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2014年8月23日 (土)

今週の読書は古市憲寿『だから日本はズレている』ほか、何冊か小説など

今週の読書は、代表作『絶望の国の幸福な若者たち』で一躍時の人となった古市憲寿『だから日本はズレている』のほかは、話題の新刊小説を何冊か読んでいたりします。以下の通りです。

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まず、古市憲寿『だから日本はズレている』(新潮新書) です。最初に書いた通り、作者は『絶望の国の幸福な若者たち』で一躍時の人となった社会学者です。この新書では、「おじさん社会」である日本の理不尽さや違和感について、「おじさん」に対比される「若者」の観点から論じています。あとがきの p.233 で明らかにしているように、この本の原題は『「おじさん」の罪』だったそうなんですが、新潮社内の「おじさん」の反対にあってボツにされたそうです。ソーシャル・メディアなどで共感をよぶのは「正義」とか「正しさ」ではなく、「もっともらしさ」だと指摘したり(p.113)、客観的に若者に不幸な現在の日本社会で若者が満足している事実を解き明かす鍵をコンサマトリー(自己充足的)に求めたり(p.212)と、従来の主張から新しさはないんですが、改めて若者の現状や心情を把握する上でとても有益な本だと感じています。私の世代間格差に関する基本的な考えは、何度もこのブログで明らかにしているので繰り返しませんが、少子高齢化の下で、客観的な若者不利の状況、というか、若者が市場的な希少価値を発揮できないのは、第1に民主主義という希少性でウェイト付けせずに1人1票というシステムの下で、第2にシルバー・デモクラシーの投票結果を間接民主主義で修正することに政治家が失敗しており、第3に市場性のない社会保障政策や市場システムを不全に陥らせる「岩盤規制」で固められた労働市場で市場的な解決が図られにくくなっており、第4に市場的な解決が可能であっても生物としての人間の寿命を考慮して調整時間が極めて長い、という条件があるからです。日本に特徴的なのは第2と第3のポイントだと思います。

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次に、米澤穂信『満願』(新潮社) です。実は、今年下半期の第151回直木賞は、私はこの『満願』が最有力だと考えていました。実際に受賞した黒川博行『破門』は疫病神シリーズの第5作で、これに先立つ4作は私はすでに読んでおり、極道のヤクザが主人公の1人である疫病神シリーズは決して嫌いではないものの、直木賞を受賞するには少し違和感を感じていたりしました。直木賞は芥川賞と違って長編小説が多いんですが、最近では辻村深月の短編集『鍵のない夢を見る』の受賞もありましたし、姫野カオルコ『昭和の犬』も連作短編みたいなものです。ということで、それはさて置き、この作品『満願』は短編集であり、少なくとも最後の2編、すなわち、「死人宿」と「満願」は私はすでに『ザ・ベストミステリーズ』で読んだ記憶があります。日本推理作家協会の選になる年間のベスト短編で編まれたアンソロジーです。ですから、ミステリを集めた短編集としての『満願』も非常に質の高い作品を集めており、本格ミステリではないものの、現代ミステリとして上質の短編集に仕上がっています。大上段に振りかぶった本格ミステリと違って、日常生活から大きく外れることなく、また、決して殺人事件だけに集中することもなく、名探偵が登場するわけでもなく、ある意味で淡々と一連の出来事の謎を解いていきます。

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次の中村文則『A』(河出書房新社) も短編集です。作者は「土の中の子供」で133回芥川賞を受賞した芥川賞作家です。また、ノワール小説への貢献により米国でデイビッド・グーディス賞を授賞されています。ここ2-3年で私が読んだこの作者の作品は、同じ河出書房新社から出版されている『掏摸<スリ>』と『王国』と幻冬舎の『去年の冬、きみと別れ』なんですが、これらの長編作人は異なるものの、基本的に同じライン上にある短編を集めた作品です。「糸杉」、「嘔吐」、「三つの車両」、「セールス・マン」、「体操座り」、「妖怪の村」、「三つのボール」、「蛇」、「信者たち」、「晩餐は続く」、「A」、「B」、「二年前のこと」と、13編もの多数の短編が収録されていて、執筆時期も発表誌もかなりバリエーションにとんでいるんですが、全く同じにおいというか、テーストを放っています。それなりに力量ある作家だといえます。「妖怪の村」なんぞは福島原発事故を念頭に置いた作品ではないかと読んでしまいましたが、発表時期が震災前ですので、あり得ないと考え直したりしました。まや、本のタイトルに取られた「A」は戦争時の命について考えさせられるところがあり、日本の8月にふさわしい作品かもしれません。必ずしもストレートな作品ばかりではないので、好き嫌いが分かれるとは思いますが、この作家のファンであれば読んでおくべき短編集だという気がします。

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次に、雫井脩介『仮面同窓会』(幻冬舎) です。私はこの作者の作品は『犯人に告ぐ』しか読んだことがないんですが、少なくとも、本格ミステリとしては認めがたい手法により殺人犯を明らかにする作品だという点で共通している気がします。この『仮面同窓会』でも人間関係も含めて、やや反則スレスレの方法で殺人犯が明らかにされます。20代半ばの若者が高校の同窓会の後で、かつて反感を持っていた体育教師を拉致して暴力をふるうんですが、その体育教師が死体で発見され、疑心暗鬼の犯人探しが始まります。当然ながら、最後には犯人が明らかになりますが、「そんなのありか」という読者もいそうな気がします。少なくとも、私はいわゆる「嫌ミス」だと感じました。読後感は決してよくありません。ですから、読む前に、あるいは、買う前に、ネットででも「ネタバレ」情報を探して検討してみるのも一案かもしれないと考えたりしています。

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最後に、葉室麟『天の光』(徳間書店) です。作者は今秋に堀北真紀などの出演で映画化される『蜩ノ記』で直木賞を受賞している時代小説作家です。私も時代小説は決して嫌いではありませんから、直木賞受賞作品のほか何冊か読んでいます。実は、この作品の直前に出版された『紫匂う』も借りたんですが、ついつい、この『天の光』を先に読んでしまいました。『天の光』は表紙の画像を見ての通り、博多の仏師、すなわち、木彫の仏像作家を主人公にした時代小説です。作者は福岡県生まれで西南学院大学のOBですから、土地勘のある作品といえるかもしれません。仏師が木を削って仏像を作成するに際して、木の中に宿る仏性を見出すのか、木に対して仏師の仏性を注ぎ込むのか、はたまた、仏性とはか弱き人間が生きて行くための頼るよすがとなるものであり、そのために仏像を彫るのか、いろいろと哲学的な仏師のあり方や仏像の本質論もチラホラと垣間見えますが、仏師が夫婦となった女性を巡って物語は進みます。でも、女性をかえりみずに京都に修行に行く主人公と、最後は悪人を相手に妻を守りぬこうとする姿の間にギャップを感じたのは私だけでしょうか?

来週で8月も終わり、さ来週からは子供達の学校も始まります。夏休み最後の来週の読書やいかに?

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