久し振りに改善した景気ウォッチャーと原油価格下落で黒字を続ける経常収支
本日、内閣府から12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から3.7ポイント上昇の45.2を記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+4330億円億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
12月の街角景気、現状判断指数5カ月ぶり改善 基調判断は据え置き
内閣府が13日発表した2014年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比3.7ポイント上昇(改善)の45.2だった。改善は5カ月ぶり。年末商戦など消費の盛り上がりを反映した。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は前月比2.7ポイント上昇の46.7と、7カ月ぶりに改善した。「消費税増税の先送りにより、先行きの不透明感が薄れ、消費は上向く」(近畿・スーパー)との見方や、「総選挙後の経済対策や燃料価格の下落などにより、景気の回復が期待される」(九州・輸送業)など、円安対策や個人消費のテコ入れ策を盛り込んだ経済対策など政府の政策への期待を挙げる声があった。
その一方で、内閣府は基調判断を「このところ回復に弱さがみられる」とし、前の月から据え置いた。据え置きの理由については、円安進行が輸出企業にとってプラスに働く一方、輸入価格の上昇につながるなど「プラスとマイナスの要因が混在していること」などを踏まえた。
先行きについては、「物価上昇の懸念等が引き続きみられるものの、経済対策や燃料価格低下への期待等がみられる」と指摘。政府の経済対策や、原油安による燃料価格の下落への期待の表現を新たに加えた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人を対象とし、有効回答率は89.3%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
11月の経常黒字4330億円 第1次所得黒字が同月として過去最大
財務省が13日発表した2014年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は4330億円の黒字だった。黒字は5カ月連続。経常収支は13年11月の5969億円の赤字から改善し、QUICKがまとめた民間予測中央値(1255億円の黒字)を上回った。原油安を背景に輸入額の増加が小幅にとどまり、貿易赤字の縮小につながったことに加え、円安進行で企業の海外での投資収益を示す第1次所得収支の黒字が同月として過去最大となり、経常収支の改善につながった。
昨年11月の貿易収支は、輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで6368億円の赤字。赤字額は前年同月比42.4%縮小した。貿易赤字は17カ月連続。輸出額は半導体等電子部品や金属加工機械などの増加が目立ち、全体で前年同月比10.8%増の6兆3221億円となった。輸出額が前年を上回るのは21カ月連続。
一方、輸入額は2.2%増の6兆9590億円。6カ月連続で前年を上回ったが、増加率は小幅にとどまった。前年は高止まりが続いていた原粗油が輸入数量、金額ともに減少した。14年1-11月の貿易赤字の累計は、通年で過去最大だった13年(8兆7734億円)を上回った。11月の輸入額は品目別ではスマートフォン(スマホ)を含む通信機などが増加した。
サービス収支は1063億円の赤字で、赤字額は前年の2481億円から縮小した。「知的財産権等使用料」の黒字額が11月として過去最大となったほか、訪日外国人観光客数の増加などで旅行収支の黒字が続いたことなどがサービス収支全体での赤字幅の縮小につながった。
第1次所得収支は1兆2760億円の黒字。黒字額は前年同月比44.4%増と大幅に伸び、11月としては比較可能な1985年以降で最大となった。第1次所得収支の黒字は14年1-11月の累計で、通年で過去最大の2007年(16兆4818億円)を上回った。
いつもながら、やや長い気はするものの、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いつもの通り、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
景気ウォッチャーの現状判断DIは5か月振りの改善となり、その改善幅もまずまずでした。先行き判断DIに至っては7か月振りの改善だったりします。現状判断DIを構成する家計、企業、雇用の3つのコンポーネントともに改善を示しましたが、家計の改善幅が最大で+4.7ポイント、企業は半分以下の+2.0ポイント、雇用はもともとの水準が高いとはいえ改善幅はさらに小さく+1.4ポイントでした。軽く想像される通り、企業の中でも製造業よりも非製造業の方の改善幅が大きい結果となりました。その要因として、景気判断理由集(現状)では、引用した記事にもある通り、経済対策への期待であるとか、原油価格下落に伴う燃料価格低下の予想などが上げられています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「景気は、このところ回復に弱さがみられる。先行きについては、物価上昇への懸念等が引き続きみられるものの、経済対策や燃料価格低下への期待等がみられる」と示しています。先行き判断は少し変更されたようですが、現状判断では「回復に弱さ」ということで据置きなんだろうと私は受け止めています。
経常収支のグラフは上の通りです。季節調整済みの系列をプロットしていますので、季節調整していない原系列に基づく引用記事とは少し印象が異なるかもしれません。青い折れ線グラフが経常収支を示しており、積上げ棒グラフがそれに対する寄与となっています。色分けは凡例の通りです。季節調整済の系列で短期的に見た経常収支は、直近では2014年年央、具体的には2014年7月をボトムに黒字幅が拡大しています。足元では相反する2つの方向に働く動きがみられます。ひとつは短期的に経常赤字をもたらす円安であり、日銀のハロウィン緩和に起因します。もうひとつは、言うまでもなく、昨年後半から大きく進んだ原油安です。割合としては、数%ないし10%程度の円安よりも、50%に届きそうな原油安の方が経常収支へのインパクトは大きく、価格面から経常黒字を拡大する方向となっていると受け止めています。需要面からは、米国経済が堅調な他は、日欧とも景気はほぼ停滞しており、新興国も中国などは冴えない展開となっていますから、にわかにはどちらに作用するかは判断できかねます。少し前までは海外経済の天体による需要面が我が国経常収支の赤字をもたらしていたと考えられますが、短期的には足元の経常黒字は価格面の効果が強いと考えるべきです。
景気ウォッチャーに現れた供給サイドのマインドは底を脱したように見えなくもないですが、来週発表の需要サイドの消費者態度指数とも見比べながら、今年の景気を占う材料としたいと考えています。
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