原油価格下落の影響は商業販売統計にどのように現れているか?
本日、経済産業省から昨年2014年12月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売の季節調整していない前年同月比は+0.2%増の13兆5240億円、季節調整済み指数では前月比▲0.3%の減少となりました。また、2014年通年の小売業販売額は141兆2330億円で、前年比+1.7%の増加を記録しており、3年連続の増加となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
小売業販売額、14年は1.7%増 3年連続で増加
経済産業省が29日発表した商業販売統計速報によると、2014年の小売業の販売額は前年比1.7%増の141兆2330億円で、3年連続で増えた。4月の消費増税直後は落ち込んだが、増税前に駆け込み購入が盛り上がったほか、増税後も飲食料品など生活必需品の販売が下支えした。
小売業の業態別では、飲食料品が2.2%増えた。織物・衣服・身の回り品は2.8%、医薬品・化粧品は2.9%それぞれ増えた。業態別にみると、スーパーが前年比1.8%増、百貨店が1.6%増だった。コンビニエンスストアは5.6%増えた。
小売業全体では3月の販売額が前年同月比11.0%増となるなど増税直前は好調だったが、4月には4.3%減と落ち込み、6月までマイナスが続いた。7月以降は飲食料品や衣料品、医薬品・化粧品が持ち直し、おおむね小幅なプラスで推移した。
同時に発表した12月の小売業販売額は13兆5240億円で前年同月に比べ0.2%増えた。プラスは6カ月連続。気温が低かったため、鍋料理に使う食材やコートなど冬物衣料の販売が伸びた。大型小売店はスーパーが1.0%増、百貨店が0.2%増だった
やや通年統計に偏った印象はありますが、いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。次に、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期です。
いつかのエントリーに書いた記憶がありますが、1997年の3%から5%への消費税率引上げ時には、商業販売統計の小売業は季節調整していない原系列の前年同月比で見て、1997年4月から12か月連続で伸び率マイナスを記録しました。もちろん、消費税率引上げなどの影響から1997年5月を山にして景気後退局面に入ったことも消費を押し下げた要因ですが、今回の消費増税後の消費の動向では、小売業販売額で見て4-6月こそ3か月連続で前年割れを生じたものの、引用した記事にもある通り、年央7月以降は6か月連続で前年比プラスを続けています。しかし、またまたしかしで、その前年比プラスの増加幅も昨年2014年9月の+2.3%をピークに12月の+0.2%まで縮小を続けています。この複雑な動きは季節調整指数にも見られ、上のグラフは2枚のパネルとも最近時点ではよく似た動向を示しているのが読み取れると思います。
マクロの小売業から業種別に少し詳しく、季節調整していない原系列のベースで見て、昨年2014年4月の消費増税以降、電機などの耐久消費財を含む機械器具小売業の販売額は4月から12月まで9か月連続の前年割れを記録し、自動車小売業も9月を除いて4-12月の9か月のうち8か月が前年割れのマイナスでした。また、最近の国際商品市況における原油価格下落の影響から、燃料小売業の販売額は、前年同月比で10月▲1.1%減、11月▲5.3%減、12月▲4.4%減となっています。12月の減少率は機械器具小売業の前年同月比▲6.1%減に次ぐ大きな減少幅となっています。もっとも、原油価格の下落率はこんなものではなく、名目値である燃料小売業の販売は原油価格の下落にタイムラグ伴って先行きさらに下がる可能性を否定できません。乗数効果などを別にして単純に考えると、原油価格下落はエネルギー消費を押し下げる一方で、その減少=節約分に限界消費性向を乗じた額の消費支出の増加をもたらします。限界消費性向が1を下回る限り、消費額は全体で増加しないこととなりますが、家計にとっては資金的な余裕ができることになり、次の段階の消費増税に対する防衛的な姿勢が緩む可能性はあります。賃上げが見込まれるのであれば、なおさら、消費者マインドは改善する可能性が高くなります。
明日は鉱工業生産指数、雇用統計、家計調査、消費者物価など主要な政府統計がいっせいに発表される予定です。ちなみに、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産は増産、雇用統計のうち失業率と有効求人倍率は前月と横ばいで同じ水準、消費者物価上昇率は前月からやや上昇幅が縮小、といった予想が示されています。
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