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2014年7月25日 (金)

消費者物価と企業向けサービス物価とIMF「改定世界経済見通し」と「経済財政白書」と「中長期の経済財政に関する試算」

本日、政府統計の発表では総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、また、日銀から企業向けサービス価格指数(SSPI)が、それぞれ発表されています。いずれも6月の統計です。生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比で+3.3%の上昇、また、SSPIも+3.6%の上昇と、順調にでプラスを記録しています。さらに、昨日、国際通貨基金(IMF)から「改定世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) Update が公表され、今年の世界経済の成長率見通しはやや下方修正されています。加えて、内閣府から今年の「経済財政白書」「中長期の経済財政に関する試算」も明らかにされています。まず、CPIとSSPIに関する記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月全国CPI、3.3%上昇とやや鈍化 電気料金の上昇が縮小
総務省が25日朝発表した6月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合(コア指数)が103.4と前年同月比3.3%上昇した。13カ月連続でプラスだったが、3.4%上昇した前月から伸び率はやや縮小した。原油高でガソリン価格が上昇した半面、前年に一部の電力会社が電気料金を引き上げた影響で電気料金の上昇幅が縮小した。
一方で食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合(コアコア指数)は2.3%上昇の100.6となった。上昇幅は前月(2.2%)からやや拡大した。ボーナス商戦に向けて新製品が出たテレビや、「ウィンドウズXP」のサポート終了に伴って買い替え需要の強いパソコンの価格上昇が影響した。
同時に発表した7月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、コア指数が2.8%上昇の102.0で、上昇幅は前月と同じだった。
コアコア指数は2.1%上昇の99.7。上昇幅は1997年12月(2.1%)に並び、16年7カ月ぶりの大きさ。高速道路料金の割引率縮小や航空運賃の引き上げが影響した。
6月企業向けサービス価格、前年比3.6%上昇 増税除く伸び率は0.9%
日銀が25日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は102.6と、前年同月に比べ3.6%上昇した。消費税の影響を除く伸び率は0.9%。現行基準でさかのぼれる2001年1月以降で最大の伸びとなった5月から横ばいだった。
消費増税の影響を除いたベースで品目別に見ると、外航貨物輸送や国際航空貨物輸送など運輸・郵便が上昇した。為替相場が前年に比べて円安方向で推移し、円換算した料金が押し上げられた。活発な荷動きを背景に倉庫も上昇した。
一方、前月に好調だった宿泊サービスの伸び率が縮小したほか、広告が前年同月に大量に出稿があった反動で伸び率を縮めた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引される価格水準を示す。
調査対象の147品目のうち、上昇が77品目に対し下落は42品目と、9カ月連続で上昇が下落を上回った。日銀は「企業のサービス関連指数の明るさは続いている」(調査統計局)と見ている。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、2本の物価統計を並べるとやや長い気もします。次に、消費者物価上昇率の推移は下のグラフの通りです。折れ線グラフが全国の生鮮食品を除くコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが7月中旬値です。これもいつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局の上昇率や寄与度とは微妙に異なっている可能性があります。

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まず、消費者物価CPIは前月の5月に比べて、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率が+3.3%と▲0.1%ポイント縮小した一方で、食料とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率は+0.1%ポイント上昇幅が拡大して+2.3%を記録しています。要するに早い話が、5月と比べて6月の消費者物価上昇率はほとんど変化がないと言えるわけです。あえて違いを探せば、引用した記事にあるように、電気代などのエネルギーの寄与が小さくなっている点が上げられます。しかしながら、目先の方向感としては、4月の消費増税のインパクトによって需給ギャップは悪化に向かうことから、コアCPI上昇率は緩やかに低下する基調にあると考えるべきです。もっとも、日銀の短期的なインフレ見通しである「暫くの間、1%台前半で推移する」から大きく逸脱することはないと私は見込んでいます。

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企業向けサービス物価SSPIの上昇率も先月から大きな変化はありません。わずかに、運輸・郵便が上昇への寄与を高めたほか、土木サービスや宿泊サービスなどは逆にマイナスの方向に寄与が変化しています。引用した記事にもある通り、消費税の影響を除く前年同月比上昇率は+0.9%で、前月5月から変化はありません。やや伸びは低いとはいえ、着実にプラスで企業向けサービス物価は上がっていると受け止めています。

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「世界経済見通し」の改定版の総括表をIMFのサイトから引用すると上の通りです。リポートも数ページのコンパクトなもので、上の画像をクリックすると別タブで見られるようにリンクを張ってあります。成長率見通しは今年2014年については下方修正されています。すなわち、2014年の世界経済の成長率は、特に米国などで1-3月期の経済活動が低調だったこと、そして一部新興市場国・地域の見通しが当初ほど楽観視できなくなったことを受け、▲0.3%ポイント下方修正し、+3.4%となる見込みが示された一方で、来年2015年は一部の先進国・地域で若干力強さが増すと見込まれ、成長率は+4.0%と据え置かれています。順当なところと私は受け止めています。我が国については、今年来年とも成長率見通しは上方修正されていますが、やや1-3月期の消費増税前の駆込み需要による高成長に引きずられた印象がなくもありません。なお、経済見通しのサブタイトルは An Uneven Global Recovery Continues とされているんですが、いくつかの下振れリスクは指摘されている一方で、特に、地域間・国間における経済回復のばらつきに対する分析や政策対応については言及していないので、やや拍子抜けでした。

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続いて、「経済財政白書」から上のグラフは p.14 第1-1-6図 形態別の消費動向 を引用しています。4月からの消費税率引上げ前の駆込み需要と引上げ後の反動減の大きさを耐久財や非耐久財などの形態別の消費から分析しており、「駆け込み需要の規模は前回より大きめとなった可能性が高い」(p.15)と結論しています。また、今年の白書のサブテーマは「よみがえる日本経済、広がる可能性」とされ、昨年の白書では2013年3月から始まった日銀の異次元緩和によるレジーム転換によりデフレに変化に兆しが見え始めた、との分析を提供していましたが、今年の経済の現状について、消費者物価は緩やかに上昇しており、政府が目指すデフレ脱却に向けて着実に前進しており、需給ギャップが改善に向かうとともに、今後は賃金が持続的に上昇することが重要と指摘しています。

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最後に、本日、内閣府から経済財政諮問会議に提出された「中長期の経済財政に関する試算」が明らかにされています。GDP比で見た国・地方の基礎的財政収支と公債等残高のグラフは上の通りです。基礎的財政収支は2020年度に黒字化するとの政府目標であり、上のグラフでは緑色で示されていますが、最近時点での税収増を反映して、1月時点の試算に比べて1兆円近く改善するものの、2020年度でも依然として▲11.0兆円の赤字が残り、収支黒字化には至らないとの結果が示されています。

いっぱい取り上げて盛りだくさんの内容になってしまいました。ひとつひとつの中身はやや薄くなったかもしれません。悪しからず。

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