よいお年をお迎え下さい!
いよいよ年の瀬も押し詰まり、今日は大晦日です。
何はともあれ、みなさま、よいお年をお迎え下さい。
なお、上の画像は ARTBANK のサイトから借用しています。
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能年玲奈主演の映画「海月姫」を見に行きました。原作は東村アキコ、講談社『Kiss』に連載中でコミック13巻か14巻まで出ているハズです。主人公の倉下月海のお決まりのポーズは、上の映画ポスターのように右手を上げた敬礼ではなく、両手で頭を抱えてやや青く顔に影が差す「困った」のポーズではないかと思いますが、私もそれほど詳しく原作マンガを読んでいるわけではありません。映画の舞台は文京区天水町です。映画では天水地区再開発で取り壊されそうになる天水館を守るために、ここで話が飛ぶんですが、天水館でファッションショーをやる、というものです。言わずと知れたオタクの世界で、主人公の月海はクラゲ、ほかに、歴女の歴史の中でも極めて狭い範囲の「三国志」のオタク、もちろん、鉄道オタク、和ものオタクなどを取りそろえています。
マンガの原作を実写で再現していますが、ムリはありません。もともとがマンガですから、「ドラえもん」の四次元ポケットや「巨人の星」の大リーグ・ボールなどのように荒唐無稽、というか、非現実的なシロモノがあったりする原作がなくもないんでしょうが、この映画は違います。ただ、時間軸が現実とは異なり、例えば、最後のドレスを乾かすシーンなどは現実ではあり得ないような短時間でコトを終わらせたりします。その昔に、「ドカベン」で里中投手が1球を投げるのに数時間を費やし、明訓高校が1試合終えるのに数か月かかるようなもんです。それにしても、女性でもオタクはドライヤを持っていないとは知りませんでした。私も人生のほとんどでシャンプー後は天日乾燥でドライヤを使ったことはありません。近くのシネコンで見たんですが、やっぱり、と言うか何と言うか、「妖怪ウォッチ」の映画が一番人気だったように見受けました。
下の動画は映画のトレイラです。
ついでながら、スポーツ用品の買い物も済ませました。クッション部分にヘタレが来たのでスイム・ゴーグルを、また、ゴムが伸び切ったのでスポーツ向けのショート・ソックスを買い求めました。特に意識したわけではありませんが、どちらもミズノでした。
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いよいよ今年2014年も押し詰まって、残すところ今日を含めて3日となりました。私はすでに年末年始休みに入ったりしています。ということで、やや旧聞に属する話題かもしれませんが、ネット・リサーチ大手のマクロミルから「年末年始の過ごし方に関する調査」結果が12月17日に公表されています。とても低調な消費者マインドを反映していると私は受け止めています。まず、マクロミルのサイトから調査結果のトピックスを5点引用すると以下の通りです。
トピックス
- 冬のボーナスあり43%、前年比7ポイント増。「支給額が増えた」28%で前年比8ポイント増。
- 冬のボーナスの使い道、1位「預貯金」 2位「生活費の補てん」 3位「ローンの返済」。順位は前年から変化はないものの、"堅実な使い道"の割合は減少傾向。
- 年末年始の9連休、外出は「外食」「デパート・ショッピングセンター」など近場に集中。「出費を伴う外出予定がない」52%、前年よりも5ポイント増。外出の合計予算は、平均39,218円。
- 年末年始どう過ごす? 前年からの上昇率1位「年越しそば」、2位「紅白歌合戦」、3位「雑煮」。第65回NHK紅白歌合戦は、2人に1人が視聴予定。
- お年玉をあげる57%、総額の平均は20,212円で前年より1,937円マイナス。
引用したポイントの最初にある通り、冬のボーナスはメディアで報じられているように、ボーナスありの割合が増加し、支給額増加のシェアも上がっています。しかし、第2のポイントにある通り、ボーナスの使途は預貯金、生活費の補てん、ローンの返済となっており、1年前と同じ堅実支出の並びとなっています。このあたりからも、低調な消費者マインドがうかがえます。
さらに、上のグラフは年末年始9連休の出費を伴う外出予定の結果なんですが、昨年に比べて、外食、デパート・ショッピングセンター、国内旅行、宿泊を伴わない小旅行、遊園地、海外旅行が軒並み昨年から減少を示しており、逆に、出費を伴う外出予定はないが増加しています。しかも、グラフや表は引用しませんが、出費を伴う外出予定の合計予算は39,218円となっており、昨年の44,684円から、▲5,466円の減少を記録しています。すなわち、ボーナスがいいにもかかわらず、家計の財布のヒモはまったく緩んでいない、との結果が出ています。ただ、帰省だけは昨年の62.8%から今年は64.4%と少し増加しています。
年末年始の行事について問うた結果が上のグラフの通りです。先の出費を伴う外出予定と異なり、大掃除、初詣、正月飾り、お年玉、年末年始のあいさつ回りなど、出費を伴わない、もしくは、少額の出費で済む年末年始行事に対して、家計は昨年よりも積極的な姿勢を示しているように見えます。もっとも、最初のトピックスにある通り、お年玉総額の平均は20,212円で前年より▲1,937円マイナスとなっています。また、ギャンブル性を持たせた買い物である福袋・初売に対しては消極的です。ここでも、先にグラフをお示しした出費を伴う外出予定の回答結果と同じような傾向が見られ、家計の財布のヒモは堅い一方で、出費を伴わない年末年始行事に対しては決して消極的ではない、と考えるべきであり、その意味で、家計のマインドは単純に低調なだけというわけでもなく、かつての「巣ごもり消費」にやや似た現象と見なすべきなのかもしれません。
総じて見て、このマクロミルのアンケート「年末年始の過ごし方に関する調査」結果は、消費者態度指数などの政府統計に示された消費者マインドの低迷と極めて整合的です。何度か主張した通り、私は第2段階目の消費増税に備えた家計防衛のための支出抑制と考えています。今日の記事は「経済評論の日記」に分類しておきます。
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誠に遅ればせながらで今さらなんですが、今月上旬12月10日に米国タイム誌の「今年の人」 Person of the Year 2014 が Ebola Fighters と公表されています。西アフリカで発生したエボラ出血熱と闘う人々です。まったく私の専門外なので実感がありませんが、タイヘンなお仕事なんであろうと想像し頭が下がる思いです。
上の画像は、直前の12月8日に公表された「今年の人」の候補のファイナリスト達のショート・リストです。タイム誌のサイトから引用すると以下の通りです。
私は確実にノーベル平和賞を授賞されたマララ・ユスフザイ女史が候補者のショート・リストに入っていると思っていたんですが、ハズレでした。また、このショート・リストにも入っているアップルのティム・クックCEOはファイナンシャル・タイムズ紙の「今年の人」 Person of the Year に選ばれていたりします。
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いよいよ2014年も押し詰まった今週の読書はクリントン政権下で労働長官を務めたロバート・ライシュ教授の『格差と民主主義』ほか、以下の計4冊です。
まず、ロバート・ライシュ『格差と民主主義』(東洋経済) です。英語の原題は Beyond Outrage であり、「怒りを超えて」というわけですから、何かに怒っているわけで、怒りの対象は経済的な格差だということになります。その意味で、邦題はよく考えて付けられています。2012年の米国大統領選挙の年に出版されており、経済書や教養書という見方が出来ないわけでもないんでしょうが、選挙キャンペーンにおけるパンフレットとも考えられ、徹頭徹尾、共和党を批判して民主党への支持を目論んでいると見なすことも出来る本です。しかしながら、それで本書の値打ちが下がるとは私は考えておらず、例えば、ケインズの「平和の経済的帰結」とか、ずばり、『説得論集』とかはとても優れた経済書であると受け止められています。本書も、米国の保守派が経済的に台頭した起点を1995年のギングリッチ下院議長就任とし、「ウォール街を占拠せよ」の運動を明示的に支持しています。「トリクルダウン経済なんて、残酷な冗談」(p.143)と言い放ち、法人減税に反対し、「小さな政府」を疑問視し、無制限の規制緩和に異議を唱えています。単純に選挙キャンペーンでリベラルな候補を支持する、というか、リベラル派への投票行動だけでなく、何らかの直接的な意思表示の行動にも理解を示しているように感じます。クルーグマン教授らと並ぶ民主党リベラル派のライシュ教授の経済格差に対する考えが明確に示された1冊だと受け止めています。フォーマルな定量分析は示されていないものの、リベラル派から見た米国経済の格差に関する怒りを感じさせる本です。
次に、森博嗣『サイタ×サイタ』(講談社) です。犀川創平と西之園萌絵のS&Mシリーズ、瀬在丸紅子と保呂草潤平のVシリーズ、加部谷恵美や海月及介などのGシリーズに続く、小川令子や真鍋瞬市などが登場するXシリーズの最新作5作目です。しかしながら、前作の『ムカシ×ムカシ』などに比べて、とても地味な印象を持ってしまいました。ミステリですから、華々しければそれでいいというわけでもないんでしょうが、森ミステリの場合は、動機が特に重要なポイントから外れていますので、手法に注目するわけですが、今回の犯人像も実行方法もさして意外性はなく、やや物足りなさを感じる読者もいそうな気がしないでもありません。なお、前作『ムカシ×ムカシ』刊行時の著者インタビューが講談社のサイトにあり、このXシリーズは6作、すなわち、『サイタ×サイタ』の次作で終了する一方で、Xシリーズよりも先に始まっているGシリーズは先になるかもしれないけれど、あと3作の計12作で終了する予定、と発言しています。私も、どちらかといえば、XシリーズよりもGシリーズに魅力を感じます。Xシリーズの弱点は名古屋ではなく東京を舞台に選んだためではないかと、私は密かに思ったりしています。
次に、佐伯泰英『失意ノ方』(双葉文庫) です。「居眠り磐音の江戸双紙」のシリーズ最新刊ですが、来年早々の1月に次巻も発売予定と聞いています。次作は『白鶴ノ紅』というタイトルで1月5日発売だそうです。坂崎磐音の許嫁だった奈緒を強く連想させるタイトルです。ということで、『失意ノ方』に戻ると、このタイトルは明らかに嫡男である意知を佐野善左衛門に刺殺された老中田沼意次を示唆しています。他方で、次巻に続く奈緒の苦境についても話が進み、いつもの通りのわけの分からない道場破りも登場して、やや無節操に話が進みます。本書のハイライトは坂崎磐音と田沼意次が直接会話を交わすシーンではないかと思いますが、私の読解力が不足しているのか、それほどの緊張感は感じられませんでした。作者の心づもりによれば、このシリーズは50巻で終了とのことで、本作『失意ノ方』は第47巻、年明け早々の次巻『白鶴ノ紅』は第48巻です。ひょっとしたら、来年中には第50巻に達してしまいそうな気がしないでもありません。最後までがんばってフォローしたいと思います。
最後に、万城目学ほか『みんなの少年探偵団』(ポプラ社) です。万城目学「永遠」、湊かなえ「少女探偵団」、小路幸也「東京の探偵たち」、向井湘吉「指数犬」、藤谷治「解散二十面相」の5本の短篇を編んだジュブナイル短篇集です。タイトルや表紙を見ても理解できる通り、明智小五郎や少年探偵団と怪人二十面相の対決をテーマとしたジュブナイル小説なんですが、私のような中年以降の大人が読んでも楽しい短篇集です。ただし、私よりももっと年配の団塊の世代の人々向けだという気がしないでもありません。万城目作品はまだ正面から暗号解読に挑んでいたりするんですが、湊作品は語り手がおばあちゃんになって、昔話の少女探偵団の物語です。最後の藤谷作品がかなり冗談めかしたパロディで、昔風の生真面目な雰囲気を捨てて、現代的なコメディタッチの作風を活かしていたりします。
役所では昨日が御用納めで、今日の土曜日から年末年始休みに入ります。いつ読むか分からないながら、何と、一念発起してトマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)を買い込みました。これだけ高額かつぶ厚い本を買うのはラインハート=ロゴフの『国家は破綻する』以来かもしれません。
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今日は、年末最後の閣議日で政府からいっせいに主要な経済指標が公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省の失業率や厚生労働省の有効求人倍率あるいは毎月勤労統計などの雇用統計が、さらに、経済産業省の商業販売統計が、最後に、総務省統計局の消費者物価指数が、それぞれ発表されています。いずれ11月の統計です。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトからそれぞれの統計に関する記事を引用すると以下の通りです。
11月の鉱工業生産指数、前月比0.6%低下 3カ月ぶりに低下
経済産業省が26日発表した11月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調節済み)速報値は前月比0.6%低下の97.8だった。低下は3カ月ぶり。10月にプラスに寄与した半導体製造装置などの大型受注が減った反動が出た。QUICKがまとめた民間予測の中央値は0.8%上昇で、市場予想を大きく下回った。生産指数は10月までは2カ月連続で上昇しており、経産省は「11月は踊り場を迎えている」として、生産の基調判断を前月までの「一進一退にある」で据え置いた。
生産指数は15業種のうち8業種が前月比で低下し、7業種が上昇した。低下業種では、「はん用・生産用・業務用機械」が前月比3.5%低下と大きく下げた。低下は3カ月ぶり。10月に生産指数を押し上げた半導体製造装置の大型受注の反動が出たほか、工場や発電所などで使われるという「水管ボイラ」が減少した影響が出た。一方、スマホ関連の部品需要が堅調なこともあって、「電子部品・デバイス」は5カ月連続で上昇。前月比2.3%上昇と、他業種と比べて上昇幅が最も大きかった。
出荷指数は前月比1.4%低下の97.2と、3カ月ぶりに低下した。在庫指数は1.0%上昇の112.4。業種別では在庫調整を進める自動車など「輸送機械」が前月比2.2%低下したが、全体では3カ月ぶりの増加となった。出荷に対する在庫の割合を示す在庫率指数は4.0%上昇の116.8。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、12月は3.2%上昇、1月は5.7%上昇を見込む。経産省は「(企業の中には)11月に計画していた生産が12月以降にずれ込んだ可能性もある」としている。
11月の完全失業率、前月比横ばいの3.5% 非正規雇用は初の2000万人超え
総務省が26日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は3.5%で、前月から横ばいだった。横ばいは7カ月ぶりで、QUICKがまとめた市場予想(3.5%)と同じだった。男性は製造業などで雇用のミスマッチが起きており、労働市場から退出する動きがみられた。半面、女性の就業者数や雇用者数は高い水準を維持し、完全失業率を押し下げていることから、総務省は雇用情勢は「総じて改善傾向で推移している」と判断した。
一方、非正規労働者数(原数値)は前年同月比48万人増の2012万人となり、統計を取り始めた1984年以降で初めて2000万人を超えた。正規と非正規の雇用形態別割合は正規が62.0%、非正規が38.0%だった。非正規の38.0%は、月別の調査を開始した2013年1月以降で2番目に高い水準。最も高かったのはことし2月の38.2%だった。
11月は医療・福祉の分野で非正規の就業者数が増えたことが影響した。総務省は、長期的に非正規が伸びている要因として「子育てが一段落した女性の就業や退職した男性の再雇用が進んでいるため」とみている。
完全失業率(季節調整値)を男女別にみると、男性が前月比横ばいの3.8%、女性は0.1ポイント低下の3.1%だった。就業者数は男性の減少が響き6345万人と前月比で10万人減り、仕事を探していない「非労働力人口」は4498万人と15万人増加した。
完全失業者数は229万人で5万人減少した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は2万人増、「自発的な離職」は6万人減、「新たに求職」している人は2万人減となった。
求人倍率、22年半ぶり高水準 11月1.12倍
厚生労働省が26日まとめた11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.12倍と前月より0.02ポイント上がった。改善は2カ月連続で1992年5月以来の22年6カ月ぶりの高い水準だ。企業からの求人が高止まりする一方で、新たに働きに出る人が減っているため。総務省が同日まとめた完全失業率は3.5%と前月と同じだった。
有効求人倍率は全国のハローワークで職を探す人1人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。ハローワークが11月に新たに受けた新規求人数(原数値)は前年同月より4.4%減った。情報通信業や建設業、サービス業で10%超のマイナスとなった。過去に出した求人が採用につながらないまま積み上がることが増えており、求人数全体で見るとプラスが続いている。
一方、新たに職を探す新規求職件数は10.9%減った。職探しをする少数の人を多くの企業が奪い合う状況が続いている。
総務省の労働力調査によると、就業者の数は6371万人と前年同月から横ばいだった。非正規社員の数は2012万人と48万人増えて、初めて2000万人を超えた。定年後に嘱託などで働く高齢者が伸びていることに加えて、パートで働きに出る女性が増えているためだ。雇用者に占める非正規の比率は38.0%と今年2月の38.2%に次ぐ過去2番目の高水準となった。
11月の現金給与総額、9カ月ぶり減少 所定内給与は0.2%増
厚生労働省が26日発表した11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比1.5%減の27万2726円と、9カ月ぶりにマイナスに転じた。基本給は6カ月連続で伸びたものの、ボーナスが27.0%減と大きく落ち込んだためだ。現金給与総額から物価上昇分を除いた実質賃金も前年同月比4.3%減と17カ月連続で減少した。
ボーナスの大幅減は統計集計の技術的な要因が影響している。厚労省によると、11月は賞与支給の開始月にあたるものの、速報段階では各企業のデータがそろわず低めの数字が出やすいという。確報値ではボーナスが上方修正されるため、現金給与総額の伸び率が変わる可能性が高い。
基本給や家族手当などの所定内給与は0.2%増の24万1700円と、6カ月続けて増加した。今年の春季労使交渉で基本給を底上げするベースアップ(ベア)が広がったことを受けた。
ボーナスにあたる特別給与は27.0%減の1万1192円だった。残業代など所定外給与は0.9%減の1万9834円と20カ月ぶりに減少した。ただ、正社員など一般労働者の雇用が伸びていることから、「これまで景気回復に伴う需要増に既存社員の残業時間を増やして対応していたが、雇用増にシフトして対応しているため」(厚労省)とみられる。
所定外労働時間は0.9%減の11.1時間。製造業の所定外労働時間は横ばいの16.4時間だった。
11月の小売販売額、0.4%増 前年上回るも伸びは鈍化
経済産業省が26日発表した11月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は0.4%増えた。前年を上回るのは5カ月連続。前年に比べ週末の休日が多かったため、衣料品などの販売が伸びた。ただ、自動車や石油製品の販売額減少で、10月(1.4%増)から伸び率は鈍化した。
小売業の内訳をみると、織物・衣服・身の回り品が3.9%増。飲食料品は2.6%増。一方、自動車が5.5%減、燃料は5.0%減った。
大型小売店は2.0%増の1兆7298億円。既存店ベースは1.2%増。このうち百貨店は1.5%増、スーパーは1.0%増だった。
コンビニエンスストアは5.2%増の8628億円。ファストフード及び日配食品などが伸びた。既存店ベースでは0.6%増えた。
同時に発表した専門量販店販売統計(速報)によると、11月の販売額は家電大型専門店は3516億円、ドラッグストアが3894億円、ホームセンターが2762億円となった。
消費者物価の伸び縮小 11月2.7%、原油価格下落で
総務省が26日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は値動きの激しい生鮮食品を除く指数が103.4と前年同月比で2.7%上昇した。食料や電気代、宿泊料などが値上がりした。上昇は18カ月連続となった。ただ原油価格の下落を背景にガソリンや灯油が足元で値下がりしており、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。
前年比の上昇率は3.3%だった7月から4カ月続けて縮小した。4月の消費税率引き上げ分を除いた上昇率は前年比で0.7%になる。
CPIを品目別にみると、生鮮食品を除く食料が4.0%上がった。外食のほか調理食品や菓子類の値上がりが目立った。電気代は6.0%上昇。北海道電力の値上げが大きく影響した。宿泊料も6.0%上がった。
ガソリンは0.7%、灯油は1.6%上昇したが、前月に比べると3.4%、3.2%それぞれ低下した。エネルギー全体でも前月からは1.2%低下した。
今後の指数の見通しについて、総務省は「石油製品の値下がりが大きいがほかの品目では堅調なものもあり、おおよそ横ばいで推移する」とみている。
東京都区部の12月中旬速報値は生鮮食品を除く指数が101.8と前年同月から2.3%上昇した。上昇率は11月から0.1ポイント縮小した。
いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、これだけの記事を並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。景気後退期のシャドーについては雇用統計や商業販売統計も同様です。
ヘッドラインの生産は3か月振りに減産となりました。特に、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+0.8%の増産を見込んでいただけに、やや意外な結果でしたが、イン吉田記事にもある通り、11月の生産が12月に後ズレした可能性もあります。製造工業生産予測調査では12月が+3.2%、来年1月が+5.7%の増産と、これ自体はどこまで信頼性をもって見るべきか、やや疑問に感じないでもないものの、とても強気な予測が示されています。やや慎重に割り引いて見るとしても、少なくとも生産の底入れは近いと考えるべきです。そして、生産を牽引しているのは輸出と設備投資です。輸出は好調な米国経済を背景に今後は伸びる可能性が高く、設備投資も企業マインドなどの調査では今年度の積極姿勢が示されています。積極的な設備投資の背景には先行きの人手不足への懸念があると私は考えています。生産の底入れが近いという意味で、政府経済対策の3.5兆円というのがやや過大ではないかと懸念するエコノミストも私の知り合いにいたりします。私は景気というよりもインフレ目標達成のための物価上昇のサポートや需給ギャップ縮小効果を考えれば、必ずしも過大ではないと考えています。
雇用統計のグラフは上の通りです。上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、製造業の所定外労働時間指数で、ここまで季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。最後の5枚目は季節調整していない賃金指数、すなわち、現金給与総額と所定内賃金の前年同月比をプロットしています。雇用情勢を見ると、有効求人倍率がさらに上昇したものの、失業率は前月から横ばいにとどまり、しかも、引用した記事にもある通り、雇用者の中でも非正規雇用の割合が高まるという意味で、必ずしも内容のよくない印象を受けます。また、人口動態からして団塊の世代が本格的に労働市場から退出する時期に差しかかったので、止むを得ない面はあるものの、10-11月は雇用者の減少と非労働力人口の減少が同時に生じた結果として、8月以降の失業率が横ばいを示していると私は考えています。ただし、人手不足と雇用条件の改善は大きな流れとしては引き続き継続し、特に、規模の小さな中小企業でその傾向が強まる可能性が高いと受け止めています。また、毎月勤労統計の景気に敏感な所定外労働時間が生産と逆方向に増加したのは理解できませんが、11月の賃金については賞与でイレギュラーな動きが見られて、給与総額の前年同月比はマイナスを記録しましたが、所定内給与はわずかなりとも名目で増加するというモメンタムを失ったわけではありません。でも、実質賃金がマイナスであるのは変わりありません。
商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売売上げの前年同月比を、下のパネルは季節調整指数を、それぞれプロットしており、影をつけた部分は景気後退期です。11月統計では季節調整していない前年同月比がプラス幅を縮小し、季節調整指数が前月比マイナスですから、かなり悪化した印象ですが、石油価格の下落に伴うガソリン売上げの減少がいくぶんなりとも寄与しており、実勢の消費は統計に現れるほどには悪化していないと私は受け止めています。ただし、いつもの私の主張ですが、消費はマインドと所得で決まるわけで、所得はボーナスなどのバックアップがある一方で、内閣府の消費者態度指数などで見た消費者マインドの悪化が続いており、日銀のハロウィン緩和による株高による資産効果も比較的高所得層にしか貢献せず、やや微妙な段階に差しかかっている可能性があると私は考えています。アベノミクスでは消費増税直前の駆込み需要も含めて、消費が景気を牽引してきたんですが、諸費増税ショックに加えて、今年2014年年央くらいから消費に陰りが見え始め、そろそろ、輸出と設備投資に主役が交代する時期なのかもしれません。でも、賃上げによる所得増から消費のサポートがどこまで有効かが気にかかるところです。法人税減税は賃上げにつながるんでしょうか。私はどちらかといえば懐疑的です。
最後に、消費者物価のグラフは上の通りです。折れ線グラフが全国の生鮮食品を除くコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが12月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とは微妙に異なっている可能性があります。ということで、11月のコアCPI上昇率+2.7%のうち、日銀の「金融経済月報」2014年3月号に掲載された「消費税率引き上げ(5%→8%)が消費者物価に与える影響」に従えば、フル転嫁で全国コアCPI上昇率には+2.0%の押上げ効果があると試算されていますので、実力としては+0.7%ということになります。もちろん、フルに転嫁されていない可能性もありますが、あと半年から1年でインフレ目標2%は達成できるのかどうか微妙と考えるエコノミストも少なくない気がします。しかし、上のグラフを見ても明らかな通り、年央以降の物価上昇幅の縮小に大きく寄与しているのはエネルギー価格であり、商品市況の石油価格の下落に起因しています。エネルギー価格の下落による物価上昇の鈍化について日銀の責任を問うのはやや酷ではないかと私は考えています。いかがなもんでしょうか。
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本日、日銀から11月の企業向けサービス価格指数(SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で+3.6%と前月と同じ上昇幅が継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
サービス価格、11月3.6%上昇 円安や人手不足で
日銀が25日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)の速報値は102.9となり、前年同月比3.6%上昇した。消費増税の影響を除いた上昇率は0.9%だった。前年同月比上昇率はともに10月と同じだった。円安や人手不足などに伴う値上げを受けて、前月比では増税を含む指数と除く指数がともに0.4%上昇した。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。
増税を除く指数で、外航貨物輸送は円安によって円建て価格が上がり、前年同月比6%上昇した。トラック運転手の人手不足による賃上げなどが影響し、宅配便など道路貨物輸送も上昇した。
全147品目のうち前年同月比上昇したのは88品目、下落は30品目だった。両者の差は58品目と比較可能な11年以降で最も大きく、値上げの裾野の広がりを示した。「企業収益は好調で、サービス支出は底堅い」(日銀調査統計局)という。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルはサービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしています。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
最初に11月の企業向けサービス物価上昇率が10月と同じ上昇幅だったと書きましたが、逆から見て、石油などの国際商品市況の下落に伴う財の企業物価上昇率が消費税の影響を除いて前年比マイナスに落ち込んだのとは異なるコントラストを持って、サービス物価の方は上昇幅を縮小させずに、逆にホンの少しながら、ここ数か月で加速気味となっています。上のグラフで見る通りです。青い折れ線の国内企業物価は上昇幅を縮小させている一方で、赤い折れ線の企業向けサービス物価(SPPI)の総合や緑色の国際委運輸を除くコアSPPIの上昇幅は堅調なまま推移しています。何度かこのブログでも繰り返していますが、国内企業物価(PPI)に比べてSPPIは需給ギャップに対してより敏感なわけですから、ハロウィン緩和に起因する円安については財価格とサーボス価格に同等の影響を及ぼしていると仮定すれば、今年2014年半ば以降の国内景気の低迷に対して、PPIよりもSPPIの方が上昇率が鈍化しないのは、SPPIが人手不足に伴う賃金動向の影響が強いのに対して、PPIは石油価格の下落などの効果がより強く表れているからである、と考えるべきです。ですから、上昇幅を大きく縮小させているPPIほど国内景気は低迷していない可能性が高いといえますが、上昇幅を少し加速させているSPPIほどには需給の引締まりは見られない、というのが正解ではないかと受け止めています。。
さらに、SPPIを品目別により詳しく見ても、特に、特殊要因のような動きを見せている品目もなく、引用した記事の最後のパラに見られる通り、上昇品目の裾野は広がっています。もちろん、足元の動きは様々であり、例えば、SPPIの総合とコアSPPIの両方とも、10月から11月で見て上昇幅は同じでしたが、品目別には運輸・郵便とリース・レンタルがやや上げ幅を拡大した一方で、テレビやインターネットなどの広告が上昇幅を縮小させています。
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経済学の論文ではありませんが、12月1日に経済協力開発機構(OECD)から超長期の世界貿易、すなわち、2060年の世界の貿易パターンを探るリポート "Trade Patterns in the 2060 World Economy" が発表されています。実は、今年2014年7月に50年後の政策課題を考えるリポート "Policy Challenges for the Next 50 Years" も明らかにされており、その姉妹編ということになります。この7月のリポートはブログでは取り上げなかったように記憶しています。7月に公表された50年後の政策課題を模索するリポートと12月に発表された世界の貿易パターンを試算するリポートの参照先は次の通りです。
国際機関のリポートを取り上げるのは、何といっても、このブログの特徴のひとつですから、今夜のエントリーでは、いくつかグラフを引用しつつ、簡単にリポートを紹介したいと思います。
まず、貿易パターンに関するリポートの p.18 Figure 4. Growth in real GDP over the next 50 years を引用すると上の通りです。いわゆる「収斂理論」ではありませんが、成長率は先進国であるOECD加盟国と新興国・途上国である非加盟国の間で緩やかに収束に向かいます。リポートでは、"Over the next half century, world GDP is projected to grow on average around 3% per year with declining rates in many countries. Up until 2030, world growth will be sustained by a rising weight of China and India with high, albeit declining, growth while after 2030 fast growth in Africa is expected to support world growth. The OECD trend GDP growth is projected at about 2% annually until 2050-2060, and growth in emerging economies will continue to outpace the OECD, but the difference will narrow over coming decades as income levels in emerging economies catch up to those in the OECD." (pp.17-18 paragraph 44) とされています。
そして、興味深いのは世界の貿易シェアであり、貿易パターンに関するリポートの p.20 Figure 6. The geographical distribution of trade will shift を引用すると上の通りであり、米国やユーロ圏欧州が2012年から2030年そして2060年にかけて、輸出で定義された世界貿易のシェアを緩やかに低下させて行く一方で、日本は2030年から2060年にかけてわずかながらもシェアを回復します。アジア新興国の両雄である中国とインドも対照的です。中国は2012年から2030年ではシェアを大きく伸ばすのに対して、2030年から2060年では逆にシェアを低下させます。インドはこの期間で緩やかながら着実にシェアを上昇させます。途上国では、2030年から2060年にかけてアフリカがかなり大きくシェアを伸ばすのが印象的です。雑な表現かもしれませんが、"In terms of geographical distribution, there will be large shifts in trade patterns, reflecting among other things uneven developments in income across the globe as well as changes in comparative advantages." (p.19 paragraph 47) ということになります。
7月に公表された50年後の政策課題を考えるリポートでは、教育年限の伸長と生産性の関係や移民の活用、さらに、気候変動問題などのいかにも長期的な政策課題が取り上げられていましたが、貿易パターンの変化も明らかにされ、シーマン・ショック後の金融危機を乗り越えて、新たな長期政策の課題を模索する余裕ができたのかもしれません。
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誠に遅ればせながら、今月初めに書籍流通大手の日販及びトーハンから今年のベストセラーが発表されています。両社とも2014年のベストセラーは槙孝子・鬼木豊『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(アスコム)でした。さすがに、私もこの書名は聞いたことがありますが、誠に残念ながら読んでいません。ということで、文芸書のベストセラーのトップテンは以下の通りです。
日販 | トーハン | |
1 | 池井戸潤『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社) | 和田竜『村上海賊の娘』上・下(新潮社) |
2 | 和田竜『村上海賊の娘』上・下(新潮社) | 池井戸潤『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社) |
3 | 村上春樹『女のいない男たち』(文藝春秋) | 村上春樹『女のいない男たち』(文藝春秋) |
4 | 東野圭吾『虚ろな十字架』(光文社) | 東野圭吾『虚ろな十字架』(光文社) |
5 | 池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社) | 池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社) |
6 | 西尾維新『終物語』中(講談社) | 西尾維新『終物語』上中下/『続・終物語』(講談社) |
7 | 水野敬也・鉄拳『それでも僕は夢を見る』(文響社) | 百田尚樹『海賊とよばれた男』上下(講談社) |
8 | 西尾維新『終物語』下(講談社) | ダン・ブラウン『インフェルノ』上下(KADOKAWA) |
9 | 百田尚樹『海賊とよばれた男』上下(講談社) | 山崎豊子『約束の海』(新潮社) |
10 | 西尾維新『続・終物語』(講談社) | 宮部みゆき『ペテロの葬列』(集英社) |
出典は日販のサイト及びトーハンのサイトです。日販は「単行本フィクション」、トーハンは「単行本-文芸書」のジャンルです。見れば分かる通り、両者はほぼ同じようなものです。誠にお聞き苦しい自慢話ですが、水野敬也・鉄拳『それでも僕は夢を見る』と西尾維新『続・終物語』と山崎豊子『約束の海』を除けば、私はトップテンの文芸書はだいたい読んでいます。
今日は、お天気もまずまずでしたので、自転車でいくつか図書館を回って、年末年始に読もうと考えていた文庫本を借りまくりました。その意味で、年末年始休みが楽しみです。
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ーパーを紹介して、それなりに反響があった気がしますので、今夜もエコノミストの間で話題になっている最新の研究成果を取り上げたいと思います。長期停滞論に関する "A Model of Secular Stagnation" です。参照先は以下の通りです。
長期停滞論はサマーズ教授が2013年に自然利子率がマイナスなのではないかと主張し始めたことに端を発する論点であり、この論文は長期停滞論を理論モデル化しています。基本モデルは、各世代が若年・中年・老年の3期を生きる世代重複(OL)モデルであり、賃金が下方硬直的なために失業が発生しますので、いわゆるニュー・ケインジアン型のモデルとなっています。世代については普通に想定されるように、若年期に借入れをし、中年期で貯蓄した後、老年期にそれを取り崩します。当然ながら、マイナスの自然利子率を許容するモデルとなっています。しかし、誠に恥ずかしながら、私はこのペーパーをホントに完全に理解したかどうかは自信がありません。かなり難しい内容のペーパーです。ですから、著者の両教授の所属しているブラウン大学のサイトにアップされているペーパーそのものを読むか、あるいは、経済産業研究所(RIETI)のサイトの以下の小林教授の解説を読んでいただきたいと思います。参照先はそれぞれ以下の通りです。
なお、経済政策的にこの論文で重要と考えられるポイントをひとつだけ上げておくと、インフレーション・ターゲットの設定による金融政策では、完全雇用の下で名目金利がゼロになる完全雇用の定常状態均衡が生じるんですが、不完全雇用の定常状態均衡=デフレ均衡が残存し、すなわち、複数の定常状態均衡が存在する可能性が残され、必ずしも完全雇用均衡が達成されるとは限らないのに対して、課税もしくは国債発行による所得の世代間再分配を行う財政政策では不完全雇用の定常状態均衡=デフレ均衡は消滅し、完全雇用の定常状態均衡が必ず達成される点です。考えようによっては、金融政策よりも財政政策の方が完全雇用の定常状態均衡の達成に関しては、カギカッコ付きで「優れた政策」である可能性が示唆されているわけです。参考まで、下のグラフは財政政策による定常状態均衡のシフトについて概念的な整理をしています。ブラウン大学のサイトの論文の p.24 Figure 7: Effect of expansionary fiscal policy を引用しています。
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年賀状が出来上がりました。
作っておいてなんですが、自分でもいい加減で適当に作ってしまったと反省しています。でもまあ、こんなものかもしれません。画像はネットでゲットした著作権フリーのものだと思います。最近は、子供達も大きくなりましたので、家族がそれぞれ勝手に年賀状を作っていたりします。私は住所氏名こそ入れますが、電話番号はパスしてメールアドレスで済ませています。明後日の飛び石連休最終日までに宛て名を入れて、なるべく早めに投函する予定です。
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今週の読書は、先週の小説なしに続き小説が1冊と少なく、歴史に関する本が3冊と重なった気もしており、以下の通りの5冊です。
まず、伍賀一道『「非正規大国」日本の雇用と労働』(新日本出版社) です。出版社から明らかなように、マルクス主義経済学の立場からの我が国の非正規の雇用と労働を考察しています。雇用や労働を考える場合、一般的な競争市場における効率的な資源配分というよりも、扱われる財が人間そのものですから、自由な競争市場における効率性の追求よりも、それなりに特殊性を考慮した規制の面を重視する考えがあり得るのは当然で、新自由主義的というか右派的な自由市場よりも規制色の強い理論的根拠があると私は考えています。ですから、メディアを賑わす雇用における「岩盤規制」は必要なケースもあり得ると考えています。その意味で、雇用や労働をマルクス主義経済学の立場から考えることは、それなりに意味があるというか、ほかの経済学が対象とする分野よりも雇用や労働に関しては意味があるような気がします。特に、本書は、やや労働者保護に傾くきらいは当然にあるとしても、イデオロギー的に原理原則を振り回すだけでなく、現在進行形で政策や財界の動向を把握した上で考察の対象としており、十分に読み応えがあります。特に、非正規雇用の増大と正規雇用の長時間労働などの質の低下や劣悪化がメダル(普通はコインだと思うが、それはともかく)の表裏をなしている、なんていうのは現在の主流派の経済学では抜け落ちている視点だという気がします。さらに、本書でもそうですが、雇用や労働からシームレスに貧困問題を考える際にもマルクス主義経済学の視点は有益である可能性があります。ただし、最後に、マルクス主義経済学から雇用や労働を考える際の弱点が本書にも表れており、すなわち、階級としての資本の側からの攻勢を階級としての労働者が防御するという視点が余りにも前面に出ているような気がします。非正規雇用された若者に対して教育訓練により生産性を向上させてスキルアップを図る、などの視点はほぼスッポリと抜け落ちている気がします。しかし、こういったマルクス主義経済学の特徴をそれなりに勘案した上で、批判的に読み進むのであればひとつの有益な参考意見かもしれないという気がします。
次に、極めて乱暴ながら、上の表紙の画像の通り、下田淳『「棲み分け」の世界史』(NHK出版) と杉山信也『グローバル経済史入門』(岩波新書) と吉川浩満『理不尽な進化』(朝日出版社) の3冊を一気に取り上げたいと思います。というのは、私の歴史観に関する出版物が3冊だからです。3冊目の『理不尽な進化』については、著者が生物学者だとか進化論の専門家というわけでもなく、一般的なライターである著述業の作者が一般読者向けに書いた教養書ですし、最初の世界史に関する2冊はそのまま歴史書です。私の歴史観は何度かこのブログでも展開したことがあり、例えば、グールドとルウォンティンの「サンマルコ寺院のスパンドレルとパングロシアン・パラダイム: 適応主義プログラムの批判」については、2006年1月26日に取り上げており、私の歴史観は確率的に微分方程式に沿って歴史は進んでおり、時折、不連続なジャンプないしシフトがある、というものです。微分方程式に沿って進んでいるだけであれば、初期値が決まれば、あたかもアカシック・レコードのように未来までほぼ完全に決定論的に決まってしまいます。しかし、時折、でしかないんですが、不連続なジャンプないしシフトを私は想定します。そして、西欧が現時点での世界の覇権を握ったのは、明らかに産業革命を最も早く経験したからであり、その産業革命がどうして西欧で始まったのかについては、現時点では不明といわざるを得ません。その意味で、『「棲み分け」の世界史』は産業革命の重みについてまったく理解が届いておらず、どうしようもなく失格です。「棲み分け」と分業を同一視しているようにも見えますし、2013年10月5日付けの記事で取り上げたアセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』で論じられているexclusiveとinclusiveの前者のexclusiveの意味で使っている場合もあり、混乱もはなはだしいといわざるを得ません。『グローバル経済史入門』は欧米に重点を置いた世界史にとどまらず、アジアにも目を配った世界史を展開しており、とても教養書としては素晴らしいと受け止めています。『理不尽な進化』はタイトル負けしていて、中身は進化論について適応主義の主流派ドーキンスとそれを批判する反主流派グールドの論争が主たる論点となっているような気がします。なお、「グールドの敗走」という言い回しが何度か見かけますが、グールドは敗走したんではなく、風車に立ち向かったドン・キホーテよろしく、まったく勝負を度外視して自らの信念に基づいて、主流派の適応主義に敢然と闘いを挑んで敗退した、と、私は考えています。ご参考まで。
最後に、阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋) です。学術論文では複数の研究者による執筆はまったくめずらしいことではなく、私も共著者とのコラボによる論文執筆の経験がありますが、複数の著者の手になる学芸書は初めて読みました。それにしても、伊坂幸太郎の小説は何冊も読んだことがある一方で、阿部和重については、先日読んだ川上未映子の『きみは赤ちゃん』で彼女のご亭主と初めて知ったくらいで、今まで作品を読んだことがなく、何とも評価できかねますが、出来上がったこの作品はとても面白いです。雰囲気としては「大きな物語」であり、少年野球の仲間2人がカーリー犬とともに世界と日本を同時多発テロから守るんですが、陰謀論的な筋書きは『ゴールデンスランバー』にもよく似ています。でも、主人公は執拗な国家権力の追跡から逃げまくるんではなく、果敢にテロの危険に立ち向かいます。しかも、歴史はさかのぼって、太平洋戦争中のB29の登場まで関係していたりします。さらに、戦隊ヒーローありの、感染症のパンデミックありの、オタクのコレクターの活躍がありの、野球は伊坂幸太郎の地元の楽天イーグルスですし、最後は我が国随一の人気球団である我が阪神タイガースとの交流戦で小説は幕を閉じます。下の動画は、この小説のトレイラです。
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やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日、日銀短観が公表された12月15日に『HOT PEPPER』を発行するリクルートライフスタイルから「日本観光における『食』に関するアンケート」と題する調査結果が公表されています。円安で海外からの日本観光が依然に比べて割安になっており外国人観光客の増加も見込まれるところ、かつての日本観光の主たる目的のひとつだった寺社巡りや伝統文化の体験などは日本観光の目的としては後景に退き、買い物すら抑えて「日本食を楽しむ」が日本を訪れる目的のトップになった結果などが明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。週末前の軽い話題として、いくつかテーブルを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のテーブルは「日本に来た際の観光目的」を問うた結果です。リクルートライフスタイルのサイトから引用しています。最初に指摘した通り、かつての日本観光の主目的だった「寺社など歴史的な建物や街並みを楽しむ」とか、「日本の歴史や伝統文化を体験する・学ぶ」は決して上位でなく、「都市で買い物を楽しむ」すら抑えて「日本食を楽しむ」が日本を訪れる目的の中で堂々のトップにランクされています。
その日本観光の目的としてトップにランクされる日本食について「実際に食べたメニューでおいしかったもの」を問うた結果のテーブルは上の通りです。これも、リクルートライフスタイルのサイトから引用しています。かつては、寿司と天ぷらが日本食の代表のように考えられ、これらに鉄板焼きが続く、というのが一般の理解だったような気がしますし、下b時点でもこれらの人気はあるんでしょうが、上のテーブルの通り、ラーメン、刺身、トンカツがおいしかったメニューのトップスリーを占めました。
私が南米で外交官をしていたころから20年余りがたち、バブル景気とバブル崩壊、さらに長期のデフレを経て、日本に対するイメージが大きく変わっています。この20-30年で日本食が変化したのか、日本への観光客が変化したのか、両方だと思いますが、観光立国については疑問が残るものの、観光は地方経済を下支えする可能性のある産業だと私は受け止めており、外国人観光客の動向も気にかかるところです。その意味で、「経済評論の日記」に分類しておきます。
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総選挙が終わって、総理大臣指名の特別国会に先立って火曜日12月16日に政労使会議が開催され、政府から来年の賃上げを要請する運びとなり、法人減税と引き換えるつもりなのかもしれませんが、経済界もそれなりに前向きに対応したような印象でした。貧弱なメディアながら、私がこのブログで従来から主張しているのが、企業が溜め込んだキャッシュを賃上げや設備投資の形で我が国の国民経済に還元するという視点が重要、という点でしたが、いくつか学術論文を当たっていると、国際通貨基金(IMF)のワーキングペーパーで私の視点にやや近い分析を発見しています。参照先は以下の通りです。
今日は帰宅が遅くなりましたので、簡単に紹介しておきたいと思います。
まず、日本の非金融機関のいわゆる事業会社のキャッシュ保有と設備投資について上のグラフの通り、キャッシュ保有が非常に大きくなっている姿を示しています。IMFのサイトにpdfファイルでアップされているペーパーの Figure 1. Nonfinancial firms' real holdings of cash assets and real aggregate investment in Japan を引用しています。世界的に、最近20年間で事業会社のキャッシュ保有は増加しているものの、日本の場合は特にそれが著しいと指摘しています。すなわち、事業会社のキャッシュ保有は約250兆円に上り、名目GDPの約半分、あるいは、設備投資の2.5倍に達している事実を明らかにしています。その上で、いくつかフォーマルな定量分析を試みているんですが、私から見て興味深かったのが企業経営者であるCEOの二面性、すなわち、CEO dualityをダミーとして推計式に導入している点です。そして、CEO dualityはcash-to-assets比率に対してプラスの符号を持って有意に効いており、CEO duality、すなわち、CEOが取締役会議の議長を兼任している会長である場合、統計的に有意にキャッシュを溜め込むとの推計結果を得ています。もちろん、銀行セクターがパワフルであって、金融市場へのアクセスが十分でない点なども強調されていますので、結論として、企業の保有するキャッシュを成長資金として有効に活用するための政策としては、"Policy options for encouraging the use of these cash holdings include improving firms' access to market-based financing and discouraging CEO duality." ということになります。
CEO dualityとは、繰返しになりますが、経営トップが取締役会議の議長である会長を兼任していることであり、取締役会議の議長は株主の代表として経営陣を監視する役割を負っていることから命名されています。いくつか、CEO dualityと企業パフォーマンスとの関係に関する論文もあるようですが、私の専門外ですので詳しくありません。ただし、こういった二面性、三面性は企業の経営トップだけでなく、一般の国民や消費者でも見られるところで、例えば、米国クリントン政権下で労働長官の任にあったロバート・ライシュ教授の『暴走する資本主義』では、国民は消費者としては安価な製品を選好するが、雇用者としては高い賃金を選好し、この両者はトレード・オフの関係にある可能性があり、さらに、ある企業の株主であれば製品価格は高く、賃金は低く、といった選好もあり得ることから、こういった二面性・三面性が併存する場合が明らかにされています。複雑な関係かもしれませんが、現在の日本においては企業の保有するキャッシュを賃上げや設備投資で国民経済に還元する政策が重要な課題のひとつであるとの私の考えが国際的にも共有されているような気になっています。その意味でも、消費増税と法人減税の組合せには疑問を感じざるを得ません。
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本日、財務省から11月の貿易統計が発表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+4.9%増の6兆1889億円、輸入は▲1.7%減の7兆807億円、差引き貿易収支は▲8919億円の赤字でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月の貿易赤字8919億円 輸出額は前年同月比4.9%増
財務省が17日発表した11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8919億円の赤字で、赤字額は1兆3011億円だった前年同月に比べ31.5%減少した。貿易赤字は29カ月連続。QUICKが16日時点で集計した民間予測の中央値は9960億円の赤字だった。1-11月の貿易赤字の累計額は12兆円を超え、年間で過去最大だった2013年(11兆4683億円)を上回った。輸出額の増加に加え輸入が3カ月ぶりの減少に転じた結果、赤字幅が縮小した。
輸出額は前年同月比4.9%増の6兆1889億円で、3カ月連続で増加した。品目別では半導体等電子部品、液晶デバイスを含む科学光学機器、金属加工機械などの輸出増が寄与した。地域別では対アジアが5.8%増の3兆4304億円。うち対中国は0.9%増の1兆1516億円と、11月としてみると比較可能な1979年以降で最大。対米国は6.8%増の1兆2083億円と3カ月連続で増えたが、対欧州連合(EU)は1.3%減の5917億円と18カ月ぶりに減少した。輸出全体の数量指数は1.7%減り、3カ月ぶりの減少となった。米国やEU向けの自動車輸出の減少などが響いた。
一方の輸入額は1.7%減の7兆807億円で、3カ月ぶりに減少した。原粗油のほか、重油などの石油製品、石炭の輸入減少が目立った。対アジアは3.4%増の3兆3842億円で、うち対中国は3.9%増の1兆7484億円。ともに11月としては79年以降で最大だった。対EUは2.4%増で11月として過去最大の6820億円、対米国は3.3%減の6262億円だった。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=111円43銭で、前年同月比13.2%の円安。地域別の貿易収支は輸出入ともに最も多い対アジアが462億円の黒字で、貿易黒字は2カ月連続。対中国は5968億円の赤字で、33カ月連続の貿易赤字となった。
いつもの通り、とてもよく取りまとめられている記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
輸出額が増加して輸入額が減少していますので、差引き貿易収支は前年同月に比べて赤字幅を縮小させています。季節調整していない原系列の貿易指数で輸入について詳しく見ると、原油などの国際商品市況の大幅低下が我が国の輸入価格の押下げに寄与した一方で、ハロウィン緩和後に進行した円安による上昇圧力の方が強くなった結果、輸入価格指数は前年同月比で比+7.4%の上昇と10月統計の+4.9%から上昇幅が大きく拡大しています。しかし、この価格上昇に応じた数量の減少とは必ずしもいえないかもしれませんが、国内景気の停滞もあって、輸入数量が▲8.3%減と前月の▲1.7%減に続いて2か月連続の減少を示したことが輸入金額を押し下げる要因となっています。詳細な分析はしていませんが、輸入数量の減少は国内景気の停滞と円安に伴う輸入価格の上昇の合せ技であり、この輸入数量の減少が輸入価格の上昇を上回って輸入額を低下させ貿易赤字の縮小に結びついているのではないか、と私は受け止めています。ただし、輸入額は季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、いずれも7兆円は軽く超えており、引き続き、高い水準にあることは確かです。
上のグラフは輸出の動向をフォローしています。上のパネルは季節調整していない輸出額の前年同月比の伸び率を数量と価格で要因分解しており、下のパネルは輸出数量とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月だけリードを取っています。11月統計については季節調整していない原系列の輸出指数の前年同月比で見て、円安の進行により金額ベースの輸出額指数では増加しているものの、輸出数量は▲1.6%の減少を記録しています。上のグラフの上のパネルを見ても、赤い積上げ棒グラフの数量よりも青い価格の寄与で輸出数量が前年比プラスを示しているのが見て取れます。OECD先行指標も緩やかにプラス幅を縮小させており、海外からの需要は停滞しています。所得効果が大きくありませんので、円安に伴う価格効果で輸出が伸びるかどうかがカギになります。ただし、このところの輸出額を見ると、消費増税ショック直後の5月をボトムに季節調整済みの輸出額は緩やかながら11月まで6か月連続の前月比プラスを示しています。輸出先としては欧州はまだ十分な回復を示していないものの、米国に続いてアジアも景気を持ち直しつつあり、今後の輸出先として期待が持てます。
この先、内需も外需も大きく増加に転じる見込みは小さく、しばらくはやや停滞気味の景気が続く可能性が高いんではないかと私は考えています。金融政策が円安などを通じて徐々に景気拡大的な作用を及ぼすのか、それとも政府の経済対策による景気浮揚がどこまで可能なのか、貿易統計とともに内需の動向も含めて目先の景気については注目です。
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ものすごく旧聞に属する話題のような気がしますが、12月12日の発表からまだ4日しか経っていません。
今年2014年の漢字は「税」でした。いつもの通り、清水寺で揮毫されました。
今夜は遅くなりましたので簡単に済ませておきます。
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総選挙の開票も終わり、本日、日銀から短観が発表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から▲1ポイント低下して+12を記録しました。また、設備投資計画は大企業全産業が前年度比+8.9%増と9月調査の+8.6%増から上方修正され、ちょっとびっくりしました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用するといかん通りです。
12月の日銀短観、大企業製造業DIプラス12 2期ぶり悪化 先行きプラス9
日銀が15日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス12だった。
前回の9月調査(プラス13)から小幅に悪化した。DIの悪化は2四半期ぶり。急ピッチの円安による原材料コストの増加に加え、消費増税前の駆け込み需要の反動減が一部業種で続き、企業の景況感は停滞している。輸出回復の遅れも景況感の悪化につながった。もっとも、反動減は全体として収束しつつあり、悪化幅は小さかった。
3カ月先については、大企業製造業がプラス9になる見通し。素材産業を中心に、円安による原材料コスト高への懸念があり、企業マインドの悪化につながった。
2014年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=103円36銭と、前回の100円73銭よりも円安・ドル高方向に修正された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。回答期間は11月12日-12月12日で、今回の回答基準日は11月27日だった。
大企業非製造業のDIはプラス16と、前回から改善した。改善は3四半期ぶり。消費税引き上げ後の駆け込み需要の反動減が収束に向かっているうえ、訪日外国人の増加などを背景に宿泊・飲食サービスなどが持ち直した。
3カ月先のDIは小幅悪化し、プラス15を見込む。小売業などで改善を見込む一方、公共事業の減速で建設業のDIが悪化したことなどが影響した。
中小企業は製造業が前回(マイナス1)から改善しプラス1、非製造業は前回(ゼロ)から悪化しマイナス1だった。非製造業DIは5期ぶりにマイナス圏に沈んだ。先行きはいずれも悪化を見込む。
14年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比8.9%増だった。9月調査の8.6%増から上方修正され、QUICKがまとめた市場予想の中央値(8.1%増)を上回った。先行きの海外経済回復の期待に加え、企業収益は堅調で、これまで先送りしていた設備更新や能力増強投資を再開する動きが出てきたことが、増加につながったようだ。大企業のうち製造業は11.4%増、非製造業は7.6%増を計画している。
大企業製造業の輸出売上高は前年度比1.2%増となり、9月調査から上方修正された。円安基調が続いていることで輸出企業が先行きについて強めの計画を設定したとみられる。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス3と、9月調査(マイナス4)からマイナス幅が小幅に縮小した。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。仕入れ価格判断DIがプラス19と、前回(プラス17)からプラス幅を広げており、円安を背景にした輸入コストの増加分を価格転嫁する動きはさほど進んでいないようだ。
やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。
ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIについては、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが最近で+13、先行きも+13でしたから、最近はほぼ横ばい圏内でいいとしても、先行きが+9と悪化するのはネガティブであり、ハロウィン緩和による株高や円安の効果がまだ実感されていない可能性が高いと受け止めています。ただし、大企業非製造業については市場の事前コンセンサスよりも上振れし、住宅関連の「建設」や「不動産」が改善を示すとともに、円安に伴う海外旅行客増があり「宿泊・飲食サービス」も改善に転じました。また、グラフは示しませんが、大企業の売上計画は9月調査の+1.8%増から+2.0%増に上方修正され、経常利益も9月調査の▲3.0%と減から+1.6%増と増益に転ずる見込みです。ということで、大企業はまだいいんでしょうが、問題は中堅企業・中小企業です。上のグラフでも、一貫して規模別に業況判断DIは規模の小さな企業に厳しく出ていますが、先行き3月時点では中小企業は製造業・非製造業ともマイナスに転ずる見込みとなっています。円安に伴うコストアップも負担になりつつあるとメディアなどで報じられていますが、下のグラフに見る人手不足の影響も無視できないと私は考えています。
ということで、上のグラフは製造業の設備判断DIと全産業の雇用判断DIをプロットしています。プラスが過剰超でマイナスが不足超を示しています。設備についてはまだ過剰超のプラスが記録されているという意味で、過剰感が完全に払拭されたわけではありませんが、過剰から不足に向かう方向感は続いていますし、何といっても、雇用については企業規模が小さくなるほど不足感が強いという結果が示されています。2006-07年のサブプライム・バブルの時期にも設備の不足感よりも人員の不足感の方が強かったんですが、現在の景気回復期でも人手不足が深刻になりつつあります。しかも、前回は景気の山付近では大企業の人手不足感が強かったんですが、現状の足元では中堅企業・中小企業の人手不足感の方が上回っています。あるいは、大企業では人手不足に設備で代替する動きが始まっているのかもしれません。また、従来から主張している通り、賃上げの素地が広がっている気がします。
ということで、上のグラフは2007年度から2014年度までの大企業の設備投資計画を調査時期ごとの修正を踏まえてプロットしています。設備投資計画については、6月調査の上方修正についてはやや疑問視していましたが、9月調査と12月調査で続けざまに上方修正されたことから、今年度はかなり伸びる可能性が高いと私は受け止めています。上のグラフを見ても、リーマン・ショック前の2007年度計画に匹敵する水準を示しており、かなり強気な設備投資計画に見えます。設備投資については人手不足感の強い中堅企業・中小企業の製造業にも裾野が広がっており、大企業だけでなく全規模全産業の設備投資計画も上方修正されており、9月調査の前年度比+4.2%から12月調査では+5.5%を記録しました。大企業の設備投資計画は日銀短観の統計のクセとして、上のグラフに見られるように、9月調査から12月調査で下方改訂される可能性も予想されていただけに、私は少し驚きました。
先週金曜日の日銀短観予想でお示しした通り、業況判断DIは横ばいないしやや下方改定と見込まれており、おおむね、足元はその通りで、先行きについてはさらに消極的な企業マインドが示された一方で、設備投資については積極的な姿勢がうかがわれます。それも含めて、前回の9月調査の後には「景気後退」もエコノミストの間でささやかれましたが、この12月調査結果ではそろそろ景況感も下げ止まる兆しが出て来たように見るエコノミストもいそうな気がします。
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12月も中旬となり、本格的な冬を迎えてかなり寒くなりました。
私は下のグラフを見る限り、9月に入ってから体重が増加傾向にあります。年末年始を前に気をつけたいと思います。
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今週の読書はなぜか小説なしの経済書や教養書ばかりの以下の5冊となってしまいました。
まず、ジェームス K. ガルブレイス『格差と不安定のグローバル経済学』(明石書店) です。著者は『豊かな社会』などで有名な経済学者のジョン K. ガルブレイス教授のご子息であり、ご自身もテキサス大学で経済学の教授だそうです。親子でリベラルな経済学者なのかもしれません。ということで、本書は経済的な不平等に関するデータの蓄積に関する学術書です。もちろん、そのデータを用いた研究成果もいくつか収録されており、社会民主主義的な政権が続くと平等度が高まる、といった当然の結果が計量経済学的に支持されていたりします。第6章の米国以下は各国の不平等に関する研究成果を示しています。また、欧州における賃金の硬直性は不平等度合いを低下させており、高失業につながっているかどうかは疑問視されていたりします。残念ながら、日本は研究のスコープには入っていないようです。学術書にしては、不平等の計測をどの指標に基づいてい実施ているのかが不明瞭です。タイル指標なのか、ジニ係数なのか、もう少し明確にすべきだという気もします。また、不平等の指標に関する解説も欲しい気がします。というのは、私は地方大学に出向していた際に、そういった貧困度や不平等度に関する指標の解説が世の中に出回っていないので、自分で紀要論文 "A Survey on Poverty Indicators: Features and Axiom" を書いてしまった記憶があるからです。なお、最後に、本書の原題は A Study of the World Economy Just Before the Great Crisis であり、必ずしも不平等にスポットを当てているわけではありません。学術書の内容からして、邦訳書のタイトルに「格差」を入れるのは何ら差し支えないと私は思う一方で、少なくとも「不安定」については、記述が皆無とはいいませんが、ややミスリーディングな気がします。本書では「不安定」はそれほど分析されていないので、その点は前もって理解しておいた方がいいように思います。
次に、小塩隆士『「幸せ」の決まり方』(日本経済新聞出版社) です。副題は「主観的厚生の経済学」となっています。ですから、英語でいえば subjective well-being もしくは subjective welfare を扱っている、ということになります。客観的な健康状態とか、犯罪や治安とか、所得などの指標に基づく幸福度や厚生ではなく、主観的に自分がどうれくらい「幸福」を感じるか、という研究を紹介した学術書です。「まえがき」のp.7でしょっぱなからいくつか興味深い結論が紹介されています。例えば、仕事が非正規であると不利なのは所得だけでなく、主観的な幸福度も低くなる、とか、貧乏な家に生まれると、その後の人生がかなり決まってしまう、とか、所得格差の大きな地域に住んでいると幸福感が低い、とかの分析結果です。また、著者は明確に主観的な厚生を政策目標とすることについては否定的です。生物学だか医学だかの観点から極端にいえば、ドーパミンだか何だかの脳内物質で幸福を感じられるとすれば、政策目標がその脳内物質を脳内に注入することになってしまいかねないのですから当然です。私はさらに幸福の経済学については主観的な幸福も客観的な厚生も懐疑的で、先週末の読書感想文のブログでロバート・スキデルスキー & エドワード・スキデルスキー『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』を取り上げた際に、「経済成長の追求から幸福の追求に乗り換えるのは、誤った偶像崇拝から別の誤った偶像崇拝に切り替えることにほかならない。」との批判を紹介しましたが、基本的にこの意見に同意します。特に、この幸福の経済学に限らず、マイクロな経済分析をする場合、マクロも同様ですが、計量分析をかなり決定論的に扱う不安は残ります。少なくとも確率論的に分布で思考する必要がありますし、オーダーを考慮するプロビットやトービットで分析しているとはいうものの、相関関係と因果関係が混同されている恐れを感じざるを得ません。「まえがき」p.7の例でいうと、「貧乏な家に生まれる」のが原因で、「その後の人生」が結果であるのは時系列的に明らかですが、別の例で、幸福度とよく似た分析をする場合、喫煙習慣といわゆる「下流指標」にある程度の相関が見られる場合があったりして、どちらがどちらの原因になっているかは慎重な検討が必要ではないかと私は考えています。無条件に幸福感を結果と見なすのは疑問を感じます。もっとも、それはそれとして、人間、というか、日本人の幸福感について本書の結論はかなりもっともで、多くの人が合意できる内容であり、著者のいうところの社会の病理の解明には役立つかもしれません。
次に、P. シーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』(みすず書房) です。何に惹かれて本を読むかというといろいろあるんでしょうが、この本の場合は翻訳者に魅力を感じました。クルーグマンの著作などを数多く訳出している山形浩生さんの翻訳です。著者はトゥールーズ大学経済学部教授であり、専門は産業組織論と競争政策ネットワークの経済学とデジタル社会行動経済学だそうです。で、タイトルから経済に関する以外はイマイチ不明なので、何の本かというと、広い意味での経済史の本だと受け止めています。もっとも、経済学はダーウィン的な進化論が好きなんですが、そういった傾向ではありません。狩猟生活から農耕を始めた人類が信頼関係のもとで経済活動に精を出す、という物語です。もちろん、ノンフィクションというか、出版社から軽く想像される通り、リベラル・アーツ的な教養書に近いものです。ホッブズ的な万人の万人に対する闘いではなく、すなわち、自分が欲しい財を持っている相手を殺すことではなく、何らかの交換材料を持って経済的に交換するに至る過程と、その発展した歴史を跡付けています。まず、アダム・スミスの『国富論』で展開された協業に基づく分業の利益からお話が始まり、我々が買い求めるシャツを作って店頭に並べるまでの分業や交易といった経済活動が詳述され、その国際分業の中で個々人が占める位置を明らかにすべく、歴史をさかのぼったりします。というか、人類社会をリバース・エンジニアリングするといった方が正確かもしれません。本書で頻出するキーワードは「信用」ないし「信頼」と「視野狭窄」と私は受け止めました。私のブログといった貧弱なメディアで一言では何とも表現しにくい本ですが、経済学にルーツを持つ教養書であることは間違いありません。それなりに面白く読めます。
次に、上川龍之進『日本銀行と政治』(中公新書) です。1998年の新日銀法の施行から直近の2013年3月の黒田総裁就任と異次元緩和の発動くらいまでをスコープに収めた日銀による金融政策の歴史を跡付けています。時々の日銀金融政策の動向などは経済学の専門書ではなく、朝日新聞でフォローされているのが少し気にならないでもありませんが、私の理解する範囲ではかなり正確に日銀金融政策が記録されている気がします。その上で、日銀が追い詰められて、黒田総裁の下で大きくリフレ的な政策に舵を切った事実を終章において「政策の窓モデル」と適合的であると解説しています。すなわち、「新しい経済理論が登場し、それが政治リーダーに受け入れられ、政策転換が起きた」(p.259)ということになります。ただし、その前段で、いわゆる旧来の日銀理論に基づく政策運営の色彩の強かった2人の総裁、すなわち、新日銀法下で初代の速水総裁と一昨年までの白川総裁が政策運営の失敗により、日本経済の停滞を招いてレピュテーションが低かった一方で、早めに政策の手当をした福井総裁については政治リーダーからの評価が高かった点については本書でも正確に記されています。また、政治リーダーの側からの日銀へのコンタクトとして民主党の変節が取り上げられ、野党のころは日銀の独立性を尊重する姿勢が強かったにもかかわらず、政権交代の後は、国民の支持を取り付けるための景気浮揚の観点から日銀への注文が大きく増加した、と分析しています(p.268)。最後に、p.270以降で日本政治のウェストミンスター化、すなわち、小選挙区制の定着に伴う総理大臣への権限の集中が政治と中央銀行の関係にも影響を及ぼした、と結論しています。ウェストミンスター型の国では中央銀行の独立性は近年までかなり低かったとも紹介されています。いずれにせよ、政府と中央銀行の関係について興味深い分析を行っています。ただし、日本のケースからどこまで世界に普遍化することが出来るのかは不明です。
最後に、渡邉尚人『葉巻を片手に中南米』(山愛書院) です。誠に不調法ながら、私は葉巻についてはまったくたしなみがないんですが、もう20年以上も昔の1990年代前半に南米はチリの首都であるサンティアゴの日本大使館において経済アタッシェとして3年間勤務した経験がありますので、もちろん、スペイン語もそれなりに理解しますし、ラテンアメリカの生活を懐かしみつつ読みました。著者はもう定年も間近い外交官で、現在はウルグアイの日本大使館参事官だそうです。私の経験からして、たぶん、大使に次ぐ次席なんだろうと想像しています。著者の生活経験からなんでしょうが、ニカラグアとウルグアイの紹介が多い気がします。誠に残念ながら、チリについてはほとんど取り上げられていません。この本の著者は翻訳書もあることからニカラグアの詩人ルベン・ダリオに対する傾倒が見られ、中南米の文学者という意味ではガルシア-マルケスがトップだと思うんですが、そのあたりは著者の趣味でしょうから仕方ありません。3年間チリで過ごした私も知らないような中南米に関する薀蓄が傾けられており、とてもエキゾチックな雰囲気を味わうことが出来る本です。私のような葉巻には何の関心もない人間にも、中南米という切り口では読みどころがある気がします。逆に、葉巻にも中南米にも何ら関心ない向きにはオススメ出来ません。なお、p.159で1993年に常陸宮殿下ご夫妻がエクアドルをご訪問された際にガラパゴス諸島へお立寄りになったことなどが紹介されていますが、どうでもいいことながら、このエクアドルご訪問の直前にチリにもお立寄りになり、大使がご夫妻に付きっ切りでアチコチを訪れたりして大使館を上げてアテンドした中で、私と大使公邸のコックさんの2人だけはホテルにこもりっきりでさまざまなアレンジに携わったことなどを思い出してしまいました。家族で過ごしたジャカルタの生活も思い出深いものがありますが、独身で勝手気ままに過ごしたラテンアメリカの生活にも愛着があります。いずれも貴重な経験でした。
実は、阿部和重・伊坂幸太郎の共作になる『キャプテンサンダーボルト』を買い込んであるんですが、図書館に返却の必要がないため、なかなか読み始めません。来週こそは読み始めたいと考えています。
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来週月12月15日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。4月の消費増税ショックから4-6月期にとどまらず、7-9月期も2四半期連続でマイナス成長を記録した直後の短観ですから注目が集まっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと大企業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2014年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、先行きの業況判断DIの予想に着目して拾いました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
9月調査 (最近) | +13 +13 <+8.6> | n.a. |
日本総研 | +15 +13 <+8.0> | 先行き(2015年3月調査)は、全規模・全産業で12月調査対比▲2%ポイントを予想。緩やかな景気回復のもと、比較的高水準での推移が見込まれるものの、過度の円安への懸念や、政治・財政状況を巡る不透明感が重石となり、小幅悪化となる見通し。 |
大和総研 | +12 +12 <+8.0> | 先行きの業況感は総じて改善を示すとみている。製造業では、「自動車」についてはこれまで業況感を下押ししていた国内新車販売に底入れの動きが見られることはポジティブな材料である。需要の回復に伴い在庫調整も進展する見込みであり、先行きの業況感を押し上げるだろう。 |
みずほ総研 | +14 +14 <+8.2> | (大企業製造業) 先行きは、+1ポイントの改善を見込んでいる。在庫調整の進展や設備投資・輸出の増加に対する期待がプラスに寄与するものとみられる。 (大企業非製造業) 先行きは、+2ポイントの改善を見込んでいる。内需の持ち直しが続くことに加え、消費再増税の先送りにより景気の下振れ懸念が和らぐことが、業況改善につながるとみられる。 |
ニッセイ基礎研 | +12 +13 <+7.8> | 今回の最大の注目ポイントは先行きの景況感だ。景気については、今後回復基調に戻るとの見立てがコンセンサスだが、企業マインドが回復シナリオを裏付けるかどうかが注目される。そもそも、増税後の国内景気が大きく落ち込み、回復の足取りが鈍い主因は、実質賃金の低下であると考えられる。冬から春にかけては、来年度の賃金交渉が進められる大事な時期だけに、企業マインドに明るさが確認できるかが今後の賃金動向とその先の日本経済を占ううえで極めて重要になる。また、今年度収益は円安を受けて大企業製造業を中心に上方修正される可能性が高いが、賃上げの原資となるだけに修正幅が注目される。 |
第一生命経済研 | +11 +10 <+8.7> | 従来、日銀短観は景気動向指数と一致すると考えられているが、最近はや遅行しているように思える。今回の短観も、そうした意味でマクロの景気動向に遅行した動きになるのではないか。 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | +13 +14 <+9.1> | 14年度の設備投資計画については、大企業・中小企業とも、9月調査からの上方修正が見込まれる。多くの企業は、人手不足に対応した生産・販売能力の増強に積極的に取り組んでいる模様だ。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +14 +12 <+7.7> | (大企業製造業) 先行きは景気の回復とともに改善が続くと見込まれ、大企業製造業の業況判断DI(先行き)は2ポイント上昇し、16になると予測する。 (大企業非製造業) 先行きは「小売」などを中心に改善が見込まれ、業況判断DI(先行き)は2ポイント上昇の14に改善すると予測する。 |
三菱総研 | +11 +13 <n.a.> | 先行きの業況判断DI(大企業)は、増税後の反動減の影響は徐々に和らいでいくとみられるほか、原油安の波及が非製造業を中心に業況改善につながるとみられ、製造業は+12%ポイント、非製造業は+14%ポイントといずれも小幅改善を予想する。 |
富士通総研 | +12 +12 <+8.2> | 先行きについては、消費が戻り設備投資の増勢も強まるなど、景気の回復基調が鮮明になっていくことから、製造業、非製造業とも改善すると考えられる。 |
見れば分かると思いますが、大企業の製造業・非製造業の業況判断DI、さらに、大企業全産業の2014年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除くベースです。ということで、12月調査の企業マインドはほぼ9月調査から大きな変化はないと見込まれています。また、設備投資計画も9月調査から短観の統計としてのクセに従ってやや下方修正されるという見方が多いように見受けられます。そして、ニッセイ基礎研の指摘の通り、「企業マインドに明るさが確認できるかが今後の賃金動向とその先の日本経済を占ううえで極めて重要」となると私も考えています。ただ、GDP統計について、1次QE、2次QEと2度も続けて大きくハズしましたので、日銀短観もやや慎重に構えるエコノミストがいそうな気がします。下の業況判断DIのグラフは日本総研のリポートから引用しています。
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本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの系列で前月比▲6.4%減の7780億円を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10月機械受注、5カ月ぶり減 基調判断は据え置き
内閣府が11日発表した10月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比6.4%減の7780億円だった。製造業、非製造業ともに減少し5カ月ぶりのマイナスとなった。
QUICKが10日時点でまとめた民間予測の中央値(2.0%減)を下回った。内閣府は「9月に伸びたものが反動で減ったことがマイナスの大きな要因。業種別に見れば増加、減少した数は拮抗している」と説明しており、機械受注の判断は前月の「緩やかな持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は5.5%減の3438億円と2カ月ぶりに減った。9月に原子力原動機や火水力原動機で大型案件のあった電気機械や石油・石炭製品で反動が出た。一方で化学工業や情報通信機械からの受注は増えた。
船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額も7.5%減の4426億円と3カ月ぶりの減少。通信業向けのコンピューターが反動で減ったほか、不動産業向けの運搬機械なども減少した。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比▲2.1%減で、レンジでも▲4.1から+2.1%でしたから、レンジの下限を超えたマイナスとなりました。さらに、上のグラフの上のパネルを見ても明らかな通り、5月の大きな前月比マイナスによる受注減に引っ張られているとはいえ、6か月後方移動平均の太線グラフは、まだ下向きの動きを示していることも事実です。ただし、5月の前月比▲19.5%減を境に、6月+8.8%増、7月+3.5%増、8月+4.7%増、9月+2.9%増と4か月連続で前月比プラスを記録してきましたので、10月の▲6.4%減のコア機械受注の水準である7780億円は3か月前の7月の水準を上回っています。ですから、10月の前月比マイナスは反動減の範囲内ともいえます。そういった意味も含めて、なんだと私は理解していますが、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」に据え置いています。ただ、設備投資の先行指標としての機械受注の動きが反転増加に向かうかどうかはまだ不透明であると私は考えています。というのは、上のグラフの中の下のパネルに示されている通り、コア機械受注の先行指標となる外需の動向が不安定であるとともに、円安が背景なんでしょうが、黄緑色のラインの製造業は消費増税ショック直後の落ち込みから回復の気配が感じられるものの、機械受注の水準で製造業を上回っているピンク色のラインの非製造業が内需の停滞などから本格増加にはほど遠いと受け止めているからです。その意味で、法人企業統計に示されたほどの企業活動の回復については、まだ不透明との考えに戻ったといわざるを得ません。すなわち、法人企業統計の発表時から、GDP統計の2次QE発表を経て、企業活動の回復に関する見方を私は少し変更しています。
企業活動がまだ回復を示さないのであれば、トリクルダウンの家計への滴りはもっと先になる可能性が高く、日本経済の本格回復軌道への回帰は不透明感が払拭できません。その意味でも、来週の日銀短観で示されるであろう企業マインドには注目です。
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本日は企業と消費者のマインド指標が公表されています。すなわち、財務省から10-12月期の法人企業景気予測調査が、また、内閣府から11月の消費者態度指数が、それぞれ発表されています。これらに加えて、日銀からは11月の企業物価が公表されています。10-12月期における法人企業景気予測調査の大企業の景況判断指数BSIは+5.0と7-9月期の+11.1から低下し、11月の消費者態度指数も前月の38.9から37.7に低下しています。企業物価は国内物価の前年同月比上昇率で+2.7%の上昇でしたが、消費税の影響を除けば▲0.2%の下落と、2013年3月以来1年8か月振りの下落を記録しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
大企業景況判断指数、10-12月プラス5.0
2期連続プラスも7-9月より悪化
内閣府と財務省が10日発表した10-12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況感を示す景況判断指数はプラス5.0だった。2期連続のプラスとなったものの、7-9月期(プラス11.1)からプラス幅は縮小した。原油安による原材料価格の下落や円安による輸出拡大で化学工業などでは景況感が回復したが、消費増税の影響が残り自動車や機械器具などが悪化した。
指数は自社の景況が前の期と比べて「上昇」と回答した企業の割合から「下降」の割合を差し引いて算出。10-12月期は前回調査時点の見通し(プラス9.9)も下回った。
大企業のうち製造業はプラス8.1(7-9月期はプラス12.7)。化学工業に加え、販売価格の転嫁が進む食料品製造業で改善が目立った。非製造業はプラス3.4(同プラス10.2)。外国人観光客の増加により、サービス業などで改善したものの、電気・ガス・水道業、情報通信業で悪化した。
中小企業の景況判断指数は全産業でマイナス10.1。製造業がマイナス9.7、非製造業はマイナス10.2だった。
結果について財務省は「景気は緩やかな回復基調が続いているという経済全体の傾向を反映している」としている。
14年度の設備投資計画(ソフトウエア含む)は全産業で前年度比4.9%増加。前回9月は5.7%増を見込んでいた。製造業は12.0%増、非製造業は1.3%増だった。
調査は資本金1000万円以上の1万5714社を対象に実施し、回答率は81.3%。調査基準日は11月15日だった。同調査は日銀が15日に発表する企業短期経済観測調査(短観)の内容を予測する手掛かりとして注目される。
11月の消費者態度指数1.2ポイント低下 4カ月連続で基調判断引き下げ
内閣府が10日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は37.7と、前月比1.2ポイント低下した。悪化は4カ月連続。内閣府は消費者心理の基調判断を「弱含んでいる」から「弱い動きがみられる」に下方修正した。判断の引き下げは8月以降、4カ月連続で、現行基準で統計を遡ることができる2004年度以降で初めてとなる。
指数を構成する意識指標のうち、「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目がいずれも前月比で低下した。4項目がそろって低下したのは3カ月連続で、04年度以降で初めて。1年後の物価見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比1.3ポイント増の88.8と、5カ月連続で増加した。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は11月15日で、有効回答数は5508世帯(回答率65.6%)。
11月の企業物価、増税分除き0.2%下落 1年8カ月ぶり
日銀が10日公表した11月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は105.3と、前年同月に比べて2.7%上昇した。上昇幅は10月より0.2ポイント縮小した。前月比では0.2%下がり、2カ月連続で低下した。
消費税率引き上げの影響を除くと前年同月比の伸び率はマイナス0.2%と、2013年3月(マイナス0.5%)以来、1年8カ月ぶりに下落した。
国際商品市況での原油安が石油・石油製品の価格下落を通じて企業物価全体を押し下げた。化学製品は原油安に加えて、アジア域内の需給の減少が価格下落につながった。国内では精米・玄米で在庫が増えているという。
日銀は「為替の円安による押し上げ効果や国内の建設需要の盛り上がりを反映した値上がりはほぼ一巡した」(調査統計局)とみている。半面、先行きについては円建ての原材料の輸入価格に上昇傾向がみられ、食料品やパルプではコスト上昇分を価格に転嫁する動きがあるという。「値下げ、値上げの動きが国内の財の価格にどう波及してくるのかしっかり見ていきたい」とした。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月で上昇したの392品目、下落したのは345品目だった。上昇した品目が下落した品目を上回るのは15カ月連続だったが、品目数の差は9月以降減少傾向にある。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、経済指標3つ分ですから、これだけでおなかいっぱいな気もします。といいつつ、続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と青の折れ線の色分けは凡例の通りです。色が濃いのが実績で、薄いのが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。
大企業のBSIは来年4-6月期までプラスを維持するとの見込みですが、中堅企業では来年半ばの4-6月期にはマイナスに転ずる見込みですし、中小企業では昨年に一度プラスに転じた以外はほぼ一貫してBSIはマイナスを続けています。大企業でも先行きについては、円高で輸出に期待が持てる製造業よりも内需に依存する割合の高い非製造業では先行き見通しがさらに悪化する方向にあるのは当然です。特に、私が懸念しているのは雇用判断であり、企業規模にかかわらず来年半ばまでは不足超が続く見通しなんですが、企業規模と製造業・非製造業別を通じて、今年2014年12月時点が従業員の不足超のピークとなり、先行きは一貫して不足超幅が縮小する見込みとなっています。業種や地域によるミスマッチを抱えつつ、人手不足は継続すると私は考えていますが、人手不足の程度は緩和される可能性が十分あり、賃金上昇や正規雇用の増加などの雇用の質の改善につながる前に労働需要がピークアウトする可能性も排除できません。今年はボーナスを中心にまずまずの賃上げを経験しましたが、消費増税に伴う物価上昇に追いつかずに実質賃金はマイナスのままですから、来年以降の賃上げが厳しいとなれば消費は盛り上がりを欠いたままになる可能性もあります。気がかりなところです。ただし、設備投資見通しは、前回調査から下方修正されたものの、製造業を中心に前年度比から増加する見込みとなっています。
続いて、新旧の系列の消費者態度指数のグラフは上の通りです。いつもの通り、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。引用した記事にもある通り、指数のコンポーネントがすべて悪化し、統計作成官庁である内閣府の基調判断も4か月連続で下方修正されています。グラフで示されている通り、需要サイドの消費者マインドは明らかに今年年央をピークに悪化を示していると考えざるを得ません。そして、その消費者マインド悪化の大きな要因は消費増税ショックであることは間違いありません。ただし、先行きについては、私がこのブログで何度か主張してきた通り、消費税率の再引上げに向けた家計防衛的な消費者マインドに基づく消費者行動かどうかは現時点ではこの統計からは確認できません。
最後に、企業物価上昇率のグラフは上の通りです。3枚のグラフを並べていますが、上のパネルから順に、国内物価と輸出入物価の上昇率、需要段階別の上昇率、一番下が国内物価の上昇率について消費税増税の影響を含むベースと含まないベースの上昇率をそれぞれプロットしています。ヘッドラインとなる国内物価が上昇幅を縮小させているのは、引用した記事にもある通り、国際商品市況での原油安が石油・石油製品の価格下落を通じて企業物価全体を押し下げた結果と受け止めていますが、円安効果の一巡も考慮すべきかもしれません。ただし、ハロウィーン緩和から一段の円安が進んでおり、今後の物価上昇につながる可能性もあります。ただし、国内物価上昇率が消費増税の影響を除くベースで前年同月比マイナスを記録したのは実体的にはともかく、象徴的な意味を見出すエコノミストもいそうな気がします。上のグラフの真ん中のパネルを見て正確に評価すれば、国内企業物価の上昇幅縮小はグレーの折れ線グラフで示した素原材料の値下がりによるものであり、素原材料を製品として販売している企業を除いて、多くの企業にとってはコスト削減につながる動きであると考えられますので、景気には悪影響ばかりではないと私は受け止めています。
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やや旧聞に属する話題ですが、先週半ばにほぼ各紙いっせいに「与党で300議席超える勢い」などと題した衆議院選挙の序盤情勢の分析が報じられました。引用元は順不同で以下の通りです。
これらのメディアによる調査結果の報道とともに、私の目を引いたのは、12月5日に Yahoo! Japan から発表された「ビッグデータが導き出した第47回衆院選の議席数予測」です。実は、昨年の参議院選挙でも同じ手法で Yahoo! Japan が「ビッグデータが導き出した参議院選挙の議席予測」を算出しており、なかなか適確な結果を残していることから、このブログでも2013年8月1日付けのエントリーで紹介しています。ということで、私は何ら選挙運動をするわけではありませんが、web上で広く一般に公開されている情報をグラフを含めて簡単に取りまとめると以下の通りです。
まず、比例区と小選挙区の合計獲得議席数を予測した結果は上のグラフの通りです。Yahoo! Japan のサイトから引用しています。見れば分かると思いますが、投票率が50%台前半のケースと60%前後の2ケースが示されています。前者の投票率50%台前半ケースでも衆議院における与党の議席占有率は73%、投票率が60%前後に上がると75%に達すると見込まれています。投票率が高いと与党のうちの自民党の獲得議席予想が増加し、逆に、公明党が減少しますので、あるいは、いわゆる無党派層が自民党に投票する予想となっているのかもしれません。
次に、解散前と今回予測の比較は上のグラフの通りです。同じく、Yahoo! Japan のサイトから引用しています。見ての通りで、獲得議席数の予測で解散前から増加するのは、自民党、公明党、民主党、共産党と予測されており、逆に、維新の党は半減に近い減少と予測されています。
Yahoo! Japan のサイトで紹介されている予測は公示日前の11月20日から12月1日のデータが用いられており、最新データを用いた最終予測を追加公開する予定だそうです。
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夜も更けて、すっかり忘れそうになっていたんですが、今日は上の倅の誕生日です。高校3年生の受験生で、18歳になりました。区切りの誠にめでたい誕生日です。期末試験を終えてから、後日にお祝いをする予定です。
下に我が家恒例のジャンボくす玉を置いておきます。
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本日、注目を集めた7-9月期のGDP統計2次QEが公表されています。成長率は1次QEで▲0.4%、年率▲1.6%のマイナス成長でしたが、2次QEでは前期比で▲0.5%、前期比年率では▲1.9%と下方改定されました。上方改定の予想が大勢だっただけに、少し驚かされました。特に、民間設備投資と公共投資の下方改定幅が大きくなっています。まず、日経新聞のサイトから統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。
GDP改定値、年率1.9%減 設備投資を下方修正
7-9月実質
内閣府が8日発表した2014年7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%減だった。2四半期連続のマイナスで、11月17日発表の速報値(0.4%減)から下方修正された。年率換算では1.9%減(速報値は1.6%減)だった。速報値の発表後に明らかになった法人企業統計などを反映した結果、設備投資や公共投資が下振れした。
7-9月期の法人企業統計などをもとに推計し直した結果、設備投資は0.4%減(速報値は0.2%減)に下方修正された。速報段階で取り入れていた一部の予測値が実際よりも高すぎ、改定値では下押し要因になった。零細企業の設備投資も振るわなかった。民間の在庫寄与度はマイナス0.6ポイントで、速報段階から変わらなかった。
公共投資は1.4%増(速報値は2.2%増)に下方修正した。内閣府は「季節調整をかけ直した技術的な要因により、4-6月期が上方修正された一方で7-9月期が下方修正された」と説明している。
生活実感に近い名目GDPは0.9%減(速報値は0.8%減)、年率で3.5%減(同3.0%減)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比プラス2.0%(速報値はプラス2.1%)だった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事となっています。次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2013/7-9 | 2013/10-12 | 2014/1-3 | 2014/4-6 | 2014/7-9 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産 (GDP) | +0.4 | ▲0.4 | +1.4 | ▲1.7 | ▲0.4 | ▲0.5 |
民間消費 | +0.3 | ▲0.1 | +2.2 | ▲5.1 | +0.4 | +0.4 |
民間住宅 | +4.3 | +2.2 | +2.3 | ▲10.0 | ▲6.7 | ▲6.8 |
民間設備 | +0.5 | +1.0 | +6.2 | ▲4.7 | ▲0.2 | ▲0.4 |
民間在庫 * | (+0.2) | (▲0.1) | (▲0.4) | (+1.3) | (▲0.6) | (▲0.6) |
公的需要 | +0.8 | +0.4 | ▲0.8 | +0.5 | +0.7 | +0.5 |
内需寄与度 * | (+0.8) | (+0.2) | (+1.6) | (▲2.8) | (▲0.5) | (▲0.5) |
外需寄与度 * | (▲0.4) | (▲0.6) | (▲0.2) | (+1.0) | (+0.1) | (+0.1) |
輸出 | ▲0.6 | +0.2 | +6.4 | ▲0.5 | +1.3 | +1.3 |
輸入 | +1.7 | +3.7 | +6.2 | ▲5.4 | +0.8 | +0.7 |
国内総所得 (GDI) | +0.1 | ▲0.4 | +1.0 | ▲1.4 | ▲0.8 | ▲0.9 |
国民総所得 (GNI) | ▲0.2 | ▲0.4 | +0.7 | ▲1.2 | ▲0.4 | ▲0.5 |
名目GDP | +0.2 | +0.2 | +1.3 | +0.1 | ▲0.8 | ▲0.9 |
雇用者報酬 | ▲0.5 | ▲0.2 | +0.2 | ▲1.4 | +0.7 | +0.6 |
GDPデフレータ | ▲0.3 | ▲0.3 | +0.1 | +2.1 | +2.1 | +2.0 |
内需デフレータ | +0.5 | +0.6 | +0.8 | +2.5 | +2.4 | +2.4 |
テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示した積上げ棒グラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対する寄与度であり、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4-6月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスであり、消費増税ショック直後の4-6月期に大きなマイナス寄与だった赤の消費がプラスに転じたものの、グレーの在庫と緑の住宅、水色の設備などがマイナス寄与を示しているのが見て取れます。
先週木曜日12月4日のエントリーで2次QE予想を取り上げましたが、その際の大勢見通しは1次QEから上方改定でしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも1次QEの年率▲1.6%から2次QEでは▲0.5%に上方修正されると見込まれていただけに、下方改定は少し驚きをもって受け止められたのではないかと私は想像しています。1次QEから2次QEへの改定の際の寄与度で効いているのは設備投資と公共投資なんですが、2次QEを単独で見る限り、在庫調整の進展がマイナス成長率への最大の寄与を示していることに変わりありません。2四半期連続のマイナス成長ですからテクニカルな景気後退局面と考えるエコノミストがいても不思議ではありませんが、足元の10-12月期は年率で+3%程度のプラス成長という見方も根強くエコノミストの間に存在し、2四半期だけで景気後退と判定するかどうかはビミョーなところです。ハッキリ言って、この2次QEの結果はかなり玉虫色で、受け取るエコノミストによって見方が変わる可能性が高い可能性があります。もともと強気だったり、楽観的だったりすると、10-12月期などの将来の明るい姿を中心に経済を描き、逆だと消費増税ショックによるマイナス効果を大きく見せる、というバイアスがかかりそうな気もします。私は同業者のエコノミストからいくつかのシンクタンクや金融機関を通じてニューズレターの配信を受けているんですが、同じ証券会社であるにもかかわらず、株式サポートのエコノミストは明るい経済を語り、債券サポートのエコノミストは慎重な見方を示す、といった例がありそうな気もします。ただし、2四半期連続のマイナス成長により、10-12月期はプラス成長にリバウンドするとしても、従来からの私の仮説が正しくて、次の消費増税に備えた家計防衛的な色彩の強い消費性向の下落ないし貯蓄率の上昇が景気低迷の原因のひとつと仮定すれば、それほど順調に回復軌道に戻る可能性は低そうな気もします。極端な場合は、次の駆込み需要まで待たねばならないかもしれません。その意味で、私は日本経済の先行きは楽観的ながらも慎重に見ていますから、その昔に流行った言い回しで "cautiously optimistic" なのかもしれません。
GDP統計から離れて、今日は内閣府から11月の景気ウォッチャーと財務省から10月の経常収支がそれぞれ発表されています。上のグラフでは、上のパネルで景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIを、下のパネルでは青い折れ線グラフで経常収支、積上げ棒グラフでその内訳を、それぞれプロットしています。なお、上のパネルで影を付けた部分は景気後退期です。長くなりますので、グラフをお示しするに止めますが、景気ウォッチャーが下がり続けているのが気がかりです。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を前月の「このところ弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」から後半を削除して、「このところ回復に弱さがみられる」に下方修正しています。
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先々週の読書が経済書なしだった反動でもないんですが、先週は経済書をかなり読みました。フェリックス・マーティン『21世紀の貨幣論』、スキデルスキー父子の『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』など、以下の5冊です。小説は私の好きな葉室麟の時代小説だけでした。
まず、フェリックス・マーティン『21世紀の貨幣論』(東洋経済) です。最初に取り上げておいて申し訳ありませんが、この著者については本の作者紹介以上にはよく知りません。開発経済学がご専門ながら、資産運用会社のエコノミスト・ストラテジストをしているようです。ヤップ島のフェイと呼ばれる石貨、さまざまなサイズの石のコインから始まって、貨幣にまつわる歴史やさまざまな経済学を渉猟しつつ、最後の結論は最後の第16章に取りまとめられているんだろうと思います。その渉猟の仕方なんですが、最初の方に何度か「三角測量」という言葉が出て来て、単純なクロスセクションや時系列といった2次元の直線的な観察ではなく、3次元的な幅広い角度からの観察が心がけられていて好感が持てます。ただし、どこまでそれが実践されているかは読者のご判断です。最初に、マネーの定義について「譲渡可能な債務」であると喝破し、金や銀といった裏付けとなる貴金属ではなく、その意味で、ロックの貨幣観を間違ったものとして退けます。実際に、ロックの議会証言に基づく改鋳は失敗に終わります。逆に、南海泡沫事件で悪名高きジョン・ローの貨幣観、すなわち、「貨幣を発行する主権者は、貨幣の供給量を調節して、民間商業と財政の需要を満たし、民間の債権と債務の残高に対応できるだけのマネーを供給する能力を持っていなければならない。」が正しいと結論します(p.258)。現在のフィアット・マネーそのものだと思います。例えば、市中に流通しているマネーはソブリン・マネーもありますが、バンク・マネーというプライベート・マネーも少なくありませんし、アイルランドやアルゼンティンが通貨供給を制限した際に民間取引で流通したプライベート・マネーの実例を引きつつ、古典派的なマネー・ヴェール説を完全に否定し、マネーが経済学の中心を占めるべきと説きます。その意味で、金融セクターを持たないリアル・ビジネス・サイクル(RBC)理論に基づくDSGEモデルは完全に否定されます。もっともです。ただし、最後の結論はやや尻すぼみで踏み込み不足の感があります。次に紹介するスキデルスキー父子の本を紹介しつつ、強欲を否定して倫理を強調したり、要するに、レバレッジを低下させるために高い自己資本比率の規制を活用するのか、などのありきたりな結論とともに、p.414にあるように「経済学を一から作り直す」といった大風呂敷まで、精粗区々に見受けました。銀行の役割についても流動性リスクと信用リスクの区別はややあいまいです。最後に、残念ながら、やや翻訳が雑です。著者が度量衡統一の意義について取り上げているにもかかわらず、単位の変換の計算がお粗末で間違っていたり、翻訳が間違いというわけではないとしても、タイプミスが散見されます。
次に、ロバート・スキデルスキー & エドワード・スキデルスキー『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』(筑摩書房) です。スキデルスキー父子による教養書なんですが、ロバートが父であり、ケインズ研究者、伝記作家として著名なエコノミストです。エドワードの方は政治学の研究者らしいですが、私は知りませんでした。原書の出版が2012年ですから、2008年のリーマン・ショックとその後の金融危機とグレート・リセッションを踏まえて、ケインズ研究者としての立ち位置から経済政策論を展開しています。というか、著者は経済政策論を展開する意図はなかったのかもしれませんが、官庁エコノミストとしての私はそのように本書を読んだということです。まず、成長促進に対する大きな疑問を提示し、ローマ・クラブ的な観点かと思ったんですが、そうでもなく、ケインズ的な観点から、生産性の向上とともに「足るを知る」と著者が称する「消費の飽和」を生じて労働時間が短縮されるんではなく、消費の飽和が生じなかった原因を探求します。世界の歴史に見る富の分析をしたり、イースタリンのパラドックスなどに示された幸福経済学を幻想として退けたりした結果、たどり着く結論は競争と強欲が消費の不飽和の原因と結論します(p.258)。特に、幸福経済学については「経済成長の追求から幸福の追求に乗り換えるのは、誤った偶像崇拝から別の誤った偶像崇拝に切り替えることにほかならない。」(p.178)と手厳しく批判を展開しています。ただし、現在の幸福経済学が否定しているエウダイモニアについては評価しているような印象を受けます。また、1950-60年代にケインズ的な完全雇用がほぼ達成され、それゆえに、完全雇用が経済政策の目標とはならなくなってしまい、その上、1970年代の2度の石油危機を経てケインズ経済学の限界が指摘された上に、1980年代に特に米英でレーガン政権やサッチャー政権といった保守政権が誕生して、ケインズ経済学から古典派経済学への回帰が生じた点も背景として指摘しています。これらの保守政権は効率性を追求して、逆に、政府が格差是正といった公平性の確保に乗り出す経済政策に否定的な姿勢を示し、倫理や徳目の追求から外れてしまった点を指摘します。ただ、最後の結論として、強欲抑制のための広告の制限とか、希少性の視点の放棄などは、少し結論として疑問を感じる部分もありますが、経済活動の倫理性を重視する見方は私も大いに賛同する部分があります。私の専門分野ではグラミン銀行とタイアップしたダノンの活動などがもっとクローズアップされるべき、と考えています。
次に、松元崇『リスク・オン経済の衝撃』(日本経済新聞出版) です。著者は財務省、というか、当時の大蔵省でキャリアを始めて、内閣府の事務次官で退官しています。だから、というわけなんでしょうが、明快に現在のアベノミクスに対する大いなる支持を表明しています。ある意味で、私と同じ側面があると受け止めています。それはさて置き、この本のメッセージは、表題にある「リスク・オン経済」が1989年のベルリンの壁崩壊とともに始まった、という点と、先述のアベノミクスへの大いなる支持です。後は、かなり雑駁に著者の経済に関する感想を羅列した印象があり、特に大きなメッセージはなかった気がします。同時に、最初のベルリンの壁崩壊とともに「リスク・オン経済」が始まった、というのも、どこまで意味があるかは私には読み解くことが出来ませんでした。いくつか、本書から興味深い論点を都合よく抜き出すと、デフレ脱却の遅れは日銀の金融政策にあるという事実は当然ながら、その背景のひとつとして戦後の猛烈なハイパー・インフレへの恐怖心をいわゆる「岩石理論」、すなわち、なかなか動かし難いが、動き出すと止められない、になぞらえて展開しています。分からないでもありません。かつて、インフレ目標でハイパー・インフレになるといった荒唐無稽な議論がありましたが、戦後派のエコノミストでハイパー・インフレを知らない世代だからこそあり得ない議論をしていた可能性があります。また、かつては、経済のファンダメンタルズが為替を決める、とされていたものが、現在では為替がファンダメンタルズを決める、と大転換したのも同意します。韓国と我が国の電機産業のパフォーマンスの違いは、このブログで何度も指摘した通り、為替にあると私は考えています。決して、シャープやソニーのイノベーション力が低下したためではありません。そして、このイノベーションに伴う生産性の向上を製品価格の引下げにしか利用しなかった我が国企業家のアニマル・スピリットに対する批判も理解できる気がします。次に、高橋昌一郎『ノイマン・ゲーデル・チューリング』(筑摩選書) です。著者は数学科出身の哲学者であり、国学院大学教授です。ですから、数学に関する造詣がかなり深いと期待できます。表題の3人はいうまでもなく20世紀の数学界に大きな影響を及ぼした知の巨人であり、基本的に、本書は3人それぞれを別章で扱って、各章の最初で3人の天才が自分自身の言葉で語った講演・論文などを提示した後で、数ページに渡って著者がこれらを解題し、章の後半は偉人伝的な人物紹介を行っています。まず、各章で最初に提示される講演・論文について簡単に紹介すると、ノイマンのシカゴ大学での講演録は、一般聴衆を対象にしているとはいえ、少なくとも私には、かなり難解です。ゲーデルの場合はギブス講演ですから、まさに米国数学会総会における数学者を対象にした講演であり、私なんぞがすんなりと理解できるハズもありませんし、チューリングの論文「計算機械と知性」についても数学ではないというものの、哲学の専門誌に掲載された論文ですから、決して一般向けというわけではありません。しかし、別の意味では、これらの20世紀数学界の最高の遺産のいくつかを日本語訳で読めるだけでも、すなわち、たとえ十分な理解に至らなくても読めるだけで幸福を感じます。ひょっとしたら、そういった私のような読者向けの本なのかもしれないと考えないでもありません。ちなみに、序章では「3人の天才に初めて触れる入門者を対象として書かれている」(p.017)と明記されていたりします。大陸欧州出身のノイマンとゲーデルがナチスから逃げ延びて米国に渡ったにもかかわらず、ともにナチスを相手に世界大戦を戦ったソ連の共産主義や唯物論などに対する強烈な反感を共有した点、英国出身のチューリングの同性愛の傾向など、よく知られた内容もありますが、人物紹介も適切だと私は受け止めました。最後に、人工知能(AI)に対するチューリング・テストは判定がかなりあいまいだと私は従来から考えていたところ、私の誤解を解く記述も発見しました。すなわち、「それが機械だと正確に判定できない確率は70パーセントを超えている」(p.233)というのが評価関数のようです。これもためになりました。私のように、難しい内容にとまどうことなく、あくまで読み進むことのできる人向けの本かもしれません。
最後に、葉室麟『風花帖』(朝日新聞出版) です。19世紀前半、すなわち、江戸時代後期の九州小倉藩におけるお家騒動における下士の物語です。このブログにも書いたかもしれませんが、私は時代小説の本流は、江戸時代の天下泰平の下で、世襲という揺るがない「お家」に対して、政権交代などの浮沈のある家臣が心行くまでお家騒動を繰り広げる侍の物語であり、そこに武士の表芸である剣術の達人が大きな役割を果たす物語である、と考えています。その意味で、『たそがれ清兵衛』のいくつかの短編やこの作品、あるいは、佐伯泰英の居眠り磐音 江戸双紙のシリーズなどは典型的に私の考える時代小説といえます。ただし、大坂を舞台にした商人の物語、そのあたりから派生した高田郁の『銀二貫』やみおつくし料理帖シリーズなども決して評価していないわけではありません。というわけで、小倉藩のお家騒動・派閥争いに奔放される下級武士、そうです、剣術の達人である下級武士と、この作者らしい機微に富む男女関係が大きな筋になっています。悪役は決まって大男で、藩内の重役の倅です。かつて、主人公に武道試合で怪我を負わされ、最後は排除されます。とても、この作者らしくさわやかで潔いストーリーなんですが、やっぱり、疑問に感じるのは主人公がどうしてここまで人妻、というか、かつて縁談話があったとはいえ、人妻の女性に尽くすのか、という点です。まあ、作者もこの点は認識しているようで、尽くされる人妻の立場からも「申し訳ない」感が立ち上っているんですが、pp.205-210の主人公のモノローグでは物足りない気がします。キチンと主人公の幼少時からの基礎的な物語が必要です。そうでなければ、現代の言葉でいえば、単なる「都合のいい男」になってしまいかねません。武士が潔い存在かどうかは、時代にもよって異なり、江戸時代は主家に盲従する「潔い」存在だったのかもしれませんが、その前の戦国時代には裏切りや寝返りなど「何でもあり」の厳しい生存競争の時代だったわけですから、ここまで頑なな主人公の心映えというのは、もっとていねいに描写すべきと私は考えます。
今週も、経済書と教養書を合わせて何冊か借りています。でも、そろそろ、年末年始の読書計画についても考えないでもありません。昨年はエドワード D. ホックの短編集ばっかり読んでいた気がします。すなわち、サム・ホーソーン医師のシリーズ、オカルト探偵サイモン・アークのシリーズ、怪盗ニックのシリーズなどです。合わせて20冊超を取りそろえたと記憶しています。逆に、今年のゴールデン・ウィークにはリバタリアンのバイブルになっているアイン・ランド『肩をすくめるアトラス』を読んだりしました。超長編の大作です。持ち歩くのも不便なので家で読んでいた記憶が残っています。今年から来年にかけての年末年始休みをどうしようか、そろそろ図書館で予約を始めようかと考えているところです。
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日本時間の昨夜、米国労働省から米国雇用統計が発表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数と失業率は、それぞれ季節調整済みの統計で見て、前月から+321千人増加するとともに、失業率も前月と同じ5.8%を記録しています。まず、New York Times のサイトから記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。
Big Job Gains and Rising Pay in Labor Data
Ever since the recovery from the Great Recession began more than five years ago, the most crucial missing pieces of the economic puzzle were the lack of consistently strong gains in hiring and better wages for most working Americans struggling to make ends meet. Now, at last, those pieces are starting to fall into place.
The Labor Department reported on Friday that employers added 321,000 jobs in November, a much stronger number than economists had predicted and the 10th consecutive month of net job gains above 200,000.
Even more significant was that the improving job market finally delivered a sharp jump in average hourly earnings for ordinary workers that was double the anticipated 0.2 percent increase.
The jobless rate itself stayed at 5.8 percent.
The pickup in wage growth comes as gasoline prices are plunging, providing a double boon for consumers and retailers with the holiday shopping season underway.
With one month still to go, the total increase in payrolls of 2.65 million is already the best annual figure since the late 1990s.
まずまずよく取りまとめられている印象があります。この後に、エコノミストへのインタビューなどが取り上げられていますが、長くなりますので割愛します。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。
11月の非農業部門雇用者数の前月からの増加は+321千人でしたが、史上の事前コンセンサスは220-230千人くらいと見られていましたので、これをかなり上回るハイペースの雇用改善と受け止めています。さらに、さかのぼって改定される前2か月、すなわち、9月と10月もそれぞれ上方改定されていますから、米国の雇用はとても堅調と考えてよさそうです。堅調な雇用の背景には、NY株式市場で連日史上最高値を更新している株高の資産効果による家計消費の増加があります。実は、史上最高値とまではいきませんが、我が国でもハロウィーン緩和による円安と株高が続いており、年末年始の家計消費は株高などの資産効果と年末ボーナスの所得効果による増加を私は大いに期待しています。失業率もコンスタントに6%を下回るようになり、まだまだ下がり続けるとは思えませんが、米国連邦準備制度理事会が量的緩和を終了し、利上げに転じるに必要十分な水準に達したと私は考えています。ただし、この堅調な米国雇用に関して2点だけ疑問を呈すると、第1にパートタイム雇用の増加が多い点です。ヘルスケアやクリスマス商戦向けの小売などで短時間労働の雇用の比率が高まっています。雇用の質が高くないので、所得も大きく伸びるというわけにはいかないかもしれません。しつこいかもしれませんが、第2にバブルの危険があるかどうかです。量的緩和を含む金融緩和による株高などの資産効果で消費が増加しているわけですから、とても慎重なエコノミストであればバブルの危険を考慮すべき段階に達したかもしれません。しかし、少なくとも、欧州経済を見ている限りでは世界中の各国経済でブームを迎えているわけではないと実感されます。バブルかどうかは疑わしいながら、注視する必要があるかもしれません。
また、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。逆に言えば、サブプライム危機前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、コンスタントに2%のラインを上回るようになったと受け止めており、少なくとも、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつけて、デフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
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本日、内閣府から10月の景気動向指数が発表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月から+0.4ポイント上昇して110.2となり、同じくCI先行指数は前月から▲1.6ポイント下降の104.0を記録しました。CI一致指数は2か月連続の上昇です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
景気一致指数、2カ月連続改善10月0.4ポイント上昇
基調判断「下方への局面変化」据え置き
内閣府が5日発表した10月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.4ポイント上昇の110.2だった。景気一致指数の上昇は2カ月連続。海外向けの大型案件があった半導体製造装置など設備投資用の機械輸出は好調だったが、乗用車を中心に耐久消費財の国内出荷が振るわず、改善は小幅にとどまった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を前月までの「下方への局面変化を示している」に据え置いた。
数カ月後の先行きを示す先行指数は1.6ポイント低下の104.0で、2カ月ぶりに悪化した。消費者心理を示す消費者態度指数が悪化したことなどが指数を大きく押し下げた。景気に数カ月遅れる遅行指数は1.1ポイント上昇の118.1だった。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDI(最高は100)は一致指数が65.0、先行指数が22.2だった。
いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。
CI一致指数が上昇した一方で、CI先行指数は下降し、統計作成官庁である内閣府は基調判断を先月と同じ「下方への局面変化」で据え置きました。「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、「7か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。」を基準とし、定義としては、「事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。」とされています。「局面変化」に続く段階は「悪化」になります。すなわち、景気後退と判定されるわけです。逆に見て、「局面変化」はまだ景気後退と判断するには至らないと私は理解しています。たぶん、そうなんでしょう。
CI一致指数の変化に対する寄与度をみると、プラスの方では輸送機械を除く投資財出荷指数、大口電力使用量、製造業の中小企業出荷指数などであり、マイナス寄与は耐久消費財出荷指数となっています。少し前までの家計が我が国の景気をけん引するという段階ではなく、消費増税ショックのために家計の消費行動が振るわなくなった一方で、先日の法人企業統計と同じで企業活動が活発化しているのが景気動向指数からも見て取れます。消費増税ショックの4月1日までは家計がせっせと企業の製品・サービスを購入していたんですから、これからは、企業が余剰となっている資金を生かして雇用の安定や正規化や賃金上昇などで家計の購買力を底上げする段階に達したと私は受け止めています。
景気判断が「局面変化」でとどめられ、景気後退には至らない段階であると判定されたので、グラフのシャドーも変更はしませんでした。来週早々のGDP2次QEを待ちたいと思います。
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来週月曜日の12月8日に7-9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。4-6月期のマイナス成長に続いて、7-9月期も1次QEでは前期比年率▲1.6%と、連続でマイナス成長を記録し消費増税ショックの大きさが実感されましたが、今週月曜日の法人企業統計を受けて設備投資や在庫が1次QEから2次QEに向けて改定されますので、より正確な7-9月期の日本経済の姿が明らかにされると期待しています。衆議院の解散を受けた総選挙もにらんで大きな注目を集めているところ、必要な経済指標がほぼ発表され尽くして、シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、先行きの10-12月期以降を重視して拾おうとしたんですが、実際に10-12月期以降に関するコメントを見かけたのは、ハイライトしてある通り、みずほ総研のリポートだけでした。ほかは2次QEですからアッサリしたリポートも少なくありませんでした。法人企業統計のついでに2次QEが触れられているリポートもあります。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | ▲0.4% (▲1.6%) | n.a. |
日本総研 | ▲0.3% (▲1.0%) | 設備投資の下方修正が見込まれるものの、在庫投資、公共投資が上方修正される見込み。 |
大和総研 | ▲0.4% (▲1.7%) | 在庫投資のマイナス寄与が更に拡大することで、実質GDP成長率が押し下げられる公算である。 |
みずほ総研 | ▲0.0% (▲0.2%) | 10-12月期の成長率は、年率+3%前後のプラス成長になると予測している。在庫投資のマイナス寄与がはく落するとともに、夏場の天候不順の影響が薄れる中で個人消費も高めの伸びになると予想される。また、10月末に決定された日銀の追加緩和は、消費者マインドの改善を通じて個人消費の回復を後押しすることが期待される。 |
ニッセイ基礎研 | ▲0.1% (▲0.3%) | 1次速報の前期比▲0.4%(年率▲1.6%)から上方修正されると予測する。 |
第一生命経済研 | ▲0.1% (▲0.5%) | 1次速報で前期比マイナスだった設備投資がプラスに上方修正されることは、先行きの景気を見る上でも好材料だろう。 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | ▲0.1% (▲0.2%) | 1次速報の前期比年率▲1.6%から同▲0.2%に上方修正されると予想する。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲0.3% (▲1.2%) | 2四半期連続でのマイナス成長の状況に変化はなく、消費税率引き上げ後、景気が弱含んだ状態が続いていたことを確認する結果となろう。 |
三菱総研 | ▲0.2% (▲0.7%) | 前期比▲0.2%(年率▲0.7%)と、1次速報値(同▲0.4%(年率▲1.6%))から上方修正を予測する。 |
ということで、2次QEの成長率予想は、大和総研を除いて、軒並み1次QEから上方修正ということになっています。ほぼゼロ近傍ながら、プラス成長に転ずるという見方は私の接した範囲でありませんでした。私自身も、ゼロ近傍でマイナス成長ながら、プラス成長に転ずる可能性も排除できない、と見込んでいます。ですから、仕上がりの成長率ベースで見て、私の予想はみずほ総研、ニッセイ基礎研、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などに近いと受け止めています。
そして、どうして上方改定されるのかというと、決して統計としての信頼性の問題ではなく、1次QE以降に発表された経済指標が日本経済の回復を示しているからであると考えるべきです。一昨日の毎月勤労統計を取り上げたエントリーでも書いた通り、鉱工業生産指数や毎月勤労統計の所定外労働時間指数などの景気に敏感な指標は、ほぼ今年2014年3月の消費増税直前をピークに、8月のトラフまで下り坂を示していた一方で、9月から10月にかけては回復を見せています。その意味で、7-9月期のGDP統計は早い段階で推計した1次QEは下振れ、9月いっぱいまでの指標を加えた2次QEは1次QEより上振れ、という結果になるんではないかと考えられます。従って、みずほ総研のコメント欄でハイライトしておいたように、足元の10-12月期は明らかにプラス成長であり、7-9月期よりもかなり高めの成長が見込めると私は予想しています。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。
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やや旧聞に属する話題かもしれませんが、11月26日に「ライフメディア」の自主アンケート・調査結果レポートサイトであるリサーチバンクから「年賀状に関する調査」の結果が発表されています。2015年の年賀状(はがき)を出す予定があるか質問したところ、56%が「出す予定」と回答しており、枚数については「10-30通未満」が35%を占めて、もっとも多い結果になっています。各年代の男女に100人ずつを割り当てていて、サンプルの偏りが極めていい加減なんですが、それはともかく、今夜のエントリーではリサーチバンクのサイトからグラフを引用しつつ、今年の、なのか、来年の、なのか分かりかねますが、はがきの年賀状に関する事情について簡単に取りまとめておきたいと思います。
まず、上のグラフははがきの年賀状を出すかどうかに関する質問の回答結果です。見れば分かりますが、男女別かつ年代別に集計されています。全体で過半の56%の回答者がはがきの年賀状を出すと回答していますが、大雑把に、男性よりも女性の方が、また、若い世代よりも年輩の世代の方がはがきの年賀状を出す割合が高くなっています。若い世代などでははがきでなく、オンラインの年賀のご挨拶を利用する割合も高いんではないかと想像しています。
次に、何通の年賀状を出す予定かに関する質問の回答結果です。全体で見て、20%弱が10通未満、35%ほどが10-30通未満、20%余りが30-50通未満となっており、8%ほどの人は100通以上の年賀状を出す結果となっています。世代から見て、100通以上出すのは50代に多いんですが、私も50代ながら30通程度ではないかと想像しています。
次に、誰に年賀状を出す予定かに関する質問の回答結果です。大雑把に見て、「友人」、「親戚」、「親・兄弟」、「上司・同僚・先輩」、「恩人・恩師」の順でしょうか。職場によってもカルチャーが違うんでしょうが、基本的に、私が勤務する役所では昔と違って名簿も作成しないので自宅住所も知らないですし、オフィス仲間での年賀状のやり取りはないものと心得ています。
最後に、年賀状のデザインに関する質問の回答結果です。その昔のように、「写真店や印刷店に依頼」はかなり減って、オリジナルデザインにせよ、デザインキットを使うにせよ、「PCで作成」という回答が多くを占めています。コンビニなどで販売されている「印刷されたものを購入」というのも魅力的な気がします。
グラフを引用した質問のほかにも、「手書きメッセージを入れるかどうか」、「いつ出す予定か」などの常識的な質問とともに、ここ何年か話題になっている「FacebookやLINEなどSNSを利用した年賀状(はがき)を出すサービスの利用状況」に関する質問も設定されています。60代男女では、そもそも、こういったサービスを「知らない」と回答した人が80%を超えていたりします。
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本日、厚生労働省から10月の毎月勤労統計が発表されています。ヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の統計で26万7935円と前年同月比+0.5%増を記録し、また、景気に敏感な所定外労働時間指数は製造業の季節調整済みの系列で前月から+1.8%増と、生産と足並みをそろえて増加しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10月の給与総額0.5%増 実質は2.8%減
厚生労働省が2日まとめた10月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、パートを含む労働者1人が受け取った現金給与総額の平均は前年同月より0.5%多い26万7935円となり、8カ月連続で増えた。物価上昇による目減り分を考えると、実質2.8%減と16カ月連続のマイナスだった。物価の上昇に賃金の伸びは追いついていないが、マイナス幅は2カ月連続で縮まっている。
従業員5人以上の事業所を調べた。ベースアップの広がりで、基本給を示す所定内給与は0.4%増と5カ月連続で増えた。残業代など所定外給与も伸びた。
所得の動きをどう見るかは2日公示の衆院選でも争点となっている。1日の日本記者クラブ主催の党首討論会では民主党の海江田万里代表が物価上昇で実質賃金はマイナスだと批判したのに対し、安倍晋三首相(自民党総裁)が1人当たりの平均賃金ではなく雇用者数の伸びを掛け合わせた総額で考えるべきだと反論する場面もあった。
業種別の現金給与総額をみると、郵便局など複合サービス業が5.9%増えたほか、学術研究(4.5%増)、不動産・物品賃貸業(2.5%増)が好調だった。製造業も1.7%増えた。
毎月勤労統計の速報値は調査対象にパート労働者の数が少なく、数字が実態よりも高く出やすい。今月中旬に発表する確報値では下方修正される可能性がある。
次に、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上のパネルは現金給与総額とその内の所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、真ん中のパネルは季節調整した製造業の所定外労働時間を、下のパネルはフルタイムとパートタイムの就業形態別雇用の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。
物価上昇を勘案した実質の賃金の伸びはまだマイナスですが、季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見て、名目では、引用した記事にもある通り、現金給与総額で3月から8か月連続、所定内給与で6月から5か月連続で、それぞれプラスを記録しています。上のグラフのうちの真ん中のパネルを見ても、消費に影響を及ぼすいわゆる恒常所得部分である所定内給与がこのところ増勢を強めているのが見て取れます。グラフと順番が逆になりましたが、一番上のパネルの製造業における所定外時間指数は鉱工業生産指数に従って反転上昇に転じた可能性が高いと受け止めています。労働需要は生産から生じる派生需要ですので、鉱工業生産指数と所定外労働時間指数はともに直近では2014年3月ピークの8月トラフと一致した動きを示しています。ただし、4月から8月までの5か月間を景気後退期と同定するかどうかは、何ともビミョーなところです。私が決めていいのであれば、景気後退期にはせずにパスするんではないかと思います。最後の一番下のパネルは就業形態別雇用の推移であり、フルタイムの一般労働者とパートタイムのそれぞれの前年同月比伸び率をプロットしています。最近時点で、フルタイムの一般労働者の伸びが高まっているのが見て取れ、ほぼパートタイムと伸び率が同等に達しています。
労働市場については、まだまだ、大和総研のリポート「人手不足は本当に深刻なのか?」に見られるように、メディアでの「人手不足」の報道が先行しているだけであって、経済全体としては人手不足が深刻かどうかに疑問を呈する意見も少なくありませんが、そろそろ、量的な雇用の拡大局面から質的な改善局面、すなわち、賃金の上昇や正規雇用の増加などが生じやすくなっていることは事実であろうと受け止めています。
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本日、財務省から7-9月期の法人企業統計が発表されています。季節調整していない原系列の金融業と保険業を除く全産業の統計で見ると、ヘッドラインとなる売上高は前年同期比+2.9%増の328兆578億円と5四半期連続の増収、また、経常利益も+7.6%増の13兆9651億円と11四半期連続の増益となり、ソフトウェアを除く設備投資も前年同期比+5.5%増の9兆4383億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7-9月期の設備投資5.5%増 6期連続プラス 法人企業統計
財務省が1日発表した7-9月期の法人企業統計によると、金融業と保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比5.5%増の9兆4383億円で、6四半期連続のプラスだった。建設用資材やスマートフォン向け電子部品の生産能力増強に加え、工場の生産自動化システムなどで設備投資を増やす動きが出た。
設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は10.8%増と2四半期ぶりに増加した。金属製品や情報通信機械などで伸びが目立った。非製造業は2.7%増で6四半期連続で増えた。
同統計は資本金1000万円以上の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が8日に発表する7-9月期のGDP改定値に反映される。GDP改定値を算出するうえで注目度が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資は、季節調整して前期と比べると3.1%増だった。増加は2四半期ぶりで、2013年4-6月期(4.0%増)以来の高い伸び率となった。
GDP改定値に影響を与えるため関心が高い在庫投資額(金融業、保険業を除く)は1兆6305億円(前期は5兆688億円)だった。
全産業の売上高は前年同期比2.9%増の328兆578億円で、5四半期連続の増収だった。製造業は0.9%増、非製造業は3.8%増。経常利益は7.6%増の13兆9651億円で、11四半期連続の増益。製造業が19.2%増、非製造業は1.4%増だった。
財務省は今回の調査結果について、「景気は緩やかな回復基調が続いているという経済全体の傾向を反映している」とみている。
記事のタイトルからしてやや設備投資に注目が集まり過ぎているきらいはあるものの、いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
季節調整済みの系列による売上げや経常利益をプロットした上のパネル見れば明らかなんですが、1-3月期の消費増税直前の駆込み需要と4-6月期の反動減を経て、7-9月期は緩やかながら企業活動が回復に向かっている姿が現れています。消費増税にショックにより消費がそれほどは回復しないまま企業活動が回復しているんですから、下のパネルの設備投資かというと、まあ、そうかもしれませんが、それほど力強い伸びとも見えません。政府の公共投資かもしれませんし、輸出なのかもしれませんが、少なくとも、上の2枚のグラフを見る限り、消費増税ショックの後で家計の消費が冴えないわりには企業活動は回復を示しているといえ、逆から見ると、企業活動が活性化しても賃金や雇用の質の観点からのトリクルダウン効果は見られないという可能性も考えるべきです。従って、従来からの主張通り、消費増税と企業の法人減税の組合せは大いに疑問を感じます。企業が潤っても家計へのトリクルダウンはそれほど見られない可能性があるもかもしれません。さらに、これはどうでもいいことながら、前の第15循環の景気拡張期、すなわち、2009年1-3月期を谷とし2012年4-6月期を山とする期間における法人企業統計の設備投資統計は、私から見て極めて信頼性が低かったんですが、東日本大震災があったとはいえ、振り返ってグラフを見ると、この期間がとてもジグザグしているのが分かります。それに比べて、最近時点ではまた落ち着いた動きを取り戻しており、統計としての信頼性が回復しつつあるのかもしれません。
続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率は現在の景気拡大局面に入ってから一貫して低下しており、人手不足の顕在化は明らかなものの、その傾きがようやく緩やかになった段階です。数学的に表現すれば、1次微分が負で2次微分が正といえます。キャッシュフローに占める設備投資の割合はようやく反転上昇の兆しが見えますが、60%を割り込んでから長らくたって50%台半ば近くにまで水準が落ち込んでいます。このままでは設備投資が減価償却費の水準に達しそうだったので、ネットの資本ストックが減少しかねないレベルに設備投資が縮小してしまうリスクがありました。従来からの主張ですが、企業部門の資金余剰が急速に縮小するとは考えられませんし、もしも法人減税をしたりすれば、さらに企業部門の資金余剰が増加しかねないわけですから、この資金余剰を企業部門から設備投資や賃上げの形で広く日本経済に均霑させる経済政策が必要、との私の見方にも変化ありません。
今日発表の法人企業統計を受けて、来週12月8日には7-9月期のGDP統計2次QEが発表される予定となっており、設備投資は上方修正されると私は見込んでいますが、全体の成長率など詳細な2次QE予想は日を改めて取り上げたいと思います。
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