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2014年11月20日 (木)

今日発表の貿易統計から輸出は持直しのきざしが見えるか?

本日、財務省から10月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+9.6%増の6兆6885億円、輸入額も+2.7%増の7兆3985億円、差引き貿易赤字は▲7100億円を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易統計が改善、赤字35%減・輸出9.6%増 10月
財務省が20日発表した10月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7100億円の赤字だった。貿易赤字は28カ月連続だが、前年同月に比べ赤字額は35.5%減少した。アジアや米国、欧州連合(EU)の各地域向けに輸出額が増え、輸出全体の数量指数も2カ月連続で前年を上回った。
QUICKが19日時点で集計した貿易収支の民間予測の中央値は1兆224億円の赤字だった。輸出額は前年同月比9.6%増の6兆6885億円で、2カ月連続で増加した。自動車や船舶、鉄鋼などの輸出増加が寄与した。アジア向けは10.5%増の3兆6003億円で、うち対中国は7.2%増の1兆2296億円。アジア、中国向けともに輸出額は、現行基準で比較可能な1979年以降、10月として最大となった。輸出全体の数量指数は4.7%増と、2カ月連続で前年を上回った。2カ月連続の増加は、2013年10-12月に3カ月連続増加して以来となる。
一方の輸入額は2.7%増の7兆3985億円で、10月として最大だった。携帯電話を含む通信機、肉類、液化天然ガス(LNG)の増加が目立った。アジアからは4.2%増の3兆4619億円で、うち対中国は9.6%増の1兆8164億円。EUからの輸入額は4.9%増の6997億円。いずれも10月としては最大となった。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル108円36銭で、前年同月比10.3%の円安。地域別の貿易収支は対アジアが1384億円の黒字と2カ月ぶりに黒字になったが、対中国は32カ月連続の赤字だった。

いつもの通り、とてもよく取りまとめられている記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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季節調整していない原系列の統計で見て、引用した記事にもある通り、10月には貿易赤字が縮小しました。その寄与は我が国の内需の停滞に起因する輸入サイドの鈍化もなくはないものの、輸出が伸びた要因、特に輸出数量の伸びが寄与した貿易赤字縮小と受け止めています。ただし、季節要因もかなりあって、上のグラフのうちの下のパネルで見て、季節調整済みの統計では、まだまだ貿易赤字はほぼ▲1兆円に近いレベルの9775億円だったりします。季節調整済みの系列の貿易赤字はなかなか縮小を見せていないんですが、今年3月の消費税率引上げの前後から輸入額も輸出額も増加に転じているのが見て取れ、輸出額はほぼ1年間の横ばい状態から増加基調に転じた可能性が高いと考えるべきです。いずれにせよ、消費増税前の駆込み需要からの反動で輸入が減少した縮小均衡のような貿易赤字縮小ではなく、10月の統計では輸出入とも前年同月比で増加した中で輸出の伸びの方が大きい結果として貿易赤字が縮小していますので、決して悪い姿ではないと私は見ています。

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上のグラフは輸出の動向をフォローしています。上のパネルは季節調整していない輸出額の前年同月比の伸び率を数量と価格で要因分解しており、下のパネルは輸出数量とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月だけリードを取っています。輸出数量の伸びが足元で高まっているのが見て取れます。ただし、まだまだ価格要因による輸出額の押上げの寄与も大きくなっています。円安が進んでいるので当然です。下のパネルを見ると、OECD加盟の先進国の景気がそれほどの回復を示していないにもかかわらず、10月の輸出が伸びているのが見て取れます。引用した記事にもある通り、地域別に見ても10月の輸出は米国・欧州・アジアともに伸びており、特にアジアや新興国がけん引したという姿にはなっていません。ですから、1変数の univariate でトレンドだけを追うと輸出数量が回復したように見えるんですが、説明変数として海外経済の動向から輸出を予測すると、必ずしも、このまま増勢が続くかどうかは疑わしいとも見えます。1年ほどの長きに渡って低迷を続けてきた輸出数量ですから、価格効果を見た場合、そろそろJカーブ効果も終わって回復する時期に差しかかった、と言われればそうかもしれないと思う一方で、輸出数量の需要効果の要因を見た場合、海外経済、特に欧州経済低迷のリスクがまだ残るのは確かだと考えるべきです。私は先行きについて楽観主義者なんですが、現時点では、輸出の先行きに関して楽観的になるのはまだ早い可能性を指摘しておきたいと思います。

メディアの報道によれば、明日、衆議院が解散され12月に総選挙が予定されているようです。国家公務員の末席に名を連ねる身として、選挙の行方は直接に上司を決定しかねませんから大いに注目しております。

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