企業物価と違って上昇幅が鈍化しない企業向けサービス物価をどう見るか?
本日、日銀から企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率で+3.5%、国際運輸を除くコアSPPIでも+3.5%と引き続き着実な上昇を続けているようです。また、消費税の影響を除くベースでは+0.8%を記録しました。それぞれ前月から+0.1%ポイント上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
8月の企業向けサービス価格、前年比3.5%上昇 増税除く伸び率0.8%
日銀が25日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は102.3と、前年同月に比べて3.5%上昇した。伸び率は前月から0.1ポイント拡大した。国内観光が好調で、航空旅客輸送の単価が上がったことなどが寄与した。消費増税の影響を除く伸び率は前年同月比0.8%上昇だった。
消費税の影響を除いたベースで見ると上昇品目は82、下落は35。上昇品目と下落品目の差は47品目と、現行の2010年基準で最も大きくなった。日銀は「価格転嫁の動きが広がっており、徐々に下落品目が減っている」としている。
品目別(消費税の影響を除く)では、国内航空旅客輸送が3.9%上昇と前月の0.2%下落から上昇に転じた。航空各社が繁忙期の割引を縮小した影響が出た。外航貨物輸送も円安の影響で上昇幅が拡大した。一方、新聞広告は悪天候の影響もあり前月からマイナス幅が拡大した。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。今回は定期的な数値の改定で、主に今年に入ってからの数値が軒並み下方修正された。高速道路で導入された利用頻度に応じた割引制度の影響を盛り込んだことが全体の下方修正につながった。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルはサービス物価(SPPI)と国際輸送を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしています。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
同じ日銀が公表している企業物価(PPI)の8月の国内物価上昇率はヘッドラインで+3.9%と上昇幅がピークだった6月の+4.5%から▲0.6%ポイントも上昇幅を低下させているのに対して、企業向けサービス物価は+3.5%の上昇と、ピークの5-6月統計と同じ上昇幅であり、7月からは+0.1%ポイント上昇幅が拡大するなど、上昇が鈍化する局面には至っていません。企業物価(PPI)の国内物価については、原油価格の下落や西日本を中心とする天候不順による需要停滞の影響が足元で効いてきている可能性がある一方で、サービス物価(SPPI)についてはその影響が少なく、逆に、価格引上げの転嫁が進みつつあるのかもしれません。すなわち、消費増税のショックによる需給ギャップ悪化のインパクトは、日銀の分析などからPPIよりもSPPIの方が敏感に反応する可能性が高く、その分、下押し圧力は強いわけですから、詳細な検討を経たわけではないものの、価格転嫁や浸透が進んでいる結果と解釈できそうな気がします。
消費税に影響を除くベースで前年同月比上昇率が+0.1%ポイント前月から拡大している要因は、引用した記事にもある通り、国内航空旅客輸送をはじめとする運輸・郵便、東京圏などの事務所賃貸を含む不動産などとなっている一方で、新聞広告などの広告が引下げ要因となっています。もちろん、足元で進んでいる円安の動きや消費増税ショックに伴う需給ギャップの悪化が今後の物価動向を決める部分は決して小さくないと考えられるものの、運輸・郵便はややvolatileな動きを示す一方で、不動産はやや遅行性の、広告はやや先行性の動きを示すと考えられることから、上昇率が鈍化する局面には至っていないながら、こういった視点からも今後のSPPIの動向が注目されるところです。
そろそろ月末が近くなり、明日は消費者物価(CPI)、来週は前半に鉱工業生産指数(IIP)、雇用統計、商業販売統計などの公表が控えていて、10月1日には9月調査の日銀短観も発表されます。年内と想定されている消費税率再引上げの判断までに、7-9月期のGDP成長率をはじめとして経済指標がどのような傾向を示すのか、大いに注目されるところです。
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