昨年後半に大きく低下した原油価格の見通しやいかに?
昨年後半の経済面でのひとつの話題は原油価格の大幅な下落でした。指標となるWTI価格で見て、リーマン・ショック直後の2008年末から2009年初のバレル40ドルのレベルまではさすがに低下しませんでしたが、2014年央の100ドル超から年末には50ドル台の半ばまで大きく下落しました。やや旧聞に属する話題かもしれませんが、みずほ銀行の産業調査部から昨年12月29日付けで「短期原油価格見通し」と題して、2015年度までの価格見通しを明らかにしたリポートが公表されています。まず、リポートから要旨を2点引用すると以下の通りです。
【要旨】
- 世界の石油需要が弱含む中、石油生産が堅調に推移してきたため、需給緩和を主要因として、原油価格は2014年夏場以降下落基調となり、12月には$60/bbl を割れ込む水準にまで急落した。
- 世界の石油需給緩和状況が短期的に解消する可能性は小さい。然しながら、足許の供給増加を支える米国シェールオイルの生産拡大が鈍化する可能性を踏まえ、2015年度後半にかけて、需給バランスが次第に是正されることに伴う原油価格の緩やかな上昇を予想する。
と言うことで、私は原油などの商品市況については専門外の上、帰りが遅くなりましたので、今夜のエントリーはこのみずほ銀行産業調査部のリポートからいくつかグラフを引用して、簡単に紹介しておきたいと思います。まず、ここ数年の原油価格の推移をリポートから引用すると以下の通りです
上にリポートから引用した原油価格の推移に示された通りで、サブプライム・バブル崩壊の前後、すなわち、2008年年央のピークから2008年末-09年始のボトムまでのすさまじいまでの振幅ほど現時点では大きくありませんが、それでも、昨年2014年後半には原油価格が大きく下落しているのが見て取れます。ただし、もちろん、この原油価格の下落は日本経済に追い風となることは言うまでもなく、例えば、みずほ総研のリポートでは実勢に基づく40%の原油価格下落は中小企業の収益を+1.8兆円改善すると試算していたりします。
ただし、今後の原油価格の動向については、米国シェールオイルの生産拡大が鈍化するとともに、上にリポートから引用した長期的な石油需給見通しの通り、新興国の需要拡大に伴って増加することは確実であり、短期的にはともかく、中長期的には原油価格は上昇傾向に戻る可能性が高いと結論しています。なお、リポートでは、指標となるWTIの価格についてバレル当たり2014年度上半期の実績100.1ドルに対して、下半期の見通しは66.7ドル、2015年度見通しは上半期59.5ドルの後、下半期には63.8ドルとやや反転する可能性を示唆しています。
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