伸びが鈍化した機械受注と消費税の影響を除き上昇率のマイナスが続く企業物価!
本日、内閣府から昨年11月の機械受注が、また、日銀から12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ発表されています。ヘッドラインとなるデータを見ると、機械受注が電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注が季節調整済みの系列で前月比+1.3%、7880億円を記録し、国内企業物価上昇率は前年同月比で+1.9%と上昇幅が大きく鈍化しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月機械受注、前月比1.3%増 基調判断は5カ月ぶり下方修正
内閣府が15日発表した2014年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比1.3%増の7880億円だった。製造業が減少したものの、非製造業が増加したことが寄与し、2カ月ぶりにプラスになった。しかし伸びは小幅で、QUICKが14日時点でまとめた民間予測の中央値(5.0%増)には届かなかった。
内閣府は機械受注の判断を前月の「緩やかな持ち直しの動きがみられる」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」へと5カ月ぶりに下方修正した。全体では2カ月ぶりのプラスでも製造業、非製造業ともに減少した業種の数が増加した業種より多かったことなどを踏まえた。
主な機械メーカー280社が船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額は0.5%増の4449億円と2カ月ぶりに増加した。情報サービス業からのコンピューターやリース業からの建設機械の受注が増えた。
一方で製造業から受注した金額は7.0%減の3198億円と2カ月連続で減った。化学工業向けの化学機械や情報通信機械向けの半導体製造装置、鉄鋼業向けの運搬機械が10月に伸びた反動で減った。
企業物価2カ月連続下落 12月、増税の影響除き0.9%
日銀が15日公表した2014年12月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は104.8と、前年同月に比べて1.9%上昇した。上昇幅は14年11月より0.7ポイント縮小した。前月比では0.4%下がり、3カ月連続で下落した。消費税率引き上げの影響を除くと前年同月比0.9%の下落で2カ月連続のマイナスだった。日銀が掲げる年2%の消費者物価の上昇目標達成に不透明感が強まっている。
消費増税の影響を除く下落幅は12年11月(マイナス1.1%)以来、2年1カ月ぶりの大きさだった。
原油安を背景とした石油・石炭製品の値下がりが全体を押し下げた。日銀は「前年同月に建築資材向けにスクラップ類などの価格が上昇した反動も加わった」(調査統計局)とみている。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月で上昇したのは384品目、下落したのは344品目だった。上昇した品目が下落した品目を上回るのは16カ月連続だったが、品目数の差は9月以降縮小傾向にある。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、続く企業物価も含めて同様に、景気後退期を示しています。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは1月9日時点で前月比+5.1%増、記事に従えば、1月14日時点で+5.0%でしたから、実績のコア機械受注プラスとは言え、決して堅調とみなせる水準ではなかったと考えるエコノミストは多かったと受け止めています。そして、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏み」に下方修正しています。10月の前月比▲6.4%に比べて、11月の反発はわずかに+1.3%でしたから、ならして見て弱い動きであることは言うまでもありません。コア機械受注としてのヘッドラインの動向だけでなく、中身も幅広い業種でマイナスに転じていたり、プラス幅を縮小させています。加えて、コア機械受注の外数ですが、先行指標と見なされている外需もマイナスに転じており、全体として物足りない内容です。コア機械受注を見る限り、消費増税後の景気のけん引役としての設備投資にはまだまだ力強さが欠けていると考えざるを得ません。他方、機械受注以外の設備投資の指標である鉱工業生産指数の資本財出荷は持直しの兆しが見られますし、日銀短観などに示された設備投資計画でも増加を維持していますので、設備投資はどこかで反転上昇する可能性はまだ残されているんではないかと私は考えています。おそらく、設備投資増に転じると仮定すれば、その大きな要因は人手不足なんではないかと想像しています。

に、企業物価上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価と輸出入物価の上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。ヘッドラインとなる国内物価が上昇幅を縮小させているのは、引用した記事にもある通り、国際商品市況での原油安が石油・石油製品の価格下落を通じて企業物価全体を押し下げた結果と受け止めています。先月発表された11月の国内物価から消費増税の影響を除いて上昇率がマイナスに転じ、11月の国内物価の前年同月比上昇率は▲0.2%でしたが、12月は▲0.9%と下落幅を拡大しています。原油価格に起因する物価の下落に中央銀行はどう対応すべきか、国際的な動向にも注目ですが、私は日本の場合は日銀は何らか追加的な緩和策を取るような気がしています。直感であって根拠はありません。
加えて、目を国際機関に転ずると、一昨日1月13日に世銀から「世界経済見通し」Global Economic Prospects が発表されています。上の画像はそのインフォグラフィックスです。世界経済の成長率は2015年+3.0%の後、2016年+3.3%、2017年+3.2%と安定的な成長を続けると見通されており、日本も2015年+1.2%、2016年+1.6%、2017年+1.2%と潜在成長率をやや上回る成長が見込まれています。第1章が世界経済の見通し、第2章が地域経済の見通し、第3章が財政政策の分析、そして、第4章は石油価格の動向、世界貿易の減速、送金流入(remittances)の安定性の3テーマが分析されています。私の興味の範囲ですが、石油価格の下落は中国やインドなど石油を輸入している新興国の経済成長に追い風になる一方で、インフレ率を低下させることから米国連邦準備制度理事会(FED)など先進国の中央銀行が金融引締めに転換する時期が遠のくと分析しています。この視点は私と同じです。
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