先週の読書は文庫本を中心に小説ばかり4冊ほど!
この週末に何冊か新たに図書館から借りましたが、取りあえず、先週の読書は小説ばかり4冊で、そのうち3冊が文庫本だったりします。しかもしかもで、その3冊の文庫本のうち、2冊が買ったものだったりしますので、買った本が半分を占めるのは最近ではめずらしいような気がします。買ったのはシリーズものの最新刊で、居眠り磐音の江戸双紙シリーズ最新刊48話『白鶴ノ紅』とビブリア古書堂シリーズ最新刊第6話『ビブリア古書堂事件験手帖 6 栞子さんと巡るさだめ』です。
まず、福田和代『ユダの柩』(朝日新聞出版) です。何と申しましょうか、この作者のデビュー作の『ヴィズ・ゼロ』とか、その次の『TOKYO BLACKOUT』に戻ったようなカンジで、天下国家のようなとても大きな物語を中途半端に展開しています。とても大きな物語の日本の政府開発援助 ODA とアフリカの架空の小国マムリアの独裁政権の動きについて、追いかけていて、日本でアフリカから来たマムリア人が次々と死んでいく事件だか、事故だかについて、日本の公安警察の方からと、アフリカ駐在の商社マンやメディア特派員の両方向から追っています。小説としてはよくある方法論なんですが、どうしようもなく深みに欠けていて、最後に明かされる一連のアフリカ人の死亡の裏にある因果関係についても、何やら上っ面を引っかいただけのような気がしてしまいます。しかも、そのアフリカやODAなどの国際感覚に沖縄や米軍基地まで盛り込んで、ともかく大きな物語にしようという作者の心意気は買えますし、それはそれでスラスラと手早く読めていいんですが、それにしてはスケールが小さすぎます。ハラハラドキドキもしないし、感情移入して読むのもナンですし、心に残る何かがありません。読後2-3か月ですぐに忘れてしまいそうな内容です。でも、エンタメ小説とはそんなものかもしれません。後の世で古典と見なされることもなく、20-30年後には跡形もなく消えている気もしますが、現時点で楽しく読めれば全然OKという気もします。
次に、ピエール・ルメートル『その女アレックス』(文春文庫) です。この作者の作品は初めて読んだんですが、パリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第2作だそうです。タイトル通りのアレックスなる女性にまつわるミステリなんですが、3部構成になっています。以下、やや で読み進んで下さい。ご注意です。ということで、第1部では主人公たるアレックスが誘拐されてしまいます。第2部では脱出したアレックスが実はシリアル・キラーだったのではないか、しかも、江戸川乱歩の「石榴」とは違う趣向で硫酸を飲ませて殺しており、かなり猟奇的な殺人犯ではないのか、といった具合に話が進み、最後の方で思いもしなかった結末が控えています。ジェフリー・ディーヴァーとはまた違った雰囲気でありながら、次々と意外な展開が待ち構えていて最後にどんでん返しがあり、それはそれで面白かった気がします。でも、最後の最後は何が真実なのかは明らかにされません。読者の解釈次第という面もありますし、余韻を残したいという作者の意図なのかもしれません。このシリーズがもっと出版されたら日本でも人気が出るような気がしないでもないんですが、ディーヴァーの作品ほどには評価が上がらないように私は受け止めています。その理由は主人公とその相棒のキャラ設定の差であろうと私は考えています。カミーユ・ヴェルーヴェンとルイ・マリアーニよりもリンカーン・ライムとアメリア・サックスの方に私は軍配を上げます。
次に、三上延『ビブリア古書堂事件験手帖 6 栞子さんと巡るさだめ』(メディアワークス文庫) です。シリーズ第6話となり、あと1-2巻で終了と作者ご自身があとがきで書いています。この第6話は太宰特集です。すなわち、太宰治の稀覯本をめぐる盗難事件や謎解きとなっています。小中学生にも有名な『走れメロス』、さらに、『駈込み訴へ』、『晩年』の3冊をめぐるミステリです。今回は栞子の母親である智恵子は登場しません。妹の文香も大学受験を控えてなのか、とても影が薄いです。かと言って、栞子と大輔の仲が急に進むわけでもなく、最初に戻りますが、太宰の稀覯本をめぐるミステリに明け暮れます。一応、ミステリですので、詳細は明らかにしませんが、2点ほど気になっている点について取り上げると、まず、なかなかストーリーが進みません。この作品の中では、まだ2011年の震災から数か月というカンジで、年末に映画の「海月姫」を見に行った際の感想文にも書きましたが、フィクションの小説やマンガにはよくありそうな気もしますが、連載ではなく書下ろしなんですから、何とかならないものかとも考えてしまいます。それから、話が進むにつれて、古書業者だけの間のストーリーになっている恐れはないでしょうか。その元祖ともいうべき田中敏雄、すなわち、栞子を石段で突き落として大怪我を追わせた犯罪者、から手紙が来るところからこの第6話が始まりますし、何としても手段を選ばずに稀覯本を入手するという登場人物も少なくありません。読後感が悪いので、何とかならないんでしょうか?
最後に、佐伯泰英『白鶴ノ紅』(双葉文庫) です。「ビブリア古書堂」シリーズと同じで、この「居眠り磐音の江戸双紙」シリーズも作者ご自身が50巻までと明らかにしていますので、この48巻の後は2冊ということになります。ですから、話の進みが早いです。以下、またまた、やや で読み進んで下さい。ご注意です。ということで、年末に発売された前作の47話で佐野政言が老中田沼意次の嫡男意知を城中で殺害したんですが、この48巻ではその後2年を経ています。この2年間に、磐音の許嫁だった奈緒が山形から江戸に到着し、紅屋を開いて商いも順調に進み、武左衛門の次女昭世と次男市造が紅関係で奉公に上がっています。武左衛門と勢津の子供4人は長女早苗が尚武館に、長男修太郎が研ぎ師になるために鵜飼百助に弟子入りしており、すべて巣立ちます。尚武館道場の2人の高弟が祝言を上げて、重富利次郎が霧子と結ばれて豊後関前藩に召し抱えられて江戸藩邸におり、松平辰平は箱崎屋の三女杏とともに黒田藩博多城下で暮らしています。さらに、鎌倉の尼寺に入っていた関前藩主福坂利高の正室お代の方が還俗して江戸藩邸に戻ります。後は、歴史的な事実なんですが、本作品でも大いに進みます。十代将軍家治が死去して御三家と御三卿が推す一橋徳川家の家斉が将軍を就位します。田沼意次は失脚して老中を罷免され蟄居しますが、相変わらず、磐音には刺客が送り込まれたりします。また、磐音は田沼の次の時代の幕閣を支えるであろう白河藩主松平定信の性格ややり方にも一抹の不安を覚えたりします。いよいよ最終巻に向かって大急ぎで物語が進みます。
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