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2014年9月26日 (金)

上昇幅が鈍化する消費者物価の先行きをどう見るか?

本日、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率で+3.3%、生鮮食品を除くコアCPIで+3.1%とやや上昇幅は縮小したものの、15か月連続でプラスを記録し、着実な上昇を続けているようです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月CPI、15カ月連続プラス 上昇率は前月から縮小
総務省が26日朝発表した8月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合が前年同月比3.1%上昇の103.5と15カ月連続で上昇した。宿泊料や外国パック旅行が上がったが、上昇幅は前月(3.3%上昇)から縮小した。最近の原油価格の上昇一服で、エネルギー価格の上昇幅が縮小したためだ。
ガソリン価格や電気代といったエネルギーに加えて、テレビやパソコンの価格、生鮮食品を除く食料では昨年大幅値上げのあったソーセージ価格の上昇幅も縮小した。総務省では前年同月比の上昇幅が前月に比べ縮んだことに関し「昨年の(エネルギー価格上昇などの)動きに引っ張られているところが大きく、物価は基調としては緩やかに上昇している」との見方を示した。
同時に発表した9月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が2.6%上昇の102.0だった。8月の全国と同様に、電気代やガス代といったエネルギー価格の上昇幅が小さくなったことが影響した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者物価上昇率の推移は以下のグラフの通りです。折れ線グラフが全国の生鮮食品を除くコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが9月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とは微妙に異なっている可能性があります。

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コアCPIの前年同月比上昇率で見て、消費税率引上げ後の5月に+3.4%と上昇率のピークを付けた後、8月は+3.1%まで上昇幅が縮小しました。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが+3.2%でしたので、これも下回りました。レンジは+3.1%から+3.3%でしたので、狭い範囲とはいえレンジの下限でした。日銀の「金融経済月報」2014年3月号に掲載された「消費税率引き上げ(5%→8%)が消費者物価に与える影響」に従えば、フル転嫁で全国コアCPI上昇率には+2.0%の押上げ効果があると試算されていますので、8月のCPI統計に示されたいわゆる「物価上昇の実力」は+1%そこそこということになります。
今後の物価見通しに関しては、東京都区部の9月中旬統計で見て、8月からコアCPI上昇率は▲0.1%ポイント上昇幅を縮小させていますし、東京が先行指標となれば全国も足元で上昇幅を縮小させる可能性が高いと考えるべきです。また、日銀の公式見解については、消費税の影響を除いたベースの全国コアCPI上昇率で見て、9月半ばに開催された大阪経済4団体共催懇談会全国証券大会などにおける黒田日銀総裁挨拶において、「消費者物価の先行きについては、暫くの間、1%台前半で推移した後、本年度後半から再び上昇傾向」をたどるという旨の発言を繰り返していますので、本年度半ばの9-10月くらいが+1%そこそこの物価上昇率としてのボトムであろうと見なしているように見受けられます。しかし、エコノミストの中には消費税の影響を除くベースのコアCPI上昇率では+1%を割る可能性を指摘する意見も聞かれる一方で、先行きについては足元の円安の進展、需給ギャップの改善に加えて、エネルギー価格の上昇の可能性もあり、年度後半に物価上昇率が加速する可能性も十分あります。もっとも、このブログでも何回か指摘している通り、消費増税後の需要の戻りは鈍く、需給ギャップの改善テンポについては不透明感を払拭することが出来ません。

年度後半に物価上昇率がピックアップするという日銀のシナリオ通りであれば、追加的な金融緩和を小出しにすることは可能性が低いと私は受け止めていますが、問題はそのペースです。2014-16年度までの見通し期間の中盤ころに、「物価安定の目標」である+2%程度に達する可能性次第で、何らかの追加緩和が実施される可能性が残されていると考えるべきでしょう。

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