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2014年7月31日 (木)

本日発表の毎月勤労統計から何が読み取れるか?

本日、厚生労働省から6月の毎月勤労統計の結果が発表されています。統計のヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比+0.4%増、所定内給与も+0.3%と、いずれも上向きとなりましたが、消費増税による物価上昇には追いつかず、実質賃金はマイナスを継続しています。また、景気に敏感な所定外労働時間は製造業の季節調整済みの統計で前月比▲3.3%の減少を示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の所定内給与0.3%増、2年3カ月ぶりプラス 勤労統計速報
厚生労働省が31日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、基本給にあたる所定内給与は前年同月比0.3%増の24万3019円と、東日本大震災の反動で伸びた2012年3月(0.4%増)以来、2年3カ月ぶりにプラスに転じた。
今年の春季労使交渉で多くの企業が基本給を底上げするベースアップ(ベア)を実施。製造業では6カ月連続で所定内給与が増加するなど賃金は改善しつつある。所定内給与は5月に速報値が0.2%増となった後、パートタイム労働者の比率が高まる確報値でも増減率0.0%、実額113円増と、2年2カ月ぶりにマイナスから脱していた。業績が回復する企業が増えていることを背景にプラス傾向がより明確になった。ただ8月中旬に発表される確報値で、また下方修正される可能性はある。
6月の現金給与総額は0.4%増の43万7362円で4カ月連続のプラスだった。夏のボーナスや残業代が増加したことも全体を押し上げた。
賞与などの特別給与は0.3%増の17万5285円。残業代などの所定外給与は1.9%増の1万9058円だった。所定外労働時間は2.9%増の10.6時間。このうち、製造業の所定外労働時間は4.7%増の15.4時間だった。
厚労省は「賃金は上昇傾向」と分析。景気回復や人手不足に対応するため、企業の採用意欲が高まっていると指摘している。

次に、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上のパネルは現金給与総額とその内の所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルは季節調整した製造業の所定外労働時間を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、また、グラフの上の方のパネルから明らかな通り、久し振りに所定内賃金が前年同月比でプラスの水面上に出て来ました。記事にもある通り、2年余り前の2012年3月はその前年の震災による下振れからの反動で前年比プラスを記録したんですが、さらにその前で所定内賃金がプラスを記録したということになれば、2008年4月とリーマン・ショック前になってしまいます。これまた、記事が指摘している通り、この毎月勤労統計は速報から確報に向けて、少なくとも賃金は下振れするクセのある統計ですから、この速報段階での+0.3%増がどこまで信用できるかは別問題です。他方、景気の回復・改善に従って、賞与などの特別給与も増加しており、所得環境は名目で改善しています。しかし、消費税率の引上げにより物価が賃金以上に上昇しているため、実質賃金は前年同月比でマイナス、すなわち、▲3.8%の減少と大きく下げています。他方、景気に敏感な所定外労働時間は、グラフの下のパネルに見られる通り、季節調整済みの系列で見て、消費増税前の駆込み需要が発生した3月をピークに、反動減のあった4月から6月まで減少を続けています。ほぼ、昨日発表の鉱工業生産と整合的な姿と受け止めています。ですから、昨日のエコノミストの3つの見方に応じた分析が可能かと思いますので、今日のところは夜も遅いことで省略します。

消費支出と相関の高い所定内給与が名目値で久々に増加に転じましたが、まだまだ消費増税に伴う物価上昇には追いつかず、実質所得はマイナスを続けています。逆から見て、実質賃金が大きくマイナスに低下しているわけですから、雇用は量的に増加する方向にあります。一昨日の雇用統計からもこの傾向は確認されています。ということで、本日発表の毎月勤労統計では、実質はまだまだマイナスとはいえ、賃上げによる所得環境の改善が景気を下支えする可能性が高くなったことが確認できたと言えそうです。

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2014年7月30日 (水)

相手エラーに乗じた逆転勝ちで連敗ストップ!

  HE
ヤクルト200101000 4122
阪  神10040000x 580

先発二神投手は結果を出せなかったものの、序盤から中盤は打撃戦となりました。東京ヤクルトの守備の乱れに乗じて4回に一挙4点を上げ、何とか逆転勝ちで連敗ストップとなりました。4番のゴメス内野手と梅野捕手が打線に戻り、得点力はアップしたように見えます。リリーフ陣は相変わらずピリッとせず、走者を出しながら何とかゼロに抑えています。ローテーションの谷間に稼いだ歳内投手のプロ初勝利はそれなりに価値があると思います。

能見投手先発でカード勝越し目指して、
がんばれタイガース!

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大きく低下した鉱工業生産をどう見るか?

本日、経済産業省から6月の鉱工業生産指数が公表されています。消費税率の引上げにより3月までの駆込み需要に代わって4月から反動減が始まり、4月の生産は季節調整済みの前月比で▲2.8%減と大きな減産を示しましたが、5月には早くも減産がほぼ終了して、+0.7%と小幅ながら増産を記録した後、6月は再び減産に転じて▲3.3%を記録しています。かなり大きな減産幅だと受け止めています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月の鉱工業生産指数3.3%低下 東日本大震災以来の下げ幅
経済産業省が30日発表した6月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は96.7だった。前月比で3.3%低下した。マイナスは2カ月ぶり。低下幅は東日本大震災のあった11年3月(16.5%)以来の大きさだった。消費増税に伴う駆け込み需要の反動減や海外需要の減速などを背景に、耐久消費財を中心に生産が落ち込んだ。
経産省は生産の基調判断を「横ばい傾向にある」から「弱含みで推移している」へと変更した。下方修正は12年9月以来。
業種別でみると、15業種のうち14業種が低下、1業種が横ばいで、上昇した業種はなかった。自動車をはじめとする輸送機械は3.4%低下、パソコンや携帯電話を含む情報通信機械も9.0%低下した。
出荷指数は1.9%低下の95.2だった。「生産の抑制が出荷の低迷に追いついていない」(経産省)という。在庫指数は1.9%上昇の110.5、在庫率指数は3.5%上昇の111.6だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、先行きは7月が2.5%上昇、8月は1.1%上昇する見込み。経産省は「6月の実績が悪く、発射台が低くなっため」と分析している。
4-6月期の四半期ベースの鉱工業生産指数は前期比3.7%低下の98.7だった。四半期ベースのマイナスは6期ぶり。駆け込み需要の反動などで低下幅は11年4-6月期以来(4.1%)の大きさだった。

長いながら、網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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上のグラフの上の方のパネルを見て、生産が頭打ちになって弱含んでいるように見えます。季節調整済みの系列で、鉱工業生産指数は2014年1月の103.9をピークに、6月の96.7までジグザグしつつもほぼ一直線に低下しています。このピークは実は鉱工業生産と相関が極めて高い景気動向指数でも見られており、CI一致指数もCI先行指数も2014年1月をピークに下がり続けています。この日本経済の現状について、エコノミストの間で見方が3つに分かれているような気がします。強気な方から順に、第1はV字回復説です。根拠は引用した記事にもある通り、製造工業生産予測調査で7月が+2.5%、8月も+1.1%のそれぞれ増産を見込んでいるからです。これを生産全体に当てはめれば、8月の生産指数は100.2となり、上のグラフの赤い折れ線で1月をピークに6月まで下げたうちの半分くらいまで、まさに、V字回復することになります。強気と弱気の間で、第2に消費増税ショック説です。4-5月くらいまでは消費増税のショックは「想定内」の大合唱だったんですが、先日の「経済財政白書」の分析にも見られる通り、実は今回の駆込み需要は1997年時を上回っていた、との結果が明らかにされ、そのマイナスの消費税ショックを引きずっている、という説です。最後の弱気な見方は、第3にそもそも需要が弱い説です。足元の需要が弱い原因は、消費税ショックに加えて海外景気であり、北米の1-3月期の寒波による伸び悩みがあり、欧州の景気回復が極めて緩やかで、また、中国をはじめとする新興国の景気の停滞などのため、我が国に輸出が伸びないことから需要が弱くて生産が低迷している、という説です。この第3の説を取る場合、すでに景気後退に入っている可能性も否定し切れません。ということですが、私は第1と第2の説の中間くらいと見込んでおり、ただし、その前提は欧米に加えて新興国でも景気が回復に向かい、我が国からの輸出の伸びが高まる、という点が満たされなければならないと考えています。

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今朝の鉱工業生産指数の発表で今年2014年4-6月期までの統計が利用可能になりましたので、見ての通り、上のグラフは在庫循環図です。リーマン・ショック直前の2008年1-3月期に第1象限の45度線の少し上の緑色の矢印から始まった在庫循環は、2014年4-6月期に黄色の矢印に達しました。2013年10-12月期から2014年1-3月期まで3四半期連続で在庫の前年比マイナス、出荷の前年比プラスを記録し、出荷が順調に伸びて在庫を減らす第2象限の局面を経て、消費増税後の2014年4-6月期には第1象限に戻り、しかも、45度線を越えてしまいました。極めて教科書的な理解で言えば、出荷・在庫ともに増加する意図した在庫積増し局面をすっ飛ばして、景気の山を越えて意図せざる在庫積上がり局面に入ったことになります。先ほどの3つの見方のうちの第3のケースと整合的とはいえ、もちろん、現実の経済はそこまで単純ではないので、今後、45度線の左側に戻るかどうかを注目したいと思います。

最後に、来月8月13日には4-6月期のGDP統計の1次QEが発表されます。極めて大雑把かつ直感的に、実質GDP成長率は年率で見て、4-6月期は▲5%を越えて▲10%近いマイナス成長、7-9月期は大胆に+2-3%のプラス成長と予測しておきます。

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2014年7月29日 (火)

ヤクルト八木投手に手も足も出ず3連敗!

  HE
ヤクルト020000002 470
阪  神000000000 050

八木投手に手も足も出ず、東京ヤクルトに完敗して3連敗でした。4番のゴメス選手と梅野捕手が戦列から離れ、打撃陣はハッキリと下り坂です。先発の岩田投手は8回2失点と十分なQSだったんですが、新戦力の建山投手は9回に2失点と散々な甲子園デビューでした。相変わらず、ベンチワークは無策そのもので、何の工夫も見られませんでした。

明日は二神投手を守り立てて、
がんばれタイガース!

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本日発表の雇用統計と商業販売統計をどう見るか?

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、経済産業省の商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも6月の統計です。失業率は前月から0.2%ポイント上昇して3.7%となった一方で、有効求人倍率は前月からさらに0.1ポイント上昇して1.10倍となり、引き続き雇用は堅調に推移している一方で、商業販売のうちの小売は前年同月比で▲0.6%減と消費増税のショックがまだ続いています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

有効求人倍率、6月は1.10倍に上昇 22年ぶり高水準
厚生労働省が29日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.10倍と前月から0.01ポイント上がった。改善は19カ月連続で、1992年6月以来22年ぶりの高い水準。総務省が同日発表した完全失業率(季節調整値)は3.7%と前月から0.2ポイント悪化したが、新たに仕事を探し始めた人が増えたことが要因。人手不足などを背景に雇用は改善傾向が続いている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す求職者1人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。数字が高いほど働く人は仕事を見つけやすい一方、企業から見ると採用が難しくなることを示す。
6月に受け付けた新規求人数(原数値)は8.1%増えた。主要11業種のうち10業種で伸び、医療福祉が15.3%増、製造業も14.2%増えた。
正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.68倍と前月から0.01ポイント改善した。求職者と同数の求人がある「1倍」は下回るものの、比較可能な2004年11月以降で過去最高の水準を3カ月連続で更新した。
6月の失業率が悪化したのは、新たに仕事を探し始めた人や、よい条件を求めて転職先を探す人が増えたため。完全失業率は15歳以上の働きたい人のうち仕事に就かずに職を探している失業者の割合を示す。総務省は雇用環境が改善していく過程での一時的な失業率の悪化と見ており、「引き続き持ち直しの動きが続いている」との基調判断を維持した。
働いている人の割合を示す就業率(原数値)は15-64歳で72.9%と前年同月から1.0ポイント上がった。女性に限ると64.0%と比較可能な68年以降で最高になった。
雇用者に占める非正規労働者の割合は36.8%と前年同月に比べて0.4ポイント上がった。パートで働く女性や嘱託で働く高齢者が増えているため。
6月の小売販売額、3カ月連続減 消費増税の反動や天候不順で
経済産業省が29日発表した6月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆3510億円と、前年同月から0.6%減った。減少は3カ月連続。消費増税に伴う駆け込み需要の反動が続き、白物家電や自動車の販売が落ち込んだ。
小売業の内訳をみると、自動車が普通車や輸入車の販売が振るわず3.9%減となった。機械器具は6.5%減だった。増税の反動に加え、天候不順の影響でエアコンなどの販売が低迷した。雨の日が多く夏物衣料の出足が鈍ったため、織物・衣服・身の回り品も2.5%減った。
大型小売店は1.2%減の1兆6317億円で、3カ月連続のマイナスだった。既存店ベースは1.8%減。このうち百貨店は2.4%減だった。天候不順や高額品を中心に消費税の駆け込み需要の反動が続いた。スーパーは衣料品などが振るわず1.4%減だった。
コンビニエンスストアは4.9%増の8682億円だった。店舗数の増加に加え、消費増税前のたばこの買いだめの解消が進み、既存店ベースでも0.2%増だった。
同時に発表した専門量販店販売統計(速報)によると、6月の販売額は家電大型専門店は3410億円、ドラッグストアが3972億円、ホームセンターが2736億円だった。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、さすがに、雇用統計と商業販売統計の記事を並べるとかなり長い、という気もします。次に、雇用統計のグラフは以下の通りです。見れば分かると思いますが、一応、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数のグラフです。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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大雑把なグラフの見方として、失業率は6月に悪化、有効求人倍率は1年半にわたって改善を続け、新規求人数は6月は増加したものの、高い水準を続けていながら、このところやや停滞気味、と言うことになろうかと思います。全体として雇用は改善が続いており、6月の失業率が0.2%ポイント上昇したのは、景気が回復・拡大する中で新たな求職者の労働市場への流入や転職活動の活発化などに起因するものであり、決して雇用の悪化をストレートに意味しているわけではないと私は受け止めています。統計を精査すれば、季節調整済みの系列で見て5月から6月にかけて、労働力人口が12万人増加しつつも、就業者は前月と変わらず、失業者が11万人増加しています。他方、就業者の中の雇用者は14万に増加しており、単純に計算しても自営業から雇用者に転換することによって雇用者は増加しているという解釈になり、他方、職を求めて労働市場に参入して労働力人口に加えられた人数分が失業者に登録された、という意味でしょう。雇用者数はすでにリーマン・ショック前の水準を超えており、有効求人倍率は1年半余りにわたって改善を続けているわけですし、新規求人数は高い水準を続けていますから、繰返しになりますが、雇用は堅調と見てよさそうです。ただ、ひとつだけ考慮すべきは失業率の水準です。すなわち、単純なフィリップス曲線に従えば、インフレ率+2%を達成するためにはさらに失業率が低下する必要がありますし、私は3%代前半くらいまではラクに低下する可能性が高いと見込んでいましたが、このあたりの3%台半ばに見えない壁がある可能性も否定できません。

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続いて、季節調整していない商業販売統計の小売業の前年同月比と季節調整した指数のグラフは上の通りです。4月に消費増税のショックで大きく落ち込んでから、5-6月は季節調整していない前年同月比で見て小幅のマイナスにまで戻し、季節調整済みの指数では2か月連続の前月比プラスを記録しています。ただし、前年同月で小幅のプラスとは言っても、この統計は名目値の表章ですから、例えば、総務省統計局の家計調査では6月の実質支出も前年同月比で▲3.0%の減少となっています。今回の消費増税に伴うマイナス・ショックは「経済財政白書」でも分析されていた通り、1997年の時の消費増税に比べてやや大きく、期間も1年くらい続く可能性がありますが、この間も、前年同月比でマイナス、前月比でプラスの状態が続く可能性が高く、従って、GDPベースの消費は前期比プラスを示すこととなりそうで、景気の判断が難しいところです。加えて、非正規雇用では派遣スタッフを中心に、かなり賃上げが浸透しつつありますが、正規職員まで含めた賃上げ動向が今後の消費をどこまでサポートするか、私は慎重に見ているんですが、楽観視しているエコノミストも少なくありません。賃上げ動向も判断が難しいところです。ただし、消費者マインドはある程度の上昇が見込めそうです。消費動向は所得とマインドに左右されますし、何と言っても、最大のGDPの需要項目です。今後とも目が離せません。

今週は月末週で、明日の鉱工業生産指数など、今日の雇用統計や消費統計のほかにも、いくつか景気指標が発表されます。消費増税のショックがいつまで続くか、あるいは、解消されるか、気にかかるところです。

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2014年7月28日 (月)

フィデリティ退職・投資教育研究所「勤労者3万人の退職準備」に見る就業形態別の資産形成など格差の実態やいかに?

先週7月24日にフィデリティ退職・投資教育研究所から「勤労者3万人の退職準備」と題するリポートが公表されています。基本的に、この会社の事業のひとつであろう確定拠出年金(DC)のメリットをPRする内容なんですが、30,000サンプルを超える大規模調査であり、会社員については正規/非正規別に家計や退職準備のための資産形成などを取りまとめていますので、非正規雇用者の実態を明らかにし、格差を把握する調査として紹介したいと思います。
まず、リポートの p.2 にアンケート調査の概要が明らかにされていますが、サンプル数は合計で32,494人、職業別では、会社員28,538人のうち、18,923人が正規雇用、残りの9,615人が非正規雇用です。ほぼ2/3と1/3の比率で分かれています。会社員のほかに、公務員2,113人、自営業1,843人を含みます。ネット調査ですから調査方法に起因するバイアスはあり得ますし、地域や年齢などの構成を国勢調査のサンプルと照らし合わせたわけではありませんが、3万を超えるサンプルであればかなり代表性は高いと考えられます。

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まず、上の表は雇用形態別の家計状況を明らかにしています。一番上の行の経営者・役員と一番下の行の自営業・自由業を除いて、雇用者の中で公務員・正規社員・非正規社員を比べると、年収や世帯金融資産などはこの順で多くなっているのが読み取れます。特に年収については、公務員と正規社員の差はそれほど大きくないんですが、正規社員と非正規社員の差はかなり開いています。未婚率はこの逆順で非正規社員がもっとも高く、当然ながら、子供がいる比率は3形態の中では公務員がもっとも高くなっています。

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次に、上の表は雇用形態別の定年後の資産形成として行っていることについて問うた結果です。ここでも雇用者の中で公務員・正規社員・非正規社員を比べると、計画的な貯蓄はこの順に比率が高く、反対に、特に何もしていない割合はこの逆順で大きいとの結果が示されています。収入や金融資産の多寡が老後に備えた貯蓄行動に影響を及ぼしている因果関係であろうと私は理解しています。

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最後に、昨年の新語・流行語大賞の候補にもなったNISAの認知度、NISA口座開設率などに関する結果が上の表の通りです。ここでは雇用者だけでなく、役員や自営業も含めて考えると、NISAについては認知度も口座開設率も、経営者>公務員>正規社員>自営業者>非正規社員の順となっています。

収入や金融資産、あるいは、投資に対する取組みなど、就業形態別に見て、経営者>公務員>正規社員>自営業者>非正規社員の順となっている項目がこの調査結果で目につきます。非正規社員の実態を明らかにするとともに、格差是正のひとつの観点として考えたいと思います。

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2014年7月27日 (日)

今週のジャズはソニー・ロリンズ「ワークタイム」

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今週のジャズは新譜ではなく、60年近く前に録音されたソニー・ロリンズ「ワークタイム」です。1955年の録音ですから、ステレオではなくモノラルだったりします。収録曲は以下の通りわずかに5曲で、演奏時間は30分余りです。

  1. ショウほど素敵な商売はない
  2. パラドックス
  3. レインチェック
  4. ゼア・アー・サッチ・シングス
  5. イッツ・オールライト・ウィズ・ミー

ジャズファンの間では、この時期のロリンズのアルバム、特に、プレステッジに吹き込んだ3部作、すなわち、「サキソフォン・コロッサス」、「ワークタイム」、「テナー・マドネス」の3枚や「ウェイアウト・ウェスト」などの評価が高いんですが、プレステッジ3部作の中でも「サキソフォン・コロッサス」の評価が飛び抜けています。ロリンズの代表作というだけでなく、ジャズのアルバムとしてもナンバーワンと評価するファンや評論家も少なくないと私は受け止めています。単に中身の音楽だけでなく、切り絵風のシルエットをあしらったシンプルなジャケットのセンスも抜群で、収録されている曲の中でも「モリタート」は名曲の名演奏として知れ渡っています。また、「テナー・マドネス」はわずか1曲だけとはいえ、ロリンズとコルトレーンが表題曲のブルーズを共演しており、非常に貴重かつ希少なセッションを含んでいます。
それなのに、私がどうして「ワークタイム」を好きかといえば、最初の「ショウほど素敵な商売はない」がいいからに尽きます。私のジャズの曲の好みはかなり標準的だと考えているんですが、ロリンズとコルトレーンだけは少し違っていて、ロリンズはこのアルバムの「ショウほど素敵な商売はない」が一番ですし、コルトレーンも通常は「セルフレスネス」に収録されている「マイ・フェイバリット・シングス」の評価が高いんですが、私は「ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」の2曲めに収録されている「朝日のようにさわやかに」をもっとも高く評価しています。まあ、単純に好みだというだけです。もっとも、コルトレーンの最高作のアルバムということになれば、「至上の愛」に指を屈せざるを得ない点については、大方の理解を得られそうな気もします。

そうそう新譜のジャズ・アルバムを聞くわけでもないので、今日の記事の「今週のジャズ」は古い古いソニー・ロリンズのアルバムのご紹介でした。

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2014年7月26日 (土)

今夜の勝敗を分けたのはベンチワークの差かも…

  HE
阪  神300000020 5131
広  島11200012x 7100

ベンチワークの差で負けたような気がします。特に投手起用は疑問だらけでした。先発の岩崎投手を2回で降板させて金田投手が打たれて逆転され、榎田投手は2イニング引っ張ってホームランを浴び、不必要な失点を重ねたと受け止めています。打つ方も、6回の伊藤隼太選手の打席はバントですかね。余りにも変わり映えしない和田采配にうんざりの阪神ファンも少なくないんではないでしょうか。最後はツーラン・スクイズを決められて逆転負けでした。最終回に満塁まで攻め立てた打撃陣の反撃ムードが明日につながることを期待します。

明日はカード勝越し目指して、
がんばれタイガース!

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今週の読書は楡周平『ミッション 建国』ほか

今週の読書は、タイトルの通り、楡周平『ミッション 建国』ほか、以下の通りです。なぜか、4冊ともすべてフィクションの小説になってしまいました。

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まず、楡周平『ミッション 建国』(産経新聞出版) です。30代前半の衆議院議員・甲斐孝輔、モデルは明らかに小泉進次郎、を主人公に人口減少を移民でなく、日本人の出生率を引き上げることにより解決しようとするエリートの活動で構成されています。一口に「エリート」と書きましたが、政治家、ベンチャー企業経営者が中心で、官僚は極めてステレオ・タイプな扱いがされていますし、なぜか、アカデミックな世界から学者はほとんど出て来ません。この著者の作品は私は初めて読みました。とても「上から目線」で書かれた作品でしたので、バイアスが大きいかもしれませんが、断定的なものの見方が少し気にかかりました。「グレート・リセッション」という考え方と「建国」というタイトルの間に、もう少し文学的な整合性をもたせる努力が欲しかった気がします。何かの書評で「政策提言型小説」というのを見た気がしますが、現在進行形ないし近未来型の小説なんですが、もう少し日本社会の先行きを独創的に描ければ、さらに面白かったんではないかという気がします。ハッキリ言って、凡庸な中身です。

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次に、安生正『ゼロの迎撃』(宝島社) です。私はこの作者のデビュー作『生存者ゼロ』を読んで、かなり面白いと感じた記憶がありますが、この作品はその意味で二番煎じなのか、こういった作品しかこの作者は書けないのか、という気にさせられます。第3作が出れば明確に分かるかもしれません。何となく、タイトルも似ているし、福田和代『迎撃せよ』のラインに連なる作品だという気もします。いずれにせよ、北朝鮮から特殊部隊が乗り込んで来て、東京壊滅を図るというんですから、エコノミストの私にはほとんど理解できない世界で、読み解くことが出来ませんでした。米軍の動向に大きな疑問符がつきますし、中国人民軍の黒幕についても私には理解不能でした。何よりも、この作戦行動の根本的な動機が明らかにされている気がしません。要するに、サッパリ分かりませんでした。でも、主しよく読む人もいそうな気がします。

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次に、海堂尊『アクアマリンの神殿』(角川書店) です。ちょっとバチスタ・シリーズの10年後を描くとうたわれていて、この作者のいわゆる「桜宮サーガ」に連なる作品です。田口・白鳥シリーズではなく、桜宮病院シリーズです。舞台は、桜宮病院が焼け落ちた跡地に建てられた桜宮Aiセンターがやっぱり事故で崩壊し、そこに建てられた未来医療探求センターになります。テーマはAiではなくコールドスリープです。主人公はバチスタ・シリーズ第2作『ナイチンゲールの沈黙』に登場する佐々木アツシです。日比野涼子という女性がよく分からなかったんですが、どうも、『モルフェウスの領域』というのを読み飛ばしているようです。この作者の桜宮病院シリーズは『螺鈿迷宮』と『輝天炎上』は読んでいるんですが、『モルフェウスの領域』は読み忘れていて、すでに文庫化すらされているようですので、そのうちに読みたいと思います。

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最後に、佐伯泰英『弓張ノ月』(双葉文庫) です。居眠り磐音のシリーズ第46作です。作者は常々50巻までと明言していますので、終盤に入りました。いよいよ、佐野政言が田沼意知を江戸城内で殺害しました。坂崎磐音の行く末やいかに?

来週は専門書・教養書と小説をバランスよく読む予定です。

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2014年7月25日 (金)

藤浪投手がマエケンと互角に投げ合い広島に競り勝つ!

  HE
阪  神000100210 4101
広  島200001000 391

藤浪投手がマエケンと互角のピッチングでした。勝ち星こそつきませんでしたが、調子が悪いなりに最小失点に抑える立派な投球でした。終盤は福原投手から呉投手につないで、ややこのところ不安定な投球だった呉投手も、完璧なリリーフを見せてくれました。打つ方は、上本内野手の起死回生の同点ツーラン、今成選手の勝ち越しタイムリーと若手の活躍で得点力は大きくアップしています。課題の下位打線も、今夜に限っては得点力が上がりました。巨人が中日にボロ負けし、タイガースは徐々に首位に迫っています。

明日も、
がんばれタイガース!

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消費者物価と企業向けサービス物価とIMF「改定世界経済見通し」と「経済財政白書」と「中長期の経済財政に関する試算」

本日、政府統計の発表では総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、また、日銀から企業向けサービス価格指数(SSPI)が、それぞれ発表されています。いずれも6月の統計です。生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比で+3.3%の上昇、また、SSPIも+3.6%の上昇と、順調にでプラスを記録しています。さらに、昨日、国際通貨基金(IMF)から「改定世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) Update が公表され、今年の世界経済の成長率見通しはやや下方修正されています。加えて、内閣府から今年の「経済財政白書」「中長期の経済財政に関する試算」も明らかにされています。まず、CPIとSSPIに関する記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月全国CPI、3.3%上昇とやや鈍化 電気料金の上昇が縮小
総務省が25日朝発表した6月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合(コア指数)が103.4と前年同月比3.3%上昇した。13カ月連続でプラスだったが、3.4%上昇した前月から伸び率はやや縮小した。原油高でガソリン価格が上昇した半面、前年に一部の電力会社が電気料金を引き上げた影響で電気料金の上昇幅が縮小した。
一方で食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合(コアコア指数)は2.3%上昇の100.6となった。上昇幅は前月(2.2%)からやや拡大した。ボーナス商戦に向けて新製品が出たテレビや、「ウィンドウズXP」のサポート終了に伴って買い替え需要の強いパソコンの価格上昇が影響した。
同時に発表した7月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、コア指数が2.8%上昇の102.0で、上昇幅は前月と同じだった。
コアコア指数は2.1%上昇の99.7。上昇幅は1997年12月(2.1%)に並び、16年7カ月ぶりの大きさ。高速道路料金の割引率縮小や航空運賃の引き上げが影響した。
6月企業向けサービス価格、前年比3.6%上昇 増税除く伸び率は0.9%
日銀が25日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は102.6と、前年同月に比べ3.6%上昇した。消費税の影響を除く伸び率は0.9%。現行基準でさかのぼれる2001年1月以降で最大の伸びとなった5月から横ばいだった。
消費増税の影響を除いたベースで品目別に見ると、外航貨物輸送や国際航空貨物輸送など運輸・郵便が上昇した。為替相場が前年に比べて円安方向で推移し、円換算した料金が押し上げられた。活発な荷動きを背景に倉庫も上昇した。
一方、前月に好調だった宿泊サービスの伸び率が縮小したほか、広告が前年同月に大量に出稿があった反動で伸び率を縮めた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引される価格水準を示す。
調査対象の147品目のうち、上昇が77品目に対し下落は42品目と、9カ月連続で上昇が下落を上回った。日銀は「企業のサービス関連指数の明るさは続いている」(調査統計局)と見ている。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、2本の物価統計を並べるとやや長い気もします。次に、消費者物価上昇率の推移は下のグラフの通りです。折れ線グラフが全国の生鮮食品を除くコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが7月中旬値です。これもいつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局の上昇率や寄与度とは微妙に異なっている可能性があります。

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まず、消費者物価CPIは前月の5月に比べて、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率が+3.3%と▲0.1%ポイント縮小した一方で、食料とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率は+0.1%ポイント上昇幅が拡大して+2.3%を記録しています。要するに早い話が、5月と比べて6月の消費者物価上昇率はほとんど変化がないと言えるわけです。あえて違いを探せば、引用した記事にあるように、電気代などのエネルギーの寄与が小さくなっている点が上げられます。しかしながら、目先の方向感としては、4月の消費増税のインパクトによって需給ギャップは悪化に向かうことから、コアCPI上昇率は緩やかに低下する基調にあると考えるべきです。もっとも、日銀の短期的なインフレ見通しである「暫くの間、1%台前半で推移する」から大きく逸脱することはないと私は見込んでいます。

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企業向けサービス物価SSPIの上昇率も先月から大きな変化はありません。わずかに、運輸・郵便が上昇への寄与を高めたほか、土木サービスや宿泊サービスなどは逆にマイナスの方向に寄与が変化しています。引用した記事にもある通り、消費税の影響を除く前年同月比上昇率は+0.9%で、前月5月から変化はありません。やや伸びは低いとはいえ、着実にプラスで企業向けサービス物価は上がっていると受け止めています。

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「世界経済見通し」の改定版の総括表をIMFのサイトから引用すると上の通りです。リポートも数ページのコンパクトなもので、上の画像をクリックすると別タブで見られるようにリンクを張ってあります。成長率見通しは今年2014年については下方修正されています。すなわち、2014年の世界経済の成長率は、特に米国などで1-3月期の経済活動が低調だったこと、そして一部新興市場国・地域の見通しが当初ほど楽観視できなくなったことを受け、▲0.3%ポイント下方修正し、+3.4%となる見込みが示された一方で、来年2015年は一部の先進国・地域で若干力強さが増すと見込まれ、成長率は+4.0%と据え置かれています。順当なところと私は受け止めています。我が国については、今年来年とも成長率見通しは上方修正されていますが、やや1-3月期の消費増税前の駆込み需要による高成長に引きずられた印象がなくもありません。なお、経済見通しのサブタイトルは An Uneven Global Recovery Continues とされているんですが、いくつかの下振れリスクは指摘されている一方で、特に、地域間・国間における経済回復のばらつきに対する分析や政策対応については言及していないので、やや拍子抜けでした。

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続いて、「経済財政白書」から上のグラフは p.14 第1-1-6図 形態別の消費動向 を引用しています。4月からの消費税率引上げ前の駆込み需要と引上げ後の反動減の大きさを耐久財や非耐久財などの形態別の消費から分析しており、「駆け込み需要の規模は前回より大きめとなった可能性が高い」(p.15)と結論しています。また、今年の白書のサブテーマは「よみがえる日本経済、広がる可能性」とされ、昨年の白書では2013年3月から始まった日銀の異次元緩和によるレジーム転換によりデフレに変化に兆しが見え始めた、との分析を提供していましたが、今年の経済の現状について、消費者物価は緩やかに上昇しており、政府が目指すデフレ脱却に向けて着実に前進しており、需給ギャップが改善に向かうとともに、今後は賃金が持続的に上昇することが重要と指摘しています。

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最後に、本日、内閣府から経済財政諮問会議に提出された「中長期の経済財政に関する試算」が明らかにされています。GDP比で見た国・地方の基礎的財政収支と公債等残高のグラフは上の通りです。基礎的財政収支は2020年度に黒字化するとの政府目標であり、上のグラフでは緑色で示されていますが、最近時点での税収増を反映して、1月時点の試算に比べて1兆円近く改善するものの、2020年度でも依然として▲11.0兆円の赤字が残り、収支黒字化には至らないとの結果が示されています。

いっぱい取り上げて盛りだくさんの内容になってしまいました。ひとつひとつの中身はやや薄くなったかもしれません。悪しからず。

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2014年7月24日 (木)

貿易赤字は拡大しているのか、縮小しているのか?

本日、財務省から6月の貿易統計が発表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の前年同月比で▲2.0%減の5兆9396億円、輸入額は+8.4%増の6兆7619億円、差引き貿易赤字は▲8222億円となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-6月期の貿易赤字、7兆5984億円 半期で過去最大
財務省が24日発表した2014年上半期(1-6月期)の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7兆5984億円の赤字だった。赤字額は前年同期(4兆8125億円)を上回り、上半期では比較可能な1979年以降で最大。下半期を含めても13年7-12月期(6兆6557億円)を上回り、半期ベースで最大となった。
輸入額は10.0%増の42兆6482億円と急増。上期としては79年以降で最大。下期も含めた半期ベースでも最大となった。原発停止で液化天然ガス(LNG)や原粗油の輸入増加が目立った。半導体等電子部品なども増えており、EUからの輸入額は前年同期比12.1%増と、半期ベースで最大となった。
一方、輸出額は前年同期比3.2%増の35兆498億円にとどまった。品目別では自動車や科学光学機器、プラスチックなどの輸出が低調だった。数量ベースでは前年同期比0.2%減少となった。地域別の貿易収支の赤字額は対EU、対中国で半期ベースで過去最大となった。
同時に発表した6月の貿易収支は8222億円の赤字(前年同月は1805億円の赤字)だった。貿易赤字は24カ月連続。QUICKが23日時点で集計した民間予測の中央値は6652億円の赤字で、これを上回った。
輸出額は前年同月比2.0%減の5兆9396億円。減少は2カ月連続。半導体等電子部品や有機化合物、鉱物性燃料などで輸入が減少した。輸入額は8.4%増の6兆7619億円。増加は2カ月ぶりで、原粗油やナフサなど石油製品、液化天然ガス(LNG)などの輸入増加が目立った。

6月単月の貿易統計は最後の2パラだけで、やや暦年上半期に重点を置いた記事ながら、いつもの通り、とてもよく取りまとめられています。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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季節調整済みの系列で見て、4-5月の貿易赤字が▲8000億円台でとどまっていたのは4月からの消費増税に伴う反動減に起因する輸入の停滞が原因と私は考えていて、従って、6月の貿易赤字が季節調整していない原系列では▲8222億円だったものの、季節調整済みの系列で▲1兆円を超えたのは、まさに、輸入の面で消費増税に伴う反動減が終了しつつあるひとつの兆候であると受け止めています。季節調整していない原系列の輸入の前年同月比伸び率が5月は▲3.5%減だったのに対して、6月は+8.4%増と盛り返しています。逆から見た輸出について考えると、地域別や産業別でほぼ一様に減少が続いているんですが、季節調整していない原系列の前年同月比伸び率で見て、米国向けとアジア向けの輸出は減少を続けている一方で、欧州向けは4月からプラスに転じて、最新の6月まで3か月連続の前年比プラスを続けています。1-3月期に寒波の影響などで経済活動の水準が低下した北米がこれから景気を拡大させ、また、欧州の景気回復とともに中国をはじめとするアジア諸国の景気が回復に向かえば、我が国の輸出も伸びを高めるものと私は考えています。日本の景気が現段階では世界で最も拡大テンポが速いため、貿易赤字が大きく見えますが、今後、世界経済の拡大とともに我が国の輸出が伸びを高めて、先行き貿易赤字は縮小に向かうものと考えるべきです。もっとも、私自身は1-2年で貿易黒字に戻る可能性が十分あると見ている一方で、貿易黒字を回復するまでには5-6年かさらに長いかなりの期間を要すると考えるエコノミストも少なくないのは事実です。

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さらに輸出について詳しく見ると、なかなか回復が思わしくありません。繰返しになりますが、その大きな要因は欧米をはじめとする先進国、さらに、中国をはじめとする新興国やアジアの景気回復・拡大のテンポが上がらないことです。上のグラフは季節調整していない貿易指数を基に、上のパネルは輸出額の前年同月比を数量と価格で要因分解しており、下のパネルは輸出数量とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月だけリードを取っています。足元で輸入数量の前年同月比はほぼゼロ近傍で伸びない姿が続いており、下のパネルから、需要サイドではOECD諸国の景気が足踏みしているため、我が国製品への需要が伸び悩む原因となっているのが見て取れます。

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2014年7月23日 (水)

能見投手の好投報われず巨人に競り負ける!

  HE
読  売002000001 350
阪  神200000000 250

好投の能見投手が最終回に力尽きて、巨人に競り負けました。9回を124球で投げ切って5安打3失点なんですから、能見投手も本来の調子を取り戻しつつあると見てよさそうです。問題は打撃陣であることは言うまでもありません。昨夜こそ、ラッキーパンチで福留選手のサヨナラホームランで勝ちましたが、今夜はマートン外野手まで含めて、5番以下にヒットが出ていません。下位打線のテコ入れが急務ではないでしょうか?

次の広島戦も、
がんばれタイガース!

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BCG による Global Asset Management 2014 から図表をながめる

先週7月17日に、Boston Consulting Group (BCG) から Global Asset Management 2014 と題する資産運用市場に関するリポートが発表されています。サブタイトルは Steering the Course to Growth とされており、資産運用市場も金融危機を乗り越えて拡大しつつあるような雰囲気です。2013年末の資産運用高は68.7兆ドルと昨年に続いて2年連続で過去最高を記録しています。リポートでは Five "New New Normal" Trends として以下の5点を上げています。

Five "New New Normal" Trends
  • Regulatory Change
  • The Digital and Data Revolution
  • More Demanding Investors with a Growing Preference for Nontraditional Assets
  • New Competitors Providing Nontraditional Assets
  • Globalization

特に、毎年取り上げている興味あるリポートでもありませんし、私のようなしがないサラリーマンには多額の資産運用なんて関係ない世界なのかもしれませんが、決して覗き見趣味に陥ることなく、いくつか図表を大雑把にながめておきたいと思います。

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上の図表は地域別の運用資産残高の推移です。世界全体では左端に見える通り、2012年末の60.9兆ドルから2013年末には68.7兆ドルに+13%増となっています。右上が日本と豪州を合わせた額であり、2012年末の5.2兆ドルから2013年末の6.2兆ドルへと+18%増と示されています。2013年末で見て、北米の資産運用残高がほぼ世界の半分を占めています。

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先に引用した Five "New New Normal" Trends の中に出て来る "Nontraditional Assets" というのが目立つんですが、上のグラフは残高でも流入のフローでも伝統的な資産運用がシェアを失っているのを示しています。ただし、欧米ではこの業界の特徴のひとつである「勝者総取り」(winner-takes-all) のトレンドは弱まっている (slow) と報告されています。

特に、だからどうだというわけではありませんが、ざっと図表をながめておきました。何となく、野球で言えばローテーションの谷間の扱いで、リポートの詳細を解説しようとする意図も能力もありません。悪しからず。

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2014年7月22日 (火)

呉投手がリリーフに失敗するも福留選手のサヨナラホームランで巨人に連勝!

 十一十二 HE
読  売100000001000 2110
阪  神000002000001x 370

前回完封された杉内投手を代打の新井良太選手がよく打って逆転し、1点差で9回にクローザーの呉投手をマウンドに送りながら、リリーフに失敗して土壇場で同点に追いつかれましたが、12回ウラのツーアウトから福留選手のサヨナラホームランで巨人に連勝しました。クローザーが9回ツーアウトからホームランを浴びれば、阪神も12回ツーアウトからホームランをお返しし、ジャイアンツがレフトポールに当てれば、タイガースはライトポールに当てるという、とても拮抗した試合でしたが、最終的には、タイガースが制しました。でも、9回で勝っておくべき試合であることは言うまでもありません。現状では、阪神の調子がいいというよりも、巨人の状態がとても悪い、という印象です。当然ながら、勝てる時に勝っておくべきです。また、サヨナラホームランとは言え、福留選手を使い続けるのは長期的な採算が悪そうな気がします。いかがなもんでしょうか?

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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夏休みの過ごし方やいかに?

海の日を含む連休も明け、この連休から本格的に小中高校の夏休みが始まっているお宅も少なくないんではないでしょうか。我が家も私が普通に出勤する一方で、私が出かける時にも高校生の子供達はまだ寝ていました。夏休みということで、かなり旧聞に属する話題なんですが、旅行関係中心ながら、フォートラベルから「2014年 夏休みの過ごし方アンケート結果」が6月26日に発表されています。まず、とても長いんですが、フォートラベルのサイトからTOPIC 5点を引用すると以下の通りです。

2014年 夏休みの過ごし方アンケート結果
【TOPIC1】
夏の連続休暇日数の平均は「7.6」日。もっとも多いのは「9日」(25.6%)、続いて「5日」(21.8%)、「10日」(8.6%)。昨年同時期の結果と比較すると、休暇日数の平均は0.1日増と、ほぼ同じ。休暇開始日は「8月」がもっとも多く、70.9%となった。
【TOPIC2】
夏休みの予定が決まっている人は82.0%、決まっていない人は18.0%。予定が決まっている人のメインの過ごし方は、1位が「海外旅行」(38.3%)、2位「国内旅行」(28.6%)、3位「自宅中心で過ごす」(15.7%)となり、昨年と比較すると、海外旅行が減少し、自宅中心で過ごす人が増加。国内旅行者は昨年に続き微増した。また、複数回旅行する人もみられた。
【TOPIC3】
国内旅行の旅行期間は平均「3.9日」。行き先は「北海道」「沖縄県」「長野県」の順に人気で、TOP3は昨年と同じ結果となった。出発のピークは「8月11日(月)」、帰着は「8月17日(日)」がピーク。お盆周辺の旅行計画が多く、全体の3割以上を占めた。
【TOPIC4】
海外旅行の旅行期間は「8.0日」。行き先は「アジア」がもっとも多く46.0%、続いて「ヨーロッパ」(28.4%)、「北米」(16.8%)となった。人気の旅行先を国別にみると、最も人気だったのは「アメリカ」、2位は「タイ」、3位は「マレーシア」と「台湾」が同率で並んだ。出発のピークは「8月9日(月)」で、帰着は「8月17日(日)」がピークだった。
【TOPIC5】
海外旅行・国内旅行の手配状況を聞いたところ、「すでに予約が完了している」と回答した人は53.6%、「手続き・調整中」が18.3%、「予約を始めていない」は26.3%という結果となった。過ごし方別に手配状況をみると、海外旅行を予定している人のうち82.3%が旅行の手配を始めている。国内旅行を予定している人も、57.8%が予約に着手しており、昨年より予約は前倒し傾向となっている。

今日の記事ではこのアンケート調査結果から、いくつか図表を引用しつつ、ごく簡単に紹介したいと思います。

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上のグラフの通り、今年の夏の連続休暇日数の平均は7.6日で、昨年の7.5日よりもホンの少しだけ増えました。見れば分かる通り、ツインピークのフタコブラクダの形で分布しています。5日と9日にピークがあり、今年は去年に比べて5日のピークが高くて9日のピークが低いんですが、それでも平均日数が増えているのは、大雑把に11日以上のとても長い休暇日数の割合が増えているんだろうという気がします。

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上のグラフは国内旅行を予定している人に旅行期間を聞いた結果で、平均は3.9日となり昨年4.6日と比較し▲0.7日減少しています。旅行先は北海道がもっとも人気で、続いて沖縄県、長野県となり、トップスリーは昨年と同じ結果だそうです。ただし、帰省旅行が含まれているかどうかは判然としません。なお、出発日地帰着日は、当然というか、お盆周辺で集中度が高くなっています。

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上のグラフは同様の質問を海外旅行についてしており、旅行期間は平均8.0日となり昨年8.4日と比較し▲0.4日減少しています。国内旅行も日数減なんですが、景気がまずまずいいので仕事が忙しかったりするんでしょうか。詳細は不明です。なお、行き先は地域別ではアジア、ヨーロッパ、北米の順となっている一方で、国別では、トップは米国、2位はタイ、3位は台湾とマレーシアが同率で並んでいます。出発日と帰着日は国内旅行と同じくお盆を挟んだあたりで集中度が高くなっています。

何度かこのブログでも書きましたが、我が家の上の倅が高校3年生になり、私は「受験生の親」として慎ましやかな夏休みを過ごす予定です。旅行の予定はありません。

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2014年7月21日 (月)

バッテリーの活躍で巨人に完勝し後半戦を白星スタート!

  HE
読  売000000000 070
阪  神02000001x 360

何と言っても、勝因は8回までゼロに抑えた岩田投手の力投に尽きます。9回は呉投手につないだ完封リレーで巨人を下し、後半戦は白星スタートです。しぶとく三遊間を抜いた梅野捕手のタイムリーも早い回の先制打で効果的でした。でも、打撃陣はもっとがんばって欲しい気がします。

明日は杉内投手を打ち崩して勝利すべく、
がんばれタイガース!

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女性作家の直木賞作品を読む

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この3連休は読み物にショートし、最近ここ数年の女性作家の直木賞受賞作品から3冊ほど、ありていに言って、近くの図書館から借りやすい本を選んで読んでみました。上の画像の表紙の通り、官能的な桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)、奥様の不倫っぽい話はあるものの清純派の中島京子『小さいおうち』(文藝春秋)、ミステリな辻村深月『鍵のない夢を見る』(文藝春秋)、それぞれに面白かったです。いくつかはすでに文庫本も出て、映画化もされているんですが、借りやすいので単行本で読みました。桜木紫乃『ホテル・ローヤル』(集英社) の予約が回って来るまではまだまだ時間がかかりそうです。

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2014年7月20日 (日)

今週のジャズはキース・ジャレットのソロ・ピアノ「ヨーロピアン・コンサート (完全版)」

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キース・ジャレットのソロ・ピアノものです。ただし、最新の録音ではなく、1981年です。タイトルは Concerts: Bregenz/München といい、CD3枚で構成されています。日本語タイトルは「ヨーロピアン・コンサート (完全版)」といいます。なお、wikipedia のサイトに従えば、「ソロ・コンサート」から始まるキース・ジャレットのソロ・ピアノのシリーズは以下の通りです。

  • Solo Concerts: Bremen and Lausanne (1973, ECM, ライブ)
  • The Köln Concert (1975, ECM, ライブ)
  • Staircase (1976, ECM)
  • Sun Bear Concerts (1976, ECM, ライブ)
  • Invocations/The Moth and the Flame (1979/1980, ECM)
  • Concerts: Bregenz and München (1981, ECM, ライブ)
  • Book of Ways (1986, ECM)
  • Spirits 1 & 2 (1985, ECM)
  • Dark Intervals (1988, ECM, ライブ)
  • Paris Concert (1988, ECM, ライブ)
  • Vienna Concert (1991, ECM, ライブ)
  • La Scala (1995, ECM, ライブ)
  • The Melody at Night, with You* (1998, ECM)
  • Radiance (2002, ECM, ライブ)
  • The Carnegie Hall Concert (2005, ECM, ライブ)
  • Testament (2008, ECM, ライブ)
  • Rio (2011, ECM, ライブ)

ただし、アスタリスクを付した The Melody at Night, with You だけは、いわゆるソロ・コンサートのシリーズではありません。というか、元メロディがあります。「ヨーロピアン・コンサート (完全版)」は1981年の音源ですから、このブログの2011年11月6日付けのエントリーで、キース・ジャレットの「リオ」を取り上げていますが、現時点でもこの「リオ」が発売されている限りの最新音源のCDです。しかし、今年2014年の日本のゴールデンウィークには渋谷の Bunkamura オーチャードホールでキース・ジャレットのソロ・コンサートがありましたので、私は聞きに行っていませんし、録音されているかどうかも知りませんが、「サンベア・コンサート」などとともに我が国内録音のアルバムが出される可能性はあります。一般に、このシリーズの中では、「ケルン・コンサート」の出来が一番とされているんですが、このアルバム「ヨーロピアン・コンサート (完全版)」の完成度もかなり高いと受け止めています。この3枚が聞きこなせたら、次は「サンベア・コンサート」に進むのかもしれません。

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2014年7月19日 (土)

今週の読書はチャールズ・ファーガソン『強欲の帝国』ほか

今週の読書はチャールズ・ファーガソン『強欲の帝国』ほか、専門書や教養書が中心に新書も含めて以下の通りです。この連休には小説も読みたいと考えています。

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まず、チャールズ・ファーガソン『強欲の帝国』(早川書房) です。紙幣が燃えている表紙なんですが、テーマはサプブライム・バブルの崩壊とその後の金融危機です。著者はマサチューセッツ工科大学(MIT)で政治学の博士号を取得し、しばらく社会科学分野の研究者をした後、現在ではドキュメンタリ映画の監督をしています。リーマン・ショックの真実に迫った映画『インサイド・ジョブ』でアカデミー賞のうちの長編ドキュメンタリー映画賞を授賞されています。原題は Predator Nation で、昨年2013年5月の刊行です。何せ、延々とサブプライム・バブル崩壊後の金融危機を招いた「犯人」を数え上げ、どうして何の責任も取らずに、のうのうと引き続き億万長者の生活が送れているのか、を問うています。システムとしての政策だけでなく、その政策の背後の決定責任者はもちろん、投資銀行の経営者やトレーダー、あるいは、金融業界に好意的な姿勢を示した経済学者など、バブルでどれくらい儲けたのか、バブル崩壊後の金融危機に対する責任をどう考えるのか、などなどについて、特に、刑事責任を問われなかった「戦犯」を糾弾します。第7章を別にすれば個人攻撃ばかりと見えなくもなく、また、罪人を特定するのは日本人的な組織論の心情に合わないかもしれませんが、事実を事実として受け止めるには最適のノンフィクションです。私自身は何かの折に書いた通り、この手に事実関係については『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』にとどめを刺すと考えており、やや遅れてやって来た本だと受け止めています。新聞の書評のうち、私が目にしたのは以下の通りです。

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次に、グレゴリー J. カザ『国際比較でみる日本の福祉国家』(ミネルヴァ書房) です。著者は社会科学者ですが、専門分野は社会保障や福祉ではなく、日本という地域そのものだったりします。とても面白い観点で、社会保障、というか、福祉について、日本の特殊性というものを認めつつ、特殊性よりも普遍性の方を重視し、将来にわたって福祉国家は日本だけでなく欧米やアジアも含めて収斂する方向にあることを論証しようとしています。なお、日本で社会保障という場合、医療・年金・介護が大きなカテゴリーなんですが、この本で福祉国家という場合、著者は医療と年金に加えて雇用をコンポーネントに考えています。それはともかく、福祉国家のレジームとしてはエスピン-アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』による分類が確立されており、英米やアングロ・サクソン的な自由主義、独仏をはじめとする大陸欧州の保守主義/コーポラティズム、そして、北欧諸国に見られる社会民主主義の3レジームであり、日本はこのどれにも属さない独自の中間的なレジームであると『福祉資本主義の三つの世界』では分類されています。専門外ながら、私が今まで見たところ、このエスピン-アンデルセンのレジーム論に挑戦して成功した例はなく、誠に残念ながら、この本の著者の議論もまったく同様に、エスピン-アンデルセンのレジームへの挑戦は失敗しています。特に、福祉国家に雇用を含めるのであれば、日本は社会保障を通じて国民に税金を還元する「福祉国家」というよりは、農業補助金や公共事業による還元を選択した「土建国家」であり、特に、失業給付や職業訓練などによる社会保障的な雇用の流動化ではなく、雇用調整金などによって労働の要素移動を阻害する形で、社会保障的な雇用政策を避けて来ており、それが「岩盤規制」とまで呼ばれるようになった雇用制度を生み出している点については、もっと掘り下げた分析をして欲しかった気がします。でも、著者自身の信ずるところと異なっているので、気がついていながらも軽視した跡が見られました。どうでもいいことながら、同じミネルヴァ書房の同じMINERVA福祉ライブラリーのシリーズだからしょうがないんですが、四方から四色の色が迫り出してきて、エスピン-アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』などの同じシリーズの他の本と見分けのつきにくい表紙デザインとなっています。もちろん、新書などでまったく同じデザインの表紙が並んでいる場合も少なくないわけですが、識別性を持たせるために、何かもう少し工夫はできなかったんでしょうか。

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次に、ティム・インゴルド『ラインズ 線の文化史』(左右社) です。著者は社会人類学を専門とするアバディーン大学教授です。一応、通して読んだんですが、誠に残念ながら、私にこの本を評価することは難しいと感じました。ただ、2点だけコメントしておきたいと思います。まず、第1章に関して、音楽は歌であると著者は前提しているようですが、私は疑わしいと考えています。何せ、クリスチャンは「初めに言葉ありき」ですから、音楽に歌詞は絶対に必要と考えているフシがあるんですが、音楽の構成要素を著者に倣って3つ、すなわち、歌詞とメロディとリズムと仮定すれば、原始的な音楽はリズムから始まったんだろうと思います。それにメロディが乗っかって最後に歌詞を付けて歌われるようになったんではないでしょうか。すなわち、「初めに言葉ありき」ではなく、言語が成立する前から音楽は何らかの形であった可能性を考慮すべきです。次に、第5章の p.204 以下の書に関する考察について、書を舞踏になぞらえて動学的な作成過程を連想させる芸術、すなわち、筆の運びを感じ取れるような芸術と考えるのは、私は初めてこのような議論に接しましたが、やや違和感を感じざるを得ません。書は石川九楊先生の説の通り、筆蝕を見る芸術であり、水彩画と同じで2次元的な芸術と私は考えています。ランガー教授のように、芸術を4つのカテゴリー、すなわち、文学、美術、音楽、舞踏に分類した場合、テキスト・ベースの文学と書は異なりますが、基本的に、書は美術に分類されると私は考えています。美術は2次元的な水彩画と版画、絵の具の厚みまで感じるとすれば3次元的な油彩画と彫刻、などに分類できますが、書は基本的に前者だろうと私は考えています。ただし、私の書道の師匠故飯塚竹径先生の説の受売りなんですが、書については単なる筆蝕ではなく、字として認識される必要がある、という点は忘れるべきではありません。私の師匠の上げた例ですが、字として認識されるために、例えば、点のあるなし、あるいは、点の場所で、「大」と「犬」と「太」は当然に区別されなければなりません。さらにもう1点の留保で、書を動学的な作成過程を連想させる議論については、おそらく、中国的な漢字の書ではなく日本的な和様の仮名の書に当てはまる可能性があります。小野道風のような分かち書きや重ね書きなどで、上から下に運筆されるのは当然としても、必ずしも右から左に運筆されるのではなく、左端まで書いてしまうと右に飛んだり、あるいは、その名のごとく重ねて書いたりするのは、あるいはこの本の著者の言う舞踏のように動学的な書の分類に通ずる何かがあるかもしれません。書を作成する過程といえば、私のような初心者が連想するのは髪を振り乱して立膝のようなお行儀の悪い姿勢で一心不乱に取り組む小野道風の姿だったりします。

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次に、大喜直彦『神や仏に出会う時』(吉川弘文館) です。著者の専門は信仰社会史と自ら称する分野で、本願寺史料研究所に所属する研究者です。学位も取得しているようです。当然に、浄土真宗関係の記述が多くなりますが、私自身が一向門徒ですので違和感はありませんでした。もっとも、一般化は出来ないような気もします。中世から江戸中期の近世における我が国の宗教、仏教やましてや浄土真宗に限らず、神々に対する素朴な信仰まで含めて、当時の人々の生活と宗教への信仰が明らかにされています。学術書並みに史料を駆使して深く掘り下げた部分もあれば、最終章で取り上げられている真宗寺院性応寺の了尊の門徒との絆を深める旅の解説まで、悪く言えば精粗区々かもしれませんが、幅広く記述の対象にしているとも受け取れます。特に、一向宗の祖師親鸞聖人の木像や御影が、現在のような通信・伝達手段やコピー手段を持たない時代に面授の役割を果たしていたというのは、専門家ならざる私には未得の知識でした。イスラム教徒のように偶像を強く忌避する宗教もありますが、高僧の御影や「南無阿弥陀仏」の名号の文字を有り難く拝見する私のような俗物には、目に見えて、あるいは、手で触れる何かは信仰にとって重要だという気がしました。

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次に、工藤啓/西田亮介『無業社会』(朝日新書) です。私くらいまでの世代では高校や大学を卒業して、当たり前に正社員として働くことが出来ていたんですが、現在ではフリーターやニートになる可能性もかなりあります。この本の読ませどころは若年就労支援NPOの活動実績から、典型的な無業青年の履歴書的な属性を明らかにする第2章、無業青年に関する誤解を集めた第3章などなんだろうと思うんですが、逆に第4章以下は物足りない印象です。でも、働いていないことや就業しない点について無業青年自身の自己責任に帰そうとする議論は、私のこのブログでも従来から指摘している通り、まったくの誤解です。ただ、若年就労支援NPOの行っているようなマイクロな支援とともに、マクロの成長政策が重要なんですが、後者のマクロ政策についてはこの本のスコープには入っていません。私自身はニートやフリーターの就業を阻害しているのは、日銀のデフレ政策の役割も小さくなかったんではないかと考えています。また、ほぼ100パーセント投票で政治的に決まる社会保障だけでなく、かなり規制の大きな労働市場でも世代間の不平等が観察されると私は認識しているんですが、その点についてもスコープからは外れているようです。加えて、伝統的な経済学の議論のように、労働をレジャーとの代替関係で捉えるのではなく、すなわち、余暇を犠牲にして所得を獲得する手段としての労働ではなく、何らかのスキルを向上させて人生を豊かにする労働というものについて考えさせる本です。とてもオススメです。

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最後に、石川幹人『「超常現象」を本気で科学する』(新潮新書) です。約2か月前の5月17日付けのエントリーでNHK取材班『超常現象』を取り上げましたが、その同じラインにある本で、特に幽霊に重点を置いて、「幽霊がいるか、いないか」ではなく、「幽霊は役に立つか」、あるいは、「幽霊は意義があるか」を考察しています。以前にも書いたかもしれませんが、観察される事実のうち現在の科学で解明できている部分は100パーセントではなく、その欠けた部分が超常現象ということになります。もっとも、これは自然科学における超常現象であり、社会科学については、例えば、私の専門である経済学で説明し切れない経済現象の方が、説明できる部分よりも多いくらいなんではないかと思ったりします。景気が不況になるのも、不況から回復するのも、すべて超常現象ということになりかねません。そうなれば、経済に関しては超常現象ばかりということにもなりかねません。しかし、私自身の歴史観、あるいは、もっと絞って科学史観は西欧的な一直線の進歩史観に近いと言え、そのうちに、100パーセントに達することはないかもしれませんが、超常現象に分類される部分は徐々に小さくなる可能性が高いと思っています。そして、それは科学の、あるいは、社会の進歩なんだろうと考えています。その意味で、こういった本が出るのは科学の発展段階がまだ不十分なのであろうと思います。あるいは、いつまでたってもそうなのかもしれません。

今週は教養書ばかりで、フィクションの小説を取り上げることが出来ませんでした。来週は何とかしたいと考えています。

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2014年7月18日 (金)

USJ の新しいアトラクション Wizarding World of Harry Potter やいかに?

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今週7月15日に大阪にある USJ で Wizarding World of Harry Potter のアトラクションがお目見えしました。黒いマントにトンガリ帽の魔法使いのコスチュームでホグワーツ城を行き来するお客さんの姿などが報じられていたのを記憶している人も少なくないと思います。
それから、どうでもいいことかもしれませんが、goo ランキングでハリー・ポッターのキャラクターのランキングが、USJ のアトラクション開業に合わせて7月15日に発表されています。goo ランキングのサイトから引用すると以下の通りです。

  1. ハリー・ポッター
  2. ハーマイオニー・グレンジャー
  3. シリウス・ブラック
  4. ロン・ウィーズリー
  5. セブルス・スネイプ
  6. アルバス・ダンブルドア
  7. ドラコ・マルフォイ
  8. ルビウス・ハグリッド
  9. ドビー
  10. ヘドウィグ

我が家は USJ へは2001年3月の開業から間もない2001年9月の一時帰国時に泊まりがけ2日間かけて訪れています。当時の子供達は2人とも小学校の就学前でした。スヌーピーやおサルのジョージといったキャラクターのスタジオに行ったり、ポパイやウッドペッカーやブルフィンクルといった着ぐるみと写真を撮ったり、いろいろと遊んだ記憶があります。子供達はもう興味も関心もないのかもしれませんが、チャンスがあれば私はもう一度行きたいと思っています。
なお、今年の流行りモノとして、この USJ のほか、ディズニー映画の「アナ雪」が上げられるんですが、CCC から「アナ雪」に関するアンケート調査結果が、やっぱり7月15日に公表されています。私は映画を見ていないのでこのブログでは取り上げない予定です。

海の日を含む3連休前の金曜日の軽い話題でした。出かけたわけではないのですが、無理やりに「お出かけの日記」に分類しておきます。

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2014年7月17日 (木)

米中の勢力均衡は世界からどのように見られているか?

私がよくチェックしている米国の世論調査機関である Pew Research Center から今週月曜日7月14日付けで Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America's Image という、ややわかりにくいタイトルながら、経済に限らず安全保障面も含めて、米中の勢力均衡をテーマにして世界各国で Opinion Poll を実施した結果が公表されています。pdfの全文リポートもアップロードされており利用可能です。米国に関する安全保障の話題としては、批判の多い無人飛行機の利用や同盟国首脳の電話やメールの盗聴、あるいは、スノーデン・ファイルについてなどなど、それなりに興味深いトピックが取り上げられています。まず、Pew Research Center のサイトからリポートの要約を1パラだけ引用すると以下の通りです。

Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America's Image
Revelations about the scope of American electronic surveillance efforts have generated headlines around the world over the past year. And a new Pew Research Center survey finds widespread global opposition to U.S. eavesdropping and a decline in the view that the U.S. respects the personal freedoms of its people. But in most countries there is little evidence this opposition has severely harmed America's overall image.

ややアッサリしたサマリなんですが、この後はいきなり無人機の飛行に関するアンケート調査結果だったりするもので、短く抑えておきました。今夜のエントリーでは図表を中心に簡単にこの調査結果を取り上げたいと思います。ただし、無人飛行機やスノーデン・ファイルについては割愛して、米中の勢力均衡に焦点を当てていますので悪しからず。

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まず、米国は国民の自由を尊重するかどうか、に関する回答が国別に上の通りとなっています。真ん中少し上に米国そのものが位置しているんですが、自由尊重の観点からは割合と自国の政府に対する信頼感は薄いような気がします。アンクル・サム、というか、諜報機関が国民を監視しているイメージも少なくないのかもしれません。私を含めた日本人は米国人以上に能天気に米国政府をこの点では信頼しているようです。独仏で No の回答割合が高いのは首脳に対する盗聴疑惑に起因するのかもしれません。

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次に、同様の趣旨を中国に対して質問した回答結果が上の通りです。西欧と日本・韓国では否定的な回答が大きな割合になっています。東南アジアの国の中でも中国と領土問題を起こしているフィリピンやベトナムでは否定的な回答比率が高くなっています。逆に、アフリカでは肯定的な回答割合が高くなっており、ひょっとしたら、資源外交で中国がアフリカに対して援助を奮発しているのが関係しているのかもしれません。

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次に、中国に対する一般的な好感度に対する国別の回答割合のグラフは上の通りです。日本がここまでの嫌中国だとは、私は知りませんでした。調査対象国の中では好感度を示す割合がもっとも少なくなっています。アフリカ諸国が好意的なのは、ひとつ前のグラフで示した調査結果と同じなんですが、ラテンアメリカが少し違った回答振りとなっているのが目を引きます。すなわち、自由の尊重に関しては否定的なんですが、中国への好感度は比較的高くなっています。当然ながら、ロシアの中国に対する好感度は高く、アジア諸国の中ではパキスタンの好感度が飛び抜けています。

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次に、一般論から中国経済に的を絞った質問で、中国の経済成長が自国に有益 good であるかどうか、との質問に対する回答が上の通りです。ここで日本の見方が逆転します。一般論としては好意を持たないながら、中国の成長は日本に有益であるという見方がそうでないとする意見を上回ります。実は韓国も同じで逆転します。もともと、好感度でかなり拮抗していた西欧諸国も一気に逆転したりしています。要するに、一般論としては中国に好意を寄せることはないながら、ビジネスの相手としては成長や発展を望んでいる、と言うことになるのかもしれません。

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次に、中国が世界をリードする超大国になるかどうか、との問いに対する回答が上の通りです。アフリカや中南米などの中国に対して好意的な国々では、中国が米国に取って代わる世界の超大国になるという回答比率が高く、西欧諸国もたぶんそうなんだろうと認めています。米国や韓国では半々といったところです。中国と領土問題を起こしている日本・フィリピン・ベトナムでは、客観的に中国が米国に取って代わる世界の超大国になるかどうか、という観点ではなく、ひょっとしたら、そうなって欲しくないという願望ベースの回答も含まれているような気がしないでもありません。

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最後に、上の画像はアジア諸国などの国民が考える同盟国と敵対国を示しています。日本やフィリピ・ベトナムは同盟国は米国で敵対国が中国、と言うのは分かりやすいとはいえ、米国自身は同盟国は英国で敵対国はロシアと考えているようです。当然かもしれません。ロシアは明示されていないんですが、中国は逆に同盟国がロシアで敵対国は米国となっています。インドとバングラデッシュはともに米国を同盟国と見なしつつ、長い国境を接するために、お互いを敵対国と考えているようです。韓国が北朝鮮を、また、タイがカンボディアを、それぞれ敵対国と見なしているのも国境の観点から分からないでもないんですが、私も家族とともに3年住んで馴染みのあるインドネシアが、同盟国も敵対国もいずれも米国、と考えているのはサッパリ理解できません。

とても苦しいんですが、中国の経済成長に関する見方もありましたし、「経済評論の日記」に分類しておきます。

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2014年7月16日 (水)

メッセンジャー投手から呉投手へつないだ完封リレーで中日を下して連勝ターン!

  HE
阪  神000002000 270
中  日000000000 030

引き締まった投手戦でしたが、メッセンジャー投手と呉投手の完封リレーで中日を下しました。これで阪神はオールスター前の前半戦を連勝ターンで折り返します。

オールスター明けの後半戦も、
がんばれタイガース!

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内部留保に回されるのなら法人税減税はヤメにしたら?

一昨日、7月14日に帝国データバンクから「法人税減税に対する企業の意識調査」の結果が公表されています。私は従来から法人税率の引下げには懐疑的な見方を示して来たんですが、この調査結果もビミョーなところと受け止めています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の要旨を4点引用すると以下の通りです。

調査結果 (要旨)
  1. 法人税の減税に対する財源確保について、「外形標準課税の拡大」には企業の4割が反対。特に、賛成・反対ともに税の公平性を求める企業が多い。逆に「租税特別措置」や「税制優遇措置」の見直しには4割が賛成した。
  2. 法人税の減税分の最も可能性の高い使い道では、「内部留保」が2割。しかし、給与の増額や人員の増強など「人的投資」とする企業が3割超、設備投資や研究開発投資など「資本投資」とする企業も2割となり、企業の51.3%が前向きな投資に活用する見込み。
  3. 法人実効税率を20%台まで引き下げた場合、設備投資は総額で約6.2兆円の押し上げが見込まれ、中長期的な投資活性化が期待される。
  4. 法人税減税により5割超の企業が日本経済の活性化につながると認識。

ということで、この調査結果のpdfの全文リポートから図表を引用しつつ、簡単に企業の法人減税への対応などについて紹介したいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから「引き下げ分の使い道」を引用しています。調査結果の要旨にもあった通り、法人減税の資金は内部留保に回すというのがトップとなっています。もっとも、前回2013年9月時点の調査から今回2014年6月調査にかけて、賃上げなどの人的投資の割合が増加し、内部留保は低下しています。政府を上げての賃上げキャンペーンによる影響かもしれません。でも、設備投資の割合が低下しているのが気にかかります。2割という数字はビミョーなところですが、現在の企業のマインドが「社員に還元」よりも「内部留保」にウェイトが置かれていることをかなりの程度に示した結果と言えます。
このブログで何度も繰り返し主張している通り、私は現下の経済政策の要諦のひとつは企業部門に滞留しているキャッシュフローをいかにして家計部門に還元するか、であって、企業部門にさらにキャッシュを貯め込むだけの法人減税には大きな疑問を持っています。家計への還元について、直接に企業から家計へ賃上げをという形になるか、政府が何らかの形で企業部門から購買力を吸収した上で家計に流すかはともかく、現在の消費増税と法人減税の組合せとは正反対の形であると認識しています。加えて、法人減税は政府部門の赤字削減にも逆行すると言わざるを得ません。
例えば、民主党政権かで実施された「子ども手当」に私は世代間格差是正の観点から賛成を表明して来ましたが、仮定の議論ながら、事前のアンケート調査などで子ども手当がパチンコをはじめとする親の遊興費に充てられる比率が2割あったとすれば、私は意見を変えていた可能性があります。繰返しになりますが、あくまで仮定の議論であり、パチンコなどの遊興費と企業の内部留保は大きく性格が異なることは理解しつつも、また、2割というのはビミョーな数字ながら、法人減税がこれだけの確率で内部留保に回るとなれば、もともと大きな疑問をさらに大きく感じざるを得ません。

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次に、上のグラフは産業別に人的投資と資本投資を全産業平均と比較してプロットしています。私はもともと産業別といったメゾスコピックな分類は、最適化行動をしないという意味で、それほど重視していないんですが、今回の調査ではサンプル数が多いだけに、かなり明確に産業別の企業の行動パターンが示されていると感じています。製造業が人的投資よりも資本投資を重視し、サービス業や建設業はその逆のパターンを示しています。また、小規模企業では人材不足が顕在化し人的投資を重視する姿勢を見せる一方で、金融業や不動産業は人的投資も資本投資もせずにせっせと内部留保に励む、という姿が出ているように見えます。

繰返しになりますが、企業部門に滞留しているキャッシュをいかに家計部門に還流させるかが現時点では重要であり、このアンケート調査結果のように、法人税減税が内部留保に流れるのであれば、私は法人税減税に疑問を抱かざるを得ません。

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2014年7月15日 (火)

藤浪投手が143球1失点でプロ初の完投勝ち!

  HE
阪  神300002300 892
中  日000000100 151

好調な打撃陣の大量得点に支えられ、藤浪投手のプロ初完投勝利で中日を下しました。7回ウラの1失点は、いい当たりながら記録はエラーですから自責点はゼロ、ほぼ準完封と言っていい内容でした。失点した7回ウラに続いて8回ウラも走者を許しましたが、最終回は3人でピシャリと抑え込みました。打撃陣も引き続き好調で、昨夜と同じように初回に先制点を上げ、新井兄弟がタイムリーそろい踏みで起用に応えた場面もあり、昨夜の決定力不足がウソのようなワンサイドゲームでした。

オールスターを控え前半戦締めくくりの明日も、
がんばれタイガース!

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夏の暑さ対策や熱中症予防策やいかに?

昨夜は大きく遅れて梅雨の通勤事情についての調査結果を取り上げたんですが、今夜は先行きを見越して、マーケティングリサーチ会社ののドゥ・ハウスが実施した「夏の暑さ」に関するWEBアンケート調査結果を取り上げたいと思います。7月10日に公表されています。まず、ドゥ・ハウスのサイトから調査サマリを6点引用すると以下の通りです。

調査サマリ
  • 半数以上の人が、夏の暑さが「得意ではない」。暑いと感じ始める気温は27.3℃
  • 暑さ対策、1位「扇風機」、2位「窓を開ける」、3位「エアコン」
  • エアコンを使用しない理由、「節電・エコのため」が38.0%で最多
  • 紫外線対策について意識している人は、男性23.3%、女性86.7%と大差
  • 熱中症対策を意識している人は62.7%
  • 対策方法は、1位「水分補給として市販の飲料を飲む」、2位「風通しを利用する」、3位「空調設備を利用する」

ということで、グラフは引用しませんが、「調査サマリ」から、夏の暑さが得意ではない人が過半に達し、暑いと感じ始める気温は27℃を少し超えたあたり、と言うのは分かる気がします。でも、私の場合は問いの立て方にもよりますが、冬の寒さよりは夏の暑さの方がまだマシだと思わないでもありません。赤道直下のジャカルタの生活の経験も理由のひとつですが、健康や生存に対しては日本の冬の寒さの方が夏の暑さよりもリスクが大きいと感じていたりします。

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まず、男女別にそのものズバリの具体的な暑さ対策についての問いの結果が上のグラフの通りとなっています。1位「扇風機をつける(75.3%)」、2位「窓を開ける(73.8%)」、3位「エアコンをつける(70.0%)」の順となっています。エアコンよりも扇風機が好まれているのは、別の問いがあるんですが、1位「節電・エコのため」、2位「電気代がかかるため」、3位「全身がだるくなるから」、4位「外気温との差が嫌だから」という結果が出ています。北日本では「エアコンがないから」という回答も散見されます。そう言えば、「暑さ対策」とは少し違うかもしれませんが、私は風呂上がりにはエアコンの利いた部屋に入るよりも、まず、扇風機やうちわで発汗を抑えるようにし、発汗が止まってからエアコンをオンにするようにしています。

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次に、夏の暑さにつきものの太陽光の紫外線対策についての問いに対する回答が上のグラフの通りとなっています。男女差が大きく、女性の上位回答が、1位「UVカット(日焼け止め)クリーム(78.5%)」、2位「日傘(63.7%)」、3位「帽子(57.6%)」となったのに比べ、男性は「紫外線対策はしていない(40.9%)」が1位で、2位「帽子(32.4%)」、3位「サングラス(31.5%)」となっています。私は自転車を長く乗る際には、日焼け止め、帽子、サングラス、と動員できるものはすべて使います。

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最後に、夏の暑さ対策をおろそかにすると熱中症になってしまう場合があるわけですが、具体的な熱中症対策としては、上のグラフのような回答となっています。すなわち、1位「水分補給として市販の飲料を飲む(68.2%)」、2位「風通しを利用する(55.7%)」、3位「空調設備を利用する(43.4%)」の順で、水分補給と温度調整が重要であるとの認識が示されていると思います。エアコンよりも風通しを利用するなんて、やや年齢層の高い回答だという気がしないでもありません。実は、というか、私は熱中症らしき症状になったことがなく、よく分からないんですが、それなりに注意したいと思います。

梅雨明けと夏本番はもうすぐです。私は冬の寒さも夏の暑さも、どちらも嫌いではないんですが、年齢的にも体力のピークはとっくに過ぎており、季節を楽しみつつもムチャはしないように気をつけたいと思います。

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2014年7月14日 (月)

ルーキー岩崎投手のアクシデント降板と決定力ない打線で中日にボロ負け!

  HE
阪  神200000101 481
中  日05000003x 8100

先発のルーキー岩崎投手が打球を受けて、アクシデント降板した2回に逆転された上、連敗中のように打線に決定力なく、中日にボロ負けでした。9回土壇場に浅尾投手から1点を取った粘りが明日の試合につながって欲しいと思いますが、ほとんど、何の見どころもない試合でした。

明日は、
がんばれタイガース!

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梅雨どきの通勤事情やいかに?

梅雨も明けようかという季節になって、私の方で取り上げるのがやや遅くなったため、今さら感がとても強いんですが、7月3日にウェザーニューズから梅雨の通勤事情に関する調査結果が公表されています。世の中の「あるある感」をよく捉えていると思います。まず、ウェザーニューズのサイトから調査結果のポイントを6点引用すると以下の通りです。

梅雨の通勤事情
  1. 長ぐつ通勤 女性が4倍
  2. 日本人の3人に2人がくせ毛
  3. 雨の日はいつもの通勤プラス5分
  4. 通勤判断 九州が堅実
  5. 梅雨の楽しみはやっぱりアレ?
  6. 梅雨時あるある

「くせ毛」かどうかや、「梅雨の楽しみ」なんて、通勤とは関係が薄いような内容も含まれているような気がしますので、私の方で適当にピックアプして、簡単に取り上げたいと思います。まず、最初の項目の長ぐつ通勤比率に関するグラフを引用すると以下の通りです。上のパネルは男女別の長ぐつ通勤比率、下は大都市圏における自動車の普及比率と長ぐつ通勤比率を合わせて見ています。

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雨の日に長ぐつをはいて通勤するかどうかについては男女で結果がかなり明瞭に分かれました。すなわち、男性は11%と少なかったのに対し、女性は43%と4倍も多い結果が示されています。基本的に、通勤時の服装の違いだと私は認識していて、今はクールビズとかスーパークールビズですが、スーツに長ぐつというスタイルは、男にはキツいものがあります。また、女性向けではオシャレなレインブーツも少なくない一方で、男性向けの長ぐつは野外作業用以外ではスポーティーなものが多そうに見受けます。また、下のパネルを見て少ないサンプルながらも、自動車が普及してクルマ通勤が多いと想像される地域では長ぐつをはいて通勤する比率は当然に小さい、という結果が示されています。当たり前の結果ですが、こういったグラフを示しておくと、調査の信頼性に関する見方が改善するような気がします。

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雨が予想される場合、出発時間を早める判断を、「前日に判断」する人は全体の23%に上る一方で、「当日に判断」する人は42%を占め、また、「とくに早めない」という人も35%との結果が示されています。私は最後の「とくに早めない」なので少数派ではないことから、何となく安心しました。また、都道府県ごとに「前日に判断」の割合が多い順に並べてみると九州の各県が上位を占めているようです。私も長崎に単身赴任していた経験から、梅雨末期の大雨の恐ろしさを実感しているつもりなので、分かる気もしますが、これをもって、「通勤判断は九州が堅実である」とは必ずしも言えないような気もします。この調査でも雨の日の通勤はプラス5分とわずかですから、当日の朝にしっかりと確認すればいいような気もします。これだけお天気情報があふれている世の中ですから、むしろ、人の受け止めようによっては、当日ギリギリの正確な情報でなく、「前日に判断」はズボラであると考える場合もあるかもしれません。

いよいよ関東甲信越では梅雨明けと同時に始まる夏本番まで、1週間とか10日くらいに迫ったような気がします。今年は私としては夏休みを長めに取りたいと考えていますが、何ぶん、上の倅が高校3年生になり、私は「受験生の親」ですから、遊び回るわけにも行きません。いつもと同じように、つましい夏休みになりそうです。

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2014年7月13日 (日)

関本選手の代打満塁ホームランで巨人に逆転勝ち!

  HE
阪  神000100401 691
読  売020100100 490

試合を決めたのは、何と言っても、関本選手の満塁ホームランでした。3-1の劣勢を見事に跳ね返す一打で阪神は蘇りました。打撃陣は9回のダメ押し打も含めて、5打点の関本選手に尽きます。先発の岩田投手もまずまずのピッチングでしたが、投手陣ではセットアッパー8回の福原投手、クローザー9回の呉投手が完ぺきにジャイアンツ打線を抑え込みました。その前の7回の安藤投手の粘りのピッチングも見事でしたが、加藤投手はやや下り坂なのかもしれません。

オールスター前の中日戦も、
がんばれタイガース!

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2014年7月12日 (土)

杉内投手に手も足も出ず2安打で連勝ストップ!

  HE
阪  神000000000 020
読  売10000103x 5100

杉内投手に手も足も出ず、わずか2安打で連勝ストップでした。能見投手は6回2失点とまずまずの出来でしたが、2安打無得点ではどうしようもありませんでした。それにしても、鶴投手とか伊藤隼太外野手とか、こんな使われ方ならモチベーションは上がりませんから、鶴投手が9回に失点したのもやや同情します。

明日は岩田投手に期待して、
がんばれタイガース!

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今週の読書はウォルター・ラッセル・ミード『神と黄金』ほか

今週の読書は、表題の通り、ウォルター・ラッセル・ミード『神と黄金』ほか数冊でした。最近、よく似た歴史書を読んで来たので、『神と黄金』はやや期待が高かった分、失望した気がします。

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まず、ウォルター・ラッセル・ミード『神と黄金』上下 (青灯社) です。著者は米国ハーバード大学の外交講座の教授であり、本書は近代における米英の外交上の覇権について論じています。『神と黄金』の後者の黄金の方の連想で経済が論じられているんではないかと思って読み始めたんですが、そうではなかったです。米英というか、アングロ・サクソンが近現代の覇権を握った鍵は1にも2にも海洋国家として通商を活用したからであると論じられています。製造業は無視されているような印象があります。そして、アングロ・サクソン史観では歴史は終了に向かっています。すなわち、歴史とは単なる時間の経過ではなく、何らかの課題の達成であり、邪悪な要素の浄化の過程として描かれています。外交論としては興味深いんですが、私が専門外だからという理由もあるものの、読み進みにくい本です。もともとの原書がそうだからという上に、邦訳が私のレベルに合っていないような気がします。ルビを振って原書の雰囲気を伝えようとするのはいいんですが、あまりに煩雑ですし、訳注が多過ぎます。この分野の語学力のある読者でしたら、原書を読んだ方が早そうな気がしないでもありません。

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次に、鈴木洋仁『「平成」論』(青弓社ライブラリー) です。これは面白かったです。著者は東大の大学院生ですが、京都大学を卒業後に社会人の経験もあったりします。ほぼ四半世紀を経過した平成の時代を経済、歴史、文学、批評、などの観点から社会学的に位置づけようとする試みです。でも、結論として、「平成はない」ということになります。明治や昭和は時代を画する元号として成り立つんですが、平成は時代として大きな特徴を有するわけではない、というのが結論となるわけです。それはそれで興味深い指摘だと私は受け止めています。ただし、本書では論駁しているつもりのようですが、「平成はない」理由のひとつとして現在進行形だから、というのはあるような気がします。また、文学を論じた第3章で、言葉が文学に代表されなくなったのが平成である、というのは秀逸な指摘だと考えます。ブログや何やの普及に伴う拡散もひとつの特徴です。特に、説得力ある議論を提示しているわけではなく、平成論に関する結論が得られるわけではありませんが、我々が生きているコンテンポラリーな平成というひとつの時代を考える上で何らかの参考になりそうな気がします。今日の記事で取り上げる中で一番のオススメです。

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次に、五味文彦『『枕草子』の歴史学』(朝日新聞出版) です。著者はすでに退職しましたが、東京大学の中世史の名誉教授ですから、まさに歴史の専門家ということになります。私は少し前に冲方丁の『はなとゆめ』を読んで、少し『枕草子』の世界に触れましたので、教養書として読んでみましたが、これまた少し期待外れでした。『枕草子』の書物としての成立ちや背景、また、書かれている内容に関する歴史的な解説を期待したんですが、どうも私の予想と違っていました。すなわち、『枕草子』の各段をバラバラに分解して組み立て直し、古文の原文と現代訳を示すのがほとんどの紙幅を占めていて、中世史の専門家としての解説はボリュームとして期待したほどにはなされていない印象があります。まあ、『枕草子』をテーマにしたカルチャー・スクールのテキストみたいな印象でした。もっとも、それでもいいという読者も多いことと想像します。

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最後だけフィクションの小説で、薬丸岳『刑事の約束』(講談社) です。分かる人にしかわからないと思いますが、夏目シリーズの連作短編集です。前作『刑事のまなざし』に続く2冊めで、当然ながら、私は前作も読んでいます。すでに文庫化されているんではないかと思います。前作では「オムライス」がショッキングで、最後の短編で夏目の娘が被害にあった犯人が明らかにされるんですが、本作ではやっぱり最後の短編で夏目の娘の意識が戻ります。私はこの作者の作品はかなり好きで、思いつくままに何冊か読んでいます。この作品も基本的に犯罪小説であって、私のような平凡なサラリーマンの日常生活からは想像もできないような世界を描いているんですが、それなりに、心に残るものがあります。短編でスラスラと読めますから、よくない表現かもしれませんが、暇つぶしにはとてもいい作品です。

この夏休みは長い休みが取れそうですが、受験生を抱える身で出かけるのもままならず、読書三昧で過ごしそうな気がします。今のところ目をつけているのは、国書刊行会から出版されているウッドハウスのジーヴス・シリーズです。近くの図書館で全巻そろっているのを最近発見しました。

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2014年7月11日 (金)

内野5人シフトに惑わされずダイナマイト打線が巨人投手陣を爆砕して8連勝!

  HE
阪  神101004213 12160
読  売110000111 5130

相変わらずクリンナップの3人をはじめとして、ダイナマイト打線が好調で8連勝でした。広島が負けて2位浮上です。先発のメッセンジャー投手も7回3失点ですから、この打線を有するチームとしては文句のないQuality Startと言えます。メッセンジャー投手が降板した後の8-9回に少しリリーフ陣がもたついた印象がありますが、攻撃陣の終盤の得点能力がメチャメチャ高いですから、終盤に1-2点取られても何の問題もありません。問題なのは打線の方でノーヒットに終わった福留外野手の処遇くらいのものです。
今日の見どころのひとつは、6回のタイガースの攻撃の際、ジャイアンツが外野手を1人減らして、内野5人シフトを取りましたが、西岡選手の打球はそのシフトをあざ笑うかのように無人のセンター定位置に飛んで、2-3塁の走者が返るツーベースとなりました。また、目立たないプレーでしたが、8回ウラのジャイアンツの攻撃で、阿部捕手のセカンドゴロが明らかな誤審でアウトを宣せられ、抗議した阿部選手が退場を食らったんですが、巨人に不利な誤審は久々に見た気がします。球界の盟主の落日の象徴であって欲しいものです。

明日は能見投手を押し立てて9連勝目指して、
がんばれタイガース!

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沖縄におけるプロ野球キャンプの経済効果やいかに?

いよいよプロ野球のペナントレースも重要な局面を迎えて、我が阪神は広島に2連勝した後、今夜から阪神・巨人戦3連戦ですが、先週、プロ野球のキャンンプ地としてすっかり定着した感のある沖縄の地銀のシンクタンクであるりゅうぎん総合研究所から「沖縄県内における2014年プロ野球春季キャンプの経済効果」が発表されています。私自身はエコノミストとして、こういった「経済効果」モノは極めて疑わしい目を向けるているんですが、まあ、週末前の軽い話題として、全文リポートのpdfファイルから図表を切り抜きつつ、ごく簡単に取り上げておきたいと思います。まず、りゅうぎん総合研究所のサイトからリポートの要旨を7点引用すると以下の通りです。

【要旨】
  • 2014年の沖縄県内におけるプロ野球春季キャンプの経済効果は、過去最高となる88億8,000万円となった。
  • これは、これまでで最も大きかった2011年の86億4,800万円を2億3,200万円上回ったことになる。
  • 観客数は、約31万9,500人と過去最高となった。そのうち、県外客は5万1,000人と推察され前年より約8,000人増加した。観客数の増加要因として、広島東洋カープのキャンプが再開されたことやWBC日本代表の宮崎合宿の影響がなかったこと、概ね天候に恵まれたこと、好調な観光を背景とした県外から観客数が増加したことなどが挙げられる。
  • 経済効果が過去最高となったのは、県外からの観客の大幅増による宿泊費、飲食費の増加や練習施設の整備費の増加などが挙げられる。
  • また、経済効果を産業別に多い方からみると、宿泊業13億5,900万円、製造業11億4,300万円、飲食店10億6,000万円などの順であった。
  • 経済効果を球団別にみると読売巨人軍が21億6,500万円と最も多く、次いで阪神タイガースが14億4,100万円であった。
  • 沖縄県はスポーツコンベンションを推進しており、Jリーグ、bjリーグなどと併せスポーツを通した地域振興は、今後も大いに期待される。

えらく長くて、サマライズする能力に疑問を感じさせる【要旨】と感じる人もいるかもしれませんが、知っていることはすべて【要旨】に盛り込もうとする積極姿勢は大いに歓迎すべきと私は受け止めています。

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上のグラフは、リポートから 2014年プロ野球春季キャンプにおける産業別の経済効果 を引用しています。当然ながら、宿泊業や飲食店などが上位になっており、製造業というのは土産品の製造や食品加工と解説されています。締めて88億8,000万円の経済効果は先にお示しした【要旨】の最初の項目にある通りです。

それにしても、なぜか球団別の経済効果は巨人、阪神しか順位も金額も明らかにされていません。何らかの差し障りがあるのか知りませんが、【要旨】に見られるように、分かったことはすべて明らかにするという方針を貫いて欲しい気もします。

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2014年7月10日 (木)

本日発表の機械受注と消費者態度指数と企業物価を見る!

本日、内閣府から5月の機械受注と6月の消費者態度指数が、また、日銀から6月の企業物価が、それぞれ発表されています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの前月比で▲19.5%減の6853億円と大きく減少し、基調判断が下方修正されています。消費者態度指数は前月から+1.8ポイント上昇して41.1と、4月の消費増税を底に5-6月は上昇を示しています。国内企業物価は前年同月比で+4.6%と引き続き高い上昇率を続けています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、5月19.5%減 過去最大のマイナス幅
内閣府が10日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比19.5%減の6853億円だった。減少は2カ月連続で、マイナス幅は統計を遡ることができる2005年4月以降で最大。QUICKが9日時点でまとめた民間予測の中央値(0.9%増)も大きく下回った。
3月に過去最大の伸び幅(前月比19.1%増)を記録してから4月(9.1%減)、5月と大きな減少が続いた。内閣府は機械受注の判断を前月の「増加傾向にある」から「増加傾向に足踏みがみられる」へと下方修正した。もっとも、内閣府は「企業からのヒアリングでは特に目立った減少の理由はみられない」としている。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は前月比18.6%減の2835億円と2カ月連続のマイナス。電気機械向けの熱交換器やコンピューター、化学工業向けのボイラーやタービン、コンピューターなどが落ち込んだ。
一方で、船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額は前月比17.8%減の4270億円と3カ月ぶりに減少した。マイナス幅は過去最大。運輸・郵便業向けの鉄道車両が前月に大型案件があった反動で減ったほか、金融・保険業向けのコンピューターでも反動が出た。
4月と5月の落ち込みを受け、4-6月の「船舶・電力除く民需」が前期比プラスになるためには、6月が前月比47.6%増以上にならなければならず、5四半期ぶりにマイナスに転じる公算が大きい。設備投資が本格的に回復してくるかはまだ見極めが必要になりそうだ。
消費者態度指数、6月は2カ月連続改善 「持ち直し」に上方修正
内閣府が10日発表した6月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は41.1で前月比1.8ポイント上昇した。改善は2カ月連続で、2013年12月(41.3)以来6カ月ぶりの高い水準となった。内閣府は基調判断を前月の「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に2カ月連続で上方修正した。基調判断を2カ月連続で引き上げるのは10年2-3月以来約4年ぶり。
指数を構成する意識指標(「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」)の全項目がプラスだった。4項目全てが上昇するのは2カ月連続。
5月の毎月勤労統計調査(速報)では基本給を示す所定内給与が2年2カ月ぶりにプラス転換するなど、所得環境は改善している。夏のボーナスの増額期待や有効求人倍率の改善も意識指標の上昇に寄与した。
「耐久消費財の買い時判断」は13年12月以来6カ月ぶりの水準に回復。消費増税で悪化していた消費者心理の持ち直しを示す結果となった。
1年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比横ばいの83.3%だった。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は6月15日で、有効回答数は5604世帯(回答率66.7%)だった。
6月の国内企業物価、4.6%上昇 5年9カ月ぶりの高さ
日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は106.3と、前年同月に比べて4.6%上昇した。エネルギー価格が高騰していた08年9月(6.9%上昇)以来、5年9カ月ぶりの高い伸びだった。消費税増税の影響を除いたベースでは1.7%上昇と、前月(1.6%上昇)を上回った。石油製品などエネルギー価格の上昇が目立った。
企業物価指数は出荷や卸売り段階など企業間で取引する製品の価格水準を示す。項目別にみると石油・石炭製品や化学製品などが上昇した。米国や中国での良好な経済指標やイラク情勢の緊迫化などを背景に原油価格が上昇。国内のトラック輸送需要が旺盛だったことから、軽油価格の上昇につながった。農林水産物も上昇した。夏場の需要期に加え、感染症の広がりで頭数が減少し、豚肉の値段が上がった。
公表している全818品目のうち上昇品目は431品目、下落品目は309品目だった。上昇品目が下落品目を上回るのは10カ月連続。今回の公表から、録画再生装置とビデオカメラの2品目を調査対象から外した。海外生産移管が進んだことなどで価格の調査が難しくなったため。
円ベースでの輸出物価は前年比で2.1%、輸入物価は4.2%それぞれ上昇した。

統計が3本あるので、かなり長くなってしまいましたが、いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。これは企業物価上昇率のグラフも同じです。

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コア機械受注は5月も大幅減となりました。消費増税直前の駆込み需要で3月に+19.1%増を記録した後、4月の▲9.1%減に続いて5月も▲19.5%減となり、コア機械受注の水準はほぼ2012年末のレベルにまで落ちてしまいました。上のグラフの上のパネルからも6か月移動平均のトレンドで見て減少に転じたのが見て取れると思います。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「増加傾向」から「増加傾向に足踏み」へと下方修正しています。家計部門の消費は年央くらいに消費増税のショックを抜け出せそうな感触がある一方で、企業部門の設備投資はもう少し時間がかかる可能性が示唆されていると受け止めています。いずれにせよ、5月のコア機械受注統計は消費増税の反動減に加えて、企業部門の弱さを反映している統計と考えるべきであり、さらに進んで、2012年暮れからのアベノミクスと2013年からの金融政策の異次元緩和に牽引された現在の景気回復・拡大局面における家計部門と企業部門の活力の差が現れている可能性すらうかがえます。ただし、家計部門も米国のように借金を重ねてでも消費を拡大するようなマインドではありませんから、企業からの賃上げが実行されなければ家計部門の消費の堅調な状態もサステイナブルではなく、今後は、企業部門に溜め込まれたキャッシュ・フローを企業自身がどのように活用するか、賃上げか、設備投資か、あるいはデフレ期のようなあくまで社内にキャッシュを溜め込んだままの縮小均衡が続くか、はたまた、別の方法が何かあるのか、に注目したいと思います。

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消費者態度指数については、上のグラフに見られる通り、消費者マインドは4月の消費増税ショックから5-6月はリバウンドしてV字回復を示しています。統計作成官庁である内閣府は基調判断を前月の「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に2か月連続で上方修正しています。暮らし向き、収入の増え方、雇用環境など5項目がすべて改善を示しているんですが、ひとつだけ注意しておくべきは収入であり、名目値のイリュージョンが生じている可能性があります。すなわち、名目賃金で見て、所定内賃金などがようやく前年同月比でプラスに転換しつつありますが、実は、4月からの消費増税に伴う物価上昇で実質賃金は4月からマイナス幅が大きく拡大しています。消費者態度指数のうちの収入の増え方では4月の大幅マイナスの後、5-6月はプラスに転じていますが、実は名目の収入は増えている一方で、物価でデフレートした実質の収入は減っている可能性が高いと考えるべきです。ですから、消費者マインドのうち収入についてはサステイナブルではありません。もっとも、現段階では実質賃金がマイナスになった分、雇用が量的に増加し、労働需給の引締りに伴う人手不足から賃金が上昇に転ずるというルートは遅れます。その際、ラグがあるだけであれば消費をサポートする一方で、物価上昇に賃上げが追いつかずに実質所得がマイナスのままであれば所得から消費を下押しする圧力となりかねません。そのあたりは今後とも見極めが必要かもしれません。

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企業物価については着実に上昇率を高めています。引用した記事にもある通り、4月の消費税増税の影響を除いたベースでは1.7%上昇ですから、前月の+1.6%上昇からジリジリと上昇率を高めている印象です。ただし、6月の物価上昇の高まりは原油価格をはじめとする商品価格の上昇の影響も色濃く、一部の論者からは「好ましくない物価上昇」という意見が出るかもしれませんが、私の方はその昔から「いいデフレ」、「悪いデフレ」なんて区別がないのと同様に、取りあえず、物価が上昇してデフレ脱却が進む方が進まないよりもいいと考えています。もちろん、需給ギャップの改善に伴う物価上昇がもっとも望ましいのは言うまでもありませんが、リフレ政策により物価上昇が先行して需給ギャップの改善が遅れるケース、また逆に、需給ギャップの改善が先行してラグを伴って物価上昇が進むケース、の両方が考えらるところ、足元で物価がデフレ状態にある以上、長期的には違いはないと私は受け止めています。もっとも、ここは議論の残るところかもしれません。

本日発表の機械受注と消費者態度指数から、この景気回復・拡大期のひとつの特徴であった「好調で強気な家計と弱気な企業」がふたたびクローズアップされる形となったと私は認識しています。しかし、機械受注の結果は日銀短観に示された設備投資計画や企業マインドとは不整合な気もします。機械受注が間違っていて、どこかでドンと設備投資が増えるのか、日銀短観が間違っていて、この先、設備投資計画の下方修正が続くのか、企業動向については注目が集まるところかもしれません。

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2014年7月 9日 (水)

終盤追い上げられながらも逃げ切って2008年以来の7連勝!

  HE
広  島010000040 5121
阪  神01202100x 6120

相変わらずクリンナップはすっかり当たりを取り戻して、得点力はかなり上がり、8回に大量失点して追い上げられましたが、何とか逃げ切って2008年以来の7連勝でした。7回までは楽勝ペースの試合運びで、私は長風呂に突入してしまったんですが、風呂からあがると一気に接戦になっていました。それにしても、クリンナップの打棒が戻り、藤浪投手がそこそこ投げてくれれば勝ちパターンです。最後は少しヒヤヒヤしましたが、8回に福原投手、9回に呉投手をつぎ込んで広島の反撃を封じました。

この勢いで明日も、
がんばれタイガース!

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東京商工リサーチ「中小企業 賃上げアンケート」調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日7月7日に東京商工リサーチから「中小企業 賃上げアンケート」調査の結果が発表されています。有効回答を得た中小企業3,319社のうち、今春、2,132社64.2%が賃上げを実施したと回答しています。何とも言えない微妙な数字なんですが、我が国経済の裾野を形成する中小企業でも賃上げの動きが広がりつつあることがうかがえます。今夜のエントリーでは、いくつかグラフを引用しつつ、簡単に紹介したいと思います。

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まず、上の円グラフは賃上げを検討したかどうか、また、賃上げを実施したかどうか、に対する回答の比率を示しています。右のグラフから賃上げを実施した中小企業は64.2%に上ることがうかがえますが、何分、賃上げを実施した中小企業と実施していない中小企業とでは回答率が異なり、前者の回答率は後者を上回ることが軽く予想されますから、賃上げを実施した中小企業の比率は実際にはこれよりもいくぶん低い可能性があります。グラフは引用しませんが、逆に、賃上げを見送った理由については、「先行きの見通し難」が643社、「原資が不足」260社などとなっています。

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次に、上のグラフは損益別の賃上げ状況を示しています。あまりにも当然ですが、赤字企業よりは黒字企業の賃上げ比率が高くなっています。また、グラフはありませんでしたが、企業規模別に見た賃上げ比率は、従業員100人以上が72.7%、50人以上100人未満が73.7%、10人以上50人未満が67.1%となっている一方で、5人未満は35.0%にとどまり、従業員規模が大きいほど賃上げを実施していることが明らかにされています。さらに、産業別に見た賃上げ比率は、トップの製造業69.4%に次いで、卸売業65.6%、農・林・漁・鉱業63.6%、建設業62.3%の順で高く、他方、金融・保険業39.1%、不動産業51.5%、小売業57.0%などが低くなっており、規模別ほど差は大きくないものの、産業別で温度差が歴然としているようです。

最後に、繰返しになりますが、賃上げ実施の中小企業比率が64.2%に上った、と言うのは、何とも言えない微妙な数字で、過半数ですから「多い」とも言えますし、最初に書いた回答バイアスを考慮すれば、まだまだ「少ない」とも言えます。しかし、着実に賃上げの恩恵が多くの雇用者に広がっている点は確認できたと受け止めています。

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2014年7月 8日 (火)

15安打3得点の決定力ない攻撃ながらバッテリーの活躍で6連勝!

  HE
広  島001000000 151
阪  神011100000 3151

得点差以上に余裕のある試合運びだったのは、逆に言えば、決定力ない攻撃だったのかもしれませんが、打つ方も守る方も岩田投手と梅野捕手のバッテリーの活躍で6連勝でした。今までの5連勝はヤクルトとDeNAという下位チームを叩いての勝ち星でしたが、今日からは広島・巨人・中日と上位チームとの対戦で9連戦の正念場となります。幸先良く広島に先勝したのをバネにして、もう少し連勝街道を走ってはいかがでしょうか?

明日は台風の雨が降らなければ藤浪投手の先発で、
がんばれタイガース!

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本日発表の景気ウォッチャーと経常収支をどう見るか?

本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から+2.6ポイント上昇して47.7となりました。経常収支は季節調整していない原系列の統計で+5228億円の黒字を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月の街角景気、現状2カ月連続改善 「反動減薄れつつある」
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.6ポイント上昇の47.7と2カ月連続で改善した。内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減の影響も薄れつつある」とし、2013年12月以来6カ月ぶりに上方修正した。
「4月時点では前年比70-80%だった化粧品の売り上げは6月には回復し、90-100%と前年並みに戻った店舗が出てきている。高額品のジュエリーなども回復し、買い控えも徐々になくなってきている」(近畿の百貨店)といった前向きなコメントが並んだ。
一方、2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は53.3と、前月比で0.5ポイント低下。小幅ながら3カ月ぶりに悪化した。今後は反動減からの回復テンポが緩やかになると見込まれるほか、電気料金やガソリン価格、人件費などの上昇が影響した。「主原料や副原料、燃料費、運送費で軒並み値上がりの兆しがある」(北陸の食料品製造業)との声が聞かれた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は91.1%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
5月経常収支、4カ月連続で黒字 輸出の伸びは低水準
財務省が8日発表した5月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当など海外との総合的な取引状況を表す経常収支は5228億円の黒字となった。黒字は4カ月連続。貿易赤字が減ったのが主因だが、企業が生産拠点を海外に移した影響などで、輸出の伸び率は1年2カ月ぶりの低水準だった。
5月の経常黒字は前年同月に比べると438億円(7.7%)減った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は6759億円の赤字だった。赤字額は前年同月比で1379億円(17%)少なくなったが、貿易赤字は11カ月連続だ。
輸出は5兆7188億円と前年同月比2%増えた。米国や欧州の景気持ち直しで15カ月連続の増加となった。ただ伸び率は2013年3月(0.6%)以来の低い水準にとどまる。今年2月までは8カ月連続で10%を超える伸び率だったが3月以降は1桁台と減速した。
自動車の海外生産が拡大しているほか、電機業界などで国内生産の縮小が相次いでいる影響が大きい。円安で価格競争力が強まって輸出数量が伸びる「Jカーブ効果」は限定的との見方が多い。
輸入は6兆3947億円と前年同月比0.4%少ない。減少は19カ月ぶり。消費増税による需要減を見越して、企業が一時的に生産財や消費財の調達を抑えているようだ。
旅行や輸送などのサービス収支は682億円の赤字となった。赤字額は前年同月に比べ437億円多い。ただ特許の貸し出しなどで収入を得る知的財産権の受取額は4810億円と単月で過去最大だった。収支でみても2754億円の黒字となり、過去最高だった12年3月に次ぐ高水準だった。
海外からの配当金などを示す第一次所得収支は1兆4779億円の黒字となった。黒字額は前年同月に比べ3.2%減少した。

いずれも長いながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーの現状判断DI及び先行き判断DIのグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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景気の現状判断DIは、4月の消費増税でドンと落ちた後、5-6月は順調に改善を示しており、かなり50に近い水準まで戻って来ています。私が不可解なのは6月の先行き判断DIがわずかながら悪化した点です。家計動向関連のうちのサービス関連と小売関連で低下を示していて、4月の消費増税後の反動減からの回復テンポが緩やかになると見込まれるためとされています。特徴的な判断理由としてリポートに掲載されている中に、北陸のレストランで「6月は回復するどころか、かえって悪くなっているように感じる」とか、九州の商店街で「電気料金の値上げや消費税増税で、あまり良くならない」といった声はあるものの、やや私の理解ははかどりません。5月の景気ウォッチャーを見て、私は消費増税のショックについては短期に終了するような印象を受けたんですが、反動減からの回復テンポが緩やかであるといった見方は初めて目にしました。もっとも、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減の影響も薄れつつある」に変更しています。どっちなんでしょうか。それとも、反動減は薄れつつあるが、回復テンポが緩やか、というムリにも両立する形なんでしょうか。よく分からないながら、非常に短い期間で大きな変動を繰り返す指標ですから、単月の統計だけで判断するのではなく、また、需要サイドの消費者態度指数などとも合わせて見る必要もあるのかもしれません。

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経常収支のグラフは上の通りです。季節調整済みの系列をプロットしており、青い折れ線グラフが経常収支を、積上げ棒グラフが貿易収支などの経常収支の内訳を示しています。色分けは凡例の通りです。この4-5月で経常収支が2011年の震災後のトレンドを外れて黒字となったのは、貿易赤字はが縮小したからであり、その貿易赤字縮小の主たる要因は輸出増ではなく、消費増税のマイナス・ショックに伴う輸入減であろうと私は考えています。健全な経常収支の黒字化かどうか、やや疑わしいと考えるべきです。このショックは7-9月期にはほぼ剥落するでしょうから、その時点で経常収支はトレンドとして元に戻る可能性が高く、あるいは、レベルとして戻る可能性すらあります。

経済外要因で、今週は超大型の台風8号ノグリー NEOGURI が沖縄付近を通過して九州に近づいています。予想進路を見ていると日本列島を縦断しそうな勢いです。まったく専門外で不案内ながら、消費や住宅建設などにどのような影響を及ぼすものか、我が家の防災とともに、経済へのダメージを含めてそれなりに注目しています。

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2014年7月 7日 (月)

景気動向指数は我が国景気の足踏みを示す!

本日、内閣府から5月の景気動向指数が発表されています。4月の消費増税後の5月の景気のリバウンドを見る指標として注目されていましたが、CI一致指数が前月から横ばいの111.1、先行指数が前月から▲0.8ポイント下降して105.7となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の景気一致指数は横ばい 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した5月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月と横ばいの111.1だった。天候に恵まれ食品や飲料で夏物商品の販売が好調だった一方、消費増税に伴う駆け込み需要の反動などで自動車やパソコンの出荷が落ち込んだ。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を、前月までの「足踏みを示している」で据え置いた。
数カ月後の先行きを示す先行指数は0.8ポイント低下の105.7と4カ月連続のマイナスだった。先行指数が4カ月連続で低下するのは、12年4月から9月にかけて6カ月連続でマイナスになって以来。自動車やパソコン、デジタルカメラといった耐久消費財の在庫が増えたほか、住宅着工床面積が減ったことが響いた。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.5ポイント低下の117.7だった。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDI(最高は100)は一致指数が20.0、先行指数が11.1だった。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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CI先行指数が4か月連続で下がり続ける中、CI一致指数の方が先に下げ止まったという不可解な結果と私は受け止めています。もっとも、5月の景気動向指数については、CIだけでなく、DIも一致指数よりも先行指数のほうが水準が低いという状態となっています。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「足踏み」で据え置いています。取りあえず、CI一致指数に対してプラスの寄与を示したのが、いずれも前年同月比でみた小売業と卸売業の商業販売額に加えて中小企業出荷指数(製造業)となっている一方で、マイナスの寄与が耐久消費財出荷指数と投資財出荷指数(除輸送機械)と所定外労働時間指数(調査産業計)となっています。最後の所定外労働時間については増産の中で所定外労働時間が減少していますから、何らかの統計の事情で不整合が生じていると私は解釈していますが、耐久消費財出荷が5月もマイナスになって消費増税前の駆込み需要に対する反動減がまだ続いている一方で、小売業販売額は前年同月比でプラスなんですから、季節調整済みの系列でマイナス、季節調整していない原系列の前年同月比でプラス、という統計の見方に基づく微妙な差異が生じる時期なんであろうと私は理解しています。ただし、統計を離れて、多くのエコノミストやビジネスマンの景気実感は消費増税のマイナス・ショックは想定内であって、年央くらいには持直しに転ずる、というのが多数意見ではないかと受け止めています。明日発表の景気ウォッチャーなどが参考になると考えてよさそうです。

日銀の「さくらリポート」でも、7月は前回から「全地域が、景気の改善度合いに関する基調的な判断に変化はない」と報告されていて、基調としては景気は緩やかな回復過程にあることが示されています。もう少し時間を経て消費増税のマイナス・ショックは徐々に減衰していくものと私は楽観しています。

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2014年7月 6日 (日)

5点取られれば5点取り返す強力打線が終盤に爆発して5連勝!

  HE
阪  神201001215 12170
D e N A100000050 6100

DeNAとの打撃戦は終盤に少しもつれて、8回には1点差まで追い上げられましたが、5点取られれば5点取り返す強力打線が爆発して5連勝でした。特に、このDeNA3連戦ではクリンナップ3人の打撃が光りました。今日はスタメン起用に応えた伊藤選手のツーランも効きました。この1週間はヤクルト、DeNAと下位チームを叩いて5連勝でしたが、明後日から広島・巨人と上位との対戦が待っています。ここがオールスター前の正念場といえます。

甲子園での広島戦は、
がんばれタイガース!

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今週の読書はイアン・モリス『人類5万年 文明の興亡』ほか歴史の教養書

先週の読書は上下巻のセットで2セット合わせて4冊、少し少ないように見えますが、歴史に関する教養書です。

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まず、イアン・モリス『人類5万年 文明の興亡』上下 (筑摩書房) です。著者は英国出身でケンブリッジ大学で学位を取得し、現在は米国のスタンフォード大学の教授です。原題は Why the West Rules - For Now です。著者独自の「社会発展指数」を基に、古代は西洋がリードし、中性では東洋が逆転し、産業革命以降の近代は西洋が支配している、という事実を明らかにしています。私はかなり単純な歴史認識を持っており、現時点で西洋が世界を支配しているのは世界に先駆けて産業革命を経験したからであり、どうして18世紀英国やその後の西洋で産業革命が起こったかといえば、人口が少ないために人間に取って代わる機械が発明される必然があったからだと考えています。私は基本的に歴史の流れは微分方程式に添っていると考えていますが、この産業革命だけは特異点でありこの時期は微分可能ではありません。おそらく、この本の著者と私は同じ考えであり、現時点で西洋が世界を支配しているのは産業革命を世界で最初に起こしたからであり、そうはいっても、西洋が世界を支配しているのはあくまで for now のことであり、将来的に東洋が再逆転する可能性も十分ありえる、というのは著者と私の共通認識ではないかという気がします。大きく異なるのは、産業革命の原因についてであり、私が産業革命を人手不足解消のための機械化の進行が原因と考えているのに対して、著者は地理的な要因を重視している点です。でも、非常に興味深い論考です。歴史にそれなりの興味を持っている教養人・読書子は、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』などの一連のシリーズやアセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』などとともに、何とかして読んでおくべき本だと言えます。一応、参考までに日経新聞と朝日新聞の書評へのリンクを張っておきます。

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そして、マーティン・ジェイクス『中国が世界をリードするとき』上下 (NTT出版) です。著者はジャーナリストで、イギリス共産党の機関紙である Marxism Today の編集長を務めたようですから、共産主義者なんだろうと思います。ユーロ・コミュニズムでは大陸系のフランス、イタリア、スペインなどが有名なんですが、英国はよく分かりません。なお、本書の原題は When China Rules the World となっており、まさに、上で取り上げた『人類5万年 文明の興亡』の続きのような本と言えます。でも、歴史書・教養書としてはかなりレベルは落ちます。それは覚悟して読むべきでしょう。でも、指摘しているポイントはかなり的確であり、中国は国民国家ではなく文明的な存在である分析したり、米国のマニフェスト・デスティニーと中華思想を対応させたり、マルクス主義よりも儒教的な見方の方が中国は理解しやすいと指摘したり、なかなかのもんだと思います。でも、中国の経済規模が米国を上回ることは近い将来にあり得ると私も同意しますが、パクス・アメリカーナの次に世界的なレベルでパクス・シニカが来ると思っている人は少なそうな気がします。この本についても、参考までに日経新聞の書評へのリンクを張っておきます。

今週は先週の続きで、ウォルター・ラッセル・ミード『神と黄金』上下を読みたいと考えています。でも、まだ下巻が届いていません。間に合うんでしょうか?

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2014年7月 5日 (土)

4番のツーランをルーキー・バッテリーからの完封リレーで守り切って4連勝!

  HE
阪  神000000210 390
D e N A000000000 070

今日もロースコアの投手戦ながら、チャンスを潰し合った拙攻合戦の雰囲気も一部にありました。でも、ラッキーセブンに飛び出した4番ゴメス選手のツーランは昨夜のマートン選手のツーランと同じくらい値千金でした。8回には今成選手のソロでダメを押し、ルーキー・バッテリーからセットアッパーをはさんでクローザーまでの完封リレーで4連勝でした。誰がどう見ても、タイガースの勝ちパターンの試合で、調子は上向きです。

明日も鶴投手を盛り立て3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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映画「超高速!参勤交代」を見に行く

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今日は朝から雨が降っていたので室内競技を志向し、近くのシネコンに映画を見に行きました。上のポスターの通り「超高速!参勤交代」です。出演は、 佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文などで、第8代将軍徳川吉宗の治世に、磐城国のわずか1万5000石の弱小藩である湯長谷藩が、湯長谷の金山を狙う幕府の老中松平信祝から、通常なら8日間を要するところを、わずか5日以内に参勤せよと命じられ、しかも、老中も公儀お庭番の忍者を使って妨害をしたりするものですから、てんてこ舞いで何とか成し遂げ、お取り潰しを免れ、黒幕老中は処罰されるという時代劇コメディーです。あらすじを書いてしまうと何のこともないコメディーなんですが、個性的で芸達者な出演者がいろいろと話を盛り上げ、荒唐無稽なフィクション、かつ、先が読めてしまうストーリーながら、大いに楽しめます。深田恭子も可愛いですし、ストレス解消にもいいような気がします。

私は早くにチケットを入手していたんですが、今週になって新宿西口に並ぶチケット・ショップをチラリとのぞくと売切れ続出でした。一昨年の「テルマエ・ロマエ」を思い出してしまいました。かなり人気の映画だったりするのかもしれません。

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2014年7月 4日 (金)

ロースコアの接戦を制して3連勝で貯金生活が復活!

  HE
阪  神000002010 341
D e N A002000000 271

右腕エースの投げ合いでがっぷり4つに組んだロースコアの接戦を制して3連勝、タイガースは貯金生活に復帰しました。序盤にメッセンジャー投手が2点を先制されるも、6回にマートン外野手の目の覚めるようなホームランで追いつき、8回にはマートン選手敬遠の後、代打関本選手が決勝の犠牲フライでした。弱いチームには容赦なく勝ちに行く阪神らし試合でした。

明日も新人投手を盛り立てて、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計は堅調な動きを見せ米国経済回復テンポの加速を示唆!

昨日、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。通常は第1金曜日の発表なんですが、今年は米国の独立記念日に当たり、統計発表が1日前倒しされています。米国雇用統計のヘッドラインとなる非農業部門雇用者は季節調整済みの系列で見て前月から+288千人増加し、失業率は先月から0.2%ポイント低下して6.1%を記録しています。まず、やや長くなりますが、New York Times のサイトから記事を最初の5パラを引用すると以下の通りです。

Hiring Is Strong And Jobless Rate Declines to 6.1%
American companies are finally getting comfortable enough with the economy's prospects to add new workers at a very healthy pace, after years of saying they lacked the confidence to hire people aggressively during a fitful recovery.
Employers added 288,000 jobs in June, the Labor Department said Thursday, the fifth month in a row that hiring has topped the 200,000 mark. The unemployment rate dipped to 6.1 percent last month, the best reading since September 2008, when the collapse of Lehman Brothers turned what had been a mild recession into an economic rout.
Since then, many segments of the economy have rebounded - including corporate profits, Wall Street and the housing market - even as payrolls inched higher at a grindingly slow rate. Now, these broader economic gains are prompting businesses to actually hire significantly more workers in response to growing demand, rather than taking half steps, like adding hours to stretch existing work forces.
The prospect of stronger economic growth, with healthier consumer spending as more Americans find work, helped to lift the stock market to new highs. On Thursday, the Dow Jones industrial average closed above 17,000 for the first time, while the Standard & Poor's 500-stock index recorded a new high and the tech-heavy Nasdaq hit its highest level since the go-go days of 2000.
Despite the broad gains, the economy is still a long way from its peak before the housing bubble burst and the recession began at the end of 2007. The broadest measure of unemployment, which includes people who are working part time because full-time positions are not available, stands at 12.1 percent. And the proportion of Americans in the labor force has been stuck for three straight months at 62.8 percent, a 36-year low, and is down sharply from 66 percent in 2008.

かなり長いんですが、まずまずよく取りまとめられている印象があります。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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先月の米国雇用統計発表時と同じ感想を持ちます。すなわち、米国の雇用はかなり堅調で、今年後半に米国景気はいっそうの加速を見せる可能性が示唆されていると考えるべきです。で、すべて終わりだったりするんですが、それではお愛想なしなのでもう少し敷衍すると、今年に入って、2月の記録的な寒波の影響などにより米国景気は大きく減速を示していました。個人消費そのものである買い物の足は止まり、企業の設備投資も進まず、金利が下がらないために住宅建設も停滞していました。しかし、春の訪れとともに景気は一気に上昇の兆しを見せ、新車販売などの統計も上向いて消費が持直しに向かっています。一例として、4月の非農業部門雇用者の前月差増分は282千人から今回さかのぼって改定され304千人に上方修正されていたりします。2014年は出だしの1-3月期で年率成長率▲2.9%と大きなマイナス成長を記録し、通年の成長率はこのために1%台にとどまるとの予想がエコノミストの大勢を占めていますが、今年後半から来年にかけては2%台から3%近い、あるいは、3%を超える成長が期待できるのではないかと、米国経済の方向感が修正されつつあるように見受けられます。連邦準備制度理事会 (FED) がデュアル・マンデートのひとつの目標と示した失業率6%台半ばはとっくに超えてさらなる低下を示しており、米国の自然失業率と目される5%台前半も視野に入りつつあります。そうなると、量的緩和 QE3 のテイパリングやゼロ金利の解除、すなわち利上げがアジェンダに上って来ると考えるべきです。

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また、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。逆に言えば、サブプライム危機前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、同時に、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつけて、デフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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2014年7月 3日 (木)

7月からスーパークールビズが始まり節電と再生可能エネルギーの活用について考える!

私のオフィスでは7月1日から9月末日までスーパクールビズがOKです。6月1日からすでに始めている環境省からは「環境省におけるクールビズの服装の可否」が示されていて、「ハーフパンツ」は☓なんですが、私の勤務する研究所では短めのズボンもチラホラ見かけてOKそうなので、私は今日は帰宅が遅くなる見込みだったこともあり、ボトムは7分丈のチノパンにしてみました。上はやや派手めのマドラスチェックのボタンダウン・シャツでした。それから、私が朝夕の通勤電車などで観察する範囲では、今年は昨年に比べて男女ともボトムが短くなっているように見受けられます。女性はスカート丈が去年より短そうに見えますし、男性の短めのズボンも昨年は7分から9分丈くらいだったような気がして、膝小僧は隠れていたように記憶していますが、今年は膝上丈のズボンもめずらしくありません。

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ということで、今年も節電の季節が始まり、上のグラフは日本生協連が実施した「節電と再生可能エネルギーに関する消費者意識調査」の結果から引用しています。もちろん、pdf の全文リポートもアップされています。上から2番目の棒グラフは「電気料金が値上がりするとしても、再生可能エネルギーを利用したい」という問いに対する回答割合なんですが、同意率は50%を超えているものの、90%前後を示している他の問いへの回答と比べて格段に同意率が低くなっています。日本の場合、製造業の生産プロセスやサービス業などのオフィスにせよ、運輸サービスにせよ、一般家庭にせよ、世界的に見てかなり省エネルギーや省電力が進んでいますから、さらに一段のエネルギーの節約を進めようとすれば、あるいは、再生可能エネルギーの活用を進めようとすれば、コストが上昇する可能性が十分あります。節電でコストダウン出来るのであれば同意するものの、節電でコストアップする場合にどのような対応が可能か、生協というそれなりに節電などの意識が高い組織のアンケートに対する回答率で、ようやくコストアップも受け入れるとの回答が過半数を超えた段階であり、全国民的に再生可能エネルギーの活用によるコストアップ・負担増が受け入れられるかどうか、今後とも私は大いに注目しています。

注目の米国雇用時計が公表されているのは認識しているんですが、日を改めて取り上げることとし、今夜も帰宅が遅くなったので簡単に済ませておきます。

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2014年7月 2日 (水)

厚生労働省「年金の財政検証」に関する単なる感想

とても旧聞に属する話題ですが、6月3日に公的年金の財政見通しが5年振りに再計算され厚生労働省から公表されています。以下は資料のリファレンスとなる厚生労働省のサイトです。

私は日本経済をウォッチしている中でも、足元や近い将来の経済見通しなどの景気循環に関心と専門性があり、日本を離れれば新興国や途上国に赴任した経験から開発経済学の蓄積が少しあるくらいで、ですから、景気循環学会国際開発学会などに所属していますが、年金や税制などの制度論は専門外なものですから、ついつい、有識者の論調を頼りにしています。組織としては親会社の関係か、ニッセイ基礎研がこの年金問題に強いような印象を持っています。最近の参考リポートは以下の通りです。

後者のリポートから公的年金財政検証の主な前提と計算結果を引用すると以下の通りです。今回の財政検証では「非公表」として伏せられた情報がかなりあったもの特徴のひとつかもしれません。政府が情報を出し惜しみする場合、国民は疑ってかかるのが常道だと誰かが言っていたのを思い出します。京都大学の先生だと思うんですが、誰かは忘れました。

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私は、年金に関する議論のポイントは2つしかなくて、財政のサステイナビリティと世代間格差だと考えています。明らかに、現在や近い将来の引退世代への給付を削減するのが最大の解決方法だと考えているんですが、これを強力に阻止しているシルバー・デモクラシーの高齢者パワーをいかに抑え込むかが間接民主制の勘所だという気がしないでもありません。でも、これが民主制のコストなのかもしれません。
経済評論のブログながら、やや専門外のトピックを取り上げ、しかも、帰宅が遅くなったので簡単に済ませておきます。

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2014年7月 1日 (火)

やや締りのない大荒れの乱打戦ながらヤクルトを下して先勝!

  HE
ヤクルト210102000 6111
阪  神700500000 12130

両チームとも初回から点を取り合って荒れた試合だったんですが、3ホーマーが効果的な攻撃でヤクルトを下して先勝です。先発藤浪投手のピッチングもピリッとしませんでしたが、1-2番を上本内野手と大和外野手に戻した打線が大爆発し、大量点に守られて6失点ながら勝ち投手となりました。藤浪投手をつないだリーリーフの3投手も無難に締めゼロで抑えました。打つ方はホームランが効果的で、梅本捕手を使い続けたかいがあって、2ホーマーで結果を出しましたし、4番ゴメス選手のツーランも効果的でした。野手キャプテンの鳥谷遊撃手も鋭い当たりを飛ばしていました。ツキが変わって快進撃と行くんでしょうか?

明日も、
がんばれタイガース!

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日銀短観は消費増税により足元で悪化したものの総じて底堅い景況感を示す!

本日、日銀から6月調査の短観が発表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査の+17から▲5ポイント悪化して、それでもプラスを維持し+12となりました。本年度の大企業の設備投資計画は昨年度から+7.4%増と大幅に上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月日銀短観、景況感6四半期ぶり悪化 先行きは改善
日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス12だった。前回3月調査のプラス17から5ポイント悪化した。DIの悪化は6四半期ぶり。消費増税前の駆け込み需要の反動減が影響し、企業景況感の悪化につながった。新興国を中心に海外経済の回復ペースが鈍く、輸出の伸びが緩慢だったことも景況感の改善に歯止めをかけた。
3カ月先については、大企業製造業がプラス15になる見通し。米国を中心に世界経済が緩やかに回復していくとの見方から輸出や生産などの持ち直しが見込まれ、景気回復に向けた軌道に復帰する見通し。
14年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=100円18銭と、前回の99円48銭よりも円安・ドル高方向に修正された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。回答期間は5月28日-6月30日で、今回調査の回収基準日は6月11日だった。
一方、大企業非製造業のDIはプラス19と、前回から5ポイント悪化した。堅調に推移していた個人消費の勢いが消費増税後に一服し、6四半期ぶりの悪化となった。増税前の駆け込み需要の反動減で小売業などが悪化した。人件費や関連資材の高騰など企業の人手不足やコスト高を反映し景況感は落ち込んだ。
3カ月先のDIは横ばいのプラス19を見込む。増税後の反動減の影響が和らぎ、景況感は下げ止まりそうだ。
中小企業は製造業が3ポイント悪化のプラス1、非製造業は6ポイント悪化のプラス2だった。非製造業ではプラス幅は縮小したものの、3期連続でプラス圏となった。先行きは製造業で改善する一方、非製造業では悪化が予想される。
14年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比7.4%増だった。3月調査の0.1%増から上方修正され、QUICKがまとめた市場予想の中央値(6.0%増)を上回った。先行きの海外経済回復の期待に加え、企業収益の改善に伴ってこれまで先送りしていた投資を再開する動きが出てきたことが、増加につながったようだ。
大企業製造業の輸出売上高は前年度比1.4%増となった。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス2と、3月調査(マイナス3)から1ポイント上昇。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。マイナス幅は縮まったが、企業はコストを販売価格に転嫁できない状況が続いている。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIについては、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスが足元で+15、先行きで+17でしたから、足元・先行きともやや下振れした数字と受け止めています。もう少し業種別に細かく見ると、まず、製造業と非製造業で先行きの見方が少し異なります。すなわち、海外経済の持直しに伴う輸出増が期待できる製造業が先行きは上向くと見込んでいる一方で、国内経済に軸足を置く非製造業では業況判断DIの水準はともかく、方向性として先行きが上向くとは見なされていません。また、製造業では自動車が大企業こそ足元から先行きにかけて+1ポイント上向くとの結果が示されているものの、中堅企業と中小企業の自動車では先行きに向かって業況感は低下するとの見方が示されています。我が国のリーディング産業である自動車の行方がやや懸念されるところかもしれません。また、非製造業のうち個人消費に依存する割合が高いと考えられる業種も明暗を分けており、これも足元から先行きにかけて、小売が企業規模別に+7から+9ポイントの幅で改善を見込んでいるのに対して、宿泊・飲食サービスについてはほぼ横ばいとの結果が出ています。年央以降についても、マクロの景気は消費増税による負のショックから徐々に成長軌道に回帰するとはいえ、産業別の景況感は一様ではないということで、ある意味で、当然の結果が示されたと言えます。「一様ではない」と言いつつ、また、市場の事前コンセンサスより下振れしたとはいえ、総じて見て、景況感については底堅く推移していると私は受け止めています。

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次に、大きな傾向は変わりありませんが、設備と雇用についても、4月の消費増税を経て、要素需要が出る方向に回帰しています。すなわち、設備についてはまだ過剰感が完全に払拭されたわけではありませんが、過剰から不足に向かう方向感は取り戻しましたし、雇用についても企業規模が小さくなるほど不足感が強まっています。労働供給については、人口減少に向かう中で長期的にはもちろん不足の方向にありますが、短期的な足元でも労働供給に対する不足感が大きくなってきており、賃上げの素地が広がっていると私は受け止めています。

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設備投資計画については、3月調査の短観から大きく上方修正されていますが、設備投資が完全復活したとは私は考えていません。理由は3点あり、第1に短観の統計としてのクセがあり、6月調査の短観では設備投資計画が大きく出がちになり、その後、9月調査から12月調査にかけて下方修正される可能性が残されているからです。第2に昨年度2013年度下期の消費増税前の駆込み需要に伴って、いわゆるゲタが大きくなっています。ですから、大企業の投資計画では上期+16.6%増に対して、下期は+0.2%増とほぼ横ばいとなっています。第3にまだ大企業中心の設備投資増であり、まだ中小企業ではマイナス計画となっているため、全規模全産業では伸び率低く+1.7%増にとどまっています。

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最後に、日銀短観から毎月勤労統計に目を転じて、上のグラフはいつもの毎勤のグラフであり、上のパネルが景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列を、下のパネルは給与指数の前年同月比を、それぞれプロットしています。5月は生産が増産に転じたにも関わらず、残業時間は減少してしまいました。なかなか理解がはかどらないんですが、消費増税直前の3月に大きく残業が増えていますので、その反動が4-5月で続いているのかもしれません。それから、お給料はいわゆるフルタイム労働者が増加して、何と2年2か月振りに所定内賃金が前年同月比でプラスに転じています。下のグラフは就業形態別にフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者とその合計の前年同月比増減率を示しています。ここ数か月でフルタイムの一般労働者がジワジワと増加率を高め、5月は前年同月比で+1.3%増と、+1.4%増に伸び率を低下させたパートタイム労働者にほぼ伸び率で並んでいます。パートタイムからフルタイムへの転換が一部に進んでいる可能性が示唆されていると考えるべきです。

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