帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」に見る人手不足の現状やいかに?
今週月曜日2月23日に帝国データバンクから「人手不足に対する企業の動向調査」と題するリポートが公表されています。我が国は少子高齢化とともに中長期的に労働力の供給不足に陥る可能性が高いということは長らく認識されてきましたが、現在の景気回復の下でも地域や産業によっては人手不足が顕在化しつつある部分もあるようです。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果について引用すると以下の2点です。
調査結果
- 企業の37.8%で正社員が不足していると回答。「情報サービス」が6割近くに達しているほか、「建設」や「医薬品・日用雑貨品小売」など専門知識・スキルを必要とする業種で人手不足が深刻となっている。とりわけ、「金融」「旅館・ホテル」「メンテナンス・警備・検査」など、金融緩和による円安の好影響やオフィスビル需要の拡大を受けた分野で不足感が急拡大している
- 非正社員では企業の24.1%が不足していると感じており、特に「飲食店」「旅館・ホテル」「飲食料品小売」などで高い。訪日海外旅行客数の増加とともに、消費者と接する機会の多い業種で不足感が高まっている
調査結果の要旨とは言いつつも、ほぼ言い尽くされているような気もするんですが、今夜のエントリーではpdfの全文リポートから図表を引用しつつ、簡単に紹介したいと思います。
まず、上のグラフは正社員と非正社員に分けて従業員の過不足感を現したDIです。2013年12月時点から直近の2015年1月までのおおよそ1年余りで、きわめてわずかな差ながら、正社員に関しては不足感が高まり、非正社員では過剰感が高まった、という結果が示されています。私なんぞの人事に関するシロートが不思議に思うに、正社員に関して適正感を持つ企業が半数に満たないのに、過剰感ある企業や産業から不足感ある企業や業種に、もっと活発な労働力の移動が生じないのが日本企業というものなのでしょうか。労働の流動化がどこまで必要かは議論が残るものの、やや不思議に思ったりします。
マクロの不足感・過剰感もさることながら、興味深い結果を示しているのが業種別の従業員の不足感です。これも正社員と非正社員に分かれて上の表の通りです。一昨日に企業向けサービス価格指数を取り上げた際に、日銀筋から「システムエンジニア(SE)の需給逼迫への懸念は根強い」との説明がなされているような報道を見かけましたが、上のテーブルで確認されているようです。左側の正社員の不足感で情報サービスがトップとなっています。また、詳しい情報で興味ありそうなのが、非正社員の不足感でトップスリーを占めている飲食店、旅館・ホテル、飲食料品小売なんですが、景気がよくて人をもっと雇いたいんでしょうか、それとも、非正社員のなり手が足りていないんでしょうか、旅館・ホテルだけは正社員の不足感の強い業種にも見えますが、飲食店と飲食料品小売は非正社員の不足感では上位にあるものの、正社員の不足感ではトップテンに現れません。
このブログで何度も主張しましたが、現在の日本経済の好循環を継続するためには、企業部門に滞留しているキャッシュを家計部門に均霑させることです。そのためには、雇用の拡大という量的な雇用の増加とともに賃上げや非正社員の正社員化などの質的な待遇改善も重要なポイントとなります。
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