。まだまだ先進国需要の代理変数であるOECD先行指数の伸びは力強さに欠け、同時に、中国をはじめとする新興国経済でも景気鈍化の兆しが見られることから、我が国からの輸出が大きく伸びる局面はもう少し先になりそうですが、何度も繰り返してきた通り、貿易赤字縮小を輸出拡大の面から捉えて、国際競争力強化のためと称して財政リソースをつぎ込む単なるターゲティング・ポリシーを「成長戦略」と勘違いしたり、他方、貿易赤字縮小を輸入抑制の面から捉えて、燃料輸入抑制のために原発再稼働を貿易政策に割り当てたりするのは、いずれも大きな疑問を私は感じざるを得ません。

最後に、商品価格の上昇が我が国の輸入額を増加させている可能性が大いにあります。もちろん、日本は小国ではありませんから、我が国が原発停止により燃料輸入を増加させている事実そのものが原油や天然ガスなどの商品価格の上昇を引き起こしている可能性は否定しませんが、おそらく、あくまで私の直感による蓋然性の問題として、米国金融政策の量的緩和政策の方がより商品価格を押し上げているような気がします。イエレン議長の下で米国連邦準備制度理事会が量的緩和政策のテイパリングを始めれば、商品市況の正常化から我が国の輸入額が落ち着きに向かう可能性を指摘しておきたいと思います。

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