原油価格低下でも横ばいを続ける企業向けサービス物価上昇率は人手不足の影響か?
本日、日銀から昨年2014年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI) が公表されています。前年同月比上昇率は+3.6%、消費増税の影響を除いて+0.9%を記録しました。いずれも、11月の統計から上昇率で見て横ばいです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
12月の企業向けサービス価格、前年比3.6%上昇 増税除く0.9%上昇
日銀が27日発表した12月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は102.9と前年同月に比べて3.6%上昇した。伸び率は前月と比べて横ばいだった。消費税率引き上げを除く伸び率は0.9%と前月と変わらなかった。
労働者派遣サービスの上昇率が1.2%と前月(0.9%)から拡大した。ソフトウエアの開発の受注が活発だった。広告もテレビ広告の伸びなどで0.5%上昇と前月(0.2%)から上げ幅が拡大した。
一方、運輸・郵便は1.2%上昇と前月(1.6)から上げ幅が縮小した。外国貨物輸送で不定期船の市況が悪化した。国内旅客航空で割引運賃の適用が増えたことも響いた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告などが企業間で取引される価格水準を示す。調査対象の147品目のうち、上昇が87品目に対し、下落が33品目だった。
同時に発表された14年の企業向けサービス価格指数は、前年比2.7%上昇だった。上昇するのは2008年以来6年ぶり。消費税率引き上げを除くベースでは0.7%上昇だった。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルはサービス物価 (SPPI) と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価 (PPI) 上昇率もプロットしています。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
2014年後半から国際商品市況における原油価格の急落があったにもかかわらず、12月の企業向けサービス物価(SPPI)の上昇率は鈍化を見せません。財で構成される企業物価(PPI)が上昇幅を大きく鈍化させ、消費税の影響を除くベースで前年同月比がマイナスに落ち込んだのとは対照的であり、上のグラフに見られる通り、青い折れ線グラフの国内物価が急激に上昇率を鈍化させている一方で、赤の企業向けサービス物価(SPPI)や緑の国際運輸を除くコアSPPIが上昇率でほぼ横ばいを続けているのが見て取れると思います。引用した記事の中でも取り上げられている通り、労働者派遣サービスやテレビ広告が上昇幅を拡大している一方で、原油価格の下落とどこまでリンクしているのかは不明ですが、運輸・郵便などが上昇幅を縮小させています。先月の統計発表時も書いた一般論ですが、企業物価のうちの財で構成される国内物価が原油価格の下落とともに上昇幅を大きく鈍化させ、消費税の影響を除けばマイナスに転じた一方で、人手不足に起因する賃金上昇の影響によりサービス物価の上昇幅はほぼ横ばいを続けています。さらに、必ずしも実証的な分析ではありませんが、調達範囲が地理的にかなり広いと考えられる財の価格に比べて、調達地域が限られていることもサービスの価格の粘着性につながっている可能性は否定できないと私は考えています。ともかく、原因が何であるにせよ、昨年後半に財とサービスの物価上昇率がかなり乖離したことは、上のグラフで見る通りです。
総務省統計局による「財・サービス分類別品目数及びウエイト」によれば、消費者物価指数において財のウェイトは約49.3%で、サービスは残りの約50.7%ですから、必ずしも消費者物価がSPPIに連動するわけではないんですが、需給ギャップの指標としてもSPPIは注目されるところです。
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