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2014年5月30日 (金)

いっせいに発表された政府統計から消費増税のインパクトを考える!

今日は、5月最後の閣議日ということで、政府統計がいっせいに発表されました。すなわち、今夜のエントリーで取り上げる順で並べると、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、それぞれ発表されています。いずれも消費税率引上げ直後の4月の統計ですから、消費増税のインパクトを見る上で大いに注目されるところです。結論を先取りすれば、生産の減少は想定に範囲内であり、雇用は消費増税をものともせずに改善を続け、消費者物価は消費税率引上げ以上に上昇した、と言うことになります。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

4月鉱工業生産指数、2.5%低下 基調判断を下方修正
経済産業省が30日発表した4月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比2.5%低下の99.6だった。2013年11月以来の低水準で、マイナスは2カ月ぶり。消費増税前の駆け込み需要で生産が増えていた自動車や白物家電などに反動減の動きがみられた。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.0%低下だった。経産省は基調判断を「横ばい傾向」に下方修正した。下方修正は12年9月以来。経産省は「駆け込みの特需がなくなり、生産のペースが落ちている」とみている。
業種別でみると15業種のうち12業種が低下した。輸送用機械工業が3.5%低下。太陽光パネル関連の部材に反動減が出た電子部品・デバイス工業が5.2%低下した。
駆け込み需要の一服で出荷指数は5.0%低下の98.0。消費増税に向け作り込んだ製品在庫の解消も進み、在庫指数は0.5%低下の105.2、在庫率指数は1.8%低下の103.5だった。
前回の消費税引き上げ時の97年4月(2.6%低下)と生産の低下幅はほぼ同じだった一方、過剰在庫を抱える状況には至っておらず、経産省は「在庫が生産の重荷になることはなさそう」とみている。97年4月は在庫が2.9%に上昇していた。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、電子部品など出荷が遅れていた製品の生産で5月は一時的に1.7%上昇する見込みである一方、6月は2.0%低下する見込み。
雇用改善一段と、4月の求人倍率1.08倍に上昇
厚生労働省が30日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍と前月から0.01ポイント上がった。改善は17カ月連続で2006年7月以来7年9カ月ぶりの高い水準となった。製造業やサービス業を中心に求人が増えている。景気の回復を受け、経営者が雇用に前向きになっている。
有効求人倍率は全国のハローワークで職を探す人1人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。高いほど仕事を見つけやすい。
4月の有効求人倍率が上昇したのは、消費増税後も経営者が先行きに自信を持って雇用に前向きになったことが背景とみられる。厚労省は5月に入ってからの求人状況なども踏まえ、雇用に「消費増税の大きな影響は見られない」(職業安定局)と判断している。
4月に受け付けた新規求人数(原数値)は前年同月と比べて10.0%増と、3カ月ぶりに2ケタの伸びになった。主要11業種のうち10業種がプラスで、製造業が23.2%増えた。サービス業(15.2%増)、宿泊・飲食サービス業(11.6%増)が好調だった。
企業の人手不足感は強まっており、厚労省は「建設業や外食産業、小売業、医療介護といった業種で人材の不足が目立つ」とみている。景気の回復で求人が増えていることに加えて、生産年齢人口が減っているためだ。
総務省がまとめた4月の完全失業率(季節調整値)は3.6%と3カ月連続で横ばいだった。水準としては07年7月以来の低さ。総務省は「消費増税の大きな影響はなく、引き続き持ち直しの動きが続いている」(統計局)とみている。
就業者の数は前年同月比0.4%増の6338万人だった。製造業が3.6%増の1080万人と5年ぶりの高い水準になったことが主因だ。
雇用者に占める非正規の比率は36.7%と前年同月より0.9ポイント上がった。定年退職したシニア層や主婦がパートで働きに出ているためだ。
4月の消費者物価3.2%上昇 消費増税分を上回る伸び
総務省が30日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は値動きの激しい生鮮食品を除く指数が103.0と、前年同月に比べて3.2%上がった。消費税率を5%から8%に引き上げた増税分の上乗せが順調だったうえ、物価の基調も底堅かった。1991年2月以来、23年2カ月ぶりの大幅上昇になった。
生鮮食品を除く品目では9割で前年よりも価格が上がった。身近な品目ではガソリンが前年同月比6.4%の値上がり。生鮮食品を除く食料は4.1%上がった。スパゲティやワインなど4月に入って3月より値上がりした品目も目立った。
日銀は消費増税が4月の消費者物価を前年同月比で1.7ポイント押し上げると試算していた。4月の総合指数から1.7ポイントを差し引くと1.5%の上昇。3月よりも上昇幅が0.2ポイント拡大しており、増税の影響を除いても物価上昇が続いたことがうかがえる。
全国の先行指標となる東京都区部の5月中旬速報値は生鮮食品を除く指数が102.0と、前年同月比2.8%の上昇だった。2.7%の上昇だった4月と比べて上昇幅は0.1ポイント拡大した。
日銀が試算した消費増税が物価を押し上げる効果を除き、消費増税分の転嫁が5月中旬までに終わったとすると5月は0.9%上昇となり、4月の1.0%上昇より1ポイント低下した。増税分の影響を除いた都区部の物価はやや伸びが鈍っている。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、さすがに、これだけ並べるともうおなかいっぱい、という気もします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、昨日まで直近の景気の谷はこのブログのローカル・ルールにより2012年11月に仮置きだったんですが、政府のお墨付きを得ました。すなわち、本日開催された内閣府景気動向指数研究会において、2012年11月が暫定ながら景気の谷であったと認定されています。詳しくは「第15循環の景気の谷の暫定設定について」を参照下さい。

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先月の速報発表時における4月の製造工業生産予測調査は前月比で▲1.4%減、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲2.0%減だったんですが、統計に示された実績では▲2.5%減とさらに下振れしました。しかし、引用した記事にもある通り、1997年の消費増税時には4月の減産は前月比で▲2.6%でしたから、ほぼ企業の想定内とする声は順当かと私は受け止めています。特に、鉱工業指数のうちの在庫や在庫率が全体として4月は3月よりも低下しており、少なくとも意図せざる在庫の積上りは回避されているように見受けられます。ただし、非耐久消費財の在庫・在庫率が上昇しており、やや不思議な気がします。駆込み需要の動向を見誤ったのかもしれません。また、先行きについても製造工業生産予測調査に従えば、引用した記事にもある通り、5月は+1.7%の増産の後、6月は▲2.0%の減産と複雑な動きをしそうです。先行きは一進一退の動きながら、場合によっては、短期的には生産の谷は4月で早々に終了する可能性が十分あると私は見込んでいます。むしろ、日本電機工業会から5月27日に発表された「民生用電気機器 2014年4月度 国内出荷実績」によれば、耐久消費財のうち、エアコン、電気冷蔵庫、電気洗濯機などは前年同月と比較して台数ベースではプラスやゼロを記録していたりします。いずれにせよ、消費増税のショックは大きくないと考えるべきです。

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雇用のグラフはいつもの通り上の3枚です。上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数です。いずれも季節調整済みの系列をプロットしています。雇用については生産のような悪化はなく順調に改善を続けており、統計作成官庁である厚生労働省や総務省統計局が言うように「消費増税の大きな影響は見られない」どころか、消費増税のネガティブなインパクトをものともせずに雇用は改善を続けているように見受けられます。バックグラウンドとして、景気の改善が進んでいる一方で、高齢化に伴う労働力人口の減少、特に、団塊の世代の65歳超えが大きな要因と考えられます。ですから、これも本日経済産業省から発表された「平成26年 企業の賃上げ動向に関するフォローアップ調査中間集計結果」によれば、上場企業の約半数に当たる46.7%が今春にベースアップを実施したと回答し、ベースアップを実施した企業のうち3割以上が、「政策効果によって企業収益が改善したことが賃上げを後押しした」とアベノミクスに対して肯定的な評価を下しています。雇用が量的に改善する一方で、質的にも賃金上昇や正社員採用の増加の方向に進むことが期待されます。

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ということで、雇用の参考グラフを2枚ほど書いてみました。上のパネルは非正規比率、下は産業別の雇用者数の増減で、季節調整していない原系列の産業別雇用者数の前年同月さによる増減数を積上げ棒グラフでプロットし、全体の雇用者数の増減を折れ線グラフで示しています。ここ1年で2%ポイントほど非正規比率は上昇しましたが、3-4月と低下を示しているのが見て取れます。ただし、この非正規比率も季節調整していませんので、春先はこのような季節変動があるのかもしれません。現時点では何とも言えません。産業別雇用者数では、濃い緑色の医療・福祉とともに、水色の製造業についても円安是正の効果により増加を示しています。3月まで消費税率引上げ前の駆込み需要で雇用を増加させた卸売・小売業は4月に入って減少に転じています。

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いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが全国の生鮮食品を除くコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のモアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが5月中旬値です。いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。ということで、消費者物価は想定以上に上昇を記録しています。引用した記事にある通り、日銀では消費税率引上げの消費者物価上昇率への影響を+1.7%ポイントと試算していますから、消費税率引上げの影響を除くベースでも4月の上昇率は3月を上回ったことになります。現時点では、需給ギャップの引締りというよりは、いわゆる便乗値上げに近い価格上昇ではないかと想像されますが、もしもそうだとすれば、需給ギャップに基づかない便乗値上げ分は早い段階で剥落する可能性があります。もしも、駆込み需要の盛上がりなどに伴う需給ギャップに応じた物価上昇が生じているのであれば、日銀のインフレ目標の達成が近づいているのかもしれません。

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最後に、4月18日付けのエントリーで取り上げた東大日次物価指数のその後の動きをフォローしたグラフが上の通りです。すでに4月半ばに想定されていた結果ですが、4月1日の消費税率引き上げによってポンと上昇した物価も、すぐにゼロ近傍に舞い戻っています。

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