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2014年8月 8日 (金)

景気ウオッチャーと経常収支で消費増税のショックが薄れつつあるか?

本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーの結果が、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から+3.6ポイント上昇の51.3と3か月連続で改善した一方で、先行き判断DIは▲1.8ポイント低下の51.5と2か月連続で悪化しています。経常収支は季節調整していない原系列の統計で▲3991億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の街角景気、現状判断指数は3カ月連続改善 反動減和らぐ
内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比3.6ポイント上昇の51.3と3カ月連続で改善した。消費税率引き上げ直前の3月(57.9)以来4カ月ぶりに横ばいを示す50を上回った。消費増税による駆け込み需要の反動減は幅広い分野で和らいだ。
内閣府は街角景気の基調判断を前月の「緩やかな回復基調が続いており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減の影響も薄れつつある」に据え置いた。
「化粧品の売れ行きは順調に回復している。アクセサリーなどの装飾品も回復し、消費増税の影響はほぼなくなっている」(近畿の百貨店)といった前向きなコメントが並んだ。その一方で「ガソリン価格と電気料金の値上がりや消費増税に伴う日用品の価格上昇に実質賃金の上昇が追いついていない。売上高は大きく下がっており、この先の景気低迷が心配だ」(東海の一般小売店)と不安視する声も聞かれた。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は前月比1.8ポイント低下の51.5と2カ月連続で悪化した。駆け込み需要の反動減の収束に期待が集まるものの、燃料価格の上昇に懸念が広がったため。「消費増税後の閉塞感は緩和に向かっているものの、様々な食品の価格高騰から値上げ実施を余儀なくされている。売上高への悪影響が懸念される」(北陸のコンビニ)との指摘があった。「燃料の軽油価格が高値で推移し下がる気配がない」(東海の輸送業)との声があった。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は92.0%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
1-6月、経常赤字5075億円 上半期で初めて 貿易赤字が拡大
財務省が8日発表した2014年上半期(1-6月)の国際収支状況(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの総合的な取引状況を示す経常収支は5075億円の赤字だった。上半期の経常赤字は現行基準で比較可能な1985年以降で初めて。燃料輸入額が高水準で推移しているうえ、製造業の海外生産が進み、貿易赤字が巨額になっていることが経常赤字の背景にある。半期ベースの経常赤字は13年下半期(13年7-12月)に続き、2半期連続で、赤字額は788億円から拡大した。前年の上半期は3兆3131億円の黒字だった。
貿易収支は輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで6兆1124億円の赤字。前年同期と比べ2兆6855億円拡大し、赤字額は下半期を含む半期ベースでみると、現行基準で比較できる96年以降最大となった。輸出額は自動車や科学光学機器を中心に増加し、前年同期比8.1%増の35兆7627億円となった。液化天然ガス(LNG)や原粗油など燃料輸入の高止まりなどで、輸入額は14.7%増の41兆8752億円だった。
旅行や輸送動向を示すサービス収支は1兆5780億円の赤字。企業が特許などの見返りとして受け取る知的財産権等使用料の項目が7855億円と過去最大の黒字となった。旅行収支も1279億円の赤字と、前年同期(3261億円の赤字)から縮小した。ただ「その他サービス」の赤字拡大でサービス収支全体が悪化し、貿易・サービス収支は7兆6904億円の赤字となった。
一方、第1次所得収支は8兆3226億円の黒字で、前年同期(8兆6878億円の黒字)を下回った。証券投資などで得る利子など証券投資収益は増加したが、海外への直接投資で受け取る配当金が前年同期に大きく伸びた反動があった。
同時に発表した6月の経常収支は3991億円の赤字となり、5カ月ぶりの経常赤字。貿易収支は5371億円の赤字(前年同月は165億円の黒字)で、貿易赤字は12カ月連続となった。

いずれも長いながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーの現状判断DI及び先行き判断DIのグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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まず、景気ウォッチャーの現状判断DIは6月の47.7から7月は51.3と、50のラインを下から上に超えています。他方、先行き判断DIは下げたとはいえ、まだ50のラインを上回っています。とても教科書的な理解ですが、50のラインを下から上に超えれば景気後退から回復・拡大への景気転換点、逆なら景気後退の始まり、ということになります。もちろん、現実の経済はそれほど単純ではありません。ただ、景気ウォッチャーは慎重な見方の回答者が多いとの印象を私は持っており、実際の転換点になるべき水準は50ではなく40-45の間にありそうな気がします。それはともかく、現状判断DIが大きく改善する一方で、先行き判断DIが小幅に悪化する、という姿は先月と同じであり、いまだに私の理解ははかどりません。基本はあくまで現状判断DIをどう見るか、ということなんだろうと思います。その上で先行き判断DIも併せて見て、統計作成官庁である内閣府の基調判断「緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある」、すなわち、消費増税のショックがフェイドアウトしつつある、ということなんだろうと思います。ただし、1点だけ指摘しておきたいのは、一部で求人の増勢に一服感がみられたことから雇用判断DIが低下している点です。現在の景気回復・拡大は明らかに家計部門がリードしており、先行きの景気の息の長い景気拡大を見通すためには雇用の改善は不可欠です。まだまだ高い水準ながら、雇用に関するマインドが悪化しているのは要注意かもしれません。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。季節調整済みの系列をプロットしており、青い折れ線グラフが経常収支を、積上げ棒グラフが貿易収支などの経常収支の内訳を示しています。色分けは凡例の通りです。いつものお断りですが、引用した記事は季節調整していない原系列の統計についての解説であり、グラフと少し印象が異なる可能性があります。いずれにせよ、経常収支については、原系列の統計では5月の黒字から6月は赤字に転じ、季節調整済の系列では黒字幅が縮小しています。グラフで見ても分かる通り、積み上げ棒グラフのうちの黒い貿易収支の赤字幅が6月には大きくなっています。消費増税前の駆込み需要の反動減があった輸入が旧に復しつつあるんだろうと私は受け止めています。その意味で、貿易収支と経常収支も消費増税による撹乱を受けつつも、徐々にそれ以前の姿に戻るのであろうと私は予想しています。

景気ウォッチャーと経常収支を取りまとめるのも乱暴な議論なんですが、景気ウォッチャーの先行き判断DIを別にすれば、現状判断DIと経常収支、また、その主要なコンポーネントである貿易収支については、方向性はともかく、消費増税のショックが徐々に薄らぎつつあることが確認できたと私は考えています。

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