帝国データバンク「2015年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果やいかに?
1月22日付けのこのブログのエントリーで第一生命経済研究所のリポート「春闘賃上げ率の見通し」を取り上げて、今年の春闘賃上げ率について+2.40%とのリポートの予測結果を示しましたが、今週月曜日の2月16日に帝国データバンクから「2015年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を4点引用すると以下の通りです。
調査結果
- 2015年度の賃金改善を「ある」と見込む企業は48.3%。前年度見込みを1.9ポイント上回り、2006年1月の調査開始以降で最高の見通しとなった。また、2014年度に賃金改善を実施した企業は6割を超える
- 賃金改善の具体的内容は、ベア36.7%(前年度比2.7ポイント増)、賞与(一時金)27.4%(同0.4ポイント減)。賃金改善をベアで実施する企業が広がっている
- 賃金を改善する理由は「労働力の定着・確保」が大幅増加、7割に迫る。人手不足が続くなかで「同業他社の賃金動向」を挙げる企業が過去最高となり、他社の動向をより意識する傾向が強まる。改善しない理由は、「自社の業績低迷」が最多となる一方、消費税率引き上げの影響は薄れてきている
- 2015年度の総人件費は平均2.50%増加する見込み。従業員の給与や賞与は総額で約3.2兆円増加と試算される
今夜のエントリーでは、この調査結果の全文リポートから図表を引用しつつ、今年の賃上げ動向に関する企業の意識について簡単に紹介しておきたいと思います。
まず、グラフの引用はしませんが、賃金改善を見込む企業は2014年度について2014年1月時点の見込みで46.4%だったのが、それぞれ1年後の2015年1月時点で2015年度の見込みは少しだけ増加して48.3%となっています。ただし、2014年度は1月時点の見込み46.4%から実績では63.4%を記録していますから、2015年度についても賃金改善の比率がさらなる積増しを記録する可能性は十分あると予想されます。また、上のグラフはリポートから賃金改善の具体的内容を引用していますが、昨年度と比べた賃金改善の質も高くなりつつあり、賞与(一時金)の割合が減って、ベースアップの割合がジワジワと増加を示しています。
また、上のグラフはリポートから賃金を改善する理由を引用していますが、「労働力の定着・確保」とする回答割合が昨年と比べて大きく増加しています。我が国は人口動態から見て中長期的に労働供給が減少する方向にあると考えられますが、足元でも人手不足が顕在化しつつある業種や地域もあり、賃金アップや非正規の正社員化などを含む待遇改善により労働力の定着や確保を図ろうとする企業が増加しているようです。逆に、グラフは引用しませんが、賃金改善をしない理由としては「自社の業績低迷」を回答している企業の割合がもっとも高くなっています。ない袖は振れないのは古今東西で共通かもしれません。
最後に、リポートから業界別の2015年度の総人件費の増加見通しのグラフを引用すると上の通りです。短期には、労働集約的な業界やミスマッチのある産業における人手不足を反映しているのかもしれませんが、押しなべて人件費の増加を回答する企業が多い印象です。なお、総人件費の増加は+2.5%、3.2兆円と見込まれています。大雑把に半分が消費に回るとすれば、GDP成長率を+0.3%ポイントくらい押し上げる効果がありそうと私は見込んでいます。
人件費は企業から見ればコスト以外の何ものでもないのかもしれませんが、雇用者からすれば所得であり、マクロ経済で考えると消費の源泉でもあります。日本経済の好循環のためには、企業部門がキャッシュを溜め込むばかりではなく、賃金アップで所得の増加に寄与したり、非正規雇用の正社員化などの待遇改善で将来見通しのマインド向上を図ったりと、企業部門のいっそうの貢献が必要であろうと私は考えています。
| 固定リンク
コメント