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2014年11月28日 (金)

いっせいに発表された政府統計の経済指標から何が読み取れるか?

本日は月末の閣議日ということで、さまざまな政府統計が発表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、経済産業省の商業販売統計が、また、総務省統計局の消費者物価指数が、それぞれ発表されています。すべて10月の統計です。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

工業生産指数、10月0.2%上昇 基調判断は据え置き
経済産業省が28日発表した10月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調節済み)速報値は前月比で0.2%上昇の98.2だった。上昇は2カ月連続で、QUICKが27日時点で集計した民間予測の中央値(前月比0.6%低下)を上回った。スマートフォン(スマホ)関連の需要が好調で半導体・電子部品の生産が4カ月連続で伸びた一方、自動車やスマホを含む携帯電話、ノートパソコンなどが減少した。経産省は生産の基調判断を「一進一退にある」に据え置いた。
業種別でみると、15業種のうち6業種で生産が前月比で上昇、9業種で低下した。上昇業種では「はん用・生産用・業務用機械」が前月比4.4%上昇と最も伸び率が高かった。半導体製造装置や分析機器などの増加が目立ったという。スマホ関連の部品需要を追い風に「電子部品・デバイス」は4カ月連続で上昇した。一方、低下業種では自動車などの「輸送機械」が2.6%低下、携帯電話やノートパソコンなど「情報通信機械」は6.9%低下した。
出荷指数は0.4%上昇の98.4で、2カ月連続で上昇。在庫指数は0.4%低下の111.4と、2カ月連続で低下した。経産省によると、「在庫指数は8月をピークに低下傾向にあるが、前年同月との比較ではまだ高い水準にある」という。出荷の勢いは力強さを欠き、出荷に占める在庫の割合を示す在庫率指数は112.4と0.9%上昇した。
製造工業生産予測調査によると、11月が2.3%上昇、12月は0.4%上昇を見込む。11月は情報通信機械、電子部品・デバイスなどの業種で上昇率の高さが目立った。
完全失業率2カ月ぶり改善 10月3.5%、女性の就業進む
総務省が28日発表した10月の完全失業率(季節調整値)は3.5%で、前月に比べ0.1ポイント低下した。改善は2カ月ぶりで、QUICKがまとめた市場予想(3.6%)を下回った。人手不足感が強まり女性の就業が正規、非正規とも増え、女性の完全失業者数が6万人減少。完全失業率全体の低下につながった。総務省は雇用情勢について「引き続き持ち直しの動きが続いている」と判断している。
完全失業率を男女別にみると、男性が0.1ポイント上昇の3.8%、女性は0.2ポイント低下の3.2%だった。就業者数は6355万人で前月から11万人減少したものの、女性の就業者数は2744万人と現行の調査体制になった1953年1月以降で過去最高となった。
完全失業者数は234万人で3万人減少した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は4万人増、「自発的な離職」は6万人減、「新たに求職」している人は3万人減だった。仕事を探していない「非労働力人口」は4483万人と12万人増えた。
10月の小売販売額、1.4%増 4カ月連続プラスも伸び率は縮小
経済産業省が28日発表した10月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は前年同月比1.4%増えた。前年を上回るのは4カ月連続。気温の低下で秋冬物衣料などの販売が伸びた。一方で、10月上旬に台風が直撃したため客足が鈍り、伸び率は9月(2.3%増)から縮小した。
小売業の内訳をみると、織物・衣服・身の回り品が5.0%増。飲食料品が3.6%増。一方、自動車は1.8%減と2カ月ぶりに減少し、家電製品など機械器具は4月の消費増税以降の前年割れが続いた。
大型小売店は1.0%増の1兆6064億円。伸び率は2カ月連続で縮小した。既存店ベースでは横ばい。このうち百貨店は0.2%増、スーパーは0.1%減だった。
コンビニエンスストアは6.0%増の8935億円。ファストフード及び日配食品などが伸びた。既存店ベースでは1.1%増えた。
同時に発表した専門量販店(速報)によると、10月の販売額は家電大型専門店は2990億円、ドラッグストアが3925億円、ホームセンターが2622億円となった。
10月CPIは2.9%上昇 17カ月連続プラスも上昇幅の縮小続く
総務省が28日朝発表した10月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合が前年同月比2.9%上昇の103.6と17カ月連続でプラスだった。冬物衣料や宿泊料の上昇が寄与したが、4月の消費増税の影響(2%)を除くと、過去に日銀の黒田東彦総裁が「割れることはない」と発言していた1%を下回った。消費増税の影響を除いて1%割れとなるのは昨年10月(0.9%上昇)以来だ。
前月は3.0%上昇だった。エネルギーの上昇幅縮小が続いたことで、CPIの上昇幅は3カ月連続で縮小した。原油価格の下落を受けて、電気代やガス代が引き続き伸び悩んだ。昨年10月に値上げがあった傷害保険料など反動で上昇幅が縮小した品目もあり、総務省は「足元というより昨年の動きの反動が出た影響が大きい」と説明する。
同時に発表した11月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が2.4%上昇の102.0で、上昇幅は前月(2.6%)から縮小。原油安でガソリン価格の上昇幅が縮小したことなどが響いた。
総務省はCPIの先行きについて「しばらくは横ばいの推移が続くだろうが、将来的には日銀の追加緩和の効果が出てくるのではないか」とみていた。

いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、これだけの記事を並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。景気後退期のシャドーについては雇用統計や商業販売統計も同様です。

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まず、生産は2か月連続の増産となりました。9月に+3%近い増産を示した後、10月はほとんど横ばい圏内ながら、前月比で+0.2%増を記録しました。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲0.6%の減産でしたし、前月の統計発表時に明らかにされた製造工業生産予測調査でも▲0.1%減でしたから、やや上振れした印象です。業種別に見ると、15業種のうち6業種が増産、9業種が減産で業種によるばらつきがあり、減産した業種も少なくない一方で、特に、輸送機械こそ前月比▲2.6%減のマイナスでしたが、はん用・生産用・業務用機械が+4.4%増、電気機械+3.2%増などの我が国における主力業種がプラスを記録しています。生産が前月比+0.2%増を示し、出荷も+0.4%増となりましたので。在庫が前月から▲0。4%減を記録しています。着実に在庫調整が進んでいる結果が示されています。さらに、足元の11月についても、製造工業生産予測調査に従えば、前月比で+2.3%増、12月も+0.4%増と見込まれており、生産は8月を底に反転から持直しに向かう可能性が高まっています。統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「一進一退」に据え置いていますが、もしも、11月の生産が製造工業生産予測調査と同じくらいの+2%増を超えれば、ひょっとしたら、この基調判断が上方修正されるかもしれないと私は見込んでいます。

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続いて、上のグラフは雇用統計です。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をそれぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、シャドーを付けた部分は景気後退期です。さすがに、失業率が3%台半ばに達し、有効求人倍率も1倍を超えましたので、このまま一本調子で失業率の低下や有効求人倍率の上昇などの雇用の拡大が進むわけではなく、そろそろ、量的な雇用の拡大から質的な改善、すなわち、非正規雇用ではなく正規雇用の比率が上昇し、それにつれて賃金も増加を示す局面が近づいていると私は考えています。デフレ脱却に伴って、ともかく安価な労働力を求める姿勢ではなく、その昔とは違った意味なのかもしれませんが、雇用条件を改善することにより安定した労働力を確保することが企業としても重要な課題になる時代を迎えつつある気がします。また、別の観点ですが、足元の雇用情勢でも引用した記事にもある通り、女性の就業者数が60年余りの労働力調査統計の歴史で最大を記録しており、人口減少に向かう我が国経済の潜在成長率の下支えに貢献する可能性が示されています。

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商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。シャドーを付けた部分は景気後退期です。10月は週末に2回も台風による悪天候があって、消費へのダメージが気にかかっていたんですが、前年同月比でプラス幅を縮小したものの、4か月連続で前年同月比でプラスを記録しました。ただし、季節調整済みの系列は前月比マイナスでしたし、消費者物価が+2.9%の上昇ですから、CPIでデフレートして実質化すれば、前年同月比でもまだまだマイナスであることに変わりありません。また、私がこのブログで消費の代理変数として取り上げている商業販売統計は供給サイドの統計なんですが、需要サイドの家計調査ではまだまだ前年同月比でマイナスが続いており、この両者の統計の間で整合性が保たれていません。カバレッジとしては家計調査よりも商業販売統計の方が3-4ケタぐらい大きいので、商業販売統計の方が消費の実態を把握するのに適していると考えていますが、少し気になるところです。もっとも、私のように消費に関して慎重な見方に立つよりも、家計調査のマイナス幅も縮小していることなどから、いずれの統計もそろそろ消費の底打ちの兆しを示しつつあるという楽観的な見方を示すエコノミストも少なくありません。なお、下のリンクは総務省統計局の家計調査のサイトに貼ってあります。

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上のグラフは、消費者物価上昇率の推移です。折れ線グラフが全国の生鮮食品を除くコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが10月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とは微妙に異なっている可能性があります。ということで、引用した記事にもある通り、日銀の黒田総裁はCPI上昇率が+1%を割ることはないと明言したにもかかわらず。10月統計では消費税の影響を除いたCPI上昇率がとうとう+1%を下回った、という結果になりました。基本的には原油などのエネルギー価格の低下の影響が大きいものの、もちろん、年央以降くらいの消費増税ショックに伴う国内景気の停滞も需給ギャップの拡大を通じて物価の下押し圧力になっていることは事実です。ラグはかなり長いでしょうが、日銀のハロウィン緩和の効果と雇用の質的な改善に伴う賃金上昇の効果が期待されるところです。まあ、繰返しになりますが、気の長い話かもしれませんが、デフレ脱却に向けた着実な足取りを感じます。

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最後に、消費者物価上昇率を財とサービス別に見た結果が上のグラフの通りとなっています。企業向け物価(PPI)と企業向けサービス物価(SPPI)については、財の物価が年央くらいから上昇率を大きく縮小させている一方で、サービスの物価上昇率は高止まりないし上昇幅の拡大が見られますが、消費者物価についても同じ現象が観察されます。電気・ガスはいずれもサービスではなく財に分類されていますし、サービス価格は賃金がコストに占める比率がより高いわけですから、基本的にはエネルギー価格と賃金動向による違いに起因すると考えていますが、少し気にかかります。

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