来週発表予定の4-6月期GDP統計1次QEの予想やいかに?
来週水曜日の8月13日に今年2014年4-6月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。必要な経済指標がほぼ出尽くし、シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、7-9月期以降の先行き経済の動向に関する記述を取っているつもりです。一応、明示的に先行きに言及しているのは、下のテーブルの上から4機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研だけです。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | ▲1.8% (▲6.9%) | 7-9月期を展望すると、企業の景況感や消費者マインドが持ち直すなか、良好な企業業績が雇用・所得環境の改善や設備投資の増加に作用する見込み。加えて、消費税率引き上げに備えた経済対策が公共投資を中心に本格化することも下支えとなり、景気は消費増税を乗り越え、秋ごろにかけて回復軌道に復帰する見通し。 |
大和総研 | ▲2.4% (▲9.3%) | 2014年7-9月期以降については、日本経済は回復軌道へ復する公算である。 個人消費は増加傾向が明確化する見通しである。耐久消費財については緩やかな増加にとどまるとみているが、非耐久消費財やサービス消費が個人消費の増加を後押しすると考えている。個人消費の前提となる所得環境をみても、足下で労働需給の引き締まりから賃金は上向きの動きとなっていること、および夏季ボーナスの増加が期待できることが個人消費を下支えするとみている。加えて、消費税率の引き上げに伴い悪化していた消費者マインドもすでに持ち直しの動きに転じており、7-9月期以降はマインドの改善も個人消費を後押しする要因となるだろう。 住宅投資に関しては (以下略) |
みずほ総研 | ▲1.5% (▲6.0%) | 7-9月期の成長率は、年率+3%-+4%のプラス成長に復すると予想している。増税後の経済情勢に対する警戒感から、設備投資は緩やかな伸びにとどまるだろう。輸出の回復が力強さを欠く中で、駆け込みの反動による輸入の減少がほぼ一巡するため、外需寄与度のプラス幅は4-6月期から大幅に縮小する見込みである。一方、駆け込み需要の反動が徐々に薄れる中で、夏季ボーナスの増加が支えとなって、個人消費は増加に転じるだろう。公共事業の執行が一段と進むことで、公的需要も増加が続くと予想される。7-9月期は個人消費の持ち直しや公需の増加が下支えとなり、高めの成長になると予測している。 |
ニッセイ基礎研 | ▲1.6% (▲6.4%) | 現時点では7-9月期の実質GDPは前期比年率3%近い成長を予想しているが、景気の実勢は消費増税前よりも弱くなっている。4-6月期の成長率は当初の想定を大きく下回った模様だが、7-9月期も個人消費、輸出を中心に下振れするリスクがあるだろう。 |
第一生命経済研 | ▲1.7% (▲6.8%) | 駆け込み需要の反動から個人消費が大幅減になったことが落ち込みの主因。また、住宅投資も反動減が大きく出ていてるほか、設備投資の落ち込みにも1-3月期の駆け込みの反動の面があるなど、基本的には反動減の色彩が強いことは確かである。ただし、個人消費の落ち込みの一部には実質所得減による下押しが影響している面もあるほか、相変わらず輸出も弱く、(反動減以外の)需要減の影響も無視すべきではない。必ずしも反動減だけでは片付けられないことには注意が必要だろう。 |
伊藤忠経済研 | ▲1%台半ば (▲5-6%) | 4-6月期のマイナス成長も想定内と言えるため、今後を展望する上でより重要なのは11月17日に発表予定の7-9月期の成長率である。7-9月期の日本経済が、消費増税という大きな下押し圧力を跳ね除け、所得環境や企業業績の改善を原動力とする回復軌道に乗ったことを確認し、さらに、回復の持続性を期待できるほどに十分なプラス成長となれば、デフレ脱却の可能性は大きく高まる。 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | ▲1.5% (▲6.0%) | 4月の消費税率引き上げ(5%→8%)に伴う駆け込み需要の反動減から、個人消費が大幅に落ち込んだほか、設備投資も減税効果の一巡もあって5四半期ぶりに減少したとみられる。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲2.4% (▲9.2%) | 2014年4-6月期の実質GDP成長率は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動減によって前期比-2.4%(年率換算-9.2%)と大きく落ち込んだと見込まれる。 |
三菱総研 | ▲1.6% (▲6.1%) | 2014年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比▲1.6%(年率▲6.1%)と7四半期ぶりのマイナス成長を予測する。消費税増税後の反動減により、内需が全般的に押し下げられた影響が大きい。 |
特に、私からコメントすることもないんですが、要するに、4月の消費増税のショックを受けて4-6月期は大きなマイナス成長に陥る、ということなんだろうと思います。先行きについては、7-9月期には回復軌道に復帰すると見込まれていますが、ハイライトしておいたニッセイ基礎研の指摘はとても重要で、消費税率引上げ前後の駆込み需要と反動減という政策要因を除いた現時点での「景気の実勢は消費増税前よりも弱くなっている」可能性があります。消費者マインドの好転と夏季ボーナスの増加は消費を押し上げる効果がある一方で、消費税率引き上げに伴う物価上昇と実質購買力の低下は消費の下押し要因となります。企業はまだ設備投資を見極めているところですし、海外経済も米国を除いて欧州や新興国経済の不透明さはまだ払拭されたとは言いがたいと見なされています。確実なのは公共投資だけという状態ですから、上振れリスクもあるものの、下振れリスクのほうが大きい、ということなんだろうと受け止めています。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから成長率の推移を引用しています。
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