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2014年9月15日 (月)

先週の読書は『良い資本主義 悪い資本主義』ほか

今週の読書は『良い資本主義 悪い資本主義』ほか経済書や専門書などのノンフィクションを中心に、話題の小説も含めて以下の通りです。

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まず、ウィリアム J. ボーモルほか『良い資本主義 悪い資本主義』(書籍工房早山) です。知らない出版社なんですが、以下の日経新聞の書評を見て借りました。本書の結論ははっきりしていて、資本主義を4つのタイプ、すなわち、起業家的資本主義、大企業的資本主義、国家主導的資本主義、オリガルヒ資本主義に分類した上で、すべての経済のすべての段階に当てはまるわけではないとしつつも、これらのうち起業家資本主義と大企業資本主義のブレンドが「良い資本主義」であると結論しています。他方、明示的ではありませんが、逆から見て、他の2つの型の資本主義は「悪い資本主義」ということになるんではないかと思います。なお、何が「良い資本主義」なのかというと、本書の最初から経済を成長させるのが「良い資本主義」であると定義しています。そして、最初の2章では延々と成長の必要性を説いています。私はこのあたりは当然のように受け止めているんですが、成長するのが「良い資本主義」というのに、そもそも反発ないし違和感を覚える読者も、専門の経済学的な見識がなければ、一定の割合でいそうな気がしないでもありません。なお、マックス・ウェーバー的な文化の要素は完全に否定されています。プロテスタンティズムの倫理は資本主義の精神ではない、という見方です。それから、先進国経済だけでなく、途上国における開発の問題も視野に入れており、それなりに幅広い論調を展開しているんですが、ひとつだけ、読者の期待を裏切りかねない点を指摘しておきたいと思います。すなわち、本書の原書は2007年に出版されており、リーマン・ショックの前ですので、バブルの発生と崩壊をもたらすのが「悪い資本主義」で、そうではなく着実な成長をもたらすのが「良い資本主義」というわけではない点です。この点は認識した上で、本書を評価すべきと私は考えています。

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次に、ジョン E. ケリー3世/スティーブ・ハム『スマートマシンがやってくる』(日経BP社) です。著者は2人ともIBMの研究者です。ですから、チェスの世界チャンピオン経験者のカスパロフに勝ったディープ・ブルーや米国の人気クイズ番組「ジョパディ!」に挑戦したワトソンなどの紹介もなされています。なお、ここでいうタイトルの「スマートマシン」をは、cognitive conputing に基づいて、みずから感じ、学び、洞察し、人と自然に対話できるマシンのことであり、当然ながら、スマートフォンに限定されているわけではありません。この本で特に実例が紹介されているのは医療と教育の分野が多かった印象がありますが、患者や生徒・学生と対話して問題解決などに当たる医師や教師の役割をコンピュータ、というか、スマートマシンが果たす日も遠くないのかもしれません。私はエコノミストですのでコンピュータの技術面には当然に詳しくないんですが、スマートマシンの進歩や普及に伴って雇用がどのような影響を受けるかには大いに興味があります。もちろん、この本では取り上げられていません。ひとつには、トップマネジメントと単純労働に二極分化するという見方です。以下にリファレンスを置いた一橋大学の池永准教授の論文がひとつの典型です。もうひとつは、Gartnerの調査に示されたように、スマートマシンの普及によって15年後には数百万人の中間層の仕事が奪われる、という説は未来学者の幻想だと、企業のCEOたちの60%は考えているというのに共通する見方です。これもリンクをお示ししておきます。ご参考まで。

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次に、ジョン・スタイルズ/ジョン・ブルーア/イヴ・ローゼンハフト/アヴナー・オファ『欲望と消費の系譜』(NTT出版) です。経済学や経営学というよりも、社会学や歴史の分野と考えられますが、消費における欲望、というか、流行について歴史的に考察を加えています。私は詳しくないんですが、何かのシリーズもの第1巻として「消費文化史」を取り上げています。著者が4人いますが、その4人が各章を執筆し、4章構成で服飾、観光旅行、投資、幸福の4点を論じています。第3章の投資については経済学的に考えると消費されなかった所得が貯蓄に回って投資されるんですから、消費と投資は相容れない概念と長らく私は考えていたんですが、ファッションとしての投資を南海バブルやミシシッピ・バブルから説き起こしています。また、上に掲げたこの本の表紙は第2章の観光旅行の対象であるナポリのベスビオス火山ではないかと思います。投資は言うまでもなく、服飾や観光旅行も含めて、豊かな消費活動は欧州などでは貴族階級などの限られた富裕層から始まって流行となり、時代が進むに連れて庶民階層の所得が増加し、流行にも乗る形で幅広い国民各層によって消費活動が担われるようになったわけですが、この本では所得の部分は取り上げることなく消費の部分だけに着目しており、その意味で少し物足りないと私は感じています。

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次に、若杉冽『原発ホワイトアウト』(講談社) です。著者は覆面作家で、東京大学法学部卒業、国家公務員I種試験合格、現在、霞が関の省庁に勤務の現役官僚だそうです。私は東大でも法学部でもなく、さらに、「I種試験」と呼ばれるようになる前の「上級職試験」の合格者なんですが、現役官僚という点だけは同じだったりします。タイトルから容易に想像される通り、政・官・財の三者が密接に結びつく原子力ムラの実態を明らかにしようと試みた野心作です。どこまでホントなのかは私には分かりません。でも、十分な説得力、というか、事実に近いと感じさせる何かのリアルさを持っているような気がします。いわゆるアメとムチでメディアや政治家や官僚を電力業界が丸め込み、フクシマ後に原発再稼働を画策するというストーリーで、特に、反原発姿勢を示す原発立地県の知事を陥れんがごとき謀略のような工作など、純真な官僚である私には少し怖い気すらしました。どこまでが真実で、どこからが虚構なのか、繰返しになりますが、私にはサッパリ分からないものの、ひとつだけ物足りない点を指摘すると、原子力関係の学界関係者の影が薄い気がします。落選代議士を大学の教員に送り込む場面がありますが、なぜか、原子力に関係する学者や研究者に研究費をタップリと弾む場面が出てきません。ホントは政・官・学・財の四者が結託している原子力ムラでしょうから、少し物足りない気もしました。少しのぞき見趣味かもしれませんが、とても面白かったです。特に、最終章は秀逸と感じました。

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次に、真梨幸子『人生相談。』(講談社) です。湊かなえや沼田まほかるとともに、いわゆる「イヤミス」の女王の作品です。私はこの手のミステリは決して嫌いではなく、この作者の作品も古くはデビュー作の『孤虫症』をはじめ、代表作のひとつである『深く深く、砂に埋めて』や『殺人鬼フジコの衝動』、あるいは、この作品の前作で昨年出版された『鸚鵡楼の惨劇』などは読んでいたりします。この作品は戦前から続く人生相談のコーナーを持つ大洋新聞なる新聞社の人生相談のコラムを舞台にした物語で、いわゆ連絡短編集です。相談内容は、「居候に悩んでいます」、「しつこいお客に困っています」、「隣の人がうるさくて、ノイローゼになりそうです」、「セクハラに時効はありますか?」、「大金を拾いました。どうしたらいいでしょうか」、「西城秀樹が好きでたまりません」、「口座からお金を勝手に引き出されました」、「占いは当たりますか?」といったもので、最終章は「助けてください」となっています。場所はこの作者が得意とするエリアで、新宿から小田急沿線で新宿から40分ほどの急行も止まらない駅の周辺あたりまでを舞台に、時代はかなり30-40年くらい前から、バブル期をはさんで、ごく最近まで変化に富んでいます。ミステリですから詳しくは書きませんが、各章のタイトルにあるように、いかにも日常生活にありがちな人生相談の裏側に潜むとんでもない犯罪や悲喜劇を実に嫌みに取り上げています。事実よりも奇なるミステリなんですが、私は決して嫌いではありません。

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最後に、森博嗣『ムカシ×ムカシ』(講談社ノベルス) です。この作者はデビュー作の『すべてがFになる』から始まって、真賀田四季に関連するいろんなシリーズ作品があるんですが、おそらく、私はそのすべてを読んでいると思います。真賀田四季に関連に関係しない百年シリーズも3部作をすべ読んでいると思います。真賀田四季に関連するシリーズは、たぶん刊行の順番に、犀川創平と西之園萌絵のS&Mシリーズ、保呂草潤平と瀬在丸紅子のVシリーズ、ズバリ真賀田四季の春夏秋冬の四季シリーズ、赤柳初朗と海月及介と加部谷恵美のGシリーズ、そして、鷹知裕一郎と小川令子と真鍋瞬市のXシリーズです。ongoingで続いているのはGシリーズとこのXシリーズで、Gシリーズは全12冊と告知されていますから残り3冊です。Xシリーズはこの作品で4冊目です。これら以外のシリーズはすでに完結しています。取りあえず、この作品は現時点でXシリーズの最新刊なんですが、今年中に5冊目の『サイタ×サイタ』が発刊される予定で、その次は『ダマシ×ダマシ』と聞いています。この『ムカシ×ムカシ』では、このシリーズに多いパターンで、東京近郊の広大な敷地に建つ住宅で資産家の老夫婦が刺殺された殺人事件から始まり、所長の椙山以下のSYアート&リサーチの椙山ほか小川と真鍋が美術品などの鑑定を行うとともに、事件に巻き込まれて行きます。探偵の鷹知の出番はあまりありません。最後のエピローグで、椙山がひと働きしたゴッホの作品に関して、何らかのコミッションみたいな資金が真賀田四季に流れたことが示唆されます。河童、というか、河童の日記がキーワードのひとつになっています。

今週末の3連休から、来週末も飛び石連休ですし、プロ野球のペナントレースにはすっかり興味が失せてしまいましたので、読書の秋の夜長の時間を有効に活用したいと思います。

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