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2014年9月18日 (木)

貿易統計に見る輸出は引き続き低調!

本日、財務省から8月の貿易統計が発表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の前年同月比で▲1.3%減の5兆7060億円、同じく輸入額は▲1.5%減の6兆6545億円、差引き貿易収支は▲9485億円の赤字となりました。貿易赤字は2年を超えて26か月連続だそうです。消費税ショックの反動減で輸入も減少しているんですが、依然として、輸出がやや伸び悩んでいる印象です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易赤字9485億円 26カ月連続の赤字 輸出入とも減少
財務省が18日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9485億円の赤字だった。貿易赤字は26カ月連続。前年同月は9714億円の赤字で、2カ月連続で赤字幅が縮小した。輸出が2カ月ぶりに減少に転じたものの、原粗油など燃料を中心に輸入の減少率が上回った。
QUICKが17日時点で集計した貿易収支の民間予測中央値は1兆285億円の赤字だった。輸出額は前年同月比1.3%減の5兆7060億円。部品製造用など金属加工機械が中国向けなどに伸びたが、ウエートの大きいペットボトル原料などの有機化合物や自動車などの品目で減少が目立った。輸出数量指数も2.9%減と2カ月ぶりに減った。
一方、輸入額は1.5%減の6兆6545億円で、3カ月ぶりに減少した。インドネシアからの原粗油やオーストラリアからの石炭、中国からのスマートフォン(スマホ)をはじめとした通信機などが減少した。輸入数量指数も4.6%減と2カ月連続の減少となった。
財務省は燃料輸入が減ったことについて「8月は全国的な豪雨で気温が上がらず、電力需要が平年に比べて小さかった」ことなどを要因として挙げた。
地域別にみると、対米国の貿易黒字は22%減の3855億円だった。自動車の輸出が減った一方で、医薬品、航空機などの輸入が膨らみ、黒字額は7カ月連続で減少した。対欧州連合(EU)は345億円の貿易赤字。自動車を中心に輸出が15カ月連続増と堅調で、赤字幅は縮小した。対アジアは3662億円の貿易黒字だったが、対中国は2339億円の赤字だった。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=102円15銭で、前年同月比3.8%の円安だった。

いつもの通り、とてもよく取りまとめられている記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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輸出額は前年同月比で▲1.3%減と、▲2%台半ばの減少を予想していた市場コンセンサスほどの落ち込みは見せませんでしたが、引き続き、伸び悩んでいる印象があります。それでも、前年同月の▲9714億円に比べて貿易赤字が小幅ながら縮小したのは、引用した記事のタイトル通り、輸出入額がともに減少して、特に輸入額が▲1.5%減と、より大きなマイナスを示したからです。為替は足元で少し円安に振れていますが、短期で見て輸出入の落ち込みは、輸出については海外経済の、輸入については国内経済の、それぞれ需要が弱いことを反映していると私は受け止めています。ですから、貿易赤字が縮小したといっても、輸入額の減少が輸出よりもやや大きめに寄与したためであり、やや縮小均衡的な要素がうかがえ、少なくとも手放しで望ましい貿易赤字縮小の姿であるとはいえないと考えるべきです。

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他方、輸出の推移は上のグラフの通りです。いずれも季節調整していない貿易指数を基に、上のパネルは輸出額の前年同月比を数量と価格で要因分解しており、下のパネルは輸出数量とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月だけリードを取っています。先月も主張した通りですが、足元で輸出数量の前年同月比はほぼゼロ近傍で伸び悩みが続いており、下のパネルから、需要サイドではOECD諸国の景気が足踏みしているため、我が国からの輸出への需要が伸び悩む原因となっているのが見て取れます。なお、OECD先行指数の伸びよりも輸出が下振れているのはアジア向けの輸出に起因しているんではないかと私は考えています。そして、アジア経済は米国への輸出によって支えられており、米国経済がこの先拡大を続けるのであれば、日本から米国への直接の輸出とともにアジア経済の拡大に伴う我が国からアジア諸国への輸出も今後さらに増加する可能性が十分あると私は受け止めています。
輸出については為替の価格効果と景気の所得効果を考える必要があります。すなわち、米国連邦準備制度理事会 (FED) の量的緩和の終了や利上げに向けた動きが始まりつつあり、9月16-17日の連邦公開市場委員会 (FOMC) では成長率と失業率の予想を引き下げる一方、インフレ予想は概ね据え置き、政策金利予想は大幅に引き上げています。従って、足元で再び円安が進行するとともに、先行きでもさらなる円安の傾向が見込まれています。またまたJカーブ効果の初期の輸出減少効果が継続して生じる可能性がありますが、基本的には、為替の価格効果よりも需要の所得効果の方が大きく、年度後半にかけて米国経済の回復・拡大とともに我が国からの輸出は増加する方向にあると私は予想しています。

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