力強さに欠けるも増加を示す機械受注と上昇幅が鈍化した企業物価の注目点やいかに?
本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価が、それぞれ公表されています。機械受注は船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの前月比が+3.5%増を記録し、小幅のプラスながら2か月連続の増加となりました。企業物価は国内物価の前年同月比上昇率が+3.9%と、消費増税に伴って大きなプラスを続けています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の機械受注3.5%増 2カ月連続でプラス
内閣府が10日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は7717億円と前月から3.5%増えた。増加は2カ月連続となる。化学工場で使う機械や工作機械など製造業からの発注が多く全体を押し上げた。当面の景気を設備投資が下支えするとの見方に沿った動きといえそうだ。
機械受注は5月に19.5%減と大きく落ち込んだが、6月の8.8%増に続くプラスでやや持ち直している。内閣府は7月の受注には100億円以上の大型案件が1件含まれていると説明し「一進一退で推移している」との基調判断は前月から据え置いた。
日本総合研究所の下田裕介・副主任研究員は「5月に大幅に減った後の回復としては弱さも感じるが、緩やかに景気が持ち直していくことで設備投資も増加が期待できる」と分析している。
7月の受注を業種別に見ると製造業からが20.3%増と大きく伸びた。化学工業からボイラーやタービンといった動力用の機械の大型受注があったほか、ほかの製造業からも航空機や工作機械などの受注が増えた。製造業からの受注の伸び率は同じ条件で比べられる2005年度以降で4番目の大きさだった。
非製造業は4.3%減った。建設業やリース業からの建設機械の受注が減ったほか、不動産業からのコンピューターの受注も少なかった。
内閣府は7-9月の機械受注について、前期比で2.9%の増加を見込んでいる。8月と9月にそれぞれ前月比1.5%以上増えると見通しを達成できることになる。
8月の企業物価指数、3.9%上昇 原油下落で伸び鈍化
日銀が10日発表した8月の国内企業物価指数(速報値)は前年同月比3.9%上昇した。上昇幅は7月より0.4ポイント縮まった。前月比では0.2%下がり、2月以来6カ月ぶりの下落となった。原油価格の下落が指数全体を押し下げた。
消費税率引き上げの影響を除くと前年同月比1.1%上昇と、2013年5月以来の低い伸びにとどまった。
日銀は「コスト高を製品価格に転嫁する動きが続く一方、住宅関連を中心に消費税率引き上げ後の反動の懸念が残っている」(調査統計局)と指摘し、月々の動きを注視していく考えだ。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を表す。項目別ではガソリンや軽油など石油・石炭製品が前月から1.1%下落した。原油価格の下落や、西日本の天候不順による需要の停滞が響いた。
消費増税の影響を除いたベースでみると、全816品目のうち、前年同月と比べ上昇したのは420品目、下落したのは311品目だった。上昇が下落を上回るのは12カ月連続となった。
2つの統計を取り上げましたので長くなりましたが、いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、次の企業物価のグラフも同じで、景気後退期を示しています。
引用した記事にエコノミストのコメントがありますが、コア機械受注は2か月連続のプラスとはいえ、前月比で見て4月に▲9.1%減、5月▲19.5%減でしたから、6月+8.8%増、7月+3.5%増も、やや力強さに欠けると受け止めています。QUICK・日経による市場の事前コンセンサスも+4.0%増でしたから、これも下回りました。もちろん、景気が緩やかに回復・拡大を示す中で、設備投資の増加も期待できるんでしょうし、7-9月期については前期比でプラスを記録する可能性が高いとは予想していますが、上のグラフに見る通り、6か月後方移動平均でプロットしたトレンドはまだ下向きのままだったりします。先月に機械受注を取り上げたエントリーで、足元の機械受注が日銀短観や政策投資銀行の設備投資計画調査などに示された設備投資計画と整合的ではないと指摘しましたが、今月の機械受注統計を見て、足元では力強さに欠けるとはいえ、景気動向とともに設備投資が上向いて計画に近づく方向にある可能性が出てきたような気がしないでもありません。
8月の企業物価は上昇幅が鈍化しています。当然のように、4月に消費税率引上げがあり企業物価上昇率もポンと上がりましたが、消費税を含む前年同月比上昇率で見て7月+4.3%の上昇から8月は+3.9%に鈍化しています。消費税を含まないベースでも7月+1.4%から8月は+1.1%となりました。引用した記事にもある通り、原油価格の下落や西日本を中心とする天候不順による需要停滞の影響が直接的なんでしょうが、消費増税に伴う需給ギャップの悪化も間接的ながら一定のインパクトを持っている可能性は否定できません。繰返しになりますが、直接には原油価格の低下による上昇率の鈍化であり、前月比▲0.2%の下落に対する寄与度で見て、ガソリン、軽油、灯油などの石油・石炭製品が▲0.09%、産業用電力などの電力・都市ガス・水道が▲0.02%の寄与をそれぞれ示しています。なお、米国の量的緩和のテイパリングに向けた連邦準備制度理事会の金融政策動向を反映して、ジワジワと円安が進んでいますが、先行き、輸出入を通じて国内の物価に対する影響が出る可能性があります。
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