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2014年12月20日 (土)

今週の読書はいろいろと取りそろえた経済書と歴史書と小説の5冊!

今週の読書は、先週の小説なしに続き小説が1冊と少なく、歴史に関する本が3冊と重なった気もしており、以下の通りの5冊です。

まず、伍賀一道『「非正規大国」日本の雇用と労働』(新日本出版社) です。出版社から明らかなように、マルクス主義経済学の立場からの我が国の非正規の雇用と労働を考察しています。雇用や労働を考える場合、一般的な競争市場における効率的な資源配分というよりも、扱われる財が人間そのものですから、自由な競争市場における効率性の追求よりも、それなりに特殊性を考慮した規制の面を重視する考えがあり得るのは当然で、新自由主義的というか右派的な自由市場よりも規制色の強い理論的根拠があると私は考えています。ですから、メディアを賑わす雇用における「岩盤規制」は必要なケースもあり得ると考えています。その意味で、雇用や労働をマルクス主義経済学の立場から考えることは、それなりに意味があるというか、ほかの経済学が対象とする分野よりも雇用や労働に関しては意味があるような気がします。特に、本書は、やや労働者保護に傾くきらいは当然にあるとしても、イデオロギー的に原理原則を振り回すだけでなく、現在進行形で政策や財界の動向を把握した上で考察の対象としており、十分に読み応えがあります。特に、非正規雇用の増大と正規雇用の長時間労働などの質の低下や劣悪化がメダル(普通はコインだと思うが、それはともかく)の表裏をなしている、なんていうのは現在の主流派の経済学では抜け落ちている視点だという気がします。さらに、本書でもそうですが、雇用や労働からシームレスに貧困問題を考える際にもマルクス主義経済学の視点は有益である可能性があります。ただし、最後に、マルクス主義経済学から雇用や労働を考える際の弱点が本書にも表れており、すなわち、階級としての資本の側からの攻勢を階級としての労働者が防御するという視点が余りにも前面に出ているような気がします。非正規雇用された若者に対して教育訓練により生産性を向上させてスキルアップを図る、などの視点はほぼスッポリと抜け落ちている気がします。しかし、こういったマルクス主義経済学の特徴をそれなりに勘案した上で、批判的に読み進むのであればひとつの有益な参考意見かもしれないという気がします。

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次に、極めて乱暴ながら、上の表紙の画像の通り、下田淳『「棲み分け」の世界史』(NHK出版) と杉山信也『グローバル経済史入門』(岩波新書) と吉川浩満『理不尽な進化』(朝日出版社) の3冊を一気に取り上げたいと思います。というのは、私の歴史観に関する出版物が3冊だからです。3冊目の『理不尽な進化』については、著者が生物学者だとか進化論の専門家というわけでもなく、一般的なライターである著述業の作者が一般読者向けに書いた教養書ですし、最初の世界史に関する2冊はそのまま歴史書です。私の歴史観は何度かこのブログでも展開したことがあり、例えば、グールドとルウォンティンの「サンマルコ寺院のスパンドレルとパングロシアン・パラダイム: 適応主義プログラムの批判」については、2006年1月26日に取り上げており、私の歴史観は確率的に微分方程式に沿って歴史は進んでおり、時折、不連続なジャンプないしシフトがある、というものです。微分方程式に沿って進んでいるだけであれば、初期値が決まれば、あたかもアカシック・レコードのように未来までほぼ完全に決定論的に決まってしまいます。しかし、時折、でしかないんですが、不連続なジャンプないしシフトを私は想定します。そして、西欧が現時点での世界の覇権を握ったのは、明らかに産業革命を最も早く経験したからであり、その産業革命がどうして西欧で始まったのかについては、現時点では不明といわざるを得ません。その意味で、『「棲み分け」の世界史』は産業革命の重みについてまったく理解が届いておらず、どうしようもなく失格です。「棲み分け」と分業を同一視しているようにも見えますし、2013年10月5日付けの記事で取り上げたアセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』で論じられているexclusiveとinclusiveの前者のexclusiveの意味で使っている場合もあり、混乱もはなはだしいといわざるを得ません。『グローバル経済史入門』は欧米に重点を置いた世界史にとどまらず、アジアにも目を配った世界史を展開しており、とても教養書としては素晴らしいと受け止めています。『理不尽な進化』はタイトル負けしていて、中身は進化論について適応主義の主流派ドーキンスとそれを批判する反主流派グールドの論争が主たる論点となっているような気がします。なお、「グールドの敗走」という言い回しが何度か見かけますが、グールドは敗走したんではなく、風車に立ち向かったドン・キホーテよろしく、まったく勝負を度外視して自らの信念に基づいて、主流派の適応主義に敢然と闘いを挑んで敗退した、と、私は考えています。ご参考まで。

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最後に、阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋) です。学術論文では複数の研究者による執筆はまったくめずらしいことではなく、私も共著者とのコラボによる論文執筆の経験がありますが、複数の著者の手になる学芸書は初めて読みました。それにしても、伊坂幸太郎の小説は何冊も読んだことがある一方で、阿部和重については、先日読んだ川上未映子の『きみは赤ちゃん』で彼女のご亭主と初めて知ったくらいで、今まで作品を読んだことがなく、何とも評価できかねますが、出来上がったこの作品はとても面白いです。雰囲気としては「大きな物語」であり、少年野球の仲間2人がカーリー犬とともに世界と日本を同時多発テロから守るんですが、陰謀論的な筋書きは『ゴールデンスランバー』にもよく似ています。でも、主人公は執拗な国家権力の追跡から逃げまくるんではなく、果敢にテロの危険に立ち向かいます。しかも、歴史はさかのぼって、太平洋戦争中のB29の登場まで関係していたりします。さらに、戦隊ヒーローありの、感染症のパンデミックありの、オタクのコレクターの活躍がありの、野球は伊坂幸太郎の地元の楽天イーグルスですし、最後は我が国随一の人気球団である我が阪神タイガースとの交流戦で小説は幕を閉じます。下の動画は、この小説のトレイラです。

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