5か月振りに減少した機械受注から今後の設備投資動向をどのように占うか?
本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの系列で前月比▲6.4%減の7780億円を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10月機械受注、5カ月ぶり減 基調判断は据え置き
内閣府が11日発表した10月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比6.4%減の7780億円だった。製造業、非製造業ともに減少し5カ月ぶりのマイナスとなった。
QUICKが10日時点でまとめた民間予測の中央値(2.0%減)を下回った。内閣府は「9月に伸びたものが反動で減ったことがマイナスの大きな要因。業種別に見れば増加、減少した数は拮抗している」と説明しており、機械受注の判断は前月の「緩やかな持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は5.5%減の3438億円と2カ月ぶりに減った。9月に原子力原動機や火水力原動機で大型案件のあった電気機械や石油・石炭製品で反動が出た。一方で化学工業や情報通信機械からの受注は増えた。
船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額も7.5%減の4426億円と3カ月ぶりの減少。通信業向けのコンピューターが反動で減ったほか、不動産業向けの運搬機械なども減少した。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比▲2.1%減で、レンジでも▲4.1から+2.1%でしたから、レンジの下限を超えたマイナスとなりました。さらに、上のグラフの上のパネルを見ても明らかな通り、5月の大きな前月比マイナスによる受注減に引っ張られているとはいえ、6か月後方移動平均の太線グラフは、まだ下向きの動きを示していることも事実です。ただし、5月の前月比▲19.5%減を境に、6月+8.8%増、7月+3.5%増、8月+4.7%増、9月+2.9%増と4か月連続で前月比プラスを記録してきましたので、10月の▲6.4%減のコア機械受注の水準である7780億円は3か月前の7月の水準を上回っています。ですから、10月の前月比マイナスは反動減の範囲内ともいえます。そういった意味も含めて、なんだと私は理解していますが、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」に据え置いています。ただ、設備投資の先行指標としての機械受注の動きが反転増加に向かうかどうかはまだ不透明であると私は考えています。というのは、上のグラフの中の下のパネルに示されている通り、コア機械受注の先行指標となる外需の動向が不安定であるとともに、円安が背景なんでしょうが、黄緑色のラインの製造業は消費増税ショック直後の落ち込みから回復の気配が感じられるものの、機械受注の水準で製造業を上回っているピンク色のラインの非製造業が内需の停滞などから本格増加にはほど遠いと受け止めているからです。その意味で、法人企業統計に示されたほどの企業活動の回復については、まだ不透明との考えに戻ったといわざるを得ません。すなわち、法人企業統計の発表時から、GDP統計の2次QE発表を経て、企業活動の回復に関する見方を私は少し変更しています。
企業活動がまだ回復を示さないのであれば、トリクルダウンの家計への滴りはもっと先になる可能性が高く、日本経済の本格回復軌道への回帰は不透明感が払拭できません。その意味でも、来週の日銀短観で示されるであろう企業マインドには注目です。
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