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2014年7月10日 (木)

本日発表の機械受注と消費者態度指数と企業物価を見る!

本日、内閣府から5月の機械受注と6月の消費者態度指数が、また、日銀から6月の企業物価が、それぞれ発表されています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの前月比で▲19.5%減の6853億円と大きく減少し、基調判断が下方修正されています。消費者態度指数は前月から+1.8ポイント上昇して41.1と、4月の消費増税を底に5-6月は上昇を示しています。国内企業物価は前年同月比で+4.6%と引き続き高い上昇率を続けています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、5月19.5%減 過去最大のマイナス幅
内閣府が10日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比19.5%減の6853億円だった。減少は2カ月連続で、マイナス幅は統計を遡ることができる2005年4月以降で最大。QUICKが9日時点でまとめた民間予測の中央値(0.9%増)も大きく下回った。
3月に過去最大の伸び幅(前月比19.1%増)を記録してから4月(9.1%減)、5月と大きな減少が続いた。内閣府は機械受注の判断を前月の「増加傾向にある」から「増加傾向に足踏みがみられる」へと下方修正した。もっとも、内閣府は「企業からのヒアリングでは特に目立った減少の理由はみられない」としている。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は前月比18.6%減の2835億円と2カ月連続のマイナス。電気機械向けの熱交換器やコンピューター、化学工業向けのボイラーやタービン、コンピューターなどが落ち込んだ。
一方で、船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額は前月比17.8%減の4270億円と3カ月ぶりに減少した。マイナス幅は過去最大。運輸・郵便業向けの鉄道車両が前月に大型案件があった反動で減ったほか、金融・保険業向けのコンピューターでも反動が出た。
4月と5月の落ち込みを受け、4-6月の「船舶・電力除く民需」が前期比プラスになるためには、6月が前月比47.6%増以上にならなければならず、5四半期ぶりにマイナスに転じる公算が大きい。設備投資が本格的に回復してくるかはまだ見極めが必要になりそうだ。
消費者態度指数、6月は2カ月連続改善 「持ち直し」に上方修正
内閣府が10日発表した6月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は41.1で前月比1.8ポイント上昇した。改善は2カ月連続で、2013年12月(41.3)以来6カ月ぶりの高い水準となった。内閣府は基調判断を前月の「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に2カ月連続で上方修正した。基調判断を2カ月連続で引き上げるのは10年2-3月以来約4年ぶり。
指数を構成する意識指標(「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」)の全項目がプラスだった。4項目全てが上昇するのは2カ月連続。
5月の毎月勤労統計調査(速報)では基本給を示す所定内給与が2年2カ月ぶりにプラス転換するなど、所得環境は改善している。夏のボーナスの増額期待や有効求人倍率の改善も意識指標の上昇に寄与した。
「耐久消費財の買い時判断」は13年12月以来6カ月ぶりの水準に回復。消費増税で悪化していた消費者心理の持ち直しを示す結果となった。
1年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比横ばいの83.3%だった。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は6月15日で、有効回答数は5604世帯(回答率66.7%)だった。
6月の国内企業物価、4.6%上昇 5年9カ月ぶりの高さ
日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は106.3と、前年同月に比べて4.6%上昇した。エネルギー価格が高騰していた08年9月(6.9%上昇)以来、5年9カ月ぶりの高い伸びだった。消費税増税の影響を除いたベースでは1.7%上昇と、前月(1.6%上昇)を上回った。石油製品などエネルギー価格の上昇が目立った。
企業物価指数は出荷や卸売り段階など企業間で取引する製品の価格水準を示す。項目別にみると石油・石炭製品や化学製品などが上昇した。米国や中国での良好な経済指標やイラク情勢の緊迫化などを背景に原油価格が上昇。国内のトラック輸送需要が旺盛だったことから、軽油価格の上昇につながった。農林水産物も上昇した。夏場の需要期に加え、感染症の広がりで頭数が減少し、豚肉の値段が上がった。
公表している全818品目のうち上昇品目は431品目、下落品目は309品目だった。上昇品目が下落品目を上回るのは10カ月連続。今回の公表から、録画再生装置とビデオカメラの2品目を調査対象から外した。海外生産移管が進んだことなどで価格の調査が難しくなったため。
円ベースでの輸出物価は前年比で2.1%、輸入物価は4.2%それぞれ上昇した。

統計が3本あるので、かなり長くなってしまいましたが、いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。これは企業物価上昇率のグラフも同じです。

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コア機械受注は5月も大幅減となりました。消費増税直前の駆込み需要で3月に+19.1%増を記録した後、4月の▲9.1%減に続いて5月も▲19.5%減となり、コア機械受注の水準はほぼ2012年末のレベルにまで落ちてしまいました。上のグラフの上のパネルからも6か月移動平均のトレンドで見て減少に転じたのが見て取れると思います。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「増加傾向」から「増加傾向に足踏み」へと下方修正しています。家計部門の消費は年央くらいに消費増税のショックを抜け出せそうな感触がある一方で、企業部門の設備投資はもう少し時間がかかる可能性が示唆されていると受け止めています。いずれにせよ、5月のコア機械受注統計は消費増税の反動減に加えて、企業部門の弱さを反映している統計と考えるべきであり、さらに進んで、2012年暮れからのアベノミクスと2013年からの金融政策の異次元緩和に牽引された現在の景気回復・拡大局面における家計部門と企業部門の活力の差が現れている可能性すらうかがえます。ただし、家計部門も米国のように借金を重ねてでも消費を拡大するようなマインドではありませんから、企業からの賃上げが実行されなければ家計部門の消費の堅調な状態もサステイナブルではなく、今後は、企業部門に溜め込まれたキャッシュ・フローを企業自身がどのように活用するか、賃上げか、設備投資か、あるいはデフレ期のようなあくまで社内にキャッシュを溜め込んだままの縮小均衡が続くか、はたまた、別の方法が何かあるのか、に注目したいと思います。

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消費者態度指数については、上のグラフに見られる通り、消費者マインドは4月の消費増税ショックから5-6月はリバウンドしてV字回復を示しています。統計作成官庁である内閣府は基調判断を前月の「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に2か月連続で上方修正しています。暮らし向き、収入の増え方、雇用環境など5項目がすべて改善を示しているんですが、ひとつだけ注意しておくべきは収入であり、名目値のイリュージョンが生じている可能性があります。すなわち、名目賃金で見て、所定内賃金などがようやく前年同月比でプラスに転換しつつありますが、実は、4月からの消費増税に伴う物価上昇で実質賃金は4月からマイナス幅が大きく拡大しています。消費者態度指数のうちの収入の増え方では4月の大幅マイナスの後、5-6月はプラスに転じていますが、実は名目の収入は増えている一方で、物価でデフレートした実質の収入は減っている可能性が高いと考えるべきです。ですから、消費者マインドのうち収入についてはサステイナブルではありません。もっとも、現段階では実質賃金がマイナスになった分、雇用が量的に増加し、労働需給の引締りに伴う人手不足から賃金が上昇に転ずるというルートは遅れます。その際、ラグがあるだけであれば消費をサポートする一方で、物価上昇に賃上げが追いつかずに実質所得がマイナスのままであれば所得から消費を下押しする圧力となりかねません。そのあたりは今後とも見極めが必要かもしれません。

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企業物価については着実に上昇率を高めています。引用した記事にもある通り、4月の消費税増税の影響を除いたベースでは1.7%上昇ですから、前月の+1.6%上昇からジリジリと上昇率を高めている印象です。ただし、6月の物価上昇の高まりは原油価格をはじめとする商品価格の上昇の影響も色濃く、一部の論者からは「好ましくない物価上昇」という意見が出るかもしれませんが、私の方はその昔から「いいデフレ」、「悪いデフレ」なんて区別がないのと同様に、取りあえず、物価が上昇してデフレ脱却が進む方が進まないよりもいいと考えています。もちろん、需給ギャップの改善に伴う物価上昇がもっとも望ましいのは言うまでもありませんが、リフレ政策により物価上昇が先行して需給ギャップの改善が遅れるケース、また逆に、需給ギャップの改善が先行してラグを伴って物価上昇が進むケース、の両方が考えらるところ、足元で物価がデフレ状態にある以上、長期的には違いはないと私は受け止めています。もっとも、ここは議論の残るところかもしれません。

本日発表の機械受注と消費者態度指数から、この景気回復・拡大期のひとつの特徴であった「好調で強気な家計と弱気な企業」がふたたびクローズアップされる形となったと私は認識しています。しかし、機械受注の結果は日銀短観に示された設備投資計画や企業マインドとは不整合な気もします。機械受注が間違っていて、どこかでドンと設備投資が増えるのか、日銀短観が間違っていて、この先、設備投資計画の下方修正が続くのか、企業動向については注目が集まるところかもしれません。

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