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2014年7月29日 (火)

本日発表の雇用統計と商業販売統計をどう見るか?

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、経済産業省の商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも6月の統計です。失業率は前月から0.2%ポイント上昇して3.7%となった一方で、有効求人倍率は前月からさらに0.1ポイント上昇して1.10倍となり、引き続き雇用は堅調に推移している一方で、商業販売のうちの小売は前年同月比で▲0.6%減と消費増税のショックがまだ続いています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

有効求人倍率、6月は1.10倍に上昇 22年ぶり高水準
厚生労働省が29日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.10倍と前月から0.01ポイント上がった。改善は19カ月連続で、1992年6月以来22年ぶりの高い水準。総務省が同日発表した完全失業率(季節調整値)は3.7%と前月から0.2ポイント悪化したが、新たに仕事を探し始めた人が増えたことが要因。人手不足などを背景に雇用は改善傾向が続いている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す求職者1人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。数字が高いほど働く人は仕事を見つけやすい一方、企業から見ると採用が難しくなることを示す。
6月に受け付けた新規求人数(原数値)は8.1%増えた。主要11業種のうち10業種で伸び、医療福祉が15.3%増、製造業も14.2%増えた。
正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.68倍と前月から0.01ポイント改善した。求職者と同数の求人がある「1倍」は下回るものの、比較可能な2004年11月以降で過去最高の水準を3カ月連続で更新した。
6月の失業率が悪化したのは、新たに仕事を探し始めた人や、よい条件を求めて転職先を探す人が増えたため。完全失業率は15歳以上の働きたい人のうち仕事に就かずに職を探している失業者の割合を示す。総務省は雇用環境が改善していく過程での一時的な失業率の悪化と見ており、「引き続き持ち直しの動きが続いている」との基調判断を維持した。
働いている人の割合を示す就業率(原数値)は15-64歳で72.9%と前年同月から1.0ポイント上がった。女性に限ると64.0%と比較可能な68年以降で最高になった。
雇用者に占める非正規労働者の割合は36.8%と前年同月に比べて0.4ポイント上がった。パートで働く女性や嘱託で働く高齢者が増えているため。
6月の小売販売額、3カ月連続減 消費増税の反動や天候不順で
経済産業省が29日発表した6月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆3510億円と、前年同月から0.6%減った。減少は3カ月連続。消費増税に伴う駆け込み需要の反動が続き、白物家電や自動車の販売が落ち込んだ。
小売業の内訳をみると、自動車が普通車や輸入車の販売が振るわず3.9%減となった。機械器具は6.5%減だった。増税の反動に加え、天候不順の影響でエアコンなどの販売が低迷した。雨の日が多く夏物衣料の出足が鈍ったため、織物・衣服・身の回り品も2.5%減った。
大型小売店は1.2%減の1兆6317億円で、3カ月連続のマイナスだった。既存店ベースは1.8%減。このうち百貨店は2.4%減だった。天候不順や高額品を中心に消費税の駆け込み需要の反動が続いた。スーパーは衣料品などが振るわず1.4%減だった。
コンビニエンスストアは4.9%増の8682億円だった。店舗数の増加に加え、消費増税前のたばこの買いだめの解消が進み、既存店ベースでも0.2%増だった。
同時に発表した専門量販店販売統計(速報)によると、6月の販売額は家電大型専門店は3410億円、ドラッグストアが3972億円、ホームセンターが2736億円だった。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、さすがに、雇用統計と商業販売統計の記事を並べるとかなり長い、という気もします。次に、雇用統計のグラフは以下の通りです。見れば分かると思いますが、一応、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数のグラフです。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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大雑把なグラフの見方として、失業率は6月に悪化、有効求人倍率は1年半にわたって改善を続け、新規求人数は6月は増加したものの、高い水準を続けていながら、このところやや停滞気味、と言うことになろうかと思います。全体として雇用は改善が続いており、6月の失業率が0.2%ポイント上昇したのは、景気が回復・拡大する中で新たな求職者の労働市場への流入や転職活動の活発化などに起因するものであり、決して雇用の悪化をストレートに意味しているわけではないと私は受け止めています。統計を精査すれば、季節調整済みの系列で見て5月から6月にかけて、労働力人口が12万人増加しつつも、就業者は前月と変わらず、失業者が11万人増加しています。他方、就業者の中の雇用者は14万に増加しており、単純に計算しても自営業から雇用者に転換することによって雇用者は増加しているという解釈になり、他方、職を求めて労働市場に参入して労働力人口に加えられた人数分が失業者に登録された、という意味でしょう。雇用者数はすでにリーマン・ショック前の水準を超えており、有効求人倍率は1年半余りにわたって改善を続けているわけですし、新規求人数は高い水準を続けていますから、繰返しになりますが、雇用は堅調と見てよさそうです。ただ、ひとつだけ考慮すべきは失業率の水準です。すなわち、単純なフィリップス曲線に従えば、インフレ率+2%を達成するためにはさらに失業率が低下する必要がありますし、私は3%代前半くらいまではラクに低下する可能性が高いと見込んでいましたが、このあたりの3%台半ばに見えない壁がある可能性も否定できません。

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続いて、季節調整していない商業販売統計の小売業の前年同月比と季節調整した指数のグラフは上の通りです。4月に消費増税のショックで大きく落ち込んでから、5-6月は季節調整していない前年同月比で見て小幅のマイナスにまで戻し、季節調整済みの指数では2か月連続の前月比プラスを記録しています。ただし、前年同月で小幅のプラスとは言っても、この統計は名目値の表章ですから、例えば、総務省統計局の家計調査では6月の実質支出も前年同月比で▲3.0%の減少となっています。今回の消費増税に伴うマイナス・ショックは「経済財政白書」でも分析されていた通り、1997年の時の消費増税に比べてやや大きく、期間も1年くらい続く可能性がありますが、この間も、前年同月比でマイナス、前月比でプラスの状態が続く可能性が高く、従って、GDPベースの消費は前期比プラスを示すこととなりそうで、景気の判断が難しいところです。加えて、非正規雇用では派遣スタッフを中心に、かなり賃上げが浸透しつつありますが、正規職員まで含めた賃上げ動向が今後の消費をどこまでサポートするか、私は慎重に見ているんですが、楽観視しているエコノミストも少なくありません。賃上げ動向も判断が難しいところです。ただし、消費者マインドはある程度の上昇が見込めそうです。消費動向は所得とマインドに左右されますし、何と言っても、最大のGDPの需要項目です。今後とも目が離せません。

今週は月末週で、明日の鉱工業生産指数など、今日の雇用統計や消費統計のほかにも、いくつか景気指標が発表されます。消費増税のショックがいつまで続くか、あるいは、解消されるか、気にかかるところです。

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